14 竜神に聖女に認定されちゃった……
こ、この子が!? どう見たって子どもなんだけど……。
私の中のイメージは大きな竜の体躯をしているイメージだったから、まさかこんなちっちゃ……
『お前、今小さいとか失礼なこと考えているだろ!?』
「い、いいえ?」
『僕だってこんな小さくなるとは思わなかったんだ。生気や魔力さえあれば僕だって』
「生気や魔力?」
『そう。僕たち竜神の命の源だな。生気は花や草木なんかの……』
「お花……あっ、あなた、城下町のお花を盗んでいた花泥棒でしょ! 大きな花束を持って行っちゃったわよね!?」
そうよ、このふわふわ浮いている感じ、どこかで見たと思ったら城下町で追いかけていた子!
……え、ちょっと待って。竜神様だったの!? あの時は尻尾も翼もなかったけれど。
『僕は泥棒じゃない! あれは僕に捧げられた花だろ、だったら僕のものだ。あの花束から生気をもらっているんだからな』
初めて聞いた。竜神様は生気や魔力をエネルギー源にしているのか。
竜神の石像に花束捧げられていたり、竜神祭りで花が飾られていたりしたのは理にかなっていたのね。
『お前の魔力もすごく良かったな。お前、何者だ?』
「私はイシュカ・セレーネ。水術師よ」
『水術師? 水術師にしては魔力の質が少し違うな。ただの水術師ならあんなに美味くないけどなぁ』
「や、やっぱりあの水術を食べたの?」
『おう。食べたよ。生気と同じで魔力も命の源だからな。あれくらいの術だったら余裕で食べられるよ。もっと食べたいくらいだね』
食べられるんだ……竜神様ってグルメなの?
私の攻撃が当ってしまうと心配したが、あんな風に食べてしまうとは驚きだ。
『それに、お前、僕の声が聞こえているよね?』
「さっきから会話をしているでしょう?」
『僕は町の人間と会話をしたことがないよ。竜神の声を聞くことができるのは、人々に安寧をもたらす最高峰の魔力を有していた聖女ぐらいだ』
「……は?」
せ、聖女?
なんでここで聖女が出てくるの?
『聖女は最高峰の魔力を有し、水の祝福を一身に受け、我ら竜神と交信する者……お前、似てるな』
「似ていませんけど!?」
『聖女はこの世界に必要な存在だがしばらくの間現れず、そろそろだと思っていたが……ここへきてイシュカと出会った。ただの水術師と比べれば魔力の質が異なるのも頷ける。イシュカには聖女の資質があるな』
「私は聖女の器じゃないわ」
『それはお前が決めることじゃない。我ら竜神が選ぶのだ』
それって、どういう……。
背中に冷や汗をかいたような気がして、嫌な予感がする。
『イシュカ、お前を聖女と認めよう。これからは僕の修行に応えるように』
小さな体でえっへんと胸を張って、スクルドが宣言した。
その姿は可愛いけれど、言っていることは可愛くない!
「ちょっと待って! 私は聖女の器じゃないって……」
『ふむ。しかしお前、この泉の水が使いたくてここへ来たんじゃないのか? ここは僕の泉だ。僕の泉の水は特別だぞ。だが、認めた者にしか使わせない。イシュカが聖女になるなら使わせてもいいんだけどなぁ』
ぴくりと耳が反応する。
そうだわ。この泉の水はトップクラスの効果を持つ水。
この水でポーションを作ることができたら、ナンシー様の病も治るかもしれないのだ。
それに、この泉の水でもっと多くの人が救われるに違いない。
この泉の水、ぜひとも使いたい。
「やるわ、聖女」
『そうこなくっちゃ!』
「でもでも、聖女見習いってことで! ほら、どんなお役目か分からないのにいきなり聖女って簡単には行かないと言うか……だから、他の人には秘密ってことで!」
『意味が分からん。人間は変なところにこだわるなぁ』
スクルドが面倒くさそうに言ったが、こちら人間には理由があるのです。
泉の水が使いたいから聖女をやるって言ったけれど、他の人に知られる必要はないと思う。
私は聖女の器じゃないし、力も備わっていないと思うし。
『ところで、イシュカ。お前はこの泉を何に使う気なのだ?』
「ポーションを作るのよ。難病と言われている皮膚の病を治したいのよ」
『それは良いな! この泉を役立たせてくれるのか』
あれ、急にほわりとした可愛い笑顔になったわね。
そんなに泉が役立つことはうれしいことなのかしら。
『不思議そうな顔をしているな。われら神と言われる存在は、誰かの役に立つことで神格が上がるのだ』
「そうなのね。役立つことかぁ。じゃあ、ポーションはすぐに作るとして、例えばここを温泉地にするのはどうかしら?」
『温泉か』
温かい泉の水に触れた時、最初にイメージしたのは温泉だ。
トップクラスの効果を持つ水なら、世の女性たちがこぞってくるんじゃないだろうか。
ぜひとも私が入りたい。
それに、この温泉に浸かるだけで病が治る可能性がある。
より多くの人の役に立てれば、スクルドにとってもプラスになるはずだ。
『良い案だと思う。但し、この泉に直接入ることは許さぬ。ここは竜神の神域だからな』
「え、温泉なんだから泉に入らないと意味がないんだけど!」
『それはイシュカが考えればいい。よし、これは聖女の修行としよう。イシュカ、人々の役に立つ温泉地にこの地を作り変えてみよ』
ふむ、なかなか手ごわいお題を与えられたわね。
聖女の修行に興味はないけれど、カスタリアの発展にもつながりそうだし、このお題はクリアしたい。
どうしたらいいのかしら?
「竜神様」
『スクルドで良い。というかさっきから敬語も何も使ってなかっただろ? 今更、様とか敬語とかいらないからね』
私としたことがうっかりしていたわ。
出会いが出会いだし小さな子どもの姿だから、竜神様なのについつい敬語が外れてしまった。
スクルドはいらないと言っているし、それこそ今更だから外させてもらおう。
「分かったわ。スクルド、今回の件はどうするか考えていくわ。今日はいったん戻るわね」
ここで考えても仕方がない。
城に戻って資料を調べてみるのもいいし、殿下たちに意見を聞くのもいいのかもしれない。
『イシュカ。僕も一緒に行こう』
「え、どうして?」
『竜神として聖女の修行を見届ける必要があるだろ? だから、僕を連れていけ』
「……本当は?」
『イシュカの魔力をもらいたいから! 断っても無駄だぞ』
またもやスクルドがえっへんと胸を張って言った。
わー、かわいいけど欲望に忠実ねー。
竜神様が欲望に負けていいのかと疑問には思ったけど、スクルドの要望に応えて一緒に城に戻ることにした。
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