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8話 家をリフォームしよう



 しばらくまったりとした時間を満喫しつつもそろそろ再開するかぁと腰を起上げる。


 「しっかし召喚魔法がこうも使えるなら異世界に行っても結構楽に生きれたんじゃないか? 正直魔法が使えれば異世界で暮らすのも楽しそうなんだよなぁ。

 あ…でもダメか。絶対自分だけ異世界で浮きまくるなそれじゃ。服も食べ物も召喚で何とか出来ても周りと軋轢作りそうだ。人と関わらないで生きていけばそれでもいけたんだろうけど、せっかく言語や文字について力くれたのにそれじゃ意味ないしな。

 やっぱり慣れてる地球の方が現代人の自分等は生きやすいのかねぇ…こんな性格じゃなければなぁ」

 

 召喚魔法が使えることが分かり、異世界暮らしをした場合について考えるが最終的に人と関わらない生活が待っているかもと結論が出るとげんなりしてしまった。

 人と関わるのはそこまで好きではないとはいえ、全く関わらないでいることもできないのが人社会だ。どこかで折り合いは付けなければいけない。


 「ま、もうこっちの世界にいるんだし異世界の事はどっちにしろ諦めるしかないわな。それにこっちの世界も異世界の要素があるっていうしそこに期待しますか。

 よし! 魔法再開だ。とりあえず家の周りの草をまずはどうにかするか。何やるにしてもそれなりのスペースは必要だからな。撤去してこう」


 将一は異世界への未練を頭を振って追い出す。こっちの世界で生きるのだから、兎にも角にもこちらでやることをやってしまおうと草の撤去を開始した。

 

 それからしばらくは草の転送をやり続けた。慣れてきたこともあり1m×1mをさらに広げ一気に草を無くしていく。

 目の前から一気になくなることで、目に見えて広い場所を確保できているのが実感できて気持ちがいい。最初は無理だと思っていた草も、前庭の大部分が消えてずいぶんすっきりしたように感じる。

 そしてほどなくして前庭の草がなくなり、ずいぶん広い地面を目にすることになった。


 「いやー、家の大きさがまさかここまで大きいとはねぇ。これが爺さんの土地だったていう設定ほんとに大丈夫なのか心配になってくるぐらいだわ。

 日本でこれだけの土地を持ってるってずいぶん羽振りがいい生活だったんだろうなぁ。自分が生まれる前のバブル世代って時にでも手に入れたんだろうか? それともここがかなりの田舎だった可能性か。

 今日は無理でも明日は山降りて町に行ってみなきゃなぁ…。実際調べなきゃいけない事ごまんとあるし。

 その前にやれるとこまで今日はやってしまわないとな。家の裏手まではいけるかねぇ…」


 草がなくなった前庭の中央に立って、ボロボロの家を見上げる。

 玄関前からだと草で見えなかったが、庭側は玄関よりもっとひどい朽ち果て具合で声が出なくなった。


 家の中にまで入り込み、柱や地面を這う蔦を見てこんなになるもんなのかと驚く。

 前庭から家に続く縁側は腐り落ちて変色してたり、奥の部屋の障子や畳、家具等も雨風にさらされ酷いもんだ。

 外にいるはずなのにかび臭さがここまでわかるのも嫌な気分になる。

 

 「これどうにかできんのか? 不可能を可能に…ってことらしいが、この状態から何の魔法掛けたらまた使えるようになんだ? 大規模な魔法ぶちかまして、一旦壊してから立て直しの時間短縮がせいぜいに思えるぞ。

 いや…転送魔法でこの腐った家取っ払って地面露出させて、新しく立て直すほうが周りに被害がでないか…」

 魔法でどうにかできるのかと案をいくつか出すが、いまいちしっくりくる案が出ない。


 「あー…それにこの中に神様からの贈り物もあるんだっけか。ぶっ壊す案は却下だな。となるとやっぱ家ごと転送して地盤出すやり方が…。いや、待てよ? 確かなんかの映画だったかアニメでこれに似た状況が…」


 しばらく考えていると、神様からの贈り物があるということを思い出した。壊すというやり方は取れなくなって第2案をやるべきか考えるが、そこに今の状況を何とか出来るかもしれないヒントが頭を過る。

