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オルタ・エボリューション  作者: 鬼河壱
第2章 吐露した万象
54/65

剥離

何の前触れもなくオレを貫いた無数の槍、それを『寄生』と『密度変化』を併用して身体の中にしまい込むことで無力化させる。


『荒地、大丈夫なの?』


『大丈夫、問題ない……いや、問題は有るか。今の攻撃、どうやって槍をオレの身体に貫かせたのかが分からない』


それに、偽者の「お前のせいか!」という叫びも気になる。

偽者の祈りを邪魔なんてオレはしていない。

オレ(・・)自身には心当たりはない。


……もしかして「泰地(オリジナル)」が内側から偽者の邪魔をしているのか?

それならば、オリジナルと構成要素が同じ魂であるオレが間違えられたのだと説明が付く……のか?


「お前のせいで! お前のせいで!! お前のせいで!!!!」


偽者の叫びが聞こえる。

既にオレたちと、偽者との距離は100m前後。

オロチの泳ぐ速度ならば30秒以内で偽者との格闘戦に持ち込める距離だ。


だが……


「死ね! 死ね!! 死んで魂を我らが主に裁かれよ!!!」


偽者が叫ぶと、再び槍がオレを貫く。

それをまた『寄生』と『密度変化』の併用で身体に吸収する。


やっぱり、槍が飛んで来る瞬間を認識できない。

槍の矛先からして、槍の発射地点が全て別であることが分かるが……


『もしかしてだけど、荒地の身体の中に直接創造してるんじゃ』


『いや、それができたのならここまでの戦闘で使っていないのは変だ。それに、協力者の話では新しい物を創造するには既にある物質は押し退ける必要が在るはずだ。少なくともオレは貫かれた瞬間まで押し退けられる感じはしなかった』


『……悩んでも仕方がないわね。アイツの注目(ヘイト)が荒地に向いてるこの状況を利用しましょう』


オロチが偽者に向かって一直線に加速する。

同時に、三度(みたび)槍によって身体を貫通される。


それを身体に吸収すると同時に身体が槍に貫かれる、


吸収する、貫通される、吸収する、貫通され、貫通さr、吸収s、貫通、貫通! 貫通!! 貫通!!!


『マズイ! この身体に押し込められる密度の限界だ!!』


物事には限りという物が在る。泰地(オレたち)が使っている『密度変化』は原子や粒子レベルの物質を構成している物の配列を操って詰める(・・・)ことで身体に他の物質を格納している。


超要約するとオレの身体に取り込める物には限界が在り、偽者による槍の物量攻撃によってその限界になったという事だ。


『すまんオロチ! このオレは離脱する』


『荒地!』


これ以上槍が増えると、ヘイトの向いていないオロチにまで被害が出ると考えたオレは、オロチの背中から離れる。


「そうだ! そのまま死んでしまえ!! 裏切り者がぁあ!!」







荒地が離れ、今私の目の前に鬼面女がいる。けど、その視線は私にではなく荒地に向いていて、私は眼中にないようね。

今のうちに鬼面を剥がしましょう。


翼をしまい、両腕を鬼面女に伸ばす


『ぅぐ! なに⁉』


伸ばした腕に何かが巻き付いた。

触感的には冷たい鋼の鎖だ。けど見えない。

「質」は有るのに「物」が無い。


『オロチ大丈夫か?』


荒地の私を心配してくれる声、数秒で途切れるその一言で恐怖と疑問で満ちていた私の心は安心してしまう。

あぁ……やっぱり私、


『ごめん罠に掛かった』


『対応できるか?』


『勿論!』


心配してくれる荒地へ強気に返事を返し、私は目に見えない鎖を「観る」


見えない上に私の腕力でも千切れない強度を持っている。明らかに私では外すことはできない。

けど、コレは鎖だ。ならコレはどこまで続いている(・・・・・・・・・)


鎖が巻き付いている両腕を引く


鬼面女はまだ荒地のいる方向を視ながら叫んでいる。

私が何をしていようとも、私の事など気にも留めない。

ならば好き勝手してやろう!


