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銀の人2

「ミオ、君はまだこの帝国に来て日が浅いし、彼ら『レリフェル(銀の人)』のことも知らないだろうから仕方ないかもしれないけど、どうか彼らをただの『機械』だなんて思わないでほしい」

 レクセルの表情は優しく笑っていたが、その奥に怒りとも悲しみとも言えない複雑な感情が隠されたいるのが見て取れた。

「『銀の人(レリフェル)』・・・」

 ミオはエリクスから離れてうろたえた。どう接したらいいんだろう・・・。

「いいえ、知らないのなら仕方ありません。しかし面と向かって『機械でしょう?』なんて言われたのは何百年ぶりでしょう」

 エリクスは怒ることもなく柔和な笑顔を浮かべた。

「さすが何百年も生きているだけあるな。お前なんかより何倍も感情のコントロールがエリクスはできておる」

 レクセルの父親がレクセルの背中をバンと叩く。

「一緒にしないでくれ・・・。レリフェルはもう人類なんかとっくに追い越してるんだから」

「そんなことありませんよ、人間より少々長生きなので世長けているだけです。私達は決して人を超えることはできません」

 その言葉の中にもやはり何の感情も含まれてはいない。人を模しただけの機械だからこその表情だからなのか、それとも上手く隠しているだけなのかミオには判別できなかった。

「ミオ、これからのことは全てエリクスに聞くといい。エリクス、用意はできているのか?」

「もちろんでございます」

「うん、さすがだな。無理を言ってすまない。急なことで大変だっただろう」

「いいえ。未来の奥方様に失礼があってはなりませんから」

「み、未来の・・・」

 ミオは顔を赤くする。

 その様子にレクセルの父親がレクセルに耳打ちした。

「まだ手は出してないのか」

 レクセルは無言で父親の後頭部を殴った。

「お前、親に向かってなんてことをするんだ」

「その問題は今言うことじゃないだろう。ミオの前では特にやめてくれ」

「何を恥ずかしがって・・・」

 声を大きくした父にレクセルは首をホールドしにかかる。

 が、父親はその手をあっさり掴まえて捻りを入れる。

「はっはっは、まだまだ若造には負けんよ」

「このっ・・・」

「もう、何をふざけてるの、二人とも」

「レ、レクセル・・・?」

「ミオ、エリクスに部屋まで案内してもらえ、俺は親父と少し話がある」

 二人はがっちりと組んだまま、レクセルが顔に笑顔だけ浮かべてミオを促す。

「う、うん・・・」

「ではこちらへ、ミオお譲さま」

「お、お譲さま!?」

「まだ奥方と呼ぶには早いようですので・・・。いけませんか?」

 そ、そうだけど、でもなんかむずがゆい・・・。だからといって奥さんだなんてのはもっと困る。

「好きに呼ばせてやればいいさ。エリクスの選んだ呼び名なら、間違いだけはないから」

 ミオは言われたことにこくりとうなづく。いいよね、呼び方なんてなんでも。

「ではこちらへお譲さま」

 でも、うーん、なんだかな・・・。


「お部屋は3階にご用意いたしました。1階は共用部分が多く、2階がオードヴェル伯爵夫妻が、3階にはレクセル様とナータ様の私室がありますので。・・・こちらです」

 2階、3階と順に階段を上ってきて、広くて長い廊下の突き当たり。重そうな扉を開けると白い壁と大きな窓が目に飛び込んできた。天井まであり、上部はアーチ型。小花柄の青いカーテンが下がり、その窓からは遠くの景色まで一望できた。

「外を眺めるのがお好きだと聞きましたので窓の多い角部屋をご用意させていただきました。不都合があればなんなりと言って下さい」

 ミオはふるふると首を振った。

「不都合なんてないよ。すっごく素敵なお部屋。ありがとう」

「お礼はレクセル様に」

「・・・っそうか。でもありがとう」

 召使いに馴れ馴れしくしてはいけないと王宮でも言われたっけ。

「・・・いえ」

 エリクスはそれでも少し照れたように返事した。

「本当に人間っぽいね。すごいなー」

 何気なく言ったつもりだったが、すぐにそれはタブーだったと気付いて口を塞ぐ。

「ごごごごめんなさい。人間じゃないって思っちゃいけないんだよね、えっと・・・」

 エリクスはその様子に微笑を浮かべた。

「私達のことをお話しした方がいいようですね。今はもう私達のことを敢えて話すこともないくらい当たり前になっているから、皆説明を怠っているようです」

「う、うん・・・」

「お座りになってお待ち下さい。お茶を用意しましょう」

「ありがとう」


 

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