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722話 ダンジョン1層(ソロ) 予想外なモンスター




 「さて、それじゃあ行くか。例の茸は壁にくっついてるんだっけ?」


 地底湖の入り口となっている高台から周囲の壁を見渡す。とりあえず見える範囲には無しと……。

 周りが薄暗い事もあり壁にくっついていたとしても見つけるのはなかなかに難しそうだ。ライトで照らしつつ探しているがこれはもっと壁へ近づく必要があるだろう。色も周囲と同化して黒っぽいからな。


 「まだ中央へ行かないだけマシか? 壁側ならそれなりに浅いし人も通れるルートだからな。1人で探すもんじゃないのは確かだわ」


 壁に限定されているとはいえこれだけの広さを1人で探すのは流石に骨が折れる。こういう時1人だと少し不便だよな。

 結構レアものっぽいし見つかるかどうかは運だそうな。地底湖そのものが毛嫌いされてる事からして尚更採取率も低いらしい。

 最近だと向こうのダンジョンは地底湖へ行く人も増えてると持ち帰る量は上がったとの事。そういう特殊な状況でもないと地底湖で地道に探し物をしようだなんて思わないよな。


 「水で濡れるかもって事に加えモンスターだって居るしな。暗いとはいえ遮蔽物も無いだだっ広い所だと隠れられもしないし。

 じっくり探すってなると特定の能力者に限られるか」


 水か風の能力者以外は探すにしても結構大変だろう。土の能力者は以前自分がやったみたいに足場を作るという事も出来るが下は水とあまり足を踏み入れたくない。足場をずっと作るのは魔力も消耗するしな。

 しかし自分からすればそこはあまり気にしなくても良い。回収作業は自分1人でしなくてはいけないが能力の使用に制限がつかないのはやはりメリットだ。いろいろな魔法を使えるとあればこちらもどんどん試していきたい。

 地道にこの広い地底湖の壁を探すのも手間と海老探しにも使用した探知を使う。対象を生物から茸へと変更する。


 「あれば反応が来るはず……お、見っけ!」


 探知の情報が頭へと伝わってくる。少し行った先に探している物と思われる反応があった。

 これはいろいろと応用が利きそうな捜索方法だ。やっぱり探し物には探知系の魔法だね。

 人前では使えないがソロの時であれば問題ない。これなら吹き飛んで行った魔石なんかも見逃す事無くすべて回収する事が出来そうだ。


 探している物も見つかったと今度は普通の探知を行う。後は採取中に邪魔となるモンスターを排除をしてしまわなければ。

 探知を使うと水辺付近にモンスターの反応を捉えた。地底湖へ近づいてきた時も1度かけたが少し離れているので後回しにしておいた。今もずっと同じ位置に居るな。


 「まだこっちには気づいてないっぽいな。まぁ、隠蔽の魔法も使ってるし声は聞こえんか」


 1人だとこういった魔法も自由に使えるのが良い。隠密ロープを使うのでもいいけどソロだとこっちの方が楽だしね。

 そろそろ本格的に移動をするかという所で、最後に反応があったモンスターを調べようと遠見を使う。何のモンスターかね?


 「水トカゲだと天井に居たりするしな。で、天井は……居ないか。じゃあやっぱり地面の方か」


 頭上を先に確認すると今度は地面を確認する。やはりどっちかと言うと地面にいる方が多い。バットのような空中を飛んでるモンスターという事もなさそうだしね。

 そうして反応があった地面側を遠見で見ていくがモンスターの姿は特にこれと言って見つからなかった。おかしいな……?


 「反応だとこの当たりなんだけど……うん、合ってるな。どっか見逃したか?」


 再び天井、空中、地面へと遠見の映像を見ていく。しかしやっぱりモンスターの姿は見当たらなかった。

 姿を隠しているモンスターかもと注意をしつつ確認していく。けど1層なら岩ダコとそいつぐらいじゃなかったっけか?

