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680話 夜中に報告を




 「ふぅぅぅ……とうちゃ~く」


 帰還陣の前までやって来るとそう言って息を吐いた。これで一安心だ。

 帰還陣のある部屋で最終調整を済ませる。持ち帰る素材の準備よし! 海老もしっかりと箱詰めされてるな!

 

 「これでOKだろ。それじゃあ帰還するとしますか」


 準備を終えると帰還陣を動かして転送されるのを待つ。特に誰も帰還待ちをしてなかったしこちらとしては大助かりだね。

 そうしてしばらくすると視界が変化した。無事帰還達成っと。


 「お疲れ様でした。タグの提出をお願いします」

 「ええ」


 スタッフさんと帰還後のやり取りをし広場へと出ていく。

 ゴーレムは居ないのだが、帰還して来たのが1人だけってなるとどうしても注目されてしまう。それでもゴーレムごと転移して来るよりはマシだろうけどさ。


 「ともかく先に報告をするか? 増田支部長帰ってないと良いんだけどなぁ……」


 既に夜の11時前だ。帰宅時間は遅くなってるらしいけどやはり不安だな……。

 素材を卸すのはそれからでも問題ないだろう。海老は出して持っていった方が良いかな? 1地底湖分提出をするつもりだし数も居るから後でいいか。


 「それか倉庫で台車でも借りようかね。受付で聞いた後借りりゃいいか」


 とにかく先に増田支部長がまだ居るかどうかだけでも確かめようとロビーへ向かう。居ないなら明日に回すしかないな。


 そんな事を思いつつロビーへやって来ると受付に続く列へ並び始める。まだ夜でもそれなりに列出来てるんだな……。

 自分がダンジョンに行ってから少しは落ち着いたようだけども相変わらずこんな時間だというのに人が並んでいると溜息を吐く。やっぱり新しいタグの申請に来てる人達なのかね?

 少しばかり予想外だと思いつつも大人しく自分の番が回って来るまで待つ事にした。重要な情報ではあるけど別に緊急と言う訳ではないからな。


 「待ってる間に増田支部長が帰らないかだけは心配だけどな。仕方ないか……」


 今はどこもいろいろと忙しいのを予想してなかった自分が悪い。周りの人達の事を観察しながらちょっとずつ列を進んでいく事にする。

 

 そうしてしばらく待つと自分の番が回って来た。この間の夜や広場の列に比べればそう大したことはあるまい。


 「すみません、増田支部長ってまだ建物にいらっしゃいますかね? ちょっとご報告したい内容があるのですけども……」

 「増田支部長ですか? ただいま確認してまいりますのでしばらくお待ちください」


 そう言うと受付スタッフさんが後ろのドアへと入っていく。面会出来ると良いんだけどな……。

 そうして少しすると受付スタッフさんが戻って来た。


 「まだいらっしゃるようです。ご用件の方を先にお聞かせいただいてもよろしいですか?」

 「まぁ、そのうち知れ渡るかもだしいいかな? 地底湖で新生物と思しき存在を持ち帰って来たと伝えてほしいのですけども……」

 そう言った途端、近くに居た人達がこちらに目を向けてきた。新生物の発見ともなれば気にならない人なんていないだろう。

 

 「新生物……モンスターではなくてですか?」

 「ええ、モンスターではないですね」

 「確認してまいりますので少々お待ちくださいませ」


 用件を伝えに再び後ろのドアを潜っていった。なんとなく今も周りから見られてる気がする。声が聞こえたのはそう多くないはずなので少人数だろうが。

 そしてまたもや少し待つと受付スタッフさんが戻って来た。


 「増田支部長がお会いするとの事です」

 「ありがとうございます。あ、実際に物を持ってくるので一度広い所に行ってきていいですか?」

 「ではお付き添いいたします」


 そう言うと受付スタッフさんはこちら側へ出てくると案内を始める。しっかりと代わりの受付スタッフさんも呼んでいたらしく席を入れ替わった。

 そして台車があれば助かると一度倉庫の方へ向かう。スタッフさんが付いているので貸し出しはスムーズにいくだろう。


 「これをお使いください。それではご案内いたします」

 「お願いします」


 倉庫から台車を借りるとおそらくまたあの部屋だろうなぁと思いつつスタッフさんの後について行く。

 海老の入っている箱はしっかりと水溶け防止用に木箱を金属で囲ってあるので支部長が居るであろうあの部屋にも問題なく運べるだろう。汚されたとか言われたくないしな。

 そしてスタッフさんの案内で建物の奥へと進む。着いた先はやはりあの部屋だった。

 

 「増田支部長、報告を持ってきてくださった方をご案内しました」

 「ああ、入ってもらってくれ」

 扉越しにそうやり取りをするとスタッフさんは一礼して元来た通路を戻っていった。箱にずっと目をやっていたので中身が気になるのだろうけど仕事中では仕方ない。その内情報も出回るんじゃないかな。


 「失礼します」

 そう声を掛けると最後に開けてくれた扉の向こうへ台車ごと入っていく。部屋の中には苦笑いを浮かべる増田支部長が1人だけ机の向こう側に座っていた。


 「またいろいろと悩ましい報告を持ってきたのか?」

 「お手数をかけて申し訳ありません。しかしまぁ、それが探索者の仕事ですから……」

 「冗談だ。

 で、早速本題の物だが……その台車に乗ってる箱がそうか? 結構大きいな……」

 「それなりに数が居たものですから」

 そう言って増田支部長の近くに台車を運び木箱の蓋を開けた。状態の確認は帰還前に確認したし問題あるまい。


 「……氷の塊か?」

 「いえ、そうではないです」

 木くずを退けてその姿をしっかりと見えるようにする。確かに一見氷の塊に見えるよな。


 「ちょっと色付けさせてもらっても?」

 「ああ、構わんぞ」


 許可を貰うと色の付いた水をその氷の上に掛ける。赤色ならより分かりやすく見えるかな?

