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743話 転職?




 「それじゃあ自分はこれで失礼します。色々話を聞かせてもらいありがとうございました」

 「構いません。飛行ゴーレムのテストを紹介してもらった事もありましたしその内声を掛けようと思っていたので。連絡をする手間が省けました」

 「グッドタイミングだったわね!」


 そう言うと鹿田さんはグッと親指を立てこちらに突き出してきた。結構テンション上がっちゃってるな。

 あれから話も終え一緒に会計を済ませると店の外へ出る事にした。田島さん達もそれなりに飲んだらしく全員ほろ酔い状態だ。


 「それと出発前に頼まれていたゴーレム作製の件ですけど、今作り終わって後は起動待ちの状態です。明日には4体お渡し出来ますね」

 「おっ! おおきにな。それやったら明日連絡を貰ったら受け取りに行くで。だいたい何時頃になりそうなん?」

 「夕飯前に最後の奴が出来たのでだいたい6時頃ですかねぇ? 早ければそのぐらいの時間にお渡しする事が出来ます。明日御都合が悪ければひとまずは倉庫に置いときますけども」

 「問題あらへんやろ、了解や。連絡を貰い次第うちが受け取りに行くとしよか」

 田谷さんは明日で問題ないと、そう言って片手をあげ返事を返してきた、田上さん達も田谷さんが受け取ってきてくれるので問題ないらしい。明日は頼んだとそれぞれ頷きながら田谷さんに声を掛ける。


 「受け取りを確認した後料金を振り込ませていただきます。ゴーレム作製の件ありがとうございました」

 「他の人にも作ったので少しは慣れました。あれぐらいでしたらお安い御用です。まぁ、続けてそう何件も受けるとなると話は別ですけどね」

 「これで後は佳奈芽に頑張ってもらわないとだね。残りの駒の分よろしくっ!」

 「地上の戦力もこれで一通りは揃うかな」

 「いざとなれば私も地上の方へ回るけどな。それまで持たせてくれる壁が居るのは大変助かるぞ。石田もお疲れさんだ」


 皆もゴーレムが増えたことに対し満足そうな表情をしている。

 田島さん達も飛べるようになり空中の戦力も充実し今度は地上の戦力も整ってきた。順調に事が進んでいるとなれば嬉しくなるのは当然だろう。


 「どういたしまして。それでは明日またご連絡しますね、では今日はこの辺りで」


 そう言うと手を振りながら空中に浮かぶ。田上さん達も同じく田島さんと鹿田さんに浮遊を掛けると手を引っ張り空中へと浮かんだ。

 お互い空中で別れるとこちらは倉庫へ向かう。お酒を飲んでても飛行が使えるのであれば移動は楽だな。


 「後は帰って自分のゴーレムの整備だろ? それとあっちの倉庫で使うゴーレムも用意しないとだな。入り口に置いとく用の3体でいいか。流石に駒で回収して侵入はされないだろ」


 一応倉庫にはカメラもあるのでそれで何とかなるだろう。カメラを仕込んだ移動式のゴーレムはまたその内置いて来ればいい。そっちは今度向こうのダンジョン街へ行く時にでも用意するとしようか。

 それと結局ダンジョンから帰って来た時間も時間だったのでゴーレムに偽装を施した意味はほとんどなかった。今日は後そのゴーレムの始末をして終わりとしよう。出かけ先から帰って来たんだし夜はゆっくりするか。

 寝る前にでも向こうの倉庫に転移しゴーレムだけ置いてくるかとそう考える。ついでにトレーニングもしてこようかね……だとすると晩酌はほどほどにしておくか。


 「明日は運搬の依頼も入ってるしどっちにしろ程々にしておくか。街中の運搬だしそれほど苦労はしないだろうけどな」


 夜風を体に受けつつ酒で火照った体を冷ましていく。空から見下ろす街の夜景も綺麗だな。

 夜の飛行もこれはこれで気持ちいいと思いながら倉庫へ戻る事にする。明日用に修理したゴーレムはそのまま倉庫へ置いておかないとな。





 「お待たせしました、こちらが受けたご依頼の書類になります」

 「どうも」


 依頼の受付で書類を受け取るとそれを鞄に仕舞い受付を離れる。向こうの話では昼頃に来てくれという事だ。緊急性の薄い依頼を受けたので時間的余裕は結構あるらしい。

 次の日の朝。昨日受けた依頼の書類を貰いに行く為再び管理部へと来ていた。日時について受付スタッフさんが確認してくれたところ今日知らせると言われたらしく再び受付に来なくては行けなかった。この辺りなんだか二度手間な気がするんだけどね……。

 ともかく、昼頃までは時間が出来たと時間を潰す事にする。お酒を飲むのは論外なので適当に食堂で休むか資料室にでも行って資料に目を通すか。5層に潜る準備もあるし地図の更新をしておくのでもいい。どこか情報が更新されているかもしれないしな。


 「飲み物でも買って資料室に行くか……混んでないと良いんだけどなぁ」

 購買でペットボトルに入ったお茶を買うと資料室へ向かう。そして資料室の前まで来た所なにやら見知った顔を見つける事になった。


 「浜田さん、それに広田さんと深田さんも。お久しぶりです」

 「ああ、石田さん、お久しぶりです」

 「石田さんも資料室にご用事ですか?」

 「結構な混み様みたいだぞ」

 資料室の前でそう言って浜田さん達と挨拶を交わし合う。3人が揃っているっていうのも珍しいか? 制服でもないし今日は休日だろうか?


