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DAY1:Welcome To The Black Parade(3)

「――良いな、お前絶対何も喋るなよ」


『は、はい。え~と……』


 何かをクレイは話そうとしているが、もはやそんなものに耳を傾ける余裕はない。

 まずは今着ている破れた服を、洗面器とタオルをどこかへ隠して……後は、ああ、この顎の傷もどうにかしなくてはならない。

 ついさっき汐織に、彼女が俺の部屋に訪れても良いと強引に言わされてしまった。あいつは俺が大きな声で怒鳴りつけても平然としているのだ。一度何か目的を持って要求を迫られたら為す術がないことを俺は知っていた。でなければむざむざ今この状況でこの部屋に他人を招き入れる訳がない。喜ぶべきか嘆くべきか、長い付き合いがそう言った“賢明な”判断へと思考が働いてしまう。

 おそらくここに上がってくるのは約三分。エレベーターで上がってくるのであれば、高所にあるこの部屋へと辿り着くのはそんなところだろう。

 考えながら、ベルトの穴をカチャカチャと音を鳴らしながら破れたスキニーを脱ぎ捨てる。


『わ、わ……。うわぁ……』


「……」


 何か戸惑うように漏れた声、若干トーンの上がった声。思わずじっと、銀時計に目をやってしまう。


「ああ、もう! 気にしてる場合じゃねえ!」


 いちいち何かに反応してくるクレイに反応している暇はない。刻一刻と終わりは近づいてしまっている。

 ――その終わりを、破れた服に傷を負った顔で出迎えた日にはどんな追及が待っているか知れたものではない。それこそすっぽんの本領を発揮してこの部屋に泊まり込む、などと言われかねない。

 破れたズボンは色の付いたゴミ袋の中に入れて縛り、台所の臭いゴミ箱に放り込む。

 ――そんなことは断じて拒否したい。ただでさえ学校で付きまとわれているのだ。だから変な噂だって流れている。それにこれ以上拍車をかけるような事は避けたい。何で俺があんな地味な女の彼氏と間違わなければならん。意味が分からない。不釣り合いにも程があるだろう。俺に見合うのはもっと――。

 洗面器を風呂場に戻し、タオルは洗濯機の籠へ。次に薬箱から絆創膏を取り出して自分の顎に張り付けるだけ……ぱこ、と音を鳴らして薬箱を開く。

 備え付けられた鏡を見ながら自分の顎へと絆創膏を合わせていると、


『レイヤ。私がやり――』


「いい。お前は何もするな。実体化したら揉む」


 聞こえた声に脊髄反射に近い形で俺は返していた。そして、クレイは黙ってしまった。

 ……少し言いすぎたのやも知れん。反応を見る限り、そういうことに慣れていなさそうだし。いやしかし、かと言って俺から何をする訳でもない。というか、こっちはこっちでいっぱいいっぱいだ。既に汐織はこの階に辿り着いている可能性が高いのだ。

 かと言って数か所に絆創膏を貼っていたらもう意味がない気がしないでもないが……まあ、傷を生で曝け出すよりかはマシだろう。


『……そんなに彼女に心配掛けたくないんですね』


「――は?」


『あ、もしかして……彼女さんですか?』


「ちっっっげええええええええよ!!!」


 と叫んだ数瞬後、


「れ、麗ちゃん?」


 少し驚いたような汐織の声が玄関の扉の外から聴こえて来た。ドア越しに聞こえる少し籠ったような声でも、そこに戸惑いが含まれていることは震えから分かった。


「どうかしたの……麗ちゃん?」


「いや、何でもない! ……今開ける」


 立ちあがり玄関まで歩いていく。

 扉を開ければ、制服に身を包み戸惑った様子の汐織。先ほどのどうかした、とは当然先程の俺の叫び声についてだろう。十中八九。

 いや、だがあれを反射的に否定したくなるのは仕方がないというもの。何故俺がこいつの男などと勘違いされなければならない。それに昨日今日会ったばかりの奴に。更に言えば人間ですらないないというのに。屈辱だ、これは最早名誉棄損など通りに通り越した屈辱に他ならない。

