677話 ダンジョン3層(ソロ) 引き上げ時
「ありゃ? 止まっちまった……」
業火の杖から発せられている炎が勢いを無くし全くなにも起きなくなってしまった。燃料……いや、魔力切れか。
地面にくっついている金属を剥がして回収しようと思っていた矢先の出来事だった。魔力切れ早いな……。
魔石を付け替え作業を再開する。燃料のガスみたいに軽くなったりとかがわからないのでそこはちょっと不便だよな。これが戦闘中でなかっただけマシという事か。
アイアンゴーレムへの対処法も用意し、ボスとの戦闘を終わらせると素材の回収を行っていた。
塊蟻については1度ティタンブレードを使い近接戦闘もしているとあって特に問題も無く倒し終わった。盾が増えた分、地面へ近づいた際も安心感が上がったといったぐらいだ。
そして戦闘を終わらせいざ素材の回収といった所で今のような状況となった。
「1戦闘分で魔力切れになったのを丁度良いと見るか早すぎと見るか……それだけ使う魔力も多かったって事だわな」
大いに戦闘にも役立ってくれたのだが些か燃費の面から見ると何とも言えなかった。さっきも思ったが戦闘中に起きなくてよかったな。
鉄をも溶かす高火力の炎をイメージしたのだがその結果はこんな感じだ。威力はあれで申し分ないけど継戦能力はそれだけ減ってしまうと……。
「現状ゴーレム相手にしかあそこまで高火力は求めないしな。他のモンスター相手だとそこまで必要ないしあまり気にしなくても良い気はするけどね。まぁ、今後の参考としておけばいいか」
おおよそあんな感じで使えばアイアンゴーレム10体分と、魔石の交換をする目安も知る事が出来た。魔石の大きさだったり無駄遣いなんかもあるので正確とは言えないが一応参考にはなる。
やはりマジックアイテムを使う以上交換用の魔石を複数ストックしておく必要があるだろう。今回みたいな使い方では1戦闘ごとに交換とかなり燃費が悪いけどな。
「腕輪があの仕様で助かったわ……一々魔石を交換ってなると手間だし。杖を持ち替えたりも要らないし身に着ける系は有難いね。
杖は杖でいざという時武器になったりとメリットはあるけどこれを4本持ち歩くってなるとそれはそれで大変だからなぁ。1つのマジックアイテムで4つの属性を賄えるメリットはやっぱでかいわ」
ゴーレム達の回収作業を見守りながら初めて手に入れたマジックアイテムの腕輪を撫でる。
ゴーレムに塊蟻と、動き回る系のモンスターでないので回収作業も目の届く範囲なので楽だ。
「それにしてもゴーレムがああも火を消そうと必死になるとはねぇ……そこがちょっと予想外だったわ。まぁ、自身の体が溶けるってなると一大事だろうしそりゃ必死にもなるか」
その所為で地面に広がった金属の回収はちょっと手間なんだけどな。大半はそのままなので取らなくても良い気はするがなんとなく目についたので仕方ない。スライムにただ消化させるのも勿体ないしね。
「さてと……こっちもこれで終わったし次はどこに行こうかねぇ? とりあえずボスが湧いたらここに戻って来るのでいいか。ボス部屋前の通路なら安心して休めるし……」
次の目的地を決めようと地図を取り出し行き先を探す。
飛行ゴーレムのテスト、マジックアイテム探し、海老の確保とやる事はいろいろだ。3層でも引き続きやる事をしていくかと地図を眺めた。
そうして行き先を求め続け更に1日が過ぎた。一応今日が園造さんと約束していた最終日だ。
昨日と同じく早めに休みまたもや早朝から動くことにしていた。と言うのも、これには別の理由もあるのだが……。
「ふぁぁぁぁ~……流石に早く寝たとはいえなんか眠気がまだ残ってんなぁ。普段はこんな時間から活動しないし精神的な所為か?」
地底湖の入り口となっている高台まで来ると大きく欠伸をしつつ早朝の地底湖を見渡す。相変わらず中央へ行くに従い暗くなっていると先の見通しが悪い。まぁ、洞窟の中なので早朝だろうと昼だろうと明るさに変化はないのだが。