 

 「見当たんねぇなぁ……釣ってみるか」


 そう思うと駒からリキッドを出し反応のする方へと向かわせる。リキッドの足であればモンスターを釣ってくるのも容易だろう。

 自分は遠見で確認しつつどこに居たかを確認する。リキッドの姿も少しして遠見の映像内に見えてきた。


 リキッドを映像に捉えつつ上からの視点で様子を見る。そうしていると次の瞬間、自分の目を疑うような光景が映像へと映った。


 「感知蟹!? いや、なんでもう居るんだ!?」


 映像に映ったのはリキッドへと襲い掛かる感知蟹の姿だった。即座に自分もその場所へと向かう。

 感知蟹は低階層から出るモンスターではあるが1層にはいないはずだった。初めて遭遇する事になった初探索時は既に湧きの異変が起きていたらしいのであまり気にしなかったのだが……。


 空を飛ぶとすぐさまリキッドの元へ駆けつける。リキッドの事なのであまり心配はしていないが気になるのはやはり感知蟹の事だ。なぜ居るのか……。


 地面を見下ろすとリキッドが既に応戦している最中だった。感知蟹の岩の甲殻にティタンブレードが叩き下ろされる。咄嗟に周囲へ隠蔽魔法をかけた。

 硬い岩の装甲とはいえティタンブレードの岩で出来た刀身の方がはるかに優れている。ゴーレムの力で叩きつけられたその刀身が岩の装甲を破壊しつつ片足を切り落とした。力の差は歴然か。


 足が片側無くなった事で感知蟹の移動スピードは更に低下する事となった。そして、ただでさえゴーレム離れしたスピードを持つリキッドにとってその遅さは致命的だった。

 リキッドは片足を切り落とした後、真正面から更に攻撃を加えるべく再びティタンブレードを頭上へと振り上げた。

 そして人にとっては脅威となる放水もゴーレムのリキッドからしてみればなんてことはない。多少動きは阻害されたがその程度と、もう反対側の足に向かって一気にティタンブレードを叩きつける。感知蟹の体から更に足が切り離される事となった。


 「頭を潰せ! そいつはそれでいい!」


 リキッドに指示を出すと続けて別のゴーレムを駒から出す。通常のゴーレムでもそう問題は無いだろう。

 リキッドに襲い掛かった感知蟹は3体だった。残り2体の感知蟹を相手するべくこちらも戦力を増やす。数が有利になったら自分も戦闘参加だ。


 空中から落ちて来たゴーレムが感知蟹の背後に立つ。そして持っていた大盾をすぐさま前へと翳しつつ感知蟹の背中へぶつかっていった。押し倒せとの指示は守られた。

 腹側を地面へと押さえつけ放水を封じる。遠距離攻撃潰しは定石だ。

 そうして他のゴーレムが感知蟹の腕と足へ取り付きその動きを完全に押さえる。ゴーレム複数からの押さえ込みは早々逃れられはしまい。

 

 「しっかりとそのまま押さえ込みを維持! 止めは自分でやる」


 複数のゴーレムに押さえられた感知蟹に近づき頭部へ水圧カッターを照射する。目と頭部をまずは潰そう。

 感知蟹もゴーレムの下で暴れているようだが指示通り押さえ込みは上手くいっている。殴りかかる腕と放水さえ封じてしまえば後はさほど脅威ではない。人だとその辺りは危険で難しいがな。

 ゴーレムもしっかりやっていると思いつつこちらも手早く仕留めていく。2体の目と頭部を潰し様子を見る。感知蟹の暴れる力が弱まってきたら腕と足も落とし再び様子見だ。


 「……反応は消えたか。死亡確認OK」


 そうしてしばらく待っていると感知蟹のいた所からモンスターの反応が消えていった。戦闘はひとまず終了だ。


 周囲の確認をし他のモンスターがやってこない事を確認する。戦闘前咄嗟に隠蔽魔法を周囲へ張ったおかげだろうか。

 鳴き声を上げるモンスターでない事もこちらにとっては都合が良かった。戦闘音もそうだが、そういったモンスターは他のモンスターをも呼びよせる。リキッドを襲った瞬間に大声で鳴き声を上げたりするモンスターでなくて助かった……。

 

 「どうせ後々戦う事になるだろうけどな。けど今は放っておかれる方が都合いいわ」


 一応ゴーレム達を周りに配置し壁としておく。これで遠距離攻撃があってもとりあえず防げるな。

 倒した感知蟹3体をジッと観察し間違いない事を確かめる。見覚えのある姿だし見間違うという事は無いだろう。

 唐突にリキッドと戦闘になったので終わるまでは考えを保留にしておいたがいざ終わってみると再び謎が頭へと浮かんできた。ほんと、何でここに居るんだ?





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