 ただでさえ学校あることないこと吹かれて、女が少し寄りにくくなっているんだ。少し親しげに話せば「白峰さんは良いの? 私なんかと話して」などと直ぐに言ってきやがる。ざけんなと。

 或いは「馬に蹴られる」。その度に俺は内心汐織に拳を上げながら冷静に対処しているという不運さ。俺が頭を痛みで抱える日はあいつが居る限り多いという事だ。


「何かあったの?」


「だから何でもないって。ただ電話で少し言い合いをしてただけだ」


「あんな喋り方するってことは……男の子?」


「ん? あ、ああ。そうだな。とある部分がどデカイ男だな」


 な! という声が腰の辺りから聴こえて来た気がするが無視する。


「――で、何でお前は溜息を吐いてるんだ?」


「え? いや、違うよ今のは――」


「ああ、外寒かったのか。まあ、じゃあ……入れよ。とりあえず」


「…………そうするよ」


 と、僅かに頼んだパフェの生クリームの量が写真より少ない、みたいな顔をした。何故だか俺は汐織の表情が読み取れない。他の女の子は容易に心内が読めるというのに、汐織だけは別だった。往年の謎だが、別に汐織の心など読みたくもないのでどうでも良い問題ではあった。

 靴を脱ぎ、玄関へと足を踏み入れ、汐織は俺の顔を見上げた。途端に、その両目は口と共に大きく開かれた。


「あ! 麗ちゃんその顔どうしたの!?」


 遅えよ。

 口には出さなかったが、心の中で自然とそうつっこみを入れていた。


「いや、まあ……あれだよ。……絡まれたんだよ」


 よくある話。色々な女に声を掛けてれば、彼氏持ちの癖に別の男と遊ぶなんてことがざらだ。ホテルに入って股を開くなんてのは、その女にとって日常茶飯事。そうなると当然、その女の素行が良い、なんてことはどんなに言葉を選んでも表現しにくい。

 なれば、その女に付いている男というのも柄が悪いことが九割九部九厘なわけで、女を取られたと男が激怒してくることもよくある。それも何故だか群れて。だから割と殴り合いというのに発展することが多いのは嘘ではない。

