走ってはいけない
※公式企画とは関係無い、夏のほらぁ……です。
オチは予定調和的な予想通りのオチとなっております。
それでも構わない方はどうぞ。
ある日の昼下り。
とある住宅街の道路を、母と子が歩いていた。
母の方はいかにもな若奥様ルックであり、幸せな家庭を築けているのだろうと推測できる。
子の方は成長途中で、まだ幼い。 体のバランスがまだまだ悪くて、その内コケるのではないかとハラハラしてしまうような足取りだ。
その母はエコバッグをいくつか手に提げており、歩きでスーパーマーケット帰りだろう事が察せされる。
子供の方はスーパーマーケットで何か買ってもらえたのだろう、アニメイラストがプリントされた小さな箱を両手で持って、嬉しそうに母の前を歩いていた。
「ふう、今日も暑いわねえ。 まあちゃん、途中で涼しい所を探して休憩しましょうね?」
「はーい!」
なんて微笑ましいやりとりもしていた。
住宅街の中にある小さな公園で、日陰になっているベンチで母子が休憩をとり、汗も引いてきた頃。
「さて、休んだし涼しいお家へ帰りましょうか!」
なんて言って母が立ち上がり、脇に置いたエコバッグを持とうとした時に、まあちゃんから声がかかった。
「お母さん! ひとつ持つよ!」
「あら嬉しい。 じゃあお願いしようかしら」
子供が手伝ってくれると言う申し出は、親としては優しい子に育ってくれていると思えて嬉しい事なのだろう。
その申し出を断って、性格を歪めてしまってはいけない。
そんな気持ちが有るかは分からないが、まあちゃんの言葉に応じた母は、一番軽いバッグを選んで「まあちゃんが持ってたオモチャも、コレに入れて運んでね」なんて言いながら手渡した。
まあちゃんはまあちゃんで、親が頼ってくれたと嬉しいのだろう。 「うん!」と元気良く返事し、さっきまで両手で大事そうに持っていたアニメイラストの箱をバッグへ入れ、勇ましい顔つきでバッグを両手で大変そうに持ち上げる。
この公園から家まではさほど離れていないし、子供の力でも家までは運べるだろう。
それとバッグの中身は軽い上に壊れにくい丈夫な物をまとめて入れているので、万が一の事があっても酷いことにはなるまい。
そう判断した母は、満足そうにひとつ頷いて「さあ、帰りましょうね」と足を自宅へ向けた。
公園を出てすぐ。
まあちゃんは相変わらず母の前を歩く。
母からは見えないが、まあちゃんの顔はそれはそれは使命感に溢れいて、凛々しい顔つきになっている。
そんな背中を見る母は、公園につくまでとの違いに気付いた。
まあちゃんが気負っているのかもしれない。
さっきまでより、歩くペースが僅かにだが速くなっているのだ。
それでまだ幼いまあちゃんだ。
母が心配になって「もう少しゆっくり歩こうね。 急いだらころんで痛い痛いで大変よ?」なんて忠告をした。
…………して、しまった。
気負っている子供に、忠告だ。
そうなると逆効果。 そこで強がってしまうのが幼い子供。
「だいじょーぶーー!」
「危ないわよーー!」
「だいじょーぶだってーーー!」
盛大な反発を受けては、母も黙っていられない。
制止するつもりで叫んだが、これもまた逆効果。
より速く足を動かそうと、強く反発してしまうのが子供。
その行動はもちろん、惨事を招く。
「あっ!?」
「まあちゃん!!!」
案の定、ころんだ。
母は早足でまあちゃんの転んだ所へ急ぎ、体の具合を診る。
「ほらぁ、危ないからゆっくり歩きましょうって言ったのに………………ふぅ、少し赤くなっているだけね。 怪我にならなくて良かったわ。
…………荷物も無事ね。 さあ、お家へ帰ったら、赤くなった所を洗って冷やしましょうね」
「………………うん」
「痛くても泣かない、偉い子よ。 まあちゃん」
「うん!!」
どこにでもある、ほらーな光景。
どこにでもあって欲しい光景。
こんな光景は治安が良くないと、決して見られないのだから。
と説教臭いセリフはこれまでにして、このまあちゃんですが、走るとすぐ転ぶ幼い子供。
設定はそれだけです。
つまり性別未設定。
なので、まあちゃんがどの様なまあちゃんなのかは、読者の方々に想像をお任せいたします。