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おばあちゃんは強い

作者: アーク

王位継承権第1位のルドルフ様は身体が弱い。

剣を持つ事も出来ず、座学も長時間となると倒れてしまう。


そんなルドルフ様の様子を見て貴族達は「王妃様は次こそまともな後継をお産みになって貰わねばなりませんな」だとか、「やはり、産道を通らず産まれた御子はいただけない」だとか好き放題に言っている。


国王夫妻は御二方とも子どもの出来にくい体質だった。

長年の不妊治療の甲斐あって漸く身篭って喜んだのも束の間、8ヶ月検診の際に逆子が発覚し、産み月になっても逆子が治らず己の腹を切る選択をした王妃様にあまりな言い様だ。


宮中を走り回る度にやるせない思いになる。

私ごとき下級貴族の、医官風情が何を言っても変わらないだろう。


「あらあら、ルーはまた寝込んでいるのね」


離宮に足を運んだ王太后様は「うーん」と少し唸ってこう言った。


「わたくしの故郷の古い言い伝えに、身体が弱い男の子に女の子の格好をさせると健康になる、と言うものがあるのだけれど。


ダメ元で試してみるのはどうかしら?」


その話は私も祖母から聞いた事がある。

身体が弱い男の子に、ある程度の年齢まで女の子の衣装を着させると身体が丈夫に育つのだと言っていた。


王太后様の提案に、王妃様は藁にも縋る思いで応えてルドルフ様を徹底的に王女として育て始めた。

子ども向けのドレスを着て帝王学の詰め込みから離れ、元々興味を持っていらした医療魔術の理論を吸収し自ら医療魔術の術式を組み立てて国王陛下の悩みの種だった脚の古傷を癒して、休息の時間には同年代の令嬢からレース編みや刺繍を学んで王家の象徴である獅子を縫いこんだりするうちにいつの間にやらあれ程病弱だったルドルフ様はすっかり健康体になっていた。


「きっと、御仏の御加護に違いないわ」


王太后朱鷺子様はそう言って喜び、ルドルフ様が13歳になられた時にある公的行事に「是非ともルーに同行して欲しいわ」と連れて行かれた。


一般的な貴族令嬢の様に腰まで伸ばした黒髪と流行りのドレスを身に纏った病弱王子のお披露目は、…かなり、凄かったと後から聞いた。


『見て頂戴、わたくしの孫のルドルフよ。可愛いでしょう?


この子はね、齢8つで新しい医療魔術の術式を組み上げた天才なのよ。遠方にいても遠隔で治療が可能だし、魔力欠乏症や魔力暴走に対しての術式を組み上げたのもこの子よ。


レース編みや刺繍のひと針ひと針に魔力を篭める事で自身の器に見合わない大き過ぎる魔力をコントロールする医療魔術を作り上げたのもこの子。


―――剣を握る事だけが王族の男子として必要な事かしら?』


そこで一息ついて、こう続けた。


『わたくしも、わたくしの子どもである現国王も、他国に嫁いだ娘達もわたくしの腹を切って産まれた子どもなのだけれど。


あなた方、ルーが幼い時に『何か』言っていたわよね…??


それってわたくしの子ども達が不出来だと言う事だと受け取って良いかしら?』


顔は笑っているのに目は笑っていなかったとその場に居合わせたと言う私の祖母は言っていた。


「朱鷺ちゃん、昔からあの手の他人の痛みが分からない相手は嫌いだからね」


陣痛の痛み、出産の苦しみ、貴族達が「腹を切るだけなのだからラクに決まっている」と言った帝王切開(カイザー)の痛み諸々を彼等に追体験させる魔法を使い、悶え苦しむ姿を見て


『あら、帝王切開(カイザー)はラク、なんでしょう?出産は全治3ヶ月の事故に遭うのと同じ痛みを伴うと言うわ。


―――心から己の言動を悔いた物から解呪してあげるからそれまでその痛みを耐えなさい』


と笑って切り捨てたらしい。


朱鷺子様だけは敵に回したくないと言っていた先王のお気持ちが少しだけ分かる様な気がするルドルフ様の社交デビューだった。


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