 とは言え、そんな奴らに傷を負わされたなどと嘘でも言うのは身の毛が弥立よだつほど嫌だが……この際は仕方ない。


「傷見せて、麗ちゃん!」


 こいつを騙せるならば、避けられない報いだと受け止める。この程度でこのすっぽん女が納得いくのであれば、まあ、良いだろう。


「別に大丈夫だって……このくらい。ウザってえな……」


 傷の部分をぼりぼり掻く。もちろん触れるか触れない程度で、だが。しかしこのジェスチャーというものが一番傷が大丈夫だと伝わると思う。

 その証拠に、少しでも汐織の様子が――


「消毒はした!? 駄目だよ!? 膿んでたりしたらちゃんと消毒しなくちゃ!」


 ――収まりはしなかった。俺の認識が甘かった様だ。


「やったよ、やった。だいじょう、ぶ……やった、よな?」


 聞くのは当然腰にいるあの女。俺の寿命を削って看病して居やがったクレイに向けて。

 だが俺の期待に反し、


『申し訳ありません……レイヤ。濡れたタオルで拭きはしましたが……その、薬箱の場所が分からなく……』


「……」


 マジかよ。そういやそうだ。


「……あ~あ」


「やっぱやってないんでしょ!?」


「あ!? いや、その……だな」


 言いつつ、汐織は鞄を肩に掛けながらずいずい顔を押し出してくる。もはや息を吐けば届く距離にまで近づいて来ていた。

 多分、俺が知っている中でこいつだけだ。俺にこうまで突っかかって来る奴は。遠慮なんてものは一切考慮に入れず、周りには“完璧”な人間だと思わせている筈の、俺に。

 眉毛をまるで逆“ハ”の字にしながら、汐織の顔は迫って来ていた。このまま口を押しつけて倒して込んでやろうか、この女は。


「だあああああ、もう! うっせえな! んじゃてめえがやれ!」


 ――ん? 自分が言ってることが微妙におかしい気がする。気のせいか。


「うん! そのつもりだよ!」




 やはりおかしい、と気付くのにそう時間はかからなかった。

 床に座らされて数分おとなしくしているとはなんという退屈さ。それに少しでも動こうものなら「動かないで!」と顎を固定される、なんという屈辱。

 顎の先端、その僅か右、そして右の頬骨と若干右寄りになっている為、汐織は俺の右側に座ってちょんちょん、と綿に染み込ませた赤い液体を塗っている。俺としてはこの消毒液は大っ嫌いなのだ。

 何故かと言われれば即答できる、ダサいからだ。何が悲しく傷に赤い装飾を施して出歩かなければならない。しかもそういう時に限って乾かす為に絆創膏張らないで、だ。こんなパンダの赤い版みたく丸いものを描いたままおもてに顔を晒すなど首を括りたくなる。

 ――昔っからそうなのだ。俺が少しでも傷をつけていると何故かタイミング良く飛んで来やがる……というか、傷を隠そうともしない俺が悪いのかもしれないが。

 けれど、初めからそうだったようには思えない。汐織が世話を焼くようになったのは果たしていつからだろうか――。


「……つッ」


 傷が染みるが、断固として声は上げない。これは俺のプライドだ。女に傷の手当をされているだけでも俺としては嫌な絵だというのに、痛さに呻き声を上げるなど……。


『微笑ましいですねぇ……。それに、レイヤは意地っ張りなんですねぇ……』


 こめかみの血管に電撃が走った気がした。

 クレイの声から、クレイの顔を想像出来、且つにやにや、という擬音が聞こえてきそうでさえあった。

 そしてどうも、ゲーデの声は一般人には聞こえないらしい。だからだろう。さっきから何気なしにクレイが一言一言漏らしているのは。というかそうでなくては困るのだが。


『ほら、彼女さんも笑っていますよ』


「――な!?」


「麗ちゃん! ……動かないで」


 何故か汐織の声には凄味が効いていた。そして、暗闇ならば獲物を追う豹の如く、瞳が煌めいていたかもしれない。

 数秒睨みつけるが、開かれた瞳は一向に引く気配がなかった。


「――チッ」


 クレイに突っ込むことも汐織に反抗することも出来なくなってしまった俺は、不貞腐れながら屈辱に甘んじることしか残されていなかった。




『――澄華。学校とかって、行かないの?』


「え? 学校?」


 録画した恋愛ドラマを寝転がりながら見ていた澄華は、テレビの画面から目を外さず応えた。

 問うた人物はティルである。澄華の腕に巻かれた細い時計からその声は聴こえる。そんな摩訶不思議な現象に、既に澄華は慣れ切っていた。むしろその順応力にティルの方が戸惑った程だった。

 そしてティルの疑問である。当の澄華は足をバタつかせ、チョコを口に含みながらテレビを見ている。それはとても登校を控えている姿には見えない。何せ服装が既に三本ラインのジャージであり、髪も寝癖もぼさぼさだ。更には澄華が受ける講義の始業時間は既に過ぎており、今直ぐに家を出たところで間に合うはずがない。

 うん、というティルの言葉にん~、と澄華は首を傾げる。


「ぶっちゃけさー、意味無いんだよね、大学なんて行っても」


『え? 何で?』


「いやだってさぁ、私が幾ら勉強したって将来の道はもう決まっている訳だしさ」


 神貴澄華――その“神貴”という苗字はただの偶然などでは決してなく、その名の通りアクアポリスのスポンサーとなった神貴社社長の実娘である。故に求められる将来の立ち位置は社長の後継ぎである。それは言うまでもないことだった。

 幼少のころから金を注ぎ込まれ英才教育を受けた神貴澄華の知識には、既に大学課程で習う必要な学問は存在していた。勉学もせず就職活動もせず、それでは大学へと通う必要性など感じない筈である。