少しだけ後ろに下がり、鎖もろとも両腕を引く


千切れないという事は、どれだけ引っ張っても問題ないという事。


腕の内側から肉の千切れる音と骨の悲鳴が伝ってくるが、それでも下がりながら鎖を引き出す


恐らく鬼面女の全方位を守備できるようにしていたであろう鎖という大質量、私の細い腕では耐えられない(・・・・・・)だろう。

けどね……


鎖の圧力に負けた腕が砕け、鎖の中でミンチの様に擦りつぶされる


私には『再生』という欠損部を元に戻すスキルが在る、腕が無くなる程度は何の問題もない。

そして、同じ轍は二度も踏まない。


『たしか、一生懸命に生きることを命を燃やすっていうんだっけ。そうね、今までの様な生き様じゃ荒地(アイツ)の隣なんて似合わない。これは一生懸命に生きる私の女としての命、その始まりの種火よ』


両腕、両翼を広げ、髪を広げるように(なび)かせる

覚悟を決めた彼女の瞳は赤みが飼った蛇の目へと変わる


『【八百万の蛇軍(ウロボロウス)】』


刹那、彼女の髪から八百万(やおよろず)の巨大な蛇が現れ、鬼面の女に向かって特攻する

しかし、近づいた蛇の身体に鎖に巻き付けられた絞め痕が刻み込まれ、続々とバラバラに飛び散っていく


「あん?」


その時、呪詛を叫び続け、荒地の身体を小さな星と呼べるまで刺しつづけていた、鬼面の女が視線が蛇の大群に向く


「あぁ……可哀想に。無駄に死んでいった命たちにせめてもの幸あr」


鬼面女の心のこもっていない口上が止まる、彼女の世界(視点)には未だに増え続ける大蛇が少しずつ迫ってきているのが映った


それもそのはず、オロチが使った技は自身の限界まで限りなく大蛇を生み出し続け、その大質量による物量技


「そんな、何故? まさか、私の主からの祝福と同じ創造の……いや、違う。そんなわけがない。あの御方がそんなことをするはずがない」


鬼面の女は混乱し、真相を調べる為に意識を《強欲》に向けようとした瞬間、一匹の大蛇が同族の血で可視化された鎖の隙間を掻い潜って、鬼面女の眼前に迫る


「邪魔!!」


混乱した鬼面女は、テラーに対して唯一ダメージを与える事に成功し、この不利な空間での創造に応用させた「既存の空間に新たな空間を創り出すことによって既存の空間にある物質ごと裂く攻撃」を行い、大蛇の身体を切り裂く


『こんにちは』


そして、邪魔な畜生の対処を終わらせ、《強欲》に意識が沈めるその瞬間、裂かれた大蛇の断面から大剣を担いだ蛇目の娘、オロチが飛び出し


「まっ !!」


女の鬼面に向かって大剣を振るう

鬼面女の意識は未だに《強欲》と現実の狭間にある。創造を行う余地などない


だが、その身体は死したとは言え竜へと至った者


ガンッ!!


策をめぐらした一振りは、咄嗟(とっさ)構えたに腕によってガードされてしまう


「ハハッ! 残ねn」


『まだだ!!』


オロチによって振るわれた大剣が叫ぶ(・・・・・)

腕によって防がれた箇所から先が切り離(パージ)される


剣先ではない無い、されど今は剣の先端となる刃が鬼面女の近未来風の鬼面を捉え、

()は小型化していた自身の本体(・・)標準(30m)に戻す


その勢いによって、鬼面は女の顔と共に貫かれた

泰地と荒地の『構成要素が同じ魂』は、ざっくり言うとダイヤモンドと石炭の関係。


ていうか、主人公がまともに技を使う前に主人公以外が必殺技みたいなのを使っているけど、これ良いのか?

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