狩盤地 ~開戦~
陽が昇り始め、周囲の河に光が反射し始める。
その光景を崖の上から確認した俺は昨夜のうちに準備した物を背負う。
「よっし!作戦開始!!」
俺は気合を入れ、『空間重化』で自分を重くしながら河へと飛び込む。
河は俺の飛び込んだ衝撃で大きな音と波を作りだし、一瞬だけ雨が降る。
そして俺は自分の身体に『反転:空間重化』を使って、空に墜ち、再び河へ落ちる。
それを何回も何回も繰り返していると河が上流の方が紅く変色し始める。
「来た……」
俺は空に浮かび上がりながら変色の元凶を観察する。
ぐちゃぐちゃな体皮から滴る血液が河を侵す。
そして恐らく昨日のキュラトニルを喰らいその死骸を纏ったのだろう、昨日より纏肉が多く身体に纏わり付いていた。
それを見て俺は大きく息を吸い、
「ごっぢだあ゛ぁ゛ぁ゛あ゛!!」
『狂声』を使って叫び、俺の場所をカルバンジーに気付かせる。
視力以外の感覚が疎くても声だけで周囲を吹き飛ばす声量なら気付くだろ。
「ギィフォォオオォォオオ!!!」
俺に気付いたカルバンジーは叫び声を吠えると近場の岩や崖壁などを使って立体的に近寄って来る。
「それじゃあまずは……!」
俺は裂けた口を『再生』しながら背負っている弓矢を構えカルバンジーを狙って射る。
勿論爆破属性の物で。
ボカッ……
だが矢はカルバンジーから大きく逸れ、そこら辺に転がっていた大岩に刺さり爆発する。
「やっぱ俺には遠距離攻撃は無理か……少しだけ期待したんだけど……っな!」
俺は蛇に『変質』した髪で崖を掴み後ろに移動しながら、手に持っている矢と弓をカルバンジーめがけて投げつける。
投げた29本の中でカルバンジーに当たったのは、
右腕に一本
右足に一本
胴に一本の、
合計三本程度でほとんど纏肉は削れていない。
そして遂に俺に追いついたカルバンジーは右腕で髪を掴み、左腕で最後に掴んだ岩を俺へに投げつける、
それに対して俺は髪を切ることで落下し、岩を回避する。
そして掴んでいた髪が支える力を失い、同じく落下しているカルバンジーは掴んでいる髪を引っ張り崖壁を足場にして再び俺目掛けて跳びかかって来た。
突然だが一つ説明させてもらおう、ここはゲームの世界ではなく。ゲームの世界を忠実に、そして現実味を持たせて再現した世界だ。
だからこそカルバンジーはゲームではしてこない立体的な移動ができるし、武器を複数持つなんてことができる。
俺は背中の爆破属性の付いた大剣をカルバンジーの近づいて来る腕に対して振るう。
ドっカーン!!! っと大剣は爆発し、カルバンジーの腕に纏わり付く纏肉を吹き飛ばす。
そしてその爆破の勢いを使って崖壁に近づきしがみつく。
「ふぅ……」
おっと!
流石に肉体で動くと疲れが蓄積するのか、覚えておかないとな。
だが良い調子だ、作戦が上手く進んでる。
と! 来た!!
「ギィフォォオオォォオオ!!!」
「そんな叫ばなくてもお前がキレてるのは分かるよーだ」
俺は崖壁にある足場を利用して走り、跳びかかって来るカルバンジーを避ける。
しかし余程の勢いがあったのだろう。カルバンジーが跳び込んだ崖壁部分は崩れ、俺の使っている崖壁の足場も連鎖的に崩れる。
「やっべ……」
崖壁が崩れて河へ落ちた俺は大剣にしがみつき、河に流されている。
そしてそんな俺をカルバンジーはその巨体を活かして河底を踏みしめ迫ってきている。
カルバンジーが勢いよく向かってくるのでその勢いをが河に波として発生し、俺を押してくれている。
つまり結果的に自分で獲物を離している事に気が付くかな?
「ギィフォォオオォォオオ!!!」
「叫んでもこのままじゃ差が広まるだけですよぉ、だ!」
少し煽り気味に言葉を連ねるがそもそもカルバンジーに人語を理解している設定は無いので戦闘行為という点では意味が無い、だが俺の気分が良くなる!!!
「さて……このままだとマップの範囲外に行きそうだけど……どうなるんだ?」