 そんな澄華が大学へと通う理由は、単純に自身が社会に出るのを遅れさせるためだった。

 実際、澄華は社長業など面倒くさいものだとしか思っていない。学生であるうちは、親の庇護がある為遊び呆けても困ることはない。――しっかりと、その教育施設で学ぶことを学んでいればという条件が入るわけだが。しかし、その教育機関で学ぶ必要がない澄華にとっては、本当に只の寄り道であった。


『ふぅん……良いね。社長令嬢って』


 嫌味ではなく、ティルは素直にそう思った。何より、ティルには嫌味を言うような思考はない。それを既に一晩で澄華は理解しているのか、特に何も気にしていない朗らかな表情で同意した。


「でもメンドイことも多いわよ? 世間体は常に気にしなくちゃならないし……」


 と、大学に通うことをサボっている姿が言っても説得力というものがない。そうティルは思ったが、敢えてそれは口に出さず、曖昧に頷くだけにした。


「お見合いとか言ってどこぞの御曹司の写真を大量に渡されるしさ、パーティーに行って御偉方に愛想振り撒かなきゃいけないし……」


 と、言った途端に澄華の顔は赤くなってしまった。上と下の唇を噛み、何か恥ずかしさに耐えるようにしていた。

 それは別にテレビに映っているドラマで濡れ場がある訳でもなく、何か澄華自身が変な発言をした訳でもない。単に、頭に過ぎった人物の姿に対して恥ずかしさで赤面しただけだった。

 パーティ場で知った、黒いスーツを着込み正装している容姿端麗な少年の姿。年齢よりも大人びたモデル顔負けの容姿は、企業の大人が混じる中でも引けを取らず、他人を引き付ける……言わば“カリスマ性”というものを感じた。

 そんな彼は年老いたやり手の社長の隣に立っていても何ら違和感がなかった。身のこなし、目配らせは既に落ち着きを払っていた……そんな事実にまた澄華は驚いていた。幾つか年上の自分は、内心、倒れそうなほど緊張していたというのに。

 そもそも緊張しているのが当然なのだ。海外へ名を連ねている、誰もが顔を知っている様な著名人に囲まれているのだから。しかしその中でも、彼は“溶け込めていた”。

 自然と、周りにその老人の後を継ぐのは彼なのだな、と納得させる雰囲気――オーラとも呼べるものがあった。


『どうしたの? 澄華』


「い、いやいや……何でもない何でもない。気にしないで」


 ティルには澄華の状況が全く理解できないが、澄華が大丈夫というのであればそれはきっと何もなくて大丈夫なんだろうなぁ、と素直に納得する。

 首を縦に二回振ってから、


『それで澄華、これからどうするの?』


 ティルは傾げ、訪ねた。


「ん~、そうねえ……」


 これから――それは即ち【ディヴィナ・マズルカ】に於いての今後の行動に他ならない。

 既に【ディヴィナ・マズルカ】に関しての説明を聞いた澄華にとっては、もう行動に移せるほどの知識があった。それでも行動に移さないのは、それなりに考えがある――と言えばあり、ないと言えばない。そんないい加減なものだった。


「少なくとも、出歩くのは夜で十分でしょう? 人目のある場所であんな剣を振り回して戦う訳にはいかないし、何より出会う筈がないと思うの」


『……? どうして?』


「だってそうでしょ? 幾ら【ディヴィナ・マズルカ】の参加者になったとは言っても、それぞれに生活っていうものがあるでしょう。私みたいに学生をやっている身だったり、社会へ出て会社に勤めている人だったり。

 多分、その生活サイクルは中々変えないと思うのよ。人間は変化を嫌う生き物だからね。“自分の命が危ない”程度じゃ、今までの生活を全て放り出すなんてことはしないよ」


 日常という決められた半普遍的なサイクル。時間を決められ、歩く道を決められ、やることをある程度決められる――そんな、変化のない日々。

 それに人間は落ち着きを覚えるものだ。人間は自由というものを求めながら、一定量の束縛を本能的に求めている。表という言葉があるが故に裏があるのと同義で、有限というものがあるから無限というものが存在し、束縛があるが為に自由があるのだ。

