22 お茶会というの名の呼び出しされました
疫病のポーションづくりは順調に進んでいる。
王宮で作っていた時と同じように、お医者様――今回はステッド先生――から疫病の症状を聞いて、その状態を中和するポーションを作りだすのだ。
水の成分を基にして、そこに薬草などを調合していく。
王都からステッド先生たちが、ポーション用の調合台を持ってきてくれたのだ。殿下が頼んでくれていたらしい。
やっぱり使い慣れた調合台は作業がしやすい。
「ステッド先生、ちょうどポーションが出来上がりました。確認していただいてもいいですか?」
「もちろんです」
疫病用のポーションを確認してほしくて、ステッド先生を研究室に招いていた。
ステッド先生は城下町で臨時の診療所を開所していて、そちらで仕事をしているそうだ。
調合台に近づいたステッド先生は、調合台にセットされていた細長いビンを手に取り、天にかざした。
「濁りがないきれいなポーションですね。さすが優秀な水術師だ」
「ありがとうございます。先生から教えていただいた症状に合わせて作りました。ポーションを作った後に、もう一度水質鑑定のスキルを使って中身を確認しています」
水質鑑定をしたポーションの成分表をステッド先生に渡した。
成分表を手にした先生は、軽く目を見開いた。
「何ですか、このポーションは! 私が今まで扱ってきたポーションの中でも数倍の効果があるポーションですよ!」
「……カスタリアの水が良いのだと思います」
「水の豊かな地域ではありますが、これほどとは……」
とても感心していらっしゃるけれど、竜神スクルドの水から作ったポーションとはまだ言えない。
スクルドを紹介しても良いのかまだ決めかねているので、スクルドにはナンシー様のいる温室に行ってもらっている。
きっと今頃、花をもらって満足しているだろう。
「王宮術師団のポーションを遥かに凌ぐポーションですから、疫病対策にはこれ以上ないものですね。臨時の診療所で使用していきましょう」
「ありがとうございます」
「出来上がり次第、早速診療所にポーションを届けてもらってもいいですか?」
「もちろんです。明日には第一弾をお届けできると思います」
ステッド先生から了承を得て、ホッと息を吐いた。
これで疫病のポーションは完成。大丈夫だとは思っていたけれど、了承が取れるまではやっぱり緊張する。
ポーションが完成したのは喜ばしいことなんだけど、一つ問題点がある。
「先生、量産するにはどうしましょうか?」
「確かにそうですね……」
私一人で作り続けることはできるが、たくさんの数は難しい。
数を量産するとなるとどうしても人手がいるのだけど、どうしたらいいのかしら。
「失礼いたします」
コンコンとノックする音が聞こえ、細く開けていた扉が開かれると、王都から一緒に来たソニア様付きの侍女が入って来た。
「お仕事中失礼いたします。イシュカ様、ソニアお嬢様がご一緒にお茶をしたいとおっしゃっているのですが、いかがでしょうか?」
一緒にお茶をしたい……?
反芻して思わず体が固まった。
カスタリアに到着した初日に睨まれたことが頭をよぎる。
あれから数日経っているが、私が研究所にこもりがちなこともあり、ソニア様とは今まで接点がなかった。
ど、どういうつもりなんだろう。
「セレーネさん。どうぞお相手をしてあげてください」
「え……?」
「この城は同年代の女性が少ないですし、きっとお寂しいのでしょう。ポーションの報告は私がしておきますね」
睨まれている手前、寂しいというところには疑問しかないけれど。
だけど、にこにこと言われて、行きませんなんて断れるはずがない。
「わかりました。先生、ポーションのことはお願いいたします」
「ええ。楽しんできてください」
先生に愛想笑いをしながら、侍女の案内で廊下に出た。
うーん、少し胃が痛い。
水術師になってから、お茶会という名の貴族女性の嗜みとは縁が薄かった。
久しぶりのお茶会の相手が公爵令嬢とは……難易度、高くない?
案内されるがままについていくと、城の中庭に到着した。
そこには見慣れないテーブルが用意されており、華やかな少女が笑みを浮かべて待っていた。
「ソニアお嬢様。イシュカ様をお連れしました」
「ありがとう。イシュカさん、忙しいのに招待に応じてくれてありがとう」
「こちらこそお呼びいただき、ありがとうございます。ちょうどステッド先生の確認が終わったところなの、で……」
え、どうして睨まれているの!?
さっきまで微笑んでいたのに。何か気に障ったこと言った……?
「そう。どうぞお座りになって」
「は、はい」
ソニア様の向かいに着席すると、てきぱきと侍女がお茶を給仕する。
無駄のない動きはさすが公爵家の侍女だ。
良い香りが漂ってくるお茶を一口いただくと、口当たりが良く甘みがあって美味しい。
「あら、あなた。所作が美しいのね」
「ありがとうございます。家が厳しかったものですから」
「そう」
と言って、そこから無言なんですが……。この無言の空気感がツライ。
これは何か会話の糸口を探すべき?
お茶会の振る舞いってどうやっていたのか。
頭がぐるぐるしていたところ、ソニア様が口を開いた。
「イシュカさん、カスタリアに来てどれくらい経ったの?」
「そうですね。もう二月ほどでしょうか」
「王宮追放されたあなたを、ロークお兄様が助けてここに連れてきたのよね?」
「はい。殿下には助けていただきました」
「ロークお兄様があなたに対して、距離が近すぎると思うのだけど……誑かしたのかしら」
「め、滅相もございません!」
じっと鋭い視線で投げかけられて、即座に否定をした。
王太子妃候補のソニア様に睨まれていたのは、やっぱりそういうことだったのね!
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