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711話 受け渡し完了




 「ええ、はい、今街に着きました。そのまま管理部へですか? わかりました。倉庫の入り口ですね? すぐにお届けします。それでは後程」


 そう言って通話を切る。受け取りは管理部の倉庫でという事だ。

 目的地であるダンジョン街に着くと教えておいてもらった番号に到着の連絡を入れた。どうやら今管理部にいるようで受け取りはそっちでするとの事だ。


 「管理部でって事となるともう地図は要らないな。あれだけ目立つ目印があるんだし」


 空へと延びる光の元にダンジョンへ入る建物がある。そこへ隣接するように建てられた管理部の位置はここからでも容易に把握する事が出来た。

 光の柱を目印に空を進む。空を飛べば広場も見つけやすいし知らない街だろうと何も問題はない。この辺りはどのダンジョン街もほぼ似たような物なんだろうな。


 「よし、到着っと。で……管理部の建物があれで倉庫は隣のあれかな」


 近くまで来ると上空から広場を見下ろす。列はあるみたいだけどあっちのダンジョン街とは比べ物にならない程短いな。

 このダンジョン街からも多くの人があちらのダンジョン街に行ってるだろうし少なく見えるのも当然かもしれない。本来はもう少し長いのかと思いつつ地上へと降りる。


 「さてと……倉庫の入り口でって事だけど……あの人かな?」

 連絡をした通り倉庫の入り口までやって来ると目当ての人を探す。すると倉庫の扉に背中を預け持たれ掛かっている人を発見した。とりあえず声を掛けてみればいいかと近づく。人違いならこちらが待つとしようか。


 「すみません、もしかして古田さんでしょうか?」

 「ん? そうだけど? どちら様?」

 「石田と言います。依頼で荷物を運んで来たんですけども……」

 「ああ、あんたが石田さんね。田々良さんから話は聞いてるよ。荷物は例の駒の中だって?」

 「はい、倉庫の中で出させていただきます。台車を借りられるか聞いてみますね」

 「別のダンジョン街までお疲れさん。ここだと俺の方が先輩だし案内するよ。ひとまず倉庫裏までいこうぜ」


 そう言うと古田さんは運搬サンキューと言いつつこちらを倉庫の中へと案内する。中もだいたい同じなのかね?

 素材や魔石の買い取りカウンターを横目に倉庫の奥へと歩いて行く。やはりと言うかこの辺りはそう変わるものではないらしい。まぁ、ただの受付だしね。


 「意外と早かったな。やっぱり空を飛べるってなると移動はお手の物か」

 「景色を見ながら適当な速さで来ただけなんですけどね。まぁ、早めにお渡しして観光でもしようかなぁ……と」

 「そこまで向こうのダンジョン街と違いがあるかは分かんないけどな。ああ……でも探索者の多くがそっちに行っちゃったし、随分とガランとして見えるってのはあるかもな」

 「確かに昼前だっていうのに倉庫内も随分人が少ないですね?」


 受付に並んでいる人の数も時間からしてみるとだいぶ少なく感じた。やっぱりあっちのダンジョン街へ行った人多いんだなぁ……。

 若干寂しいような倉庫を通り抜け裏の素材置き場へと到着する。古田さんは見つけたスタッフさんに台車を借りられるか聞いている所だ。ゴーレムについてもこれだけ人が居ないなら大丈夫だろうとの事。


 「そこまで大きくはないって話だよな。すぐに持ってくるってさ」

 「では出してしまいましょうか」

 そう言って駒を取り出すとゴーレムを倉庫裏へと出した。急に現れたゴーレムにその場にいた人達が視線を向けて来る。やはり違う街だと物珍しさから見られるか。


 「おおー、やっぱスゲェもんだなぁ……その駒のマジックアイテムって奴。16個で1セットなんだっけ?」

 「そうですね。流石に全部を見せるのはちょっと手間なので遠慮させてください」

 「仕方ないよな」


 古田さんは現れたゴーレムに視線を向けつつ了解とそう頷いた。2セット分あるし全部ってなると30体は居るからそれなりに大変なのよね。

 ゴーレムに担いでいるコンテナを降ろすよう指示を出しつつ台車が届くのを待つ。別の街に居る古田さんからしてみれば戦闘用のゴーレムが居ること自体珍しいって感じかね。


 「こっちの街だとゴーレムってどうなってますか?」

 「見かけるのはほぼ地上で普通に使ってるゴーレムぐらいだなぁ……。

 一応向こうのダンジョンで駒を見つけたーっ! って言って帰ってきてるPTもいくらかは居るけどさ。それでもやっぱりまだまだ珍しい部類だな。そのPTの人達も今ゴーレムを作ってる途中だろうし」

