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皇太子の誕生日1

「皇子の誕生日会?」

 画面に映し出された招待状には自分の名前が美しい飾り文字で書かれていた。

 それだけはちゃんと読めるしね。

「そうだ」

 超光速通信で届くレクセルの顔は何故か不機嫌そうだった。

「叙勲式で時々会いたいと言っていたのは本気だったらしいな」

「そんなこと言ってたっけ?」

 帝国の暦としては秋も深まっている折、叙勲式は夏の初めだったから大分前の記憶だし、あの時は訳わかんなかったからかなぁ・・・。

「殿下からの招待を断るわけにもいかないしな・・・」

「どうしてそんなに不機嫌そうなの?皇子のお誕生日会なんてきっと素敵でしょう?」

「君のその鈍いところはいいことなのか悪いことなのか・・・」

「?」

「皇子はいまだ君のことを憎からず思ってるんだぞ。それなのにその皇子のところに行くだなんて・・・」

「えーと、妬いてるってこと?」

「そうだ」

 珍しく子供っぽいぶすっとした表情で言う。

「うふふ・・・。でも大丈夫よ。皇子はすっごくいい子で優しいし・・・」

「だから嫌なんじゃないか!君がそうやって皇子を悪く思ってないから・・・。皇子は本当、素晴らしい方だよ。あの歳でいくつもの功績をあげて、人格も申し分ない。君がなびきゃしないかと・・・」

「そんなの心配しなくても大丈夫だって」

「だといいけど」

 レクセルは不機嫌そうな顔に戻って投げやりに言う。

「本当は行かせたくはないがな。まぁ、君がこっちに来る機会ができたと思えば・・・」

「うん。皇子に感謝した方がいいかもね」

「複雑だ・・・」

 顔に手をおいて天を仰いだ。

「レクセルがちっとも帰ってきてくれないからよ」

「それは本当にすまない・・・。忙しくて・・・。まぁ、早く用意を整えてこっちに来てくれ。・・・待ってるから」

「うん・・・」

 しばらく無言で二人見つめあった。



 通信を切って深く息を吐き、背もたれに頭を預ける。ギッと軋んだ音がして人のいなくなった研究室に響く。

 一通り仕事が終わってからやっとやっかいな問題の報告がミオにできた。

 恒星間の通信は金がかかるので帝国に砕身奉仕している身としては、帝国の施設の私的な使用などささいなことだろう。

 時差で向こうは明るい日差しの中、元気そうなミオの笑顔を思い出して笑みがこぼれる。

 本当、元気になって。叙勲式の頃がひどかったもんな。

 折れそうなほど細かった手首の感触が未だに掌に残る。

 まぁ、あれはあれでよかったけど。いかにも儚げでつい守ってやりたくなるような・・・。

 でも今の方が健康的でずっといい。

「さ、帰ろう帰ろう」

 荷物をまとめて研究室を出た。


 リフターに乗って郊外の仕事場である研究施設から街へ入り、繁華街へと差しかかった。

 たくさんの商店が並び、夜になっても煌びやかな明かりを放っている。

(そういえば、ミオにドレスがいるな・・・)

 いつもは気にもかけない服飾ブランドのウィンドウに目を遣る。

 皇子の誕生日パーティーとなったらそれ相応のものを着せたい。妻の(まだだけど)服飾品を揃えるのは家の務めだ。

 ふとよく目にする有名ブランドの店を見つけ、近くにリフターを置いて覗いてみることにした。

「いらっしゃいませー」

 上品な女性がにこにこと愛想よく近づいてきた。

「まぁ、オードヴェル様ではありませんか!?」

「ええ、そうです」

 自分の顔はミオとともに帝国じゅうに知れ渡っているのだ。どこへいっても顔で通じる。自己紹介の手間が省けていい。

「こちらへはもしやミオ様への贈り物ですか」

「はい」

 さすがよく分かるものだ。

「皇太子殿下の誕生パーティーによばれてね。ちゃんとしたものを用意したいと」

「まぁぁ!それならうってつけのものがございますわ!」

 店員は鼻息も荒く勢い込んで奥へと走っていった。

「こちらは我がブランドのデザイナーの最新作です。他の店ではまだ取り扱っておりませんですのよ」

 と、紺色のドレスを手に戻ってきた。

「きれいだな」

「そうでございましょう!ミオ様にもよくお似合いだと思いますわ!」

「サイズが分からないんだが」

「それくらいは映像から正確なサイズを解析できます。それに合わせてお直しも致しましょう」

「そうか。じゃあお願いする」

「ありがとうございます!」

 カードで支払いをし、後で送ってもらうことにして店を出た。

 店を出るまではしゃんとしていたが、見送りの店員がいなくなってから肩を落とした。

 ・・・けっこう高かったな、ちゃんと値段をきけばよかった・・・。

 少し、いやだいぶ後悔しながら家路についた。

  

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