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オルタ・エボリューション  作者: 鬼河壱
第2.5章 目指した超克
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/■■/から見る『超人』

意識を取り戻すと、俺たちには毛布が掛けられており。その周りを警察が囲っていた。


「え? っと……」


「あ! 気が付いたかい? 意識は……おじさんの指何本に見える?」


「……3本?」


「なるほど……。君、もう少しだけお友達と待っててくれる?」


「た、泰地は!? 泰地は何処に!」


「たいち? ああ! あの子なら轢き逃げ犯を拘束していたから署で細かい事情を聞いている所だよ」


今だからこそ、その警察官の言葉が俺たちを気遣った「本当のことだけど全てじゃない」説明だと分かるが、当時の俺にはそんなことが分かる訳もなく。そのまま警察の指示に従って親の迎えを待ち、弟と一緒に帰った。


後々本人から語られたことだが、この時泰地はカーブミラーを壊したことで「器物損壊罪」「往来妨害罪」、車に向けて投げたことにより「殺人未遂」の容疑が掛けられていたらしい。

だがまあ「殺人未遂」については「過剰防衛」に変わり、「過剰防衛」と称するには相手の犯行が悪質だという事で「過剰」の定義が判断しずらく、一旦の見送りとなった。


とは言えカーブミラーを壊したことについては弁償をしなければならなくなり、小5の子供が払うはずもなく。アイツの親が損害賠償金を支払っていた。


その後、泰地(アイツ)には身体の特異性に「価値」を見出した者たちが寄ってくるようになった。

それもそうだろう。小学5年生、齢11歳でカーブミラーを地面から引き抜き、そのまま投げ飛ばした身体機能。「研究」にしても「実験」にしても「価値」がある。

そんな人間の中には手段を択ばない者も存在しており、実際にかなり法律のギリギリまで手を出されていた。


そんな状況が二週間ほど続き、ある一つの会社が泰地(アイツ)を社長の護衛として雇用契約を結んだ。

泰地の従姉が(・・・)立ち上げた会社だ。


当然の様に、未成年が立ち上げた会社というのでニュースにも取り上げられ。

様々な方面から非難を浴びていた。

しかし、そんな非難の声はひと月もしない内に聞かなくなる。


「未成年なのに働くな? 私より社会に貢献してから言ってくれない?」


そう豪語する彼女の前で、国の代表である総理大臣(・・・・)が頭を下げていた。


たったひと月で何が起こったのか。

簡単に言ってしまえば、日本という国が未成年が経営する企業に負けたのだ。


正直、どれが原因で(・・・・・・)そうなったのかを事細かには知らない。

ただ一つだけ言えたのは、泰地(アイツ)の従姉は運が良かった。


そうして泰地のお父さんから聞いたのだが、泰地(アイツ)の父方の血筋は特殊で。必ず何かしらの強い特徴を持って生まれて来るらしい。

そして、そんな血筋の中でも泰地とその従姉の趣那(しゅな)の二人は「特別」なのだと言う。


「強い特徴が有ると言ってもね、基本的には「才能」の範疇で収まる物でね。おじさんの場合は皆よりも『触覚が鋭くて敏感』という程度なんだ」


それが特殊な血筋の限度。

だからこそ、『異常な身体』と『異常な豪運』を持った二人は「特別」なんだそう……


「けどね、「特別」だからと言ってもあの二人は/■■/君たちと同じ『人間』なんだ。だからね、今まで通りに遊んであげてくれないかい?」


おじさんのそんな言葉を聞いて、俺は強く肯定した。

思えばそのころから俺は泰地(アイツ)に魅入っていたのかもしれない。


そして一学期が終わり、姉貴たちが愛知の大学に入ってそれぞれが一人暮らしの状況から同棲に切り替えた頃。

泰地は趣那の仕事とおじさんの転勤という二つの理由で、夏休みを境に三重県から千葉県へと引っ越してしまった。

夏休み明けの日直当番はアイツのはずだったのに……


そうしてアイツが千葉へと行ってから、約四年。泰地(アイツ)は帰って来た。

四年間の間も何度か長期休暇中に帰省して戻ってきてはいたが、そんな一時的な物とは違い仕事を終えて本当に帰って来たのだ。


ただ、四年間という月日は多くの物を変えていた。

例えば泰地(アイツ)の身体はお姉さんに似た体型になっていたし、弟も可愛く成長した。

趣那の会社も様々な分野に手を出して成功していた。(昔のインパクトは薄れていた)

あぁそういえば、泰地は趣那の護衛以外としても働くようになってたな。

俺の気持ちも……僅かに異性に対する好意に近くなっていた。


ただまあ、変化って言うのは良い事ばかりではなく、例えば泰地のおじさんとおばさんの仲が悪くなっていたし、泰地の人……というか他人に対する接し方も昔に比べるとかなりドライになっていた。


好感度パラメーターの様な感覚的な説明になってしまうのだが、昔は『実績評価形式』というある程度括りの在る称号で人を見ていたのが『加減評価形式』という数字の評価を個々人に付け、その人が属する数字帯によって関わり方を変えるようになっていた。


……自分で言ってて何いてるのか分かんねーなコレ。


まぁ、そのせいなのか昔に比べると初対面から友人関係になるのが難しくなっていた。

「亀井」や「小林」はこの変化をただの「成長」と言っていたが、俺には精神が擦り切れている様に見えた。


そうして泰地の精神に違和感を持ちながらも、時の流れが立ち止まることはなく。俺たちは高校に進学した。

「亀井」と「小林」は違う高校となって離れ離れになってしまった。


そうして俺たちが無事に高校に入学し、二年生になって直ぐ、


泰地の両親は離婚した。



既に独り立ちしたお姉さんと違い、まだ未成年だった泰地には保護者が必要で、その親権はおばさんの物となった。

正直、真実を知った今の俺からすれば胸糞悪い話だ。


苗字が「武野」に変わってからの泰地(アイツ)の雰囲気は表面上は変わらなかったが、昔から付き合いのあった俺と弟には無理をしていることが見て取れた。


なので俺たちは泰地と遊ぶときは基本的に「家からインターネットで、」なんてせずに直接家に誘う事にした。

そして、「どうやって泰地を性転換させるか」をよく相談するようになっていた趣那に、泰地を夏休み期間中は丸々あの家から出せないかと相談し。当時その頭角が出始めていたVtuberという配信ジャンルを企業で始める為のプロトテスターとして一か月配信のために会社に泊まり込みさせる事ができた。

まあ、趣那の超絶企業パワーがあるとはいえ、一か月以内に金の盾を貰って帰ってくるのは予想外だったけど……


まあ、そんなこんなで何とか平和に過ごし。そしてそのまま三年生の卒業式が迫ったあの日(・・・)


俺の今日まで続く長い因縁が始まった。

泰地のVtuberアバターは、男女の身体をツギハギにした企業ゾンビという設定の存在。

身体のツギハギ部分が糸ではなく会社のロゴのプレートで繋げられていて、企業PRを推し過ぎているので企業ゾンビ。

胸はそれなりに在るが、下半身のアノ部分がどっちなのかは趣那とイラストレーターしか知らない。

顔の造形は泰地自身の物を基にしてあまり変えてない。

会社の規模がデカいので3Dアバターも有る。(使用回数一回)

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