復活
足りない
荒地が鬼面女の顔を貫くと同時に、私は鬼面女を仕留めそこなった事に気が付いた。
確実に荒地の刃は鬼面女を貫通している。だが、貫く事ができたのは顔の左半分だけ。
貫いた衝撃で鬼面に亀裂が入っているが、それでも鬼面の右側は顔に張り付いたまま離れていない。
『荒t。ガボッ……」
言葉を届けようとした私の口から、血が噴き出す。
身体からの、限界だという危険信号なのだろう。
さっきの【業】の動力源は私自身の魂だ。比喩的な意味合いでだが、命を燃やした攻撃。『再生』で治すことのできない魂の枯渇。
今の私は、休まなければまともにスキルすら扱えない状態だ。
「ぎゃaaaaaaaaあああaaaAAAaあああ」
仕留めそこなった鬼面女が痛みによる苦悶で発狂する。
本能的な自己防衛機能なのだろうか、まともに思考できていないであろう彼女の周りに、鋼の翼が竜巻の様に舞う。
スキルですら扱えない状態の私に、【開闢】を維持する事はできず、既に崩壊させてしまった。
そのせいで、鬼面女の創造を抑える物は無く、鋭い刃の様な鋼の翼による竜巻が私に接近してくる。
私は動けない。
『オロチ!!』
荒地の叫びが聞こえる。同時に、私の身体を冷たい物が覆う。
『オ「ガン!」チ!! し「ガがガン!!!」しろ!!! オロチ!!!!』
あぁ……荒地に、私の全身を抱きしめてもらえてる。
私の体温を伝える事ができてる。
なのに……鋼翼の衝突する振動で荒地の声がよく聞こえない。
まだ、死にたくないなぁ
『それなら、死亡フラグをポロポロ垂れ流してんじゃねえ!!』
え? 泰地?
「ウゴぁぁあああぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」
鬼面女の苦しむ声が聞こえて来る。
それと同時に、鋼翼の竜巻が止んだ。
私は鬼面女の姿を見る。
そこには、左半身を赤色の鱗に侵食……いや、奪還されている女の姿があった。
◇
「ウゴぁぁあああぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」
内側から、何かが……ナニカが私の身体から漏れ出ていく。
泰地じゃない。もっと別の何かが……
こうなったら仕方がない!!
「くっ!! 《強y」
鬼面を被った、女の口が硬直する。
いや、口だけではない。彼女の身体、その左半身が半身不随のように動かない。
しかし、言葉にせずとも《強欲》は意識で発動し、この状態の答えを引き出した。
だが、その答えを鬼面女が理解するよりも早く、彼女がその口で声を上げた。
「アタシの旦那に!! よくも手ぇ出してくれたなぁ!!!!!!」
硬直していた左腕が、同じ体の右頬を骨まで砕き、そのまま鬼面を顔から剥がす。
付着していた鬼面に持っていかれた頭部も『再生』で補填させ、
今ここに、一人の女性が百と数年の時を掛けて復活した。
「はぁ、はぁ、クソ!! アタシの身体で好き勝手しやがって!」
とは言え、彼女自身の意識は目覚めたての上に身体も鬼面のせいで悲鳴を上げている。
とてもではないが当時の身体と、今の身体ではギャップが大きく、戦える身ではない。
『アブナカッタ。泰地は、オリジナルは逃がサずに済んダ』
鬼面女……いや、もはや鬼面の欠片そのものとなったソレは、新しく自身の身体となる健康な肉体を創造しながら、不調に苦しむ女を嘲笑する。
『お前が居なクなったコとで、コイツの消滅までの時間稼ぎが、今のままでもで足りるようになった。
あ・り・が・と」
身体が新しく出来上がり、隠せなくなった口で言葉を続ける鬼面は、その背後に空間的な「穴」を創り出す
「まさか……出口?」
『⁉ 逃げられる!!』
鬼面の目的は「戦闘」ではなく「時間の確保」。
故に、不必要な事柄は全て廃する。
そしてそれは、彼女たちにとって、先程までの一連の流れを無為にしてしまうという事。
「そう言う事。それでは、さよ「逃がすとでも?」n/a r/a?」
そして、「彼女たち」という複数人を指す言葉には、サンドバック扱いされていた「彼」も含まれており。
その彼は、そんなことを許さない
「レオス!!」
黄金に輝く龍鱗を纏う、この空間を【開闢】している男は、逃げ道である空間の穴を埋め。
仮面の扱う肉体、その喉骨を握りつぶしてこの場に現れた。
エイプリルフールネタ(作品内キャラ)
武野泰地:毎年四月一日に、同じクラスに居る従姉によって本気の女装をさせられ、その格好で一日過ごしている。(普通に、そのまま外に買い出しに行ったりする)
扇谷葵:15歳のエイプリルフールで泰地に「サンタクロースは実在する」と言われて初めて真実を知った。(一緒に女装してる)




