廃創竜郷 ~己の原点~
「あ~、もしかして、これが原因?」
念のため急ぎ足で向かった〖資骸置き場〗には入り口に〖資■■き場〗と一部分が欠けているプレートが掛かっている。
恐らく荒地はこのプレートを見て〖資料置き場〗とでも勘違いして部屋中の資料を読み漁っているのだろうか?
だけどここは使わなくなって外に出すわけにはいかない資料を保存しておくための場所だった筈。
そんな場所にそれだけの理由で長く居座るか?
まあ答えは本人に聞かなきゃわからないか。
そんなことを考えながら室内に入ると室内には元の床が見えなくなるほど紙が散乱しており、本来その紙があったであろう棚はスカスカに空いていた。
そんな棚の隙間から椅子に座っている荒地が机の上に広げられた資料にうつ伏せになって陰鬱な空気を垂れ流しているのが見えた。
「えーと……どうしたの? 荒地」
私の声に反応して荒地の上体が上がる、
その動きから感じる雰囲気がのっぺらぼうな荒地から疲れた表情を幻視する。
違うこれシワで表情を出してるだけだ。
『……疲れただけだ。というかオロチもその大量の白布はどうしたんだ?』
「これはその、服にしようと思って……」
『なるほどなぁ』
あまりに力ない荒地の反応に心配になって急ぎ足で近づくと
「あうっ」
『ッ!! 大丈夫か!?』
「だっ大丈夫、問題ない」
紙に隠れていた段差に足を引っ掛けて『ドテン!』と音を出しながら転んでしまった。
荒地が声を荒げながら近づいて私の脇に手を回して持ち上げる。
身長差!!
『すまん、オレが散らかし過ぎた』
「大丈夫、私が注意不足だっただけだから。だからその……降ろして」
『あぁすまん』
手を伸ばしてもらえるのはとっても嬉しい……でも声を漏らしたことと転んだせいで赤くなった顔は忘れて欲しいな、女として。
転んだせいで
「ところで何を見てたの?」
『この部屋の中を探索して見つけた資料の中でも俺たちに関係がある物』
「それってどういう……」
私が最後まで言い切る前に荒地は机の上から一枚の資料を私に渡してきた、
その内容を見てみると。
「『REL計画適合体について』?」
___________________
〖REL計画適合体について〗
『竜種プロトタイプ:モデル雄』⇒魂の一つに適合。しかし適合率が過度に高く魂が一部呑み込まれてしまったため計画凍結。
『竜種プロトタイプ:モデル雌』⇒魂の一つに適合。上記同様。
『竜種初期型:モデル増殖』⇒二つの魂に反応したが個体としての存在安定力弱く、不安定のため魂の変容に弱いと判断。
『竜種改良型:モデル侵食』⇒二つの魂に適合。片方は現在百足阿羅地に使用しているためもう片方で経過観察中
『蜘蛛初期型:モデル複眼』⇒魂の一つに適合。しかし身体が352時間32分で崩壊を起こした。
『蜘蛛調整型:モデル複腕』⇒上記と同じ魂に適合。『複眼型』の時同様崩壊が起きたが47時間21分ほど身体を保つ時間が伸びた。
『蜘蛛人調整型:モデルアラクネ』⇒上記と同じ魂に適合。1,084時間の活動を確認。しかし本人が自殺。
『蜘蛛人改良型:背椀』⇒上記と同様に適合。現在経過観察中
『鬼人初期型:モデル剛筋』⇒魂の一つに適合。しかし筋肉の膨張が制御不可であったため肉体が自壊。
『鬼人調整型:モデル情熱』⇒魂の一つに適合。現在経過観察中
『再駆憧英傑武装百足阿羅地⇒魂の一つに適合。現在経過観察中
___________________
「これって……」
『オレもお前も本は同じ目的で製造されていたって事だ』
嘘でしょ
私が与えられ……いや、教えられていた製造理由は竜という種族の単為生殖を成功させてそこから研究者の手で遺伝子操作を行い、多様性を生み出すためだった筈。
もしかしてこれはテラーが最初に言ってた『利用されていた』って事に関係あるのかな。
『それとこの資料には他にも気になることが多いんだよ、そもそもの『REL計画』って物の内容も気になるし『魂の適合』とかいう新単語が出てきてオレの脳はオーバーヒートした』
そもそもその身体に脳みそは無いんじゃ……
『そういえばオロチは何か見つけたのか?』
「私は……はいこれ」
『なんだこれ』
「この施設の地図だよ」
『ほえー、え? この部屋はどれだ?』
「えーと、これ」
『どれどれ』
ちょっ、荒地の身体が私に覆いかぶさって……
「きゅぅ」
『ちょっ! オロチ』
きっと体重のせいです。
Q、城山大亀は?
A、あれはそもそも適合する魂が無かった




