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34 竜神の新たな泉を発見だ

「私たちはこの森の近くにある村からきました。この森と関係する水が村の農地に染み出ていたので、調査をしにきたんです」


『そうじゃったか』


「それで、たまたまこの子がケガをしているのを見つけたので、回復のために水術をかけました。あの崖から滑り落ちたのかもしれなくて」


『なるほど。イシュカよ、ありがとう。助かったわい』



 ケガをしていた鹿が、竜神ウルズにすり寄った。

 動物たちから慕われているのね。



『よく動物たちがケガをする崖なのじゃ。妾がなんとかケガを治している』


「なんとか?」



 どういうことかしら?

 竜神には人間とは比べ物にならないくらい大きな力を宿しているはず。



「あの、竜神ウルズ様」


『ウルズで良い。兄上が認めておるのじゃ。普通に話してくれてかまわん』


「分かったわ。ウルズ、なんとかケガを治しているってどういうこと?」


『そのままの意味だ。兄上には浄化や治癒の力があるが妾にはない。我ら兄弟には別々の力が宿っているのじゃ』


「え、そうなの!? じゃあ、ウルズの力って?」



 反射的にスクルドを見ると、知らん顔をしている。

 自分から話す気はないらしい。



『何だと思う? 兄上が認めているならば、妾の力が何かわかるのでは?』


「ウルズの泉を調べればわかるわ」


『なら、妾について来い』



 ニヤリと笑ったウルズが木々の奥へと進んでいく。

 私とロークは顔を見合わせて、ウルズについて行った。

 しばらく歩くと木々で覆われていた視界が広がった。



「すごい……なに、これ……」



 目の前に現れたのはうさぎやきつね、鹿など森の動物たちが泉のほとりにいる風景だ。

 私たちが現れたとたん、一斉にこちらに振り向き警戒した。

 だけど、ウルズの気配に気づくとくつろぎはじめた。



『ここじゃ。ここが妾の泉じゃ』



 ここがウルズの泉なのか。

 不思議なことに、泉の周りにはたくさんの自生している薬草が立派に育っていた。

 おそらく泉の水の力なんだと思うんだけど。



「ウルズ、どうしてこんなに薬草がたくさん育っているの?」


『これらの薬草は森の動物たちが種を運んでくるのじゃ。それが勝手に育っている。動物たちがケガをしたときに食べて治している。あやつらはわかっておるのだ』



 それが「なんとか」の意味だったのか。

 おそらくこの薬草を食べることで治癒力が上がり、ケガの治りが早くなってるのだ。

 ここにいる動物たちは、今なんらかのケガを抱えているのだろう。

 その証拠に緩慢な動きをしている動物たちが多い。



「みんな怪我をしているわ。調べる前に動物たちのケガを治すわ。薬草よりも水術を使った方が治癒が早いから」


『本当か!』


「ええ」



 一匹ずつじゃ、時間がかかりすぎる。

 だから、動物たちみんなを一気に治すことにする。

 私は水術を詠唱し、動物たちに向って解き放つ。



回復水流(ヒールストリーム)



 動物たちを覆った水流が、キラキラとかがやきを放つ。

 やがてぱちんとはじけた。

 すると、動物たちの動きが変わった。緩慢な動きから軽やかな動きに変わった。

 うん、治ったみたいね。



『やるではないか! 動物たちが喜んでおる!』


「驚いた! イシュカは一度に複数の回復ができるのか。そんなことができるのは、王宮術師の中でもほんの一握りだけだ」


「一応ね、一応。通常の二倍の力を使うから、普段はあんまり使わないんだけどね」



 ロークが褒めてくれるから、思わず照れてしまう。

 動物たちと戯れていたウルズがこちらを向いた。



『イシュカと言ったな。改めて礼を言うぞ。ありがとう。動物たちも喜んでおる』


「よかったわ。それじゃあ早速だけど、調べてみてもいいかしら?」


『ああ、良いぞ』



 ウルズの了承を得ると、私は泉の側に立ち意識を集中した。



水解析(アクアアナライズ)



 水質鑑定のスキルを発動する。

 手のひらにほわりと光が集まり、泉へと向けた。

 手のひらを介して、泉の水の情報が集まってくる。



「……この土の中の水の成分には、細胞の力を最大限引き出す効果がある。成長スピードの上昇、植物の栄養素の最大化、細胞の循環の正常化。これまで鑑定してきた水の成分の中でもトップクラス」


『ほほう、やはりこの泉の力が分かるのか! 兄上が認めただけのことはある』


「あれ? これって……」


「イシュカ、これはシノレスの農地と同じじゃないか?」


「そうよ、一緒だわ! まさかこの泉につながっていたなんて……」



 私は思わず息を飲んだ。

 シノレス村から水のルートを辿ってきたけど、ウルズの泉につながっていたなんて驚きだ。

 でも、豊作の農地の理由がウルズの泉の水であれば納得がいく。

 この泉を使うことができれば、シノレスのあの農地のように、他の農地も豊作にすることができるだろう。

 そう考えていた時に、ロークがウルズに膝を折った。



「竜神ウルズよ」


『ウルズで良い。骨のある王太子のようだからな』


「では、ウルズ。あなたの泉の力を、カスタリアの領民に使わせてはもらえないか?」


『泉の力を領民に?』


「この泉の力は農作物を育てるのに役立つ。カスタリアの農地に泉の水を行き渡らせたい。そして、実った作物は食べた者の治癒力を上げる。領民の健康を守るだけでなく、カスタリアに訪れるランドリック国民もその恩恵が受けられる。多くの民がこの泉で救われる」


「ウルズ。私からもお願いがあります。この泉の水の成分を活かしたポーションを作りたい。難病で苦しむ人や疫病の流行を止めたい。農作物とともに、さらに多くの人を救えると思うわ」


『この泉を役立たせてくれるというのか?』



 真剣な双眸でロークがこくりと頷き、私もそれに続いた。



「使うことを許可してほしい」


『そうか、泉を役立たせてくれるのか! 妾の泉を使うといい。我ら神は役に立つことで神格が上がるからな』


「ありがとうございます」


「ありがとうございます!」



 ウルズが嬉しそうに笑った。

 良かった、許してもらえて。

 私とロークは顔を見合わせて、微笑み合った。



『このカスタリアの地を、妾の泉の水が再びうるおすことになるのか。古代国家の王都だった時以来かもしれんな』



 こ、古代国家!? 一体ナニソレ!?








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