「まぁ、それはともかくっと。昨日の来られなかった分なるべく急ぎで用事を済ませるかね。時間も限られてるし……」
そう……昨日は何と言うか運の悪い事に地底湖へは全然来られなかったのだ。来ること自体は出来たのだがタイミングの問題的に後回しにせざるを得なかった。
なぜかはよくわからないが、昨日は地底湖周辺に探索者の反応が頻繁にあったと転移をするにも躊躇う事が多かった。中には普通に地底湖でモンスターと戦ってるPTも居たぐらいだ。おそらく水を苦としないPTなのだろうね。
その所為もあって海老の回収があまり出来ていないのが悔やまれる。一応自分1人分として見ればそれなりには手に入れられたのだけども。
「とはいえこれからの事を考えると現地で見つけられる率は下がっちゃいそうだしな。自分で手に入れられる内にゲットしておきたいね。
一応お金さえ出せば高級レストランとか料亭みたいな地上でも食べられるかもだけどな。まぁ、限定コースとかにされてたらそれも難しいかもだけど……。
そういった所での料理も食べてみたいしチャンスがあれば行ってみたいね。自分で作るのも良いけどしっかり調理された物も食べてみたいし」
やはり本職の人達ならではというものがあるだろう。自作もいいがしっかりと料理として味わいもしたいね。
それを思えば早い所流通させるべきとも言える。もしくは自分で活きの良い素材を店に持ち込むかだ。確実に食べられるのは後者だろうな。
「鮮度の良い物なら持ち込みでも調理してくれそうだしな。どこか良さげな店あるかな? 一度以前持ち込んだ事のあるあの店へ持って行ってみようかね?」
多田さん達と出会った素材持ち込みOKな店の事を思い出す。お店の人がどんな料理を作るかちょっと楽しみだ。流石に売り物にならなさそうな料理にはならんよな?
そんな事を考えつつ地底湖の奥へと飛行ゴーレムに乗って移動をする。ともかく獲れる内にゲットしておくとしようかね。
そうして湧いていたモンスターを倒すと目的の海老確保までを急いだ。
地底湖に湧いていたモンスターもバットが多かったりとモンスターの方ははずれだ。3層に来てからというもの地底湖とはあまり相性が良くない。他の所でマジックアイテムを手に入れたりとそっちで運を使っちまったか?
海老の方も普通と言っていいのかキングサイズは手に入らなかった。やはりそう簡単に見つかるものではないって事かな。
「ふぅ……最後の海老も無事確保っと。大きいのは居なかったけど普通のサイズはそれなりに居たな。普通のでも十分食べ応えあるし不満って事は無いんだけどさ」
小休憩でもするかと入り口の高台へ向かう。ちょっと休んだら次の地底湖へ行くとするか。
地図を確認しつつ次の目的地を決める。しかしそんな次の瞬間、探知に反応があった。場所は今向かっている入り口の高台だ。
「ちょっ!? マジかよ、こんな時間だぞ? そりゃ活動してないPTが居ないとは言えないけどさぁ……。あ……何かこっち見てるわ」
転移してきたPTは警戒体制のまま自分達の周囲へと目を凝らしていたのだろう。まさか地底湖の目の前だとは思わなかったのか驚いているのがこちらからも確認出来た。そしてこちら確認出来るという事は向こうからもこっちが見えているという事で……。
「おーいっ、ちょっといいかーっ!」
高台に居るPTからそんな声が届いた。地底湖にモンスターの反応が無い事も探知で確認し終えたのだろう。既に自分が居るという事もあってホッと息を吐いているのが見える。
見られた以上はどうしようもないと近寄っていく。考えてはいたけど地底湖に転移して来るとはね……。
「こんな時間に地底湖に居るとかどうしたんだ? しかも1人? PTメンバーは向こう側なのか?」
「ええっと……何から言えばいいか。とりあえずおはようございます」
「お、おう……おはよう。それを言うにしてもまだまだ早い気がするけどな。まぁ、そんな時間に転送された俺達が言うのもなんだけどさ」
