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725話 異変報告




 「とまぁ……以上が私達の見て来た事となります。たいして情報はありませんが」

 「そんな事はありませんよ。早くに異常を知る事が出来たとそちらが重要ですからね。

 話を聞く分にあちらのダンジョンの変化と同じ感じですね。湧いているモンスターの変化に地図と一致しない通路というだけでも十分な情報です。早めにそれ等の報告が聞けて助かりました」


 沖田さんの報告を聞きそう言って頷く蓑田支部長。

 沖田さん達は先程も少し聞いたように湧くはずのないファイアーゴーレムを見て一目散に帰還してきたそうだ。そしてその際に地図と通路が違う事も気づいたらしい。

 通れるはずの通路が通れず、存在しないはずの横道があったりと現在位置もその都度惑わされたという。昨日の昼過ぎに潜り帰って来られたのがつい先ほどという事だ。


 「転送された位置がもっと帰還陣から遠かったら私の方が先に帰って来てましたね」

 「それ程帰還陣から離れていなかったはずなのに参ったよ……うちの索敵班も探知に四苦八苦してたし」

 「地図と違っているとなると迷いますからね。その点私はわかりやすい所に転送されて助かりました」

 「ではお次は石田さんの報告を聞きましょうか。石田さんは1層でしたね?」

 「はい、そうです」

 沖田さんからは以上と、続けてこちらの報告を聞こうとする蓑田支部長。正直こっちも似たようなもんだけどさ。


 「私が潜り始めたのは今朝です。転送先は地図で言うとこの位置にある地底湖ですね。正確に言うのであれば地底湖へと続く通路ですが。

 地底湖から続く通路を見ればいいと現在地の特定も他の場所に比べれば比較的簡単でした」

 「ここか……地底湖を横断しなくていいのなら転送先としては有難いんだよな」

 沖田さんは地図を見ながらそう言って頷く。場所を特定するのであれば地底湖は広場よりも簡単だ。出入り口も2つしかないと見るべき所が限定されている。


 「そして私の目的とも合っていたのでそのまま地底湖へと向かいました。地底湖の素材を持ち帰ろうと思っていましたので」

 「探索者の多くがマジックアイテムを求め移動してしまった所為で持ち帰ってくる素材も減っていますからね。管理部としてはどこの素材だとしても歓迎します。

 そして石田さんはそこでいるはずのない感知蟹と遭遇してしまったと……」

 「はい」

 そう言うと荷物からカメラを取り出す。そして携帯を操作し写真が保存されているファイルも開いた。


 「その時倒してきた感知蟹の写真がこのカメラに収めてあります。こちらを証拠として提出しようかと。携帯の方でもわかりにくいかもしれませんが一応撮ってあります」

 「写真の提供ありがとうございます。携帯の写真は……これですね」

 蓑田支部長にカメラと携帯を手渡す。そうして早速確認をしようと携帯の写真を見始めた。真剣な表情で写真を次々確認していく。


 「んー……俺達も撮っておけばよかったか。先行偵察してきたメンバーからその話を聞いてすぐに引き返してしまったからなぁ」

 「私の場合既に知ってしまった時には戦闘が始まってしまったというのもあるのでそのついでですね。先に気づいた場合だと空中からの写真になっていたかもですけど。

 地底湖だと空中が使えますし、感知蟹が使う放水にさえ気をつければ結構楽ですからね。高台も上って来られませんし写真を撮ったら後は逃げればいいと」

 「そうだな。

 通路だと写真は撮りにくいか。フラッシュでまず気づかれるし……。遠距離から撮るにはどれ程の望遠レンズが要る事か」

 「通路の場合はまずモンスターを倒さないと写真もおちおち撮ってられませんね」

 沖田さんと証拠の写真について語り始める。変化した壁は証拠にし辛いのでそちらも写真には撮ってないとの事だ。


 「おや? 石田さん、感知蟹の後に宝箱の写真が写っていますけどこれは?」

 「ああ、それですか」

 先の方まで確認をしているらしい。他の証拠として撮った宝箱の所まで来たようだ。


 「沖田さん達と同じように変化した通路も道中発見しまして。そして地図には書かれてない新しく出来た通路の先に運良く宝箱も見つけまして。その時の写真です」

 「……見つけた武器は槍ですか? ずいぶん長いですね」

 「フライングランスというマジックアイテムだそうで。武器としての槍は上手く使える自信は無いのですけどそいつならまだどうにかなりそうです」

 「マジックアイテムまで見つけてきたのか、運が良いなぁ……。飛行を使えるんであれば空中からの良い武器になると思うぞ」

 「やっぱり地上で使うよりは空中の方が良いですかね?」

 「おそらくね」

 沖田さんは羨ましそうな視線をこちらへ向けつつ利用法を口にする。投擲中の威力UPと主な使い方はやはり投げ槍だそうだ。


 「そちらのカメラにも同じ感じで写真が撮ってあります。モンスターと宝箱の写真で一応参考にはなるかと……」

 「すぐにでも現像させましょう。新しいカメラは管理部からお受け取り下さい」


 帰りにでももう1度受付へ寄ってくれとの事だ。