 「もう戻って来てる人達も居るんですか」

 「ああ、自分達の本来の探索に使おうってな。

 向こうだと進んでたとしても4層までだろ? こっちならもっと先まで潜れるからって本来の探索に使うつもりで切り上げてきたんだってよ。

 通常の探索で使用するかもっとマジックアイテムを探すかの2通りに分かれてるらしいぜ。俺達はどっちにすっかねぇ……その駒を早めに見つけられたんなら戻ってくるってのも有りだな」


 古田さんは自分達のPTはどうしようかと悩み始めた。そういえば古田さん達は地元? にまだ残ってるんだな。

 他の多くの探索者みたくマジックアイテム探しに来ていないのだと少し不思議に思った。なんか理由があるのかね? そうしたら武器だって向こうで受け取れたのにな。


 「お待たせしました! 台車の大きさはこれで大丈夫ですか?」

 「ああ、あんがとさん。石田さん、これに乗っけられるか?」

 「大きさ的には大丈夫かと。では乗せますね」

 ゴーレムに指示を出し台車の上へとコンテナを乗せる。……問題なさそうだな。


 「とりあえず俺の個人倉庫に一旦入れておくわ。運んでもらったサインもしなきゃだしそいつは向こうでって事で」

 「わかりました」

 荷物を仕舞う所までは付き合うかと出していたゴーレムを駒へ戻す。台車を押す古田さんの後について行き個人倉庫まで歩くことにした。


 「ところでさっきちょっと思ったんですけど……古田さん達はマジックアイテム探しに行かないんですか? やっぱり駒は欲しいみたいですけども」

 「ん? ああ……まぁ、PTメンバーの方でちょっとごたごたがあってな。それで行くのが遅れてるんだわ。落ち着いたら行くつもりではあるんだけどな」

 古田さんは少し言い辛そうな表情でそう口にした。ごたごたかぁ……。


 「あっちのダンジョン街へ行くんだったら武器もそこで受け取ればいいのになぁって思ったものでして。まぁ、理由があるんだったら仕方ないですよね」

 「本当はそのつもりだったんだけどさ。しゃあないわな」

 苦笑いを浮かべながら肩を竦める古田さん。まぁ、PTの事なら深くは聞かない方が良いかね。


 「ところで先程話にちょこっと出てきた駒を持ち帰って来たPTに関してなんですけども……。ゴーレムを作ってる最中って事ですけどこっちでも貸し倉庫の予約とかって多いんですか? 向こうは予約待ちが随分あるようで」

 「ああ、貸し倉庫ね。詳しくは聞いてないけど借りてるPTは増えてるみたいな事を耳にしたかな。

 今の内から借りておこうってPTと戻って来てから借りるのでも大丈夫だろうって考えの2通りだな。駒を手に入れるつもりでゴーレムだけ作って置くってのも当然いるだろうし、その間レンタル代が無駄になるって人もやっぱ居るしでどっちもどっちだね」

 「なるほど……こっちのレンタル状況はそんな感じなんですね」

 「一応足りなくなるのを見越して新しく作ってるっぽいけどな。将来的にはやっぱり借り手は増えるだろうしさ」


 駒を見つけたPTが次第に増えるだろうからと貸し倉庫の増産はやっているらしい。確かに先の事を考えればそうなるだろうね。


 まだ貸し倉庫のレンタルも空きがあると知りこっちのダンジョン街でも借りておこうかどうしようかと迷ってしまった。

 駒は既に持っているのであると何かと便利なのは間違いない。居住空間を整えれば倉庫での寝泊まりも大丈夫だろう。向こうのようなトイレとシャワー付きの倉庫は果たしてあるだろうか?

 そちらもちょっと調べておこうかと頭の隅へメモしておく。あっちみたいに人が大勢いるわけではないし電気製品の在庫の方も多少は残っているだろう。ナビも買うつもなので一緒に見ておこうか。

 こっちの街で仕入れておけるものは仕入れておくかと買い物リストを作っておく。昼を食べたらこの辺りをしようかね。


 そんな事を話していると個人倉庫へ着いた。ダンジョンに近いこちらの倉庫も1室借りておいた方が良いかもと思いながら古田さんの後へとついて行く。

 そうして古田さんが個人倉庫に荷物を仕舞うのを見届けると依頼もこれで完了とホッと息を吐いた。

 明人さんから受け取った古田さん宛の書類を取り出しつつこの街でやる事を考える。まぁ、詳しい事は昼でも食べながらリストアップするとしますかね。





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