 そんな矛盾に、人間は生きている。それを端的に澄華は告げていた。そして理解していた。

 ティルは、澄華の言葉に思わず窮してしまった。テレビから一切視線を外さず言うその姿には、やはり説得力がないはずだが……どうしてかそれはあった。達観した物言いだが、同意できないものではない。むしろ、どこか心に浸透するもの何かがある。


「或いは逆かな。こんなゲームに巻き込まれたからこそ、通常の生活を送っていく。敢えてこれは“ついでの事柄”なんだって。暇な時間だけ散策したり、トレーニングを積んだりしてゲームに参加する。

 まあ、意味は違うけど結果は同じよ。多分ね、その生活のサイクル全てをこの【ディヴィナ・マズルカ】に置き換えられる奴がいるとしたら――」


 ここで初めてテレビから視線を外し、腕時計――ティルを見やった。


「――暗に、壊れてることを意味してると思う。そんな奴は余程殺し合いというものを求めていたか、それだけ何かに切羽詰まっているのか、日常に飽きていたのか……どれかだろうね。

 そして私はそのどれでもないし、この生活から完全に離れたいとは思わない。だから私は、夜だけ捜索に出向く」


『はあ……』


 息を漏らしたような返事をティルはする。それだけしか反論出来なかったのだ。

 極論を述べているに過ぎない筈が、それはとても的を射ている。大き過ぎる論理は、細かい論理も含めている。人間は起床就寝と、そのサイクルである初めと終わりすら自分で、或いは外力で定めてしまっているのだから。


「まあ、それにあれでしょ。激化するのは人数が少なくなってきた後半でしょう。そこまで残っている奴らはそれだけ経験を積んで強敵になっているだろうし、何より期限が迫って慌ててしまう。生き残りという席を求めて、群がる虫のように――ね」


 澄華は口を歪めた。それはまるで、蟻が飴に群がる様――そんなものを眺めている表情だった。




「――何で白峰先輩と一緒に学校に来てるんですか」


 ……めんどくさいものが二人も揃っちまった。そう思わず頭を抱えたくなる。

 校門に差し掛かった、生徒がごろごろといる往来で、二人は何故だか睨み合ってしまった。


「別に涼太には関係ないでしょう……?」


「関係ありますよ。僕は麗夜先輩の弟分なんですから」


 そんなものにした覚えはねえ。遼太は勝手に俺についてくるだけだろう。


「悪い虫は追い払わなくてはいけないんですよ……僕は」


「悪い虫は自分じゃないのかな……」


 俺を挟んで二人の睨み合いは続く。歩きながらでも続く。

 正直そろそろ周りの視線が痛くなってきた。……というかお前らのせいで結構俺のイメージ作りに困っている所があるんだが、そこら辺はどう思ってるんだろうな。慕っている後輩がいれば俺の人間性が評価されやすくなると思って野放しにしてはいるんだが、如何せん正直ウザいと感じてしまう。たまに昨日の購買みたく役に立つことがあるぐらいか。

 汐織に関しては知らん。もうとうの昔に諦めた。このすっぽん女はもう……いいや。色々な意味で。


「…………は~あ」


 火花散るような目と目に挟まれながら、俺は深く溜息を吐きつつ、不本意ながら三人一緒に校舎へと入っていった。




 別に俺は孤高な存在に成りたいとは思わない。孤高とは完璧であるが故に孤独、という意味だ。

 しかしそれは矛盾しているのではないか? と俺は思う。完璧であるならば、その人物が孤独に陥るなどは考えにくい。

 故にそれは俺が求める“完璧”ではない。だから、それは良い。人間に囲まれること自体それは良いのだが……。


「流石にこれはないだろ……」


 朝の場面のデジャヴ。俺を挟んでまたも寒空の下昼食だ。今度は遼太だけではなく、汐織も同席しているのが重要なポイントだ。

 朝に引き続き第二ラウンドと言った所か。プロレスやプライドじゃないのだから止めて欲しい。正直有り得ない。


「…………」


「…………」


 加えて無言とか。間が持たないとか止めてくれ。俺は合コンでぶっ飛んだことを言って場を凍らす奴には殺意が沸くんだ。だから喧嘩腰でも良いから何か喋ってほしいというのが俺の本当のところ。


