723話 ダンジョン1層(ソロ) 異変再び!?
……パシャ! ……パシャ! ……パシャ!
「よし、写真はこんなもんか」
カメラを使いたった今倒した感知蟹を撮影する。これで1層でこいつを倒したっていう証拠になるだろうか?
「日時もわかった方が良いか……携帯でも一応撮っておこうかな」
念の為と携帯の方でも撮影をしておく。使い捨てじゃなくて普通のデジカメを買っておこうかね。そっちの方がすぐに確認もできて便利だろう。
デジカメを地上へ戻った際の買い物リストに追加しておく。こっちはそこまで必需品ってわけでもないし向こうのダンジョン街でも買えそうだ。
「とりあえずこいつはこんな所でいいかな。実物も提出する必要ってあるかね? 渡せるんであれば渡しておいた方が良いか……」
後でゴーレムにでも担がせようと冷凍し箱へ収める。ゴーレムが居ないと全部の持ち帰りは大変だろうしそこまでする必要はおそらく無いだろうけどな。
ひとまず感知蟹に関してはこれで良いかとゴーレムの方を続けて仕舞っていく。一応警戒させておいたがどうやら杞憂で済んだようだ。
地底湖での初戦闘も無事に終わりホッと息を吐きたい所ではあるがどうやらそうも言ってられなくなったらしい。
戦闘後の片付けが終わったところで更に頭を悩ませる。いったいぜんたいどうなってるのか……。
「しっかしなんで感知蟹が1層に居るんだ? こいつって聞いた話だと2層から見かけるって事だったよな? 本来1層じゃ居ないはずのモンスターなんだけど……」
転送陣の所に居たスタッフさんが間違って行き先を2層にでもしてしまったのかとそう思ったが自分はまだ2層へいけない。1層以外の転移は無理とこの線は早々に頭から除外する。自分が現在居るこの階層は1層で間違いあるまい。
「2層へなんてどうやっても来られるわけがないしな、そこは確実か。最後に自分でも確認はしたし」
それならばと他の可能性は何があるか考えを巡らす。
一番考えられるとすればまたもやダンジョンの気まぐれだろうか? 感知蟹の出現階層の変更をしたとすればこの疑問は早々に解決する。
しかしそうだという確証は今の所どこにもない。まぁ、ダンジョンの気まぐれを知る方法なんて正直無い気もするが……。
「そうであれば何も問題ないんだけどなぁ。1層にちょっと手ごわいモンスターが増えたと全く問題がないってわけでもないんだけどさ。
とはいえ……だとしてもモンスターの出現階層を変更とか唐突過ぎるよな? 気まぐれである以上唐突だとしてもこっちがどうにか出来る問題ではないんだけども……」
そうであったなら管理部側はモンスターの出現に何らかの変更があったと注意喚起するぐらいしか手はない。もっと厄介なモンスターを1層に湧かせてないだけまだマシと言えるだろうか?
他にもなにか変更があるかと思い、モンスターの反応がする奥へと遠見を使って確認してみる。1層に変更したモンスターは感知蟹だけだろうか?
「……おいおい、ヘビーアリゲーターまでいやがるぞ……流石に初心者探索者が確実に通る1層でこいつはきついんじゃないのか?」
水辺を移動している所に襲ってくるとなるとかなり厄介なモンスターだ。幸い遠距離攻撃は持ち合わせていないがそのパワーは非常に大きい。水中だとゴーレム並みにパワーを発揮するはずだ。以前支柱を噛んでへし折られたしな。
風の能力者なんかであればその脅威度はかなり下がるが、水中や水上を行く者からすれば結構な脅威だ。1層にこいつまで湧かせるのか?
更に奥の反応を調べるとエアーマンタも見つかった。こいつも本来であれば1層で見かけなかったモンスターだ。1種類という事は無いと思ったけど湧かせるにしても他にいるのではなかろうか……。それこそ気まぐれで湧かせているのであれば何にも言えないが。
「これじゃあ本当にあっちのダンジョンに初めて潜った時と同じじゃないか……てかこの分だと地底湖だけじゃないよな……」
当然通路や広場の方でもモンスターの種類が変わっているとそう推測出来る。ほんと、何で今そんな事になってるんだか……。
ちょっとダンジョンに潜りアイテムの設置をしに来ただけなのにと溜息を吐く。タイミングがほんと最悪だ……。
「最悪って事は無いか……? 最悪なのは向こうのダンジョンみたいに地形そのものが変わっちまうことだもんな」
モンスターの変更ぐらいであればまだマシかとそう肩を竦めつつ地図を確認する。一応こちらの方も見ておこうと。
「……は? おいおい……嘘だろ……? こっちも変わってんじゃんかよっ!?」
探知の範囲を更に広げ1層全体の探知結果と地図を重ね合わせる。そこには昨日書いたばかりの地図とは明らかに一致しない通路が出来ていた。本来あるはずの通路も探知結果からは消えている……1層の地図がめちゃくちゃだ……。
重ね合わせた地図を確認し我が目を疑う。これではあちらのダンジョンとまるで同じだ。
「いや……ほんとどうなってるんだ……? モンスターだけでなくダンジョンの内部そのものまで変わってるし。最悪の変更じゃんか……」
いきなりの事で頭が働かない……こちらのダンジョンも向こうと同じく異変化したという事か? ほんと何で急にこうなる?
