狩盤地 ~遭遇~
光が弱まり周囲の様子が確認できるようになると俺たちは行ったことは無いが見たことのある土地に居た。
『なぁ泰地……ここってさ』
「待った荒地!お前が言いたいことは分かる。だが流石に……」
『だけどこの場所は……』
「あぁ……間違いなく、小学生時代からよく葵達と遊んでた狩りゲーのステージだ」
葵達と遊んだ狩りゲーに似ているだけの土地と考えることはできなくもない、
だけどそんな考察は視界の端に写り込む洞窟に吊り下がったコウモリ型の大型モンスターによって否定された。
「キュラトニル!!まずい……もしあのモンスターがゲームと同じ仕様なら……」
俺が行動しようとした瞬間大型コウモリは翼を広げる。
それはキュラトニルがプレイヤー発見時に必ず行う初期行動の準備……
「岩陰に隠れろ!!」
俺はつい癖で荒地に叫んだが、既に行動を開始していた荒地は百足阿羅地を巨大化し壁にして自衛していた。
出遅れた俺は急いで百足阿羅地に隠れようとし、荒地が腕を伸ばして俺の手を掴もうとした瞬間
身体中をとてつもない衝撃が走った。
◇
「クッソ! 口に砂利が混じってる……」
キュラトニルの初期行動である音撃を直撃したが、ゲームでも即死する程の攻撃力が無かったからか武野泰地は隣の河エリアで水の中に顔を突っ込んで数秒気絶するだけですんでいた。
「いや死ぬかと思ったよ!『水竜』のスキルを持って無かったら多分溺れ死んでたもん」
自問自答に対して声を上げてツッコミを入れるぐらいには彼は混乱してる。
「てぇ、そんなこと言ってる場合じゃない。早く戻って荒地と合流…………」
瞬間、
周囲の水に小さな波が走った
それは何かが飛び込んで生まれたわけではなかった
「待った待った待った!! 何してんだ荒地!!!」
その波はこっちに走って来る荒地に向けて放たれたキュラトニルの音波によって生まれた物だった。
『キュラトニルを俺一人で対処できるわけないだろー!!』
鉱人は走る、
しかし後ろからキュラトニルが空を飛び河川と鉱人の間に立つ
そしてキュラトニルは翼に付いている指を首に巻き翼を簡易的なパラボラアンテナの形を作る
『やべっ!!』
そしてその双腕の隙間から口を出しキュラトニルはゲーム的即死技である音波を叫ぶ
しかし鉱人は耐え抜いた
身体の関節部分が『衝撃緩和』を持つ岩で構成したことによって必然的に全身に響く衝撃を緩和したからか、
あるいは彼の身体が人間の肉体と違い遥かに硬かったことにより鉱石で構成された身体には即死と言える程の威力ではなかったのか……
答えがどちらにせよ鉱人は耐えた
だが、キュラトニルからしてみれば数多の巨大生物が存在するゲームの中には今の攻撃を無視して掴みかかって来る怪物がいるのだ、
鉱人が倒れていないからと言って攻撃の手を止める理由は無い。
しかしキュラトニルが行動することはできなかった
急に全身が地面に押さえつけられる様に身体が重く抵抗するのに手一杯だったのである。
「良かった、スキルは問題なく使えるんだな」
キュラトニルの後ろから彼または彼女が水面を揺らしながら近づく
しかしキュラトニルも設定されたモノとは言え野生生物、気絶してない以上は無防備な状態のままではいない。
キュラトニルは音波を上へと発生させ『空間重化』の力場を崩す。
「『空間重化』ってそんなんで崩せたの!?」
予想外の事態が起きたことに驚きながらも泰地はそれも一つの結果と考えキュラトニルへ攻撃を続ける、
髪を蛇に『変質』させ伸ばし、
髪先を嘴の様に尖った魚に『変質』させキュラトニルの翼膜を刺し飛行、滑空、移動を封じ、
髪先も蛇のままに『変質』させた髪をキュラトニルの口に押し込み音波を封じる。
「ふぅ……とりあえずこれで落ち着いて状況把握ができるな」
『完封』その言葉がこの状況を表現するのにふさわしいだろう、
だが……与えられた遊びはキュラトニルでは終わらない。
「ギィフォオオオォォォ!!!!!」
河上、その先にある滝の上からソレの叫び声がステージを震わせる
ソレは竜種ではない、
ソレは龍種ではない、
ソレは樹種でもない。
ソレは獣である、
ソレは様々なシリーズで追加されてきた、
ただしソレの中でもコイツは通常種ではない、
『纏肉化:【巨握猿】カルバンジー』
シリーズ屈指のクソと呼ばれた怪物が獲物に襲い掛かる
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