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皇太子の誕生日3

 衛星軌道上に浮かぶ宇宙港から移動艇に乗って帝星に降り立つ。

 遠くには緑に輝く防御壁が見える。宇宙港専用ポートから帝都まではまだまだだ。

 レクセルのリフターに乗って移動する。都会的な景色を楽しみながら乗っていたところに、レクセルがこう切り出した。

「これからこのまま君を俺のマンションに連れて行きたいところなんだが・・・」

 その言葉にどきっとして、かっと顔が赤くなる。

 やっぱりそういう展開になるよね・・・。どどど、どうしよう・・・。別に考えてなかったわけじゃないけど・・・さ。

 ぎゅっと膝の上で手を握りしめる。

 あのマンションで起こったことを思い出して胸がきゅっと痛くなる。荒い息使いのレクセルの唇が胸の上を滑って行って・・・。

 思い出すだけで羞恥で体が熱くなる。

 い、嫌なわけじゃないけど、まだ心の準備が・・・。

 うつむいて動かなくなった自分を見てレクセルは、

「まぁ、そうだろうな。だからナータのとこに泊まるといい」

 と言ってくれた。

 よかった・・・。

 ほっとして緊張を解く。

「そんなにほっとされると、なんだかすごく罪悪感を感じるな」

「ご、ごめんなさい」

「いや、いいんだよ。楽しみは取っておく方だしね」

「とって・・・」

「おっと。ちょっと言い方がまずかったかな?いや、まだ正式に結婚もしてないのに君と婚前交渉するのは対外的にもまずいからね。どちらにしても、君に手を出せないさ」

「は、はぁ・・・」

 とにかくも身の安全は保障されるわけだ。

「結婚式はいつにしようか」

 レクセルがさらっと言い出した。

「は、はい!?」

「そんな驚くなよ。来年、もっと先になるかな・・・」

「ええっと・・・」

「ま、ゆっくり考えててくれよ」

「はい・・・」

 な、何か話が・・・。でも、そうか・・・。そうだよね。

 面くらいながらもその日のことを漠然と思った。



 帝都でも有名なお譲さま大学。その近くにナータは部屋を借りて住んでいた。訪問するのは初めてだ。呼び鈴を鳴らすとすぐに出てきた。

「兄さんいらっしゃい」

 今度の髪の色は明るい茶色だ。化粧も相変わらず派手だな・・・。

「ナータ悪いな」

「いいわよ。ミオちゃん一人泊めるくらい。さ、入って」

 広々としたリビング、こいつも結構いいところに住んでるじゃないか。

「皇子の誕生日あさってだっけ。準備はいいの?」

「一応よさそうなの買ってみたんだが・・・」

「ふーん・・・、これ?・・・って兄さん!これ何!?」

 ブランド物大好きな妹ナータが目ざとく店のロゴの入った箱をみつけて騒ぎ出した。

「あー、ミオに似合うかと思ってな・・・」

「だだだ、だってこれ超一流ブランドで値段も超一流のとこじゃない!」

「いいなって思ったから買っただけだ」

「こんな高いのミオちゃんには早いわよ!」

「買ったものは仕方ないだろう・・・」

「兄さんミオちゃんに甘すぎ!初めからこんな贅沢させて、浪費家になったらどうするの!?」

「ミオはそんなんじゃないよ」

「わかんないじゃない!」

「お前にも何か買ってやるから・・・」

「それじゃ、仕方ないわね」

 本当にこいつは扱いやすい・・・。金はかかるが・・・。

 その様子をミオはぽかんと見ていた。

 相変わらずぽやっとしている子だ。その鈍くさそうなところを捕まえて食べてしまいたい。

「これ、君に」

 箱を手渡す。

「私に?」

 ミオは不思議そうにしながら受け取った。嬉しくないわけじゃないんだよな・・・、きっとまた頭がついていってないんだろう。

「開けてみてよ」

「うん」

 包装を解いて薄紙をとると、あのきれいな紺色のドレスが姿を現す。

「わぁ、きれい」

「だろう?」

「へー、兄さんにしてはいい趣味してるじゃない?」

「着てみてくれないか?」

「うん」

 ほどなくしてそのドレス姿のミオが現れた。

「ちょっと大人っぽすぎない・・・?」

 恥ずかしそうにしながらもくるりと回ってみせる。

「いや、いいよ、よく似合うよ・・・」

 ベアトップの胸元にふんわりとしたデザインのリボンをあしらい、アシンメトリーな裾のラインの片方は膝上まできている。

 かわいらしくも確かに大人っぽい。

「でも兄さん、靴は?バッグは?アクセサリーは?」

「え?」

「『え?』じゃないでしょう!?何?用意してないの?」

「いや、そこまでは・・・」

「だめじゃない!もうっ、まだ暇?」

「ああ、うん」

「じゃあ今からすぐにミオちゃん連れて買い物に行ってきなさい!」

「わ、分かった」

 ナータに追い立てられて部屋を出る。

「お前は行かないのか?」

「私はそんなに暇じゃないの」

「そうか」

「でもその店行くならバッグお願い」

「またバッグかよ」

「いいのよ。いくらでも欲しいの!じゃ、お願いね」

 ヒラリと手を振ってドアを閉められた。

「じゃぁ、行こうか」

 パーティーのアイテムか・・・。

 店で聞いたらなんとかなるかな?

 ミオを連れてまたあの店に行ってみることにした。

 

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