この物語の主人公
*注意
ここからが本編です。
暗く、生き物の気配が薄い、洞窟
そんな洞窟の中で、壁から岩が離れ落ちる音が響く
「何者だ!」
その問い掛けに答える者はいない。
洞窟の主は己の巨体を動かし、音の発生源へと向かう
そこには人型の岩がのたうちまわっていた
「ゴーレムとやらか? いや、違うなゴーレムであれば核となるコアがあるはずだがこいつからはその気配がない、一体コレはなんだ?」
洞窟の主が奇妙なものについて思考を巡らせていると、
『ここどこだよ!』
奇妙なモノは『念話』を使い、産声ともいえる叫び声を発した。
◇
(・・・あれ? なんだ、ここ)
武野泰地は意識を取り戻して一番に違和感を覚えた。
(意識ははっきりしているのに何も感じない。確か全身を瓦礫やらなんやらが刺さってたはずなんだけど……ってか! ここどこだ)
武野は考える。自分の今の状況は何によって起きているのか。
(考えつくのはあの事故から命をとりとめて、麻酔によって感覚がなくなっている可能性だが……昔手術で使われた後のような倦怠感は無い)
武野は思い付く可能性を確かめる。そして最後に思い付いたのは自分は死んで五感の無い何かに生まれ変わっているかも、という普通ならまずあり得ない可能性である。
(だけど一体どうやって?)
武野は考える。仮定として今考えたことが事実だった場合、何が起こって今の状況になるのか、自分以外のクラスメイトはどうなったのか、今から自分のするべき行動についても。
(とはいえ五感がなければなにもできないな、そろそろ落ち着いて考えることも限界かもな)
武野は焦り始める。今考えたすべてが間違いで、自分はただ死んだだけで、このまま永遠になにも感じることもなく誰とも話せず一人でいなければいけないのではないかと。
(誰か教えてくれないかな俺の今の状況を)
その言葉に答える者はいない。
返って来たのは人間味のない、無機質な言葉であった
《願いを受理しましたスキル『確認』を与えます》
《願いを受理しましたスキル『疑似五感』を与えます》
《願いを受理しましたスキル『念話』を与えます》
(へ?)
その言葉が聞こえてきた瞬間、周りの景色が見えるようになった。
『ここどこだよ!』
武野は無意識にスキルを使いながら叫んだ。当たり前である武野は今洞窟の中にいたのだから
そんな武野の様子を、後ろから見ていた洞窟の主は喋りかける
『貴様一体何者だ、どうやってここに来た』
武野は振り向く
そこにいたのは巨大な竜であった
『ぎぃゃああああああああ』
武野はまた叫び声を上げた。
◇
『落ち着いたか?』
巨大な竜は俺が落ち着くまで待っていてくれた。
『はい、ありがとうございます』
『ならば問わせてもらうが貴様は何者だ』
竜が俺に問いかけてきた。
『自分の名前は武野泰地です』
俺は正直に自分の置かれた状況について竜に教えた。
自分が学校で起きた地震で死んだこと、気が付いたら暗闇の中にいたこと、さっき聞こえて(?)きた声について。
『ふむ、何故貴様がここにいるのか知りたかったが貴様自身も分らぬなら仕方ない、そして貴様の感じた声は我自身にも聞こえる特段おかしなことではない、最後に貴様自身気が付いてないだろうが貴様の種族について我には何もわからん』
『え!?』
俺はすぐに自分の姿を確認する、
(確かに人の形をしているけど…)
俺は自分の腕を軽く叩く、すると
ゴッゴッゴッ
硬い岩同士がぶつかる音がした。
(どう考えても人の身体ではないな)
俺は軽く落ち込んだ、だって人間自分とは違う生き物に対しては恐怖を覚えるそれも人間に姿が似ていて本当は違うものなんて自分だったら逃げると思う。
けど、
『ゴーレムってやつじゃないんですか自分?』
そもそもこの世界にゴーレムがいるのか知らんけど。
『違うな、あれには体の中にコアと呼ばれる核があるが貴様からはその気配を感じない』
あっ、ゴーレムいるんだ、てかそれでもないなら俺にもわからねーや。
そういえば、
『名前聞いてない』
俺は金色に光る竜の目を見て心の声を漏らす。
『そういえば言っていなかったな。我の名はテラーとでも呼んでくれ、昔人間が我のことをそう呼んでいた』
『ちょっと待った、人間がいるって言ったか』
それは重要なことを聞けた。
『我の名前よりもそっちが気になっていたのか…』
『アッ、ごめん』
普通に失礼なことをしてしまったので、俺は素直に謝った。
『人間はどこにいるんだ』
改めて俺は直球でテラーに聞く。
『少なくとも、ここからでなくては見かけることすらできんが、外に出れば普通にいるはずだぞ』
『ありがとうテラーさん(?)で、出口はどっちか教えてもらえませんか』
俺は早く人に会いたくてテラーさんにせかしながら質問する。
『ちょっと待って、貴様この洞窟のについて何も知らんくせに出ていくことなんてできないぞ』
『え!?』
俺はテラーにどういうことか聞いてみると、
『この洞窟の生き物は基本的に強い部類の奴らばかりだ少なくとも生まれたばかりの貴様では生きてられんぞ』
俺は逸る気持ちを抑えこむ、
『じゃあどうすれば…』
俺はテラーのにやけた顔を見て俺は言葉をとめる
『だから我がいちから鍛えてやろう』
テラーは俺に提案を出してきた。




