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プロローグ(1)

 日常とは単調なものだ。言ってしまえば、酷く大規模なルーチンワーク。だからこそ、きっと今俺がいるこれは日常なのだろう。

 動いているのか、止まっているのか、進んでいるのか……よく分からない時間の流れ。上に進んでも進んでも、どこか見たことある景色。そんな螺旋階段が俺を纏う気だるい日常だった。

 生きている意味はあるのか。今歩いているこの道を進む価値はあるのか。

 例えば、この道を寿命の果てまで歩いていたとする。その道は、果たして俺のそれなのだろうか。俺だけのものだろうか。誰か歩んでいた道ではないのか。

 十割が同じだとは言わない。けれど、少なからず五割は“被っている”だろう。言わば既視感というおぞましい感覚が背筋を這い廻る。

 人生は、その人を主人公とした物語だとよく例えられている。けれどそれは、必ず何かのオマージュがあるだろう。道を歩む登場人物の名前が違うだけ。道がある土地の名前が違うだけ。傍目に、一見、外観が違うだけで概観として、本質としてそれは同義。

 意味はあるのか。意義はあるのか。価値はあるのか。――道はあるのか。

 そんなことを俺はいつも頭の片隅に置いてある。いや、置かれている。視界にこびり付いた粘膜のようにいつも思考の端に存在していた。勿論そんなことを考えるやつはあまりいないだろう。だから俺は少し他人とは恐らく変わっている。分かっていても、それを拭う事も、解消する事も出来なかった。

 恐らく、これからもきっと叶わない。

 だから、早くこの日常を破壊して欲しかった。フィルムで見せられた未来に、レールを敷かれた形式ばった細い通路――そんなものを、出来れば木っ端微塵に。元が分からなければ判らないほど良い。

 そう……だから、俺は常に俺を楽しませてくれる存在を待っていた。


「――ねえ、麗夜れいや君。この懐中時計、何なの?」


 うん? と返事し目を向ける。内心反吐が出そうだがそれは顔には決して出さない。

 ネイルアートが施された真っ赤な爪で、ポケットから覗いている銀のものを指差されていた。それは先から鎖が伸びていて、ズボンのベルト穴にその鎖の端が引っ掛かっている。

 指で差された物を取り出す為、無造作に鎖を引くと特に抵抗なく銀色のそれは顔を出した。銀色の光沢を放った薄い球状のものは、紛れもない懐中時計だ。


「これか? これな……俺も良く分からん」


「何それ! 超ウケる!」


 何て真っ赤な爪で口を隠して、目の前の女子は大声で笑っている。

 それを横目に流し、視線を懐中時計に落とす。何も装飾のない、武骨なモノ。装飾と言えるのは、放つ光沢だけだろう。

 鎖と繋がっている上部、それと反対側の下部にあるスイッチを奥にずらせば、我慢しきれなかったように音を立てて懐中時計の蓋は空いた。


「ほら……時間がやたらずれてるんだよ。ていうか、動かねえし、文字盤も描かれてないんだけどさ。日付はずっと十日だしよ……」


 そう、この懐中時計は全く動かない。二つの長短の針は本来ならば12の数字がある場所を、数字の書かれていない少し長いメモリを差しているだけ。

 また、中心より僅か横にある白い土台が斬り抜かれたそこには、10という数字。勿論、今日は15日であるのだから間違えていることは当然であり、直そうと努力は朝に試みた。しかし何処にも時間変更のスイッチは見当たらなかった。


