第10話 食事
「イヤァァァ!!!」
喚きの喚き散らす声が聞こえる。
そこには喚きを囲む男たち。
俺はすかさず水牢に閉じ込めると綺麗に洗浄、剥いていく。
「大餓サマ。早すぎます。もっと下郎の下卑た顔を愉しみたかったのに」
人間で遊ぶのは業腹だが喚きに言わせれば調理らしい。
これも美味への追及か。
調理で変わった人間の味など俺には感じられん。
人間の味ではなくお前の舌が変わるだけだろうに。
喚きはイマイチ不服そうだが取り出した包丁で人間を捌いていく。
これも喚きの調理の一つだ。
かぶりつくのは貴人にあるまじきという事だ。
味は変わらないだろうが、自身を変えて食事を楽しむという試みは評価するがな。
だがこれは喚きの調理のためだけではない。
なによりも問題は俺が食べ過ぎたという事だ。
俺の力が強すぎて人間達が逃げてしまう。
もぬけの殻の村など日常茶飯事だ。
そこでこの喚きの美人局という訳だ。
美味の方は偵察に出ている。
美味の角の匂いは俺でもわかる。
置いておかれた角と、外された時の角の感覚は俺にもわかる。
案の定美味の角が外され匂いが漂ってくる。
俺がそこに辿り着くと人間に取り囲まれて地に伏せる美味の姿だ。
大漁だな。
コイツラは人間を引き寄せる媚薬でも放っているのか。
数が多いためパパっと金棒で首を飛ばす。
近頃の人間は柔らかいな。食べる時も歯応えがなさすぎる。
狩り過ぎて軟弱になってしまったか。
「物の価値がわからん奴らだ」
俺は美味から落ちた角の汚れを取る。
ここまで極上のモノを落ちたとはいえ無下にするのは勿体無い。
俺は首のない人間と共に頬ばる。
美味い。
人間の質は変わらない。おかずあってこそだ。
「大餓。あーし達って生きてちゃいけないのかな」
食事が進んでないかと思ったらそんな事か。
「人間にとっては当然だ。人食い鬼が許せるわけがない」
「でも騙し討ちだよ?」
「ただの狩りだ。鮎の友釣りは鮎への冒涜か?」
「そう、だよね。でもあーし達は人間じゃない」
「ただいま戻りました!」
喚きか。向こうは既に食い終わってふりかけを渡してくる。
こっちは素直だ。先の話をすると乗ってきた。
「狩りは生き物の本能です!」
まあ、そうだろうな。
「そして獲物の屈辱に塗れた顔見るとご飯が進むのも本能です!」
おい。
「美味サマも自身で調理した食材を口にすれば自ずと変わるはずです!」
まあ、そうくるな。
「それは却下だ。食事には敬意を払え。人間で遊ぶな」
まだ不服そうだな。
角がふりかけになるぐらいだ。
食の楽しみ方は人一倍強いのだろうがな。




