狩盤地 ~戦場の謎~
「どんぶらこ、どんぶらこ、河から流れてきた泰地くん」
さて……この河長いな、かれこれ30分ぐらい流れ続けてるけど一向に変化が無い、
というかこの景色さっきも見た気がするな。
あの崖の上にあるムキムキな巨大樹、同じポージングの形をしてるのがいくつもあるとは思えない。
もしかしてこの河ってループしてる?
あり得る、ゲームの世界を現実にしたんだ法則が歪になっててもおかしくない。
だが、どうやって……まさか!
『荒地!』
『? どうした、こっちはもうすぐ巨大トラップが出来上がるとこだぜ』
『作業を中止して俺の言う事を聞け』
『?なんかよく分らんけど、了』
◇
本体からの『念話』が切れた、
もうちょこっとで完成だったってのにいきなり移動を命令されるとは、検証する理由も『納得したいから』って……
まっ面白そうだったから良いけど。
噛着クワガタで作った自作バイトフックのおかげで5分とかからずに目的地に着いた。
『おい! 言われた通り変な巨大樹のそばまで来たぜ』
『OKそっから河が見えるよな』
『あぁ……見えるぞ』
『そっから河の流れに逆らって進んでくれ』
『了』
河の流れに逆らうってそんなことして何になるんだ?
本体は一体何を考えてるんだか。
『? 何の音……だ!?』
大きな音が聞こえた俺が視線を向けるとそこでは泰地が大剣で波乗りをしていた。
いや……俺も大道芸をしてたから下手なことは言えないかもしれないけどさ、
巨大な獣に追いかけられている状況でそれはおかしいって。
『荒地ィ!! あっちに進め!!』
いや……その状況で命令されても困る。
従うけど。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
オリジナルの命令に従って河上方向に移動していると聞き覚えのある音と共にオリジナルの声が聞こえて来る。
『ヒャッハー!!!』
??????
え!? さっき波乗りで流されて行ったよな?
何で前から来てんだ?
『荒地ィ!!』
『それどういう状況だ!!』
『いやぁ、あまりに暇だったんでテンションを無理やり上げて楽しんでる』
『お前……後ろに怪物が居るの理解してんだよな?』
『理解してるぞ、さっきからちょくちょく攻撃入れてるけどそれ以上の速さで纏肉が魚を呑み込んで回復するからほとんど意味をなしてないんだよ』
攻撃はしてるんだ。
あ……見えなくなった。
『とっ……とりあえず進むか』
リアクションするの疲れてきた。
◇
「ふむぅ……なんとなくこのループの原因が分かって来たぞ」
『そりゃあ良かった……』
まず大前提に基礎となる常識を捨てる、次に今までこの世界で起きた現象を考えるとベースキャンプの中にあった外見と中身が合わない異空間が思い付く、つまりこの世界ではさっきまでいた場所と別の場所が繋がってることは不思議じゃないんだ。
……どうやって繋がってるのかは不思議だけど。
まあそんなことは気にしても意味が無いから置いといて、簡単に説明するとこの世界はステージの端と端を繋げた円状になってるんだ。
更に簡単にすると地球を一周すれば同じ場所に来る、ってのが短い間隔で起きてるって事。
「さあ! 謎解きができてスッキリしたし、そろそろカルバンジーの方に集中するとしますか」
大剣で波乗りしている俺の後ろではいまだに波を作り出している原因が河底を踏みしめながら迫ろうとしている。
正直ゲーム時代のこいつを知ってるからこんな嵌め技みたいなことが出来るとは思って無かった。
ていうかコイツには諦めるってコマンドは設定されてないのか?
いや……確かにゲームの頃はHP低下で逃亡はなかったけど……あっ!!
そうだ、その代わり戦闘行為による移動はめっちゃしてたわ。
あぁ……納得、納得…………じゃねぇ!!!
「いい加減現状維持には飽きたんだよ!!」
叫んで自分を鼓舞する。
『おぉい! 俺の事忘れてない?』
『荒地!! さっき作ってたトラップはどの段階だ?』
『いやお前…………後は噛着クワガタを射出部に繋げれば完成だぞ』
なんか絶妙な間にため息が聞こえた気がするが……
まあいいか。
『じゃあそれを設置したら教えてくれ、その後俺が合図を出したら百足阿羅地を持って跳びかかれよ!』
『了』
「おっし! それじゃあ完成までの間遊ぼうぜ脳筋猿」




