機構の百足は武装なりえて
それは待っていた。
時を待っていた?
違う
時間など待ち始めて既に百年は経っている、もはや時間に期待などしていない
人を待っていた?
少しだけ違う
それは別に人じゃなくとも受け入れるぐらいの寛容さは持っている
では何を待っていた?
それは挑戦者を待っている
大きな蛇が来たことはあるがあれは俺に興味がなく無視して通ろうとしたので殺した。
その際少なくとも人型と同じ腕を持たなくては自分を使う前提が崩れてしまうと気が付いた
それは待っている自分を扱える者を……
または自分と同じ存在を
◇
俺の前には剣丸々一個程の何かが立っている……
いやこの場合は刺さってるが正しい表現か……
『っでこれが百足阿羅地ってヤツか?』
「そうよ、これが【再駆憧英傑武装:百足阿羅地】、この洞窟を出る最大の障害よ」
事前の説明でこれが30m以上の大剣で約6000枚の刃で構成されていて、それが離れる事によって不規則な方向からの攻撃を可能にしていて、更に規格外の耐久性能によってどんな無茶な扱いをしても壊れない様になっているらしい。
そしてここを通る為にはそんなイカレタ性能をした武器を何とかしなければ行けない。
まぁ作戦は立ててきた……
『確認だがここでこれを無視してを通ることができないんだな?』
「えぇ……前に私の子たちが通ろうとして殺されたからね」
『そうか……その大蛇がどう死んだのかは本当に分からないんだな?』
まだこいつが嘘をついているかもしれんからな……そのぐらいの警戒は必要だ。
「まだ私を疑っているの?今更下らない噓はつかないよーだ」
オロチが「べー」っと舌を出す
……やっぱり必要ないかな。
『っし! じゃあ始めるか』
俺は百足阿羅地の持ち手を掴む、
すると周りが騒がしくなり地響きが起き始めた
「じゃ私は離れてるから」
オロチは洞窟の奥の方に向かって戻る、
今から始まる選別に巻き込まれた場合自分が無事でいられる保証がないからだ。
地響きが強くなり足元からひび割れ始め壁の中から刃が見え始め百足阿羅地の全貌が現れる、
あれ? 聞いてた話しでは30mだったはずなんだが……俺の目測が正しければ60mはあるぞ?
『まさかだけどよ……30mって最大まで伸ばした長さじゃなくて標準時の長さの事だったか?』
これは完全に俺のミスだ、30mって聞いてそのスケールの大きさから完全に誤解してしまった……
だが始まった物はしょうがない
『さっさとお前を押さえつけて俺は外に出るんだ—―
その瞬間足場にあった刃が暴れだし俺は宙に放り出される
だが手は放さないさない、放してしまえば終わる。
次のチャンスなんて無いかもしれないから。
—―よ!』
とりあえず前提条件はクリア、じゃあ始めるか!
そして俺は『寄生』を百足阿羅地に使う。
作戦とは『寄生』を使い俺と百足阿羅地を完全に同一化させる事だ
オロチ曰く百足阿羅地は俺の魂を使っているらしいからな完全な同一化の最大のリスクである人格への危険を気にせずに『寄生』が使える。
『とはいえ流石に簡単には行かないよな』
百足阿羅地は暴れているそれはもう凄い暴れているどれぐらい暴れているかというともうすでに何キロか分からないぐらい移動しているしその際壁を削るので俺の視点から見るとそれはもう地獄絵図なんだよ。
……いま考える事じゃないが、百足阿羅地の百足ってムカデの事なんだろうな刃がムカデの足みたいになって動いてるし。
ってやばっ!
百足阿羅地が振り落とせないと判断したのか前に移動するのを止めて刃を直接俺に向けて動かし始めそれを足場にしたりして更なる追い打ちを避ける
やばいな、まだ全然『寄生』できてないのにこんな攻撃され続けたらいつか避け切れずに身体が切断されちまう。
だが手元を集中して攻撃してこないあたり完全には拒んできてないってことだな。
『それなら』っと武野はただ避けるだけから動きを変える
足への攻撃は足蹴りで、首への攻撃は『密度変化』で硬化した頭突きで、次は手元っへの攻撃は足で……迫る攻撃を反射神経に任せて対処する、もちろん硬度では負けているのでこちらの身体は欠けるがぶつかった際に『寄生』を仕掛けられる。
左腕が削りきれたか……予想よりも速いな。
俺は周りを『空間重化』を重ねて使い重くして天井を崩す、そして落ちて来ている岩に欠けた左腕を突き刺し『寄生』によって同一化するそしてそのまま刃を防ぐ為に使う。
・・・・・・・・・・・・
どんだけ時間かかるんだよ……
既に武野の予想では百足阿羅地との戦闘が開始して2時間は経過している流石に武野は集中力の限界を感じ始めていた。
こんだけぶつかり合って刃こぼれ一つなしかよマジで規格外の耐久性してんな……クソッそろそろ限—―
その瞬間、周囲の様子が変わった
「【開闢】《鬱水鈍天世界》」
『ハァハァ、アンタ等……どんだけ移動してんのよ』
俺は声のした方に目を向ける
そこには息を切らしながら文句を言うオロチが居た。
『これでここら辺は空気中が水中の様になるからそれを意識して動きなさい』
ありがたい、百足阿羅地の動きが鈍くなるのは勿論空気を水のように踏み込み易くなったから動きに自由度が上がった、それにただの空気だった時よりも熱が逃げ易くなったおかげで少しだが頭が冴えてきた!
『さぁ第二ラウンドだぜ百足阿羅地!つっても俺が避けながら反撃するだけなんだけどな!あっはっはー』
やばいな、テンションがおかしくなってんな、だけど戦闘中ならそのぐらいどうでもいいさ!
こっからは反撃の頻度を増やしてくぜ!
刃が二方向から迫って来る、それに対して削り落ちた岩を『魔法』を使って持ち上げぶつける
そして持ち上がった岩を『寄生』を使って身体に繋げる。
そしてその大きくした岩を繭を張る様に発射し壁を走っている刃を捕らえる
勿論『寄生』を使っている
これで『寄生』を加速できる!
『いい加減墜ちろ!』
『だったら自分を超えてみろ!』
!?
『お前喋れたんかい!』
『ハハッそれだけお前と同一化しているって事さ』
作戦駄々洩れかよ、てか既にスキルの共有も思考の共有も可能になってるぐらい『寄生』が侵食してるんだ後少し……
その時無機質な声が魂に響く
《百足阿羅地が『寄生』を利用し【再駆憧英傑武装:百足阿羅地】を譲渡されました》
へぁ?!
百足阿羅地は刃をしまい込み30mに縮小し完全に停止した。
何故?どうして?……そんな疑問を抱き突っ立っていると
『シシシッ驚いてる驚いてる』