 そして赤く色づけされたそれが増田支部長の目に映った。増田支部長が目を丸くしてそいつに視線を落としている。


 「こいつは……ロブスター? いや……伊勢海老とかそっちか? というよりも海老だと?」

 「です」

 増田支部長は色の付いたそいつに目をくぎ付けにさせる。まさか海老が出てくるとは思ってもみなかったのだろう。


 「この台車の箱全部がこれか?」

 「はい。残りはゴーレムがまだ担いでいるのでそっちにありますが」

 この台車の箱だけではないと聞き増田支部長は更に目を丸くさせる。今出してるので半分だ。


 「後でそれ等も出してもらうとしてだ……それにしても海老とはな……。どこかにいるんじゃないかとは言われていたが見つかったか……」

 「おそらくですけど例の湧きがおかしくなった時に出て来たんじゃないかなぁ……と。流石に以前から居たのなら発見されてたでしょうし」

 「確かにその可能性が1番大きいな。それにしても立派なサイズをしている……もう食べたのか?」

 「はい、毒性も無く非常に美味しかったです。ただ冷凍した後のはまだなので味は少し変化してるかもしれませんけど」

 「とれたてを食べられるのは探索者の特権だな。私も昔は森林エリアで獲ったばかりの森林鮭を仲間と一緒に食べたものだ……生でも安心して食べられるのがダンジョン産の強みだな」


 増田支部長は昔を思い出しているのかあの時食べたのは格別だったと頷いている。やはりとったその場で食べるのは美味しさも違うよな。

 この海老にしても甘みが強く非常に美味しかったと食べた感想を口にする。増田支部長もダンジョン産の海老を楽しみにしていた1人らしく興味深そうにこちらの話を聞いている。見つかったのがこれほどの物となればその興味もより大きいだろう。


 「見た目でなんとなくお分かりかもしれませんけど、体の方はどちらかと言うと伊勢海老感が強いです。身がプリッとしていて結構弾力のある感じでした。

 鋏の方の身はどちらかと言えば柔らかい食感をしてましたね。どっちも身がたっぷりで食べ応えがありました。刺身、ボイル、焼きで実食してきました」

 「そいつは美味そうだ。

 まぁ、ダンジョン内となれば調理法も限られるからな。地上で食べるとなれば他にもいろんな調理法で食べる事が出来るだろう。

 私はその中だと焼きが気になるな。火を通すことで味もより凝縮され尚ぷりぷり感が増しそうだ。やはりお供は日本酒だろう」


 自分で焼いて食べている所を想像しているのか顔には笑みが浮かんでいた。管理部の支部長となってからは現地でそうやって食べる機会もすっかり減ったのだろう。

 地上でもバーべキューが出来るとはいえ状況というのは味にも大きく影響する。ダンジョン内での食事も今では懐かしいといった様子だった。やっぱり探索者の特権は大きいよな。


 「とまぁ……物に関しては自分でも食べたので問題ないと言えるかと。

 地底湖や森林エリアの水場にやっぱり海老は居るんじゃないかって聞いたので今回探してみました。その結果はこの通りです。おそらく1層から5層の地底湖に湧いているんじゃないでしょうか? 帰還陣から1番近い地底湖なら一応生きたまま持って来られるかもしれません」

 「出来れば実際に生きている物も見てみたいな。私もダンジョンに潜る時間さえあるのなら1層にでも行って実際に確かめてくるんだが……1層とはいえそれも難しいな。

 1番地底湖が近い階層に調査班を派遣するか……管理部としても調べなければならんしな。湧きの状況も確認が必要だろうし調査班とは別に依頼も必要か……石田さん受けるかね?」

 「今はちょっと……他の依頼も受けていますので」

 明日は園造さんの所に報告へ行かなければいけない。おそらく明日直ぐに調査班が組まれ1層辺りを調べに行くだろう。そちらの調査はそれに向いた能力の人達にでも行ってもらうとしようか。

 

 「まぁ、今帰還して来たばかりだしな。幸い人手は十分居るしその辺りは問題ないだろう。新生物の調査と言えば気になる者は多そうだ」

 他のダンジョン街から来た人達や海外から来た人達と、調査する人手には困らないと言う増田支部長。マジックアイテムを探すついでに新生物の事も調べてきてもらおうというわけだ。

 

 「調査班の方は明日にでも向かわせるか。この事を口外してたりは?」

 「受付で言ったぐらいですね。ちょっと見られはしましたけど真偽の程は定かではないでしょうし、あれだけで今から早速地底湖に向かうPTは居ないんじゃないですか? 管理部から否定される可能性もあるでしょうし」

 「明確に口にしてないのであれば探しに行くものはまず居らんか……それなら何とかなるか? ともかく報告ご苦労様だ」

 「いえ」


 これで海老の事に関しての報告は終了した。後は管理部があちこちの調査を始めるだろう。

 少し惜しい気持ちも無くは無いが地上に出回る事を考えると仕方ない事でもあった。どうせその内にわかる事だろうしな。

 何にせよこれで報告も終わりと席を立つ。後は残りの箱も出して管理部に引き渡すとしよう。今回の情報料としてまた食堂で使える食べ放題券とか貰えたりすんのかな?  





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