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13 泉にて、再び出会う不思議な子

 カスタリアの城下町を散策した翌朝。

 私は城から馬を駆って近くにある丘にやってくると、目の前の景色に目を奪われた。



「わぁ、きれい!」



 目の前に広がっているのは、青々とした森林と透き通るような川や泉。

 王都ではなかなかお目にかかれない、カスタリアの自然豊かな大地だった。

 はぁ、癒される~。

 人間は自然の前ではちっぽけ、とはまさにこのことよね。

 今日は用意してもらった馬・フランに乗って、一人でここにやってきた。今日は周辺を回る予定だ。

 殿下が一緒に来たがっていたけれど、残念ながらメルヴィン様の許可は下りず、泣く泣くお仕事をされていた。

 さすがに二日連続は許されなかったみたい。



「北側は山に囲まれていて、南側は平野。カスタリアは天然の要塞なのね。あの川はおそらくアケロース川」



 貸してもらった地図を広げて確認する。

 地図で見るとアケロース川はカスタリアで最も大きな川のようだ。

 雄大だが氾濫すると少し怖いと感じる。

 あと泉がいくつもあるようで、水の性質を調べるなら泉の方がいいかもしれない。



「今日は近くの泉に行ってみよう。フラン、お願いね」



 フランに声をかけると、ヒヒン、と良い声を上げて駆け出した。

 今から行く泉は地図上では城からもっとも近い泉で、城から見ると方角的には東にある。

 丘を登ってきた道と違う道を進んでいくとやがて森に入った。



「あれ? おかしいわね……」



 森に入ってから地図の通り進んでいるつもりなんだけど、やけに道が曲がりくねって目的の方向とは違うように感じる。

 森で迷ったら厄介なんだけど、どうしようかしら。

 悩みつつも進んでいると、ゴツゴツとした岩が増え始め、その向こうに泉が見えた。



「あ、泉だわ! 良かった。迷ったかと思った」



 見つけた泉に近づくにつれ、白い靄がゆらゆらと天へ向かって伸びている。



「あれ、白い靄が……この泉は一体……?」



 私はフランから降りると泉に近づき手を入れた。

 水に触れた部分からじんわりと熱が伝わってくる。



「あったかい。この泉は温泉なのね。温泉だったら領民が使ってもおかしくないんだけど。ここにあることを知らないのかしら」



 辺りを見回しても人の気配はなく、もちろん施設があるわけでもない。

 お肌がつるつるになりそうな温泉なのに、なんだかもったいない。

 しかし、この泉はどんな成分なのか。

 水術師としては気になるので、さっそく泉の水の成分の鑑定をすることにする。



水解析(アクアアナライズ)



 私は泉に意識を集中し、水質鑑定のスキルを発動した。

 手のひらにほわりと光が集まり、手のひらを泉へと向けた。

 手のひらを介して、泉の水の情報が集まってくる。



「……この泉の水の成分には浄化の効果がある。それと毒の無効化、再生するための循環の正常化、回復の高速化……水単体だけでこれだけの力があるのね!」



 すごい、私がこれまで鑑定してきた水の成分の中でもトップクラスの効果を持つ水。

 稀にみる水だ。こんな水に出会えるなんて! 

 この泉の水なら薬を使わず、体がもともと持っている自然治癒力を高めて病が治りそうだ。それにこの水でポーションを作れば、通常のポーションよりもかなり効果が上がるだろう。

 薬は確かに体を治すが、体に負担をかけてしまうのは否めない。それをたった水の成分だけで浄化の効果を得られるのだ。

 もしかしたら、この水でポーションを作ればナンシー様の病も治るかもしれない。それだけではなくて、ポーション以外の使い方でもっと多くの人がこの泉で救われるかもしれない。



「本当にすごいわ。これは殿下に報告しなくては……」


『お前、そこで何してんだ!!』



 え、何!?

 突然、甲高い怒鳴り声が聞こえてきた。

 キョロキョロと辺りを見回しても姿が見えない。

 一体どこに……?

 すると、泉の水がゆらりと大きく波打つ。

 さらに波が大きくなったその瞬間、ゴゴゴゴォッ、と水しぶきを上げながら私の身長を遥かに超えた水柱が立った。

 頭の中に警鐘がなり、私は急いで水術を詠唱する。



『この場所から出ていけ!』



 声とともに、水柱が私を襲った。



水壁結界(アクアウォール)!!」



 詠唱していた水術を解き放つ。



 ゴオオオオオオッッッッッッ



 激しい水音を響かせ、美しい水の壁が私を取り囲むように生まれる。

 間一髪、水柱は水の壁に弾かれ、激しく水しぶきを上げて消失した。

 危なかったわ。

 私はすぐさま新たな水術を詠唱する。次は水術の数少ない攻撃系の術の一つだ。



『僕の水柱が! お前、何者だ!?』



 五、六歳くらいの青い髪の男の子が突然泉に現れた。

 え、子ども!? しかも、浮いてる!?

 けれど、すでに詠唱は終わっている。

 だめ、間に合わない!



「避けて! 水圧砲撃(ハイドロブラスト)!!」



 ゴガガガアアアアッッッッッッ



 唸りを上げながら私の手から生まれた強烈な水流が、男の子に向って解き放たれる。

 男の子は目を丸くしたかと思うと、その場で口を大きく開けた。



『あーん……ゴックン』


「へ?」



 ゴ、ゴックン? どういうこと……?

 想定外の光景に今度は私が目を丸くした。

 だ、だって……この子、私の解き放った水術を全部飲み込んだんだけど!?



『う、うまーい! マジでお前何者!?』



 男の子は目をキラキラさせて私を見つめている。



「あ、あなた……食べたの?」


『おう! 久々に美味いモノ食ったって感じ……って、僕の声が聞こえるの!?』


「聞こえるも何も……って、あれ?」



 こんな会話をしたことがあったような。

 まじまじと男の子を見てみると、ふわりと空に浮いていて、竜のような尻尾と翼をパタパタさせているんだけど!?



「あ、あなたの尻尾と翼……竜のものに見えるんだけど……」


『ふーん、お前、見る目あるな。その通り、僕は竜神だ。名をスクルドという』


「え、竜神様なの!?」













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