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44 救助せよ!アケロース川の氾濫だ!

 城の窓の外から見える景色は、分厚い雲に覆われていて不気味で恐ろしい。

 今は止んではいるが、ここ三日ほど土砂降りの雨が降り続いていた。

 私がカスタリアに来てからこんな天気は初めて経験する。



「帰ってくる気配がないわね。アケロース川の状況はどうなっているの……?」



 今、アケロース川を活用した舟運のために、ローク達は船や河港の準備を進めている。

 河港は二か所に現在建設中だ。一つはカスタリアの近くを流れるアケロース川の河岸。もう一つはアケロース川が合流する、王都付近を流れるエリダノス川の河岸に造っている。

 ただ、ここしばらくの大雨でアケロース川の河港の工事を中止していたのだ。



「ローク様やニコラスたちは大丈夫かしら?」



 隣でともに窓の外を眺めていたナンシー様が眉根を寄せた。

 すっかりベールを外されて過ごしているナンシー様だけど、ナンシー様の表情がここまで曇ったところを初めて見た。



「河港の工事に携わっている者を助けたいとおっしゃって、アケロース川に向かわれましたが……」


「三日前の大雨のせいで増水していそうよね。助けるのも難航していそうだわ」



 雨が止み、災害防止のために急ぎ補強工事を行うことを、現場の作業員から報告を受けていたローク達だったが、作業を短時間で終わらせるためにニコラス閣下とともに現場へ駆けつけていた。

 早く終わらせるために応援に行ったはずなのに、大分時間が経ったが帰って来ない。

 もしかして、何かあったの……?



「大変です、大変でございます! アケロース川が……アケロース川が氾濫しました!!」



 城の使用人が血相を変えて駆けこんできた。

 ナンシー様も一緒に目を見開いた。



「え、どうして!? 雨はすっかり止んでいるのに」


「上流域での増水が時間差で下流に流れて氾濫になったようです」


「作業員たちは無事なの? ニコラスから何か報告は!?」


「作業員たちはなんとか避難はしたようですが、取り残されている者たちもいるようです。ローク様たちも手を尽くしてくださっているということですが……」


「ナンシー様。私、アケロース川へ行きます」



 居ても立っても居られなくて、私は名乗り出た。



「イシュカ、ローク様が心配されるわ。ここにいて」



 それはわかっているんだけど……。

 応援の話が出た時に私も手伝いたいと言ったけれど、ロークに待機するように強く言われた。

 でも、ここでじっとしていられる性分じゃない。

 私は首を横に振った。



「私は水術師です。水の専門家なんです。みんなが水で困っているのに助けに行かないなんて、自分が許せません。すみません、ナンシー様」


「イシュカ!」



 ナンシー様の制止を振り切り、部屋を飛び出した。

 そのまま城の厩舎に向かい、カスタリアでの相棒に近づいた。



「フラン、足場の悪い中なのにごめんね。みんなを助けたいの。私をアケロース川に連れて行ってくれる?」



 じっと瞳を見つめるとフランが返事をするようにいなないた。



「ありがとう、フラン」



 すぐさまフランにまたがり、急ぎアケロース川に向かった。





 ◆ ◆ ◆





「これはひどいわ……」



 フランのおかげで河港にたどり着いたが、目の前の状況に息を飲んだ。

 建設中の河港には何度か訪れたことがある。

 徐々にでき上がっていく様子は私の心をワクワクさせたけれど、今は濁流にのまれて無残にも削られている。

 急がなきゃ。

 フランから降りて、一目散に現場へ向かう。



「がんばれ!」


「もうすぐだ。今助けてやるからな!」



 励ましの掛け声が聞こえる方に近づくと、何人かが川から作業員を引っ張り上げていた。その中にはニコラス閣下の姿があった。



「閣下!」


「え、イシュカ嬢!? なぜここに!?」


「私もお手伝いします!」



 まだ救助が続いていて、取り残された人たちは中州にいる。そこにはローク達もいた。

 懸命に救助に当たっているけれど、濁流に邪魔をされている。

 いけない。これでは間に合わない。

 冷たい水は人間の体温を奪い、気力すら奪ってしまう。

 私はすぐに水術を詠唱した。



「みなさん、どいてください! 水圧(ハイドロ)砲撃(ブラスト)!!」



 ゴガガガアアアアッッッッッッ



 轟音が鳴り、私の手から生まれた強烈な水流が、濁流に向って解き放たれる。

 水しぶきを上げながら、濁流が中州を避けるように二つに割れた。



「早く! 今のうちに救出を!」



 叫んだ私に反応して、一気に救助が進む。

 水術の数少ない攻撃系の術の一つだ。

 今は強烈な水流で濁流が二つに割れているが、人間は自然には勝てない。

 あくまで一時しのぎにすぎないのだ。

 それにしてもこの水術、かなり魔力を消費するわ……。

 救助が終わるまでひたすら耐えるしかない。



『イシュカ、すぐに僕たちを呼べ!』


『そうじゃ、イシュカ。今こそ妾たちの力が必要であろう?』


「その声はスクルドとウルズ!?」



 瞬間、腕につけたブレスレットが熱く反応した。

 スクルドとウルズの竜神石が、まばゆい光を放ち輝きだす。

 ひと際強い光を放った後、目の前にスクルドとウルズが現れた。



『僕たちが力を貸す。あの人間たちを助けたいんだろ?』


『早くせねば間に合わんぞ、イシュカよ』


「スクルド、ウルズ。力を貸してくれるの? 私、みんなを助けたいの!」


『お前が望むなら、僕たちは力を貸そう』







お読みいただきありがとうございます(^^)


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