 蓑田支部長はそう言うと手元のベルを鳴らす。すると、自分が入って来た扉とは別の扉から男性が1人入って来た。


 「お呼びですか?」

 「これの現像をお願いします」

 「わかりました」

 それだけ言うと男性はカメラを受け取って退室していった。


 「秘書みたいなものです」

 「なるほど」

 増田支部長の所でも支部長付きの秘書さんが居たかと納得する。支部長のお付きといった感じだろう。


 「それと感知蟹だけですけどそちらも一応持ち帰ってきています。こっちも提出をした方が良いでしょうか?」

 「感知蟹をですか? 携帯の写真では3体写っていましたが……」

 「ゴーレムに担がせています。例の駒のマジックアイテムを持っているので」

 「へぇ~、あれを持ってるのか。そいつは羨ましい!」

 携帯はもういいのか蓑田支部長から受け取ると今度は駒を荷物から取り出す。蓑田支部長もこのダンジョン街ではまだ珍しい物らしくこちらに視線を向けている。沖田さんは隣とあって机の上に出したそいつをガン見していた。


 「感知蟹3体だけですけどこいつも証拠になるかなぁ……と思いまして」

 「正直感知蟹そのものはあまり証拠という事にはならないでしょうね。まぁ、写真の裏付けにはなりますか。後で倉庫で卸していただけますか?」

 「後で寄っていきます」


 蓑田支部長は駒を見つつゴーレムが背負っているという感知蟹を卸していくよう口を開く。証拠としては微妙そうなので普通に卸していけばいいそうだ。

 冷凍してしまったのが裏目に出たらしい。冷凍状態なら持ち込んだという事も出来なくはないしね。

 写真に写っている通りの切断の跡など証拠と一応一致する部分はあるのであれば参考には出来ると。それに少しとは言え持ち帰って来た素材も増えたわけだしな。


 「これ等の証言や証拠を元に管理部でも話し合いをしましょう。お二方の情報提供感謝します。管理部としても早急に調査班を出発させようと思います」

 「こっちのダンジョンでも異変開始となると何かと厄介でしょうね。あちらを担当されている増田支部長もかなり頭を悩ませていたみたいですし」

 「一応低階層に高層のモンスターが出て来たりマジックアイテムが低階層で見つかるようになったというのはかなり嬉しい事でもあると思うけどね。まぁ、俺達にしてみれば高層のモンスターはまだまだお呼びじゃないんだけどさ……」

 沖田さんは駒を観察しながらそう言って肩を竦める。沖田さん達は攻略が始まったら運搬班をやることになるそうだ。初心者探索者(ルーキー)の役割ってのはやっぱりそんな物だろうと。


 「マジックアイテムを目当てに来てる探索者のいくらかは呼び込めると思うんだけどな? 電話で知り合いに聞いたんだけど、あっちのダンジョンって潜るまでの間列に並んでるだけで疲れるとからしいし」

 「ですね……」

 「しかも潜った後は後で他の探索者とは宝箱の発見って競走だろ? 人が多すぎて宝箱を見つけられず空振りで帰ってくるはめになるとか聞かされたよ。攻略の必要はあるけどまだこっちに来た方がマジックアイテムも見つけやすいんじゃないか?」

 「私としてもそうなってくれる事を期待しますね。これから寒くなってくるとなると雪はテントでどうにかなったとして寒すぎて長時間なんて待ってられませんし。冷えた体で洞窟エリアとか転移早々温まる所から始めたり……」

 「むしろ洞窟エリアの方が温かいまであるな……ダンジョンへ潜る前に風邪とか冗談じゃないか」

 沖田さんも冬場の縦列は御免と苦笑いを浮かべる。出来れば完全に冬になる前にある程度は攻略をしてしまい所だ……


 「……探索者の方達には面倒をお掛けします。

 ……今からお話する内容はここだけの話としてひとまず胸の内に留めておいてください。PTメンバーの方ぐらいは構いませんが……」

 「? なんでしょう?」

 「PTメンバーにはOKと。私の方からも教えるとしてそこはしっかり言い聞かせておきます」

 唐突に蓑田支部長はそう前置きを言って自分達に話しかけて来た。なんだろうかいったい?


 「……実はお二方から報告を聞かされる前に異変の情報は聞いておりまして。ダンジョンに異変が起きたというのは管理部としては昨日の時点で知っているのです」

 『ええっ!?』

 蓑田支部長のその言葉に沖田さんと2人して驚きの声を上げる。もう知ってたのかよ!?


 「とはいえ……このダンジョン街で異変が起きたというのは本当つい先ほど知りました。それについてはお二方からの情報提供大変感謝しております」

 「え? ……ちょっと待ってください? 『このダンジョン街』では……?」

 「他にも異変化したダンジョンがあるって事ですかっ!?」 

 「しばしの間ご内密にお願いします」


 蓑田支部長がそう言って軽く頭を下げる。沖田さんと2人して口を開けた状態のまま呆けてしまった。まさしく開いた口が塞がらないってやつだ……。

 このダンジョンの異変化ですら予想外だったというのにここにきて違うダンジョンでも異変が起きたと教えられる。ダンジョン内で感知蟹を見かけた時と同じく頭が働かなかった。

 

 「……いったい全体どういう事よ?」





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