「…………」


「…………」


 けれど俺の願い空しく、箸の音だけが風に揺れる葉の音に混ざるだけ。

 俺は女の子の昼食を断らさせられてここに連れて来られたというのに、この仕打ちか。意味が分からない。これなら女の子に囲まれて楽しく弁当を突き合った方がとても良いだろうに。


「…………はあ」


 またも一人溜息を吐いて、俺は薄い雲に覆われた空を見上げた――。




 猛る衝動。押し寄せる衝動。湧き出る衝動。ある一つの衝動があらゆる形で心を追い詰め、織りなした結果――竜次は一つの行動へと至っていた。

 殺人――。正確には、命を奪うというよりは魂を奪う行為。【ブリスゲーデ】なる虚言と現実の狭間の剣を現実へと引き寄せて、他の生命へと干渉する。

 ぶちまけた魂が、まるでプラズマのように光を帯びて、ゲーデへと吸収されていた。

 既に殺害した人数は四。つい先ほどまで動いていた肉体は、今や腰から両断されていて動かない。棚に置かれていた商品を散らかしながら、血潮を被せながら、肉片が散らばっている。

 行為を犯した当の本人は、既に鞄の中へと目的でもあったものを詰め込んで、あとはもう立ち去るだけ。という筈が、未だそれを行わず、コンビニエンスストアの店内でキョロキョロと頭を動かしているだけだった。


『――おい、どうした竜次。さっさと行くぞ。食料は手に入れたんだろ?』


「そうだけど……監視カメラを探したいんだ」


『細けえな……お前は』


 ザリチュとしては今更関係ないだろう、と思っている。【ブリスゲーデ】という強大な力を手に入れれば、非参加者である人間に負けることはまず考えられない。大抵の近代兵器――爆撃機などは流石に話は別だが――この国の警官が手にしている拳銃などでは余裕を持って殺せる筈。そもそも向こうは基本的に殺そうと発砲はしないのだ。だがこちらは端から殺す気で戦闘に至るのだ。

 故に監視カメラで顔が割れて、警察に追われる身となっても、逮捕などという結末に陥るとは考えにくい。それに状況証拠しか揃わないだろう。“殺害道具”という重要なピースは虚実の狭間である【ブリスゲーデ】なのだから。

 けれど竜次はそれを恐れている。全く持って、ザリチュには理解できないことだった。


『……早くしろよ』


「うん、分かってるよ……」


 まだ喰い足りない、とザリチュはうずうずしているというのに契約者はこんなにも臆病だ。

 竜次は部屋の隅に設置されていた隠しカメラを発見し、勢いよくそれ目掛けて振り下ろした。両断された黒く小さな機械は音を立てて床へと落ちた。


『おい……』


「ごめん、待って。次は記録も消しておかないと」


 そう言ってレジを両断し、奥の事務室のスペースへと移動していく。【ブリスゲーデ】を、力を手に入れたというのにこんな行動を取ることは、竜次の細かい性格が起因しているのだろう。或いは臆病か。――とにかく、竜次の契約者である【ブリスゲーデ】の性格と折を為さないのは明白だ。

