{死}火山の試練 其の三
二体目!
こちとらもう動けないんだぞ!!
しかも火山亀の身体が凍って保存されちまった、その上俺の身体も凍って『再生』ができない。
「Carororororo……」
この氷山を背負った亀も火山亀と同種だろうな、前に立って火山亀をかばってるし。
おっ! 来るか来るか? こっちはもう満身創痍で簡単に死ねるぞ!
「Carararararara!」
警戒音をビンビン鳴らしてんねえ、そのまま逃がしてくんねえかな?
やべ! 身体が更に凍り付いてきた。
「Cura?Cacacacaccacacacacacacaca」
なんか舐められた?
いや……流石にそんなことは――
「Cyacyacyacyacya」
あっ舐められてますねこれ、
野生生物に舐められてることに屈辱を感じなくは無いがこいつらにはそれに見合う力がある以上は無駄な考えだな。
『一応聞いておくけど会話は可能ですか?』
「Caro!」
意思は理解されてるけど会話は無理っぽいな、さっきより警戒心が強まってる。
一応日本語以外も試してみるか。
『I have no intention of fighting.(私に戦闘意思はありません)』
「Carorororo……」
考え込んでる、
英語でも意思は理解できるんだな……
「Karooooooooo」
うわ! 氷山から氷柱飛んできたぞ、
てか火山亀は噴火だから分かるけど氷山でそれは見た目が合わないだろ。
て! そんなこと考えてる場合じゃなかった、
グジュリ……
まずい刺さった、
近づいただけで肌をヒリヒリと冷たくする氷柱なんだ、俺の傷ついた身体に突き刺されば刺さった部分から感覚が消えていく。
カラカラカラッ
こいつ俺が氷柱で苦しんでいる間にこのクソ亀II自分の身体を氷の要塞へと変貌させやがった。
さて…どうしたもんか……
「Garorororo」
声を重くし獣が威嚇する様な体勢で待ち構えながら周囲を凍てつかせる氷山亀、もはや俺に逃げ道は無い。
そう思った時……
「全く……まさかこんな事になっちゃうなんてね」
青色の長髪を風になびかせながらユウコさんが俺の前に現れた
◇
ユウコさんは氷山亀に悠々と近づきながら人差し指をぐるりと回す
瞬間、氷山亀を覆っていた氷が弾け飛ぶ。
「Caro!」
「葵ちゃんってもしかして相当運が悪かったりするの? よりによって城山大亀の王種……それも幼体と遭遇するなんて、いや…この場合は運が良いのかしら?」
『ユウコさん……どうして…ここに?』
「ああ! ちょっと待ってて、動いちゃダメ」
ユウコさんが俺に話しかけるスキに氷山亀がその巨体でユウコさんを押し潰そうと跳び上がるが、
「無駄よ」
急に力の進む方向が変わり氷山亀は森の中に消えていく。
「さてと…流石に王種を殺したとなると面倒なことになるわよね……」
ユウコさんは火山亀の頭を抱え上げて首部分に繋げ、しばらくすると火山亀が立ち上がる。
「Carorororo?」
「大丈夫大丈夫…私達に敵意を向けなければ……『ね』」
ゾワリ、と身体に悪寒を流させる程の意思がたった一文字に込められる、
そんなモノを真正面から受け止めた火山亀は背中の火山活動が一瞬で止まる。
『ゆ、ユウコ…さん……あの…その……えと…』
身体は既に『再生』によって直してある、しかしついさっきの威圧によって心が震えてしまう……
「あ!そうだ葵ちゃん、いい加減二足歩行を卒業しないと癖が染み込んでその翼脚が意味なくなるでしょう」
怖い
「ねぇちゃんと聞いてるの?」
恐い
「葵…ゃ…?顔…が悪…けど大丈…?」
ドサッ……




