遊びと出口
暗い洞窟の中
そんな湿っぽい空間を歩くぼろ衣を纏う少女と1m程の剣を担いでいる人型の岩(+α)、
各様の間で今、激しい口戦が行われている。
「桜」
「ライム」
『ム〇カ』
「迦楼羅」
「ラグ二アルム」
『無尽蔵』
「裏」
「ラジウム」
『百足阿羅地!』
いや、どうやら楽しい口戦の間違いだったみたいだ。
◇
『マガジン!、あ……』
「はい!アウトー!」
「残念だったな荒地」
『クッソーお前らマ攻めし過ぎなんだよ!』
「マ攻めしたのはオロチだけだぞ」
「あなたは私にラ攻めしてきたけどね……」
さてと……
なぜ俺たちがしりとりをしていたか説明しよう、
とはいえ答えは本当に単純でずっと移動しているだけなのが暇だったからだ。
出発してすぐの頃は散らばってる鉱石を材料に俺の身体を改造したりしていたのだが、途中で理想の形に完成してしまいやることがなくなったのだ。
そこで俺はしりとりを提案した。
まぁついでに言えばオロチからこの世界の単語を絞り出す目的もあったのだが、
それ以上の成果を得られたのでそんな目的どうでも良くなった。
なのでそのまま楽しんだ。
泰地……俺はお前でもあるから言うが、心の中で誰に説明してんだ?
あ?あぁ……ただの独り言だよ、てか俺は前世からこんな感じの事してたろ?
いやまあそうだけど……今は俺が話し相手になれるって事は覚えといてくれ。
了解。
「ねえ!さっきから何を話してるの?」
「荒地への罰ゲーム」
『は!?』
「おぉ!罰ゲーム、でも荒地はあんたの魂に繋がってるんでしょう?どんな罰を与えるの?」
そりゃあ勿論、
「暴r『はい!モノマネやります!』
おい!なんで遮るんだよ。
だってお前、俺が『念話』使えないのにオロチの蛇に必死に語りかけてたことを暴露しようとしてたじゃないか!
チッ!同じ魂の中だから何考えてるのかバレちまうのか……まあとりあえずお前のモノマネを楽しませてもらうとしましょうか。
ぁ……
「まだ?」
クソ!
『じゃあちょっとだけ移動を止めてくれ、泰地ちょっとだけ身体を貸りるぞ』
とりあえず俺は身体の主導権を渡す、
荒地は落ち着く為に息を吐いて飲み込む
ただの岩の身体なのにそんなことする必要があるのかと思わなくないが、まあいいか。
『前世で泰地の事を女性と勘違いし下手くそなナンパをして反撃された色男のモノマネ』
そう言うと荒地は岩に肩を掛けながら
『そこのお姉さん!ちょっと一緒にお茶しない?』
『へ!?お、男!』
岩に掛けた腕を少し浮かせる
『いや流石に噓でしょ、こーんな綺麗な男の人見たことないし』
岩を腕で力を入れながら掴む、
すると岩が動き出し荒地は肩を掛けたままついていく。
『え!人のいないところに行くの!?気が早いねぇ』
真似ている声が浮かれていく……キモイな
岩の動きが止まり荒地が真似している声は更に浮かれた瞬間、
岩から手の様な物が伸び、荒地が操る身体の顔の横に近づく
しばらくすると荒地が操る身体が『ひょえぇぇ』と声を出しながら崩れ落ちる。
すると、さっきの浮かれた声とは別の元気になった声で
『ごめんなさい、本当にごめんなさい、分かりました言われたことは守ります』
恐らくこれを肉体の目で真似ていたらキラキラした目も追加されている事だろう、てかあの時の男はしていた。
『おっし!どうだ!罰ゲームを完遂して見せたぞ!』
おう!そうかとりあえず身体返せ。
すまんすまん。
さてと……
「荒地一言だけ言わせろ!確かに行動するという面で見れば今のは立派にお前への罰ゲームと言えるだろうがなぁ、嫌な記憶を他者に見せたという面で見ればよぉ!俺への罰ゲームなんじゃねぇか?今のは!」
『ぁ……えっとー、すまん』
次は無いぞ……
はい……
「とりあえず泰地が女性似の身体だった事と荒地が声を真似るのが上手という事しか分からなかったわ」
「元々罰ゲームでしかないんだからそこまで深く考えなくていいぞ、それと荒地は休みが長すぎたからいい加減百足形態で移動するぞ!」
『了解』
◇
俺達は今歩くのを止めている、理由は今目の前にある物が原因だ。
「行き止まり?」
『あり~?どうしてだ?』
ただの壁だが言い方を変えれば行き止まりである。
「どういうことだ?荒地」
『いや……どういうことと聞かれても、反対側は泰地が見たんだろうだったらこっちが行き止まりなのはこの洞窟に出入り口が無いって事になるとしか……』
「そうなったらもう壁を削っていくしかないな」
『やめた方が良いぞ……この洞窟後から元の形に戻る性質があるから埋もれるぞ』
もしかして最初に荒地が埋まってたのって……それが原因なのか?
「だけどどうするの?外に出る手段はもう思いつかないよ?」
俺達は模索するも答えが見つからず、どうするか迷ってしまった。
『心配する必要はない、今そこを開ける』
急に何処からか喋りかけられ、先程まで行き止まりだった壁が上下に開く。
訳が分からないが開けると言った以上、此処が閉ざされていた出入り口という事になる。
オロチの様子を見ると何か覚悟を決めたようだ、俺にその覚悟の内容は分からないがする行動は同じだ。
俺たちは外に向けて歩き出した。
『さぁおめでとう、ご褒美を用意しているぞ泰地』




