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オルタ・エボリューション  作者: 鬼河壱
第0.5章 秘匿の箱庭
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学校崩壊

内容を一部削除しました。

8時49分

高校の四階


授業変更で移動教室となった事を忘れていた俺は『音楽室』と表札に書かれた教室に滑り込む、


どうやらチャイムが鳴るまで数十秒の猶予があったようでクラスメイト達はスマホゲームをして遊んでいたり、

ニュースで流れてきた情報を拡散していたり、

先に来ていた彼氏を起こしていたり、

それを見て騒いでいたり、

男で集まり猥談を楽しんでいたり、

静かに本を読んでいたりと、

それぞれがそれぞれの楽しみ方で1時間目の授業が始まるのを待っていた。


そんなクラスメイトたちを掻い潜り、自分の席に着く。

ちょうどのタイミングで授業開始の鐘が鳴り、クラスメイトのみんながわらわらと移動し始めた。


「はい!! 鐘鳴ったんだから座りなさい」

「「「はーい」」」


先生の号令に返事をしながら2年2組のクラスはそれぞれの席に座っていく。


「えーと欠席が一名と。じゃあ今日はソプラノ、アルト、テノール、バスそれぞれでの練習なのでパートごとに別れてね」


十数秒ほどで皆が座り、その間に出席確認を終わらせた担任の先生が今日の授業内容を指示する。


先生の指示に従いクラスメイトが移動し始め、俺も席を立つ


「あ・お・い♡」


同時に後ろの席から俺を覆いかぶさるように抱きしめられた


「気持ち悪いよ泰地」


俺は大きくため息を吐きながら声の聞こえた方を見る。


そこに居るのは容姿だけ見れば女性と間違えてしまいそうな男、親友の武野たけの泰地(たいち)、小学校からの幼馴染で、俺 扇谷おうぎやあおいの一番の親友だ。


元は互いの姉同士の仲が良く、そこ繋がりで俺と(今は別のクラスである)双子の兄が泰地と仲良くなった。


……ちなみにこいつの胸に少し膨らみがあるようにも見えるが本当に男だ、修学旅行で一緒に風呂に入った時に男のアレを見たことがあるから確信して言える。


容姿だけを見たら女性だが……。身体能力はバチクソ高いし、それ関連で仕事もしてるらしいから本当に見た目だけが女性っぽい。


「別にいいだろ、それよりも葵は今日もソプラノなんだろ、女子ばっかで羨ましいな」


「やめろよ、一人だけ男子だから馴染めないんだよ」


「でも、お前の見た目は女子っぽいからな、傍から見ると全然違和感ないぞ」


そう、俺はいわゆる男の娘と呼ばれる容姿をしている。

それに、女性(・・)っぽい泰地と違って女()っぽい俺は、高い声しか出せないせいでよく女子と完全に間違えられてしまう。

はっきりと言えば兄さんと同じで男らしい体がよかった、双子なんだからそんぐらい一緒にしてよ神様。


「ていうか泰地ならソプラノボイスも出せるだろ? 素の声だって高いしさ、お前もソプラノ(こっち)に来いよ」


「嫌だよ、俺が女子嫌いだって知ってんだろ」


「なら何で羨ましいなんて言うんだよ!」


「男子連中の総意を言っただけで俺の意見じゃねぇ!」


「てかお前はこの前女子を連れて駅にいただろ!」


「あれは道案内してただけだ!」


その後もあーだこーだ騒いでいると……


「そこのお二人さん、痴話喧嘩はほどほどにしてそろそろ練習始めるよ」


テノールパートのクラスメイトが冗談を交えながら練習の開始を伝えに来た。


「痴話喧嘩じゃねぇ! てか俺らは二人とも男だ!」


クラスメイトの弄りに対して泰地は変なテンションで否定しながら「じゃあ俺もう行くわ」と伝えてテノールの集まりに向かって走って行く。


「葵君も練習始めるから速く来てくれる?」


俺もソプラノの女子に呼ばれたのでソプラノの集まりに向かって歩きだすと


ドゴーン!!!


教室が大きく揺れた。


(地震?)


大きな音の後も教室が揺れ続けているので俺は地震が起きたかと考えたが


ドゴーン!!!!!


そんな考えは地響きと新たに鳴り響く爆破音によって否定された


(この断続的な揺れ……何処かで爆破でも起きてるのか!?)


「葵君!こっち!」


混乱してその場にしゃがんでいた俺に既にピアノの下に避難していたソプラノグループの1人が呼びかけてくれた。


俺は急いで走りだしたが


ドゴッ!


急に揺れが強くなりバランスを崩した俺は転倒してしまう。


次の瞬間、追い打ちをかけるように教室の天井にヒビが入り天井が崩れて俺に落ちた。


「葵!」


泰地の叫び声が聞こえ、遅れて下半身に激痛が走った。


「ぐぎゅ、ぐがはっ」


口から赤黒い何かが飛び散る、下半身の感覚が無くなった。もしかして腰から下が潰れちゃったんじゃ……


(俺、死ぬんだ)


異常な事が起こりすぎて俺の頭は逆に冷静になり諦めた瞬間


まだ(・・)悲劇は終わっていないとでも言うように


ビシッ


床にヒビが入る嫌な音が聞こえた。


「嫌ぁぁぁぁ」


女子の誰かが叫んだ。

当たり前だ、俺たちがいる音楽室は4階でこの学校の最上階(・・・)つまり


(落ちる)


そう思った直後床が崩れ俺の身体は浮遊感に襲われた。



目をつむる、せめてこれ以上の苦しみ無く死にたいと願い周りの轟音や叫び声を少しでも失くそうと耳を塞ぐ……




……どれほどの時間が経ったのだろう

周りから音が聞こえない。

静かになった空間の中でゆっくりと目を開いて自分の状況を確認する。


(まだ、死んでない……クラスのみんなは!?)


まだ動かせる上半身をで何とか周囲の瓦礫をかき分けて周りの様子を確認する


「う゛っ゛」


瓦礫の先には瓦礫に押し潰されたクラスメイトの姿があった。


さっきまで楽しそうにしていたクラスメイトたちの……


「ゴボッ」


口から大量の血が流れ出てきた。


(俺ももうダメだ、多分だけど出血が致死量をこえてると思う)


諦め、せめて上を向いて死のうと仰向けになると


(泰…地…?)


右腕と胸部に……何かが突き刺さり、磔になった親友の体が視界に入った。


「何でだよ」

理解出来なかった。


「何でなんだよ!」


叫んだ……感情のまま大声で叫んだ。


「何で…………」


もう声は出せなかった、


そこで俺の意識は途絶えた

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