こちらに声を掛けてきた男性と軽く挨拶を交わしつつタグを見せあう。竜田さんね。
なんだか日本人のPTとはしばらくぶりに会った気がする。今まで外国から来たPTの人達が多かったからなぁ。
「石田さんね。それで改めて聞くけどこんな時間に地底湖に1人ってのはどういう状況? それと現在地を教えてくれると助かるんだけどさ」
「そうですね、とりあえず今居る地底湖がここです」
そう言って地図を見せて現在地を教える。地底湖という限定的な目印があるのだから現在地特定にはそう時間はかからなかっただろうけどな。
「サンキュ。それで石田さんはなんでまたこんな時間に? まだ普通なら寝てる時間だぜ?」
「そうですね、まずは1つずつ答えていきます」
そう言ってお互いの自己紹介を交えつつ竜田さん達の疑問に答えていく。本当の理由はごまかしてだが。
「……なるほどねぇ。飛行ゴーレムのテストなぁ……最近ダンジョンじゃまず見かけねぇわな」
「駒が発見されたおかげでその利用価値も他のゴーレムと同じく高まったか……確かに浮遊を掛ければ飛行班も1人追加出来るからな。デメリットは相変わらずあるが有用なのは間違いないか」
「そうねぇ。移動時に邪魔なら駒に仕舞っておけばいいって言うのは他のゴーレムと同じね」
「それがお試しに飛行ゴーレムですか……」
こちらがソロの理由だったりこんな時間になぜ活動しているか等を説明し終わった。竜田さんの他にもう3人、砂田さん、林田さん姉妹(姉:夏奈さん 妹:舞さん)が口を開く。
「とまぁ、そんなわけでして。地底湖なら広さも十分ですし広場よりもモンスターが残ってる確率が高いので。私からすれば地底湖は苦ではありませんしね。今は他にも人が来ているのでちょっとアレですけど……」
「確かにモンスター狙いなら地底湖に来るのも納得だな。それで石田さんが戦った後だからモンスターの反応もしねぇっと。宇田、そう言う事だってよ」
「わかりました」
そう言って宇田さんが頷く。索敵班は宇田さんと言う事だ。
「ところで竜田さん達は地上から来られたんですか? それとも2層から?」
「2層からだな。俺達以外の誰かがボスを倒してたのかボス部屋にモンスターが居なくてよ。朝まで部屋の前で休もうかって話だったんだけど寝てる間に湧かれても面倒だったしな。強行して来たんだわ」
「近くに休憩所もあるし早い所そちらへ行かせてもらうとしよう。一休みした後出発再開でいいだろう」
竜田さんと砂田さんがそう言って自分達の行き先を伝えて来た。
どうやら竜田さん達は別のダンジョン街から来たPTらしい。これから4層まで進むとの話だ。
「それじゃあ俺達はもう行くわ。現在地の情報ありがとな。
飛行ゴーレムはやっぱあると便利かね? 俺達も駒を手に入れたら考えるとするか?」
そう言いつつ竜田さん達は地底湖から離れ休憩所を目指して去っていった。やはり竜田さん達も駒のマジックアイテム狙いのようだ。
「ふぅ……ちょっと驚いたな。これぐらいの時間に動いてるPTってそれなりに居るのか?」
ボスが倒されていたという事は深夜を過ぎて3層に来たPTが居ると思われる。新たに湧くまで4時間5時間は流石に長いだろからおそらく深夜を過ぎてで間違いないだろう。
深夜に起きている人はともかく早朝はあまりいないって思ってたんだけどね。
「竜田さん達もボス戦よりかは階層を進むことを選んだわけね。どうせなら朝まで寝ていてくれたらこっちとしても良かったんだけどねぇ……」
ここで出会った以上他の場所への迂闊な転移は出来なくなった。近場ならともかく帰還陣を挟んで反対側とかはちょっと難しいだろうね……。
他の地底湖へ行くことも考えていたが転移ですぐにというのはやめておくとしよう。仕方ないのでここからは通常移動に切り替えだ。帰還陣を目指しつつ遠回りで行けそうな所を行くとしようか。
今はまだ早朝と時間自体はたっぷりある。今日中に帰れるならそれでいいと思いつつルートを考え始める。なるべく地底湖を通るルートにでもしようかね。




