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660話 ダンジョン2層(ソロ) ボスなかなか湧かないなぁ……




 ズズズッ……


 「ふぅ……食後の一服はやっぱり落ち着くわ……」

 温かい緑茶を飲みながらそう言って息を吐いた。安全地帯という事もあってかかなり落ち着く。気温的にも温かいお茶が体に心地いい。


 「焼き魚の方は身がふわふわっとしていて美味しかったな。脂もいい具合に落ちてさっぱりとしてたし。

 刺身も後味が意外とスッキリしててペロリといけたわ。ワサビを利かせたのが良かったのかね?」


 食べ終えた鋸アロワナの料理についてそう感想を口にする。

 刺身についてはサッと炙ったり軽く湯がくのも合いそうだった。夕飯時にはそちらも試してみようとレパートリーに加えておく。やはり新鮮な魚は美味いな。


 「寄生虫なんかの心配もないしな。森林鮭や岩魚もそうだけどそこがダンジョン産素材の良い所だわ。まぁ、こいつは同じ魚でもモンスターだけどな」


 タタキにしたりユッケにしたりと生でも安心なのが良いね。当然鮮度の良い物に限るわけだが。

 現地ですぐに食べられるというのが探索者の利点だろう。先程地底湖で獲って来た海老にしても生きたままの物をダンジョン外に運ぶとなるとかなりの苦労が必要だ。しかしモンスターではないけどこいつもやっぱりダンジョン外だと7日間の命なのかね?

 特に餌を食べているわけでもないのにこうして生きているという事はダンジョンから何らかの力で動けているのだと思う。モンスターにしろダンジョン内の生物にしろ、外へと出せばそのまま衰弱の一途を辿るのだろう。養殖が出来るのであれば今頃はされてるだろうしな。


 「特に話に聞かないって事はやっぱりダンジョン内生物も同じなんだろうな。ただ自分がそこまで調べきれてないって可能性はあるけどさ。

 生食も場所によっては避けられてるしそういう人からすると刺身やたたきってのはそこまでの利点じゃないか。普通に美味しいんだけどねぇ」


 寄生虫等もおらず安心と言われた所で今までの考えを変えるのはなかなかに難しい。この辺りは生食が普通の日本人に生まれて大変良かったと思えた。

 好き嫌いがあまりないのもそういう食生活を施してくれた両親に感謝だ。


 「なんにしても美味しく食べられるってのは良い事だな。

 偏食だったり肉禁止野菜ダメっていった生活は見てるだけでなんかあれなんだよなぁ……食事に楽しみを見出せないってそういう人達からすると普通なんだろうけどちょっと共感は難しいかな……」

 宗教的な理由だったりそういう主義の人をテレビで見るたびに自分はこうで良かったとつくづく思わされる。今からあれこれ禁止とかになるとかなり生き辛く感じそうだ。

 

 「当人達からすると○○禁止ってのは当たり前っぽいし、食べられなくても特に不都合とかは無い感じなのかね? 外食をするってなると大変だろうけど。

 そう言えば元居た所にもそういう人居たな……基本は自炊をしてるって言ってたか」

 出掛け先でそういったNGな食べ物が出てきたら困るだろう。○