「ふぅ~ん……不良品なんじゃない? 何も書いてないし。時計じゃないって、それ」


「ああ、まあそうなのかも知れないんだけど……」


「けど?」


「……いや、何でもないよ」


 時計じゃない、その言葉が少し引っかかったが被りを振り、目の前の女子に笑顔を見せる。相手の目を視界の真ん中に置いて。

 すると相手は一瞬目を逸らし、瞬きしてから俺の方に顔を戻した。


「そ、そうなの? なら良いけどさ……あ、そろそろ時間じゃん! じゃ、私教室に戻るね!」


 じゃあね、と手を振りつつ教室の扉に向かう、名前すらろくに覚えていない女子の背中を椅子に座りながら見送る。


「――言える訳ないだろ。朝、家に出て気づいたら“既に在った”なんて」


 一人、呟きを洩らしていた。

 そうしてやがて教師が授業をしに訪れた。気になる時計は一旦思考の隅に追いやり、机上に勉強道具を広げていく。




 今日は少し気になることがあるというだけで、相も変わらず退屈なまま授業は進んでいった。既に分かり切っている数式をずらずら黒板に書き続けるという退屈な時間は終わった。

 一時間という長い苦痛な時間の間、俺は何度も欠伸をしそうになったがそれを噛み殺した。何度もいっその事ふけてやろうかと思ったが、その衝動を抑えつけた。だから、俺の仮面は健在である。

 一度伸びをして、首を鳴らしてからどうするかということを考える。


「ねえ、麗夜君は今日購買なの?」


 首を鳴らしていると、隣の女子が顔を覗きこんで来るように話しかけてきた。

 内心、面倒臭いと思いつつも、


「ああ。今日は弁当作り忘れちゃってさ」


 微笑みを携えて言葉を返した。俺の笑みに釣られたのか、目の前の女子も笑った。少し八重歯の目立つ女の子だった。


「珍しいね。麗夜君もそういうことあるんだ」


「そりゃあるさ~。俺を何だと思ってるんだよ?」


「え? んん……完璧な人?」


 と笑いながら言う。

 その言葉に俺はほくそ笑む――が、それを顔に出すことなど当然しない。そんなものは誰にも見えない場所で一人すれば良い。せっかく“積み上げて”来たものをわざわざ崩すなんて愚者のすることだ。


「何だよそれは。有り得ねえって!」


「いやいや~、麗夜君はミスなんかしなさそうだしぃ」


「ないから! ないって! ……っと、まあ、じゃあ買ってくるかな。ゴメンね」


 と、顔の前で手を立てながら席を立つ。

 高く上がる俺の顔を、僅かに上気した顔で目の前の女子は追ってきていた。その顔を見て、もう一度許しを請う意味の笑みを作る。


「あ……う、うん。そうだね、売り切れちゃうもんね。行ってらっしゃい」


 という声に俺は後ろのポケットに財布が入ってることを確認しつつ、行ってきますと笑顔で返す。ひらひらと揺れる手の平に見送られ、俺は教室を出た。




「あー…………」


 目の前に出来ている人だかりにうんざりする。紺色のブレザーに身を包んだ生徒が蠢くその様子は、まさに嵐上の海だろう。そこに毬藻のような黒い物体である頭が漂っている感じ。

 わざわざこんな中に突っ込むというのは本当に頂けない。あの荒波に飛び込んで為すがままにされれば俺の体は揉みくちゃにされ、制服が皺になり、左右非対称アシメに決まっている髪型も乱れに乱れてしまうだろう。かと言って波を強引に描き分けて闘牛の如く突き進むのも性に合わないし、柄じゃないし、キャラじゃない。

 どうするか、何てその人混みから一線置いて、頭をボリボリと掻いていると、前から茶髪の小さい少年がやって来た。

 人混みに目を絞りながら向けている少年は徐々に回り込みながらこっちへと近づいてくる。逃げるか、逃げないか――という選択肢を思考の中で繰り広げていると、視界の端に俺を捉えたのか、急に目をこちらに向けて手をぶんぶん振って来た。時既に遅し。