 「浜田さん達3人共今日はお休みですか? 階級が上がってからはお忙しいみたいな事を聞いてますけども?」

 「あー……実はですねぇ……軍の仕事の方はやめたんです……」

 「え?」

 軍をやめたと聞き一瞬考えさせられる。つまり退役ということだろうか? 何とも急な話のような……。


 「えーっと……最近階級も上がったとかそんな事仰ってませんでしたっけ?」

 「ええ、まぁ……。とはいえ元から考えていた事ではありまして。私達としても急激に昇進したので思いのほか早くやめる事になったなぁ……と」

 「元々は探索者志望だったのですが軍を間に挟むことでマジックアイテムが貰えますので給料を溜めつついつかやめようとそう思っておりまして。

 給料の方はともかく、階級が上がったのでマジックアイテムの方は条件が満たせたと言いますか……」

 「探索者に転向するという条件は必要だが思いのほか早くマジックアイテムは貰えるようになったといった感じだ。

 どちらかと言うとマジックアイテムの方が優先度は高くてな。後は当初の予定通り探索者をやろうとなったわけだ」

 「そう言えばそんな感じの事を食事の席でも聞きましたねぇ……」


 3人から軍をやめた理由が説明された。

 確かにマジックアイテム目当てで軍に入る人は居るという話だ。階級も上がり探索者に転向するという条件も問題ないのであれば軍をやめたとしてもおかしくは無いだろう。まぁ、詳しい理由は他にもあるのかもしれないが……。

 浜田さん達3人はつい先日探索者登録をしてきたという話だ。これからは探索者として活動する事になるらしい。軍経験者ということでいろいろと便宜も図ってもらえるそうだしいきなり探索者をやるよりかは良い事もあるそうだ。


 「軍経験者であれば地図のコピーも可能でして。元々は軍主導で作成したものですからね。結構有難い特典の1つですよ」

 「確かにそれは良いですね……実は私も今その地図を更新しようと思いここに来たわけでして」

 鞄から地図が書かれているノートを取り出して見せる。コピーした地図を所持出来るのははっきり言ってかなり羨ましく思えた。だからと言って今から軍に入り階級を上げようとは思えないのだが……。


 「こうなると探索者としては石田さんの方が先輩ですね。わからない事があれば聞かせてもらうこともあるかもしれません」

 「いやいや……自分なんかじゃ教えられる事なんてありませんって。浜田さん達の方がダンジョン歴は当然長いでしょうし」

 「石田さんは現在何層まで進まれましたか? よろしければ探索者になった事でもありますし軍とは関係なくまたご一緒に探索でもいかがでしょうか?」

 「俺達は7層までなら潜った経験があるぞ」

 「自分はまだ4層までですよ。やっぱり浜田さん達の方が進んだ階層多いじゃないですか」

 「私達の場合は仕事の関係で潜る事が多いですからね。先輩の方々にお付き合いしてもらい進んだので自分達の力かと言うと少し怪しいですが……」


 中堅の人達に付いてきてもらい進んだらしく苦笑いを浮かべる浜田さん達。それでも基本は自分達で対処をさせられたらしいしそれだけの力と経験はあるのではなかろうか。

 助っ人として頼まれた場合同伴する事もあるだろうしただ階層を進んだだけとかそう言う事は無いと思う。


 「辞めた際に頂いたマジックアイテムもありますし個人的な戦闘力は上がっているので7層以降も何とか頑張れるかと。それに今なら低階層からマジックアイテムを入手出来る可能性もありますしね」

 「5層……は少し様子を見るとして……3層か4層辺りでも今度一緒に潜りませんか? マジックアイテム探しのついでに素材集めなどでも」

 「素材集めは探索者になって本格的にすることになるな。石田さんのゴーレムもその際は頼りにさせてもらうとしよう」

 「現在はそういった役目って探索者に任されてますもんね。……わかりました。その時はよろしくお願いします」

 そう言うと了解と口にしつつ頷いた。このメンバーは初探索時以来だな。


 「しかし戦力にゴーレムが大量というのはこうして見ると便利ですね。私達も出来れば駒を見つけておきたい所ですけども……」

 「PTメンバーの確保もそれなら楽だしな」

 「石田さんがソロで潜っていた時の気持ちがなんとなくわかるな」


 PTの人数的には4人しかいないが不足分はゴーレムで補える。なんのマジックアイテムを貰ったのかはわからないが銃の使用は軍経験者であれば不自由はない。遠距離と近距離の組み合わせは軍の人達であれば得意とする所だろう。

 駒の発見からゴーレムとの共闘も訓練内容に組み込まれただろうし浜田さん達も駒を使った戦闘を学んでいるはずだ。

 軍の伝手があればゴーレムの用意も比較的楽だそうなので駒さえあればかなり助かると思われる。流石に辞める時に駒のマジックアイテムは貰えんか……。

 

 これからは時間も結構自由に使えるようになったらしいしその辺りの事をまた今度飲みながらでも話そうと言葉を交わしあう。

 自分としては明日からとかでも良いと言えば良いのだけどね。浜田さん達も探索者を始める準備は大体揃ってるのだそうな。





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