 将一は必死に何だったかと思い出す。確か魔法が題材だったはずと。

 自分が見ていたものなんていわばポピュラーなもので、すぐ思いつくと思っていたがなかなか題名が思いつかない。ならばせめてその場面でも思い出そうと記憶を探る。


 「確か…こんな展開だったはず。これ何やってた場面だったか…。

 んー…思い出せん。あれを見てから時間が経ちすぎてるから記憶が…。ん? 時間が経ちすぎて…?」


 記憶をさらうのに詰まった時、ふと口にした最後の言葉にひっかかりを覚える。


 目をぼろぼろの家に向けた。こうなった原因は人がいなくなった後の雨風によるものだが、それが最近の物ならばこうはなっていない。


 「雨風の影響を長く受けすぎたんだ。ならそれをなかったことにさえすれば…。因果を巻き戻せばあるべき姿に戻るんじゃないか?

 つまりは時間を巻き戻す…。そうだよ、簡単な話だったんだ。ヒントなんてごく身近にあったんじゃないか!」


 これで元に戻る! と喜ぶ。

 ヒントにしてもこんなに近くにあったんだなと自分の両腕を見つめる。


 「自分の体がいい例じゃないか。ストレスやら仕事に追われて痛んだ体を元に戻し、健康な状態に戻った。まんまこの家の状況にも当てはまるじゃないか。

 よっし! 早速やってみるか!」


 やり方を理解すると、興奮冷めやまぬ内に準備にかかる。

 ボロボロに朽ち果てた家に向かって両腕を伸ばす。イメージは無理だが、言葉を口にすればそれを実行してくれるのはすでに分かっている。

 これで一番気になっていた案件にも片が付くと、間違うことがないようにしっかり声に出した。


 「対象、目の前の古民家。ボロボロに壊れる前の状況に復元されろ。時間よ巻き戻れ!」

 その言葉を言い終えた瞬間、目の前でそれは行われた。


 腐っていた木材は変色が消え去り、若々しい元の木の色に戻る。木屑となってボロボロだったものは再びくっつきあい、綺麗な木目を形成しなおすとそれが床に天井にと、もともとあったところに戻っていく。


 虫食いにあった柱はどこからともなく木が足され、穴は綺麗に修復されて元の太さを取り戻す。


 雨戸は色を取り戻し、綺麗な木目を浮き上がらせ今後は雨風を防ぐ役割を果たしてくれる。


 もはや形を残していなかった障子はしっかりと形を取り戻し、真っ白な和紙を張り付けて部屋と廊下を遮る壁としてよみがえった。


 腐っていた家具は元の形を形成しなおし使われていただろう時の形に戻る。


 ボロボロでかび臭く使い物にならなかった畳は、若草色を取り戻し、原料となった草の香りを放つ。


 直った天井には穴などなく梁もしっかりと渡されており、ボロボロだった茅葺は今では綺麗に揃ってまとめられ、雨や雪や風から家を守ってくれるだろう。



 将一はそれらを唖然とした表情で見つめる。

 この家に人がまだ住んでおり、綺麗だった時の形はわからない。故に魔法を使うときにはイメージなんて出て来やしなかった。


 昔あちらの地球にいたときの古民家は、古民家というだけあってそれなりに傷があったり色あせている部分も多数あった。新築の完成した綺麗な家も、町に住んでいれば見る機会はいくらでもあったが、人の家でもあるからそうじっと見たことはない。


 今この世界に来て初めて近場でまじまじと見る。新品な古民家という相反するような言葉だが、周りの草むらに負けないほど自然の香りを放っている。

 きっと元居た地球でも、こんな綺麗な状態で残存している家はないだろう。魔法によって時が戻ったからこそ見れる光景だった。異世界では魔法があったとしてもまず建物自体がなく、目にする機会はない。

 日本の建築文化をこれでもかと表している家が、今目の前で完全修復された。


 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔法が使えるのは良いんだがなんでも出来て魔力消費してる描写もほとんどないのは良くあるなんでもアリな創造魔法も超えてしまってるチートだと思う。主人公もほぼ凡人気質で面白い展開を望めそうに…
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