 小さく溜息を吐く。


「麗夜先輩!!」


「おーう。遼太りょうた……」


 手を振りながら近づいてくる“それ”を見て、もう一度誰にも見つからない様に溜息を漏らした。体面上、片手をあげて応えることにする。


「先輩もですか? 珍しいですね」


「まあな……」


 それはもうさっき話したんだよ、と心の中だけで突っ込みを入れる。

 そんなことを知ってか知らずか、遼太は俺の横顔と人混みを、俺より頭一つ分小さい位置にある頭を振って見比べている。


「行かないんですか? 売り切れますよ?」


「いや、めんどくせぇんだよ……分かるだろ」


 俺の顔見りゃ、と三度目の溜息を吐く。いかん、隠しきれなかった。

 が、その俺の様子を見ると、遼太は急にきらきらした目をこちらに向けてきた。全く気にしていないようで何よりだ。


「なら、僕が買ってきますよ!」


「え、マジ?」


「マジです!」


「あ、じゃ、頼むわ」


「はいっ!」


 何て兵隊のように元気の良い声を出して人混みの中に猛進していく。まるでショベルカーのように人混みを切り裂いて行く力はあの小さい身体の何処にあるというのやら。これはきっとこの学園の七不思議に近いものがあると思う。

 しっかし、と心の中で前置きをして、遼太の人混みへと駆けていく様を思い出す。そのお尻に尻尾があるのなら、物凄い勢いで振っていただろう。


「まさに、犬だな」


 誰にも聞こえない様に俺は呟いた。




「――で、何故俺がお前と食わなきゃならないんだ?」


 ベンチの横に三つほど菓子パンを並べながら俺は言う。


「良いじゃないですかぁ。一緒に食べましょうよ~。僕、麗夜先輩と食べたいんですよ!」


 灰の細い縦ストライプ模様のズボンの上に、コンビニで売っているような購買弁当を置きながら遼太は言う。

 にこにこにこにこ。こっちの気など一切知らず、そんな目を向け続けている。


「俺は別に……。まあ、良いか」


 どうせなら女の子と食べたかったが仕方がない。遼太こいつは脚元へと擦り寄られたら蹴っても離れることはないだろう。そのぐらいしつこい。だから諦める。

 まあ、たまには良いさ。身を震わすような寒さの中、枯れている桜の木を眺めながら、男と飯を食うというのも。


「……良い筈ねえだろ」


「え? 何ですか?」


「いや、もう良い……色々な意味で既に諦めた」


 ほうですか、なんて口いっぱいに米を放りこみながら言う遼太の言葉はどうにかニュアンスで理解出来た。理解出来たものの、正直止めて欲しいという気持ちは強い。

 ――と、遼太の腰に見慣れないものがあることに気づく。キーホルダー……だろうか。売れ筋のよく電車で見掛けるような、携帯ゲーム機の形をしたもの。

 まさかとは思うが…………高校にもなってそんなものを身に着けているというのだろうか。この犬っころは。


「遼太……これ、お前の趣味なのか?」


「え、あ、これですか? あー、えーとですねー……」


 もぐもぐしながら視線をあちこちに向けた挙句出てきた答えは、


「内緒です!」


 何ていうお粗末なもの。満面の笑みでそう返されては追及、粛正なんていう気はもはや一瞬で沈静化するというもの。

 そうかよ、とぼやいて俺は菓子パンを齧るのを再開した。




 片肩に引っかかっている学校指定のサブバッグが落ちない様に配慮しつつ、黒い革の靴を履いていく。

 こんな時は座って履くのが一番楽なのだが、そんなことは決してしない。……理由など単純だ。ださい。

 立ち上がり、玄関の扉へと向かって行く。玄関を抜け数歩歩けば、携帯を使っても良いという領域になるのだが、俺はしない。基本的に校内での携帯電話の使用は控えるべきなのだ。だから、俺は校舎を出るまで開くことはない。

 片目に掛かった髪が吹く風に靡く中、歩いていると隣に人影が並んで来た。視線だけを横に動かしてその人物を見れば、女子であることさえ確認すればそれが誰かなんていうことは一瞬で分かった。

 サブバッグを両手で前に抱え、忍び寄る様な自然さで俺の隣に並ぶ女生徒など、俺の知る限り一人しかいない。


「……」


「……」


 敢えて何も言わずに黙って歩いているが、何も相手は話しかけてくる気配がない。これは何かの罰ゲームなのだろうか。微妙に後ろに視線をやらないと見えない位置で歩き、かと言って気配はバレバレな訳で。

 本来なら向こうから俺に声を掛けて来るのが筋な筈だが……俺の一般論が間違っているのだろうか。いやまあ、こちらから話しかけるのも当然ありだが、普通にしていては女生徒の姿は見えないのだ。だからこう……わざわざ後ろに振り向いて話しかけなくてはいけない。……それは何か、負けた気がしないか?