「自分がアイテムを設置したから? でも感知蟹はゴーレムを出す前からあの位置に居たよな……? 少なくとも原因はあれじゃないだろ……」
階層そのものが変異したと頭が追いついてこない。確かな事は言えないが自分のゴーレム設置とは関係ないはず……だとしたら原因は……?
ただ単にモンスターが変更になっただけとそう思っていたが実はそうではなかったようだ。これはかなり面倒な事になったのではないか?
もはや何がどうなっているのかわけがわからないと完全に腰を落とし考え込む。岩茸探しがどうのこうのなんて言ってる場合ではないのは確かだ。
とりあえずここではなんだと今降ろしたばかりの腰を持ち上げ地底湖の入り口まで戻ることにする。考え事をするにしてもあちらまで戻った方が良い。
先程ぶりと高台から地底湖を見下ろす。こちらの方が幾分か気持ちも落ち着いた気がした。モンスターが近づいてきても対処をしやすいからか。
「はぁ……どうして今こんなことになってんだ? マジックアイテムの所為ではないだろ。じゃあなんなんだ? さっぱりわからん……」
いったいぜんたいどうなっているのかと頭を悩ます。
こうなってしまってはこちらのダンジョンも攻略する必要が出てくるはず。おそらく広場辺りでは大型のモンスターも湧き始めているのではなかろうか? 低階層のモンスターがこうまで激変してしまっては初心者探索者の死亡率も爆上がりだろう。
「初心者探索者のほとんども今はあっちのダンジョンへ行ってるらしいしそこまでの犠牲者は出ないか? けどその内また戻ってくるよな。このままってわけにはいかないだろうよ……」
初心者探索者の死亡率が上がるという事は森林エリアに到達する探索者も増えないという事だ。ダンジョン産食材のメインは森林エリアからなのでそれはこのダンジョン街にとって良い事ではないだろう。なんとかして低階層の状況を元に戻す必要がある。
このダンジョン街を中心に動いてる探索者や働いてる人達にとっては是非とも正常化してほしいはず。この状態だとただでさえ少ない洞窟エリア産の素材が今まで以上に取れなくなる。鉱物系モンスターの素材は武器や防具には必須だ。外部からの取り寄せはお金もかかるだろう。
「また攻略隊が組まれるのか? 近場のダンジョンに探索者が集まってるし人手で困る事は無いよな?
でも今攻略をするって言って人集まるかね? このダンジョン街で活動をしてた人達は来てくれるかもだけどさ」
本来であればマジックアイテムを求める人達の分散を図っていたのだが攻略となるとどうなるだろうか? 当初の予定とは大きく変わってしまいどうにも動きが読めない。ダンジョンの変異なんて予想外の出来事だしな……。
マジックアイテムを求める人達の興味をどれだけ惹けるかさっぱりわからない。攻略をまずしなければとなると動かない人達も出てきそうだ。正直これは困った。
「それに攻略の方針だって管理部が今検討中じゃなかったか? あっちはどうなってるんだ? それがまず決まらないとまた探索者からあれこれと文句出たりするんじゃないか? はぁ……自分があれこれ悩む事じゃないんだろうけど結構気になるよなぁ。
マジックアイテムの設置だってもうやった後だし動いてもらわないと広場の列あのままだぞ……。分散してくんないかなぁ……」
予定とはかなり違う状態だと溜息を吐く。どうしようかねぇ……?
なんにせよ、まずはこの報告をしなければとそちらの事を第一に考える。
モンスターの異変、それからダンジョン内の通路が地図とは違う事。
地図全体を照らし合わせましたとは言えないのであるべき通路が無く、また、新しい通路を見つけたとでも言えば管理部も納得してくれるだろう。移動中に地図と一致しなくなったって事で問題はないはず。
「そうなると地図通りに進めなくなったって事で帰還までちょっと時間を置く必要があるな……。
昼過ぎ……いや、2時か3時頃を目安にして帰るか。倒したモンスターは感知蟹だけでいいよな」
モンスターとの戦闘を避け帰還を優先したと報告するとしよう。自分としても今は素材集めとか情報収集って気分じゃないしな……。
モンスターは遠見で何が居たかを確認するに止める。やっぱり広場に大型モンスターって湧いてるよな?
「あー……でも階層が変異したって事は地底湖に例の海老が……しかも丁度目の前っていう……」
そんな気分ではないのだがその可能性もあるかと注意をそちらに向ける。
時間も出来ちゃったしこの地底湖だけでもちょっと見ていこうかどうしようか考える。昼食に感知蟹は使えないし代わりに海老でも使おうかな……。