 ザリチュはその行動に舌打ちをするも、仕方なしに何も言わない。

 ――そうして数分後。

 事務室を斬り手繰たくった一人の男は、またも夜の街へと姿を消していった――。

粕亜「というわけで一日目が終わりました。粕亜です」


御岬「終わりましたね。御岬です」


粕亜「もう燃え尽きたね」


御岬「……ね。読んでくれた皆さん。よかったら投稿時間を見てみてください」


粕亜「二人とも休みだったからってさ、こんなに小説一気に書くのはホントないよね」


御岬「もう……何。完全にノリと気合だったよね」


粕亜「ちゅーかさー、対談昨日やったばっかじゃん!! ネタないじゃん!!」


御岬「良いじゃん。書く主人公を一日書いた感想とかで。……ちょっと被ってるけどさ。昨日と」


粕亜「とりあえずコンビニ始まったよね」


御岬「始まったねw それぞれの町で一軒ずつやられてるからねw」


粕亜「伊薙町に三件しかない貴重なコンビニが……」


御岬「でもまあ、駐車場だったじゃん? 確か。なんとか……入れるんじゃない?」


粕亜「まあ今後伊薙のコンビニが全て全滅するのはいつなのかとか見所沢山です……全て全滅wwwww」


御岬「これはこの作品の真の見どころでもある」


粕亜「一日目の見所ってどこだったかね」


御岬「麗夜に関して言えば中二っぷりかなぁ……あとこう……女性に対しての扱いの低さ。……御免なさい。黒斗はなんかある?」


粕亜「黒斗に関して言えば……国土交通しょおおおおおおお!!!!」


御岬「それはマジで笑ったwwwwwwwwwwwwwマイブーム確定wwwwwwwwwwwww」


粕亜「実はね、あれ僕がこの間車乗ってて叫んだセリフなんだよ」


御岬「え〜…………ないわぁ〜」


粕亜「ず〜〜〜〜っと工事してるところとかあるじゃない」


御岬「あるねぇ」


粕亜「それは兎も角、全体の見所としては二人の主人公の格差っぷりとかだよね」


御岬「流した。……そうだね。片や深夜のデートで片やまさかのエロゲだしね。しかし黒斗の友人関係少ないw」


粕亜「やつは友達が世界に二人くらいしかいないんじゃないかな?」


御岬「そんなもんかw う〜ん……差が激しいねw」


粕亜「でも黒斗より麗夜のほうが余程変態だよね。おっぱいおっぱい連呼するし」


御岬「まあ、基本的に性欲が滾ってた人だから……嘗ては」


粕亜「黒斗はおっぱいが無い方が好きかもしれないからしょうがないね」


御岬「ロリコンは危ないですよ〜。まさに犯罪予備軍! その点麗夜は安心だぜ!」


粕亜「でもさ、画面の中の女の子にはあはあしているほうがまだ安全といえば安全だよね。どうせ犯罪を起こす度胸なんてないんだよああいう連中は」


御岬「それはwwww 確かに黒斗は絶対ないだろうな……」


粕亜「さてさて、じゃあ逆に反省する点とかは?」


御岬「そうだなぁ……う〜ん。剣の描写が足りなかったかなぁ、とは思うかも。あと女性へ失礼すぎた。……御免なさい」


粕亜「僕は結構気持ちよく書いたから反省とかはしないなあ〜」


御岬「ふっといてwwwwww」


粕亜「あはははははは」


御岬「まああれでしょ。国土交通省でもう、OKでしょ。あれはマジでやばい」


粕亜「初日の出来事を一言で纏めると……【国土交通省】」


御岬「麗夜は【ハーレム】。どっちか寄こせよ。クレイ寄こせ」


粕亜「おっぱいだから?」


御岬「いや、片やすっぽんだから」


粕亜「あれ何度見てもさ〜、【すっぽんぽん】に見えるんだけど」


御岬「それは君が“あれ”なだけだよ。“あれ”な。……何とは言わないけど」


粕亜「麗夜編の【すっぽん】を【すっぽんぽん】として読み直してみてください。新たな麗夜編の面白さが顔を覗かせます」


御岬「すっぽんぽん女wwwwwww」


粕亜「いや、最初本当にそう読んだからね僕……」


御岬「マジかよ――――ハッ、読者の皆さま方も!?」


粕亜「汐織は【はいてない】子ということで、とりあえず本日の対談を〆たいと思います」


御岬「ないですよ〜! そんなことは〜! …………ありがとうございましたぁ!(泣)」


粕亜「それでは二日目の最後にまたお会いしましょう!! さようなら!!」

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