「……」


「……」


 分かった。負けだ。


「――何だ? 汐織しおり


 限界だった。


「え?」


「いや、お前……」


 だって言うのに当の本人は疑問の顔を浮かべるだけであった。

 僅かに傾げた首に従って、短いツインテールが揺れている。


「……何でついて来てんの?」


「え、一緒に帰るからだよ?」


「だったら……そう言ってくれないか?」


「あ、あぁ、そうだね。麗ちゃん、一緒に帰ろう?」


「…………」


「あれ? ……どうしたの? 麗ちゃん」


 頭が痛くなってきた。


「……まあ良いけどな、慣れてるから。でも今日は俺は――」


 と声を捲くし立て上げた瞬間に俺のポケットから震動が伝わる。小刻みな振動のパターンから判断するに、着信である。

 だから会話を中断し、急いで校門の外へと駆け出す。そのまま学校から見えない角度まで走り、ポケットから取り出せば、画面に映るのは昨日知り合ったばかりの女の名前。


「あ、もしもし? 亜美ちゃん? うん、ごめん――え? マジ!? 何でもう来てるの? 俺まだ学校から出たばっか――――サボっちゃダメでしょ!」


 と、電話越しのテンションに合わせて笑いながら喋る。既に後ろでは笑い声と共に歌い声が聞こえている。甲高い声が上がっている所を聴くと、既に酒を飲んでいるのかも知れない。そういう連中だから、仕方のない事なのかも知れないが。


「え、うん、今向かってるよ。急いでる急いでる。めっちゃ急いでる!」


 声に急かされるように足のペースを上げる。無論向かう先は俺のマンションだ。まさか制服で女の子に会う訳にはいくまい。ましてや酒を飲んでいるグループなのだから。

 我が家自体は俺が通っている明柴めいさい学園から徒歩で五分強という、遅刻はまずしないであろうという立地条件の場所にあった。また、俺の通っている学園は比較的この街の中心に位置している。その為、周りにはオフィスビルやら高級マンションやらの高層ビルが整然と並んでいる。……ということは従って、俺のマンションはそのビル群の中に含まれるのだ。俺の部屋に招いた子は、大抵その絶景に感激していた。




 赤い絨毯を踏みしめ、ドアノブの穴に鍵を差し込み、解錠する。

 家に入らなくてはならないのだから、鍵を開けるのは当然だ。だが、隣にいる存在が気になる。俺がロビーのセキュリティを開ける時に便乗してそのまま入り込んで来た人間。


「どうしてお前は俺の部屋の前までやってくる」


 それは汐織だ。

 問いかけられている本人はその答えには何も返さないくせに、


「麗ちゃん。ちゃんと掃除してる? ご飯食べてる? ダメだよ? めんどくさいからってカップラーメンばっかの生活じゃ」


 ついさっき鍵を開けた、僅かに開いた扉から汐織は中を覗きながらそんなことを言ってきやがった。

 見えにくいのか、つま先立ちをしたりと頻りに上下に頭を動かしている。


「食ってねえよ……あんな安っぽいもの……」


 汐織を押し退け、自分だけ扉の中へと滑りこむ。

 たたらを踏みながらも、扉の奥へと姿を隠す俺に尚食ってかかってきた。


「嘘だ。麗ちゃん、前に来たとき箪笥の中に一杯入れてたでしょ?」


「ど、どうしてそれを……って、ああもう、良いよ。帰れ。十分一緒に帰っただろ。じゃあな、俺はこれから用事があんだよ。もう二度と来んなよ」


 と、扉を煩い音がするほど強く締める。――が、言わなくてはならない事を思い出し、閉じたばかりの扉を再び開ける。まだ汐織は変わらず立っており、急に開いた扉に驚いていた。

 だがそんなことは構わず、


「俺がカップラーメン食ってたのは内緒だからな」


 とだけ告げて再び閉める。何か汐織が言っていたような気もするが、正直どうでも良いので聞き流した。

 ……これから急いでシャワーを浴びて、服を着替えて、髪型を整えなくてはいけない。急いで終わったとしても三十分は見ておいた方が良い。これから行くところはカラオケだが……まあ当然のように夜中まで続くのだろう。だから時間が迫るという事は考えられない。

 などと考えながら制服をハンガーに掛けていると、またも携帯が震えた。今度はメールである。サブディスプレイを見れば、またも女の名前。しかし先程とは違う。昨日知りあったばかりだという事は合っているが。用件は見なくても分かっている。要は急げという事だ。

 だから俺はその予定通り、ペースを上げて準備に掛かることにした。




「……まあ、こんなもんだろ」


 鏡の前で組み合わせた、黒のテラードに灰色のシャツ、デザインポケットの青いジーンズ、あとはブーツを履くだけだ。無難すぎる組み合わせだが、俺の顔や体型から見て合っている筈だ。それと、これから向かう場所も。

 それを確認し終われば、次の行動に移る。黒地の服である為、埃が目立つと非常に格好悪い。だから鏡と肉眼とを使ってざっと確認する。


「……大丈夫だな」


 日頃から管理はしてあるから大丈夫の筈だが、一応念の為。そういう所を細かく見られて、男というものが下がるという事はよくある。

 最後に右目に掛かった髪を手ですいて、暗い赤のチェック柄のマフラーを巻く。身体の前方に長くぶら下がったそれは、防寒着よりファッションとしての意味を大きく成す。


「よし……行くか」


 確か今日は合計で六人の筈だ。無論、全員女の子。ああ、けれど確か一人いなくなったんだっけか。それで元々知っている奴が二人で、知らない奴が三人ということだった筈だが、今は三対一の比重となっている。何故かその知り合いが誰なのかは俺に教えられていない。サプライズだとか訳の分からないことを言っているが、まあ気にしないことにした。こういうのは乗せられている方が、乗せる側としては楽しい筈だから。

 黒のシューズを丁寧に履き、玄関を出ると、


「お前……何でまだいるんだ?」


 赤い絨毯の上に膝を折って腰を下ろしていたのは汐織だった。あれからずっと待っていたのだろうか。

 扉を閉めてからゆうに二十分は経っている。廊下にも空調が効いている言えども、少し寒かったのかポケットの中へ手を入れていた。


「あ、麗ちゃん。何でって、だって……私も行くんだよ? そこのカラオケ屋さんに」


「え、あ、お前なの? ……あ、じゃあもしかしてキャンセルしたって奴は」


「理香ちゃん」


「あ、そう、成程。喜多山きたやまね……ああ、喜多山繋がりか……なるほど」


 喜多山理香。端的に表現するならば……遊び人だ。夜遅くまでライヴに行くわ、無免許でバイク乗り回すわという人物だ。だから、至って普通の、むしろ真面目な生徒である汐織と仲良くしているのが正直俺には理解出来ない。まあ、いわゆるでこぼこコンビという奴なのかも知れないが。


「だったらお前そう言えば……いや、何でもない。……まあ、じゃあ、行くかな」


「うん」


 と言って立ち上がる汐織。


「ああ、そうか。お前も来るんだっけ」


「そうだよ」


 と俺の隣に掛けて来る。

 はあ、と溜息を吐いて歩き出す。あまり汐織はそういう場所は似合わないから、なんだか、拍子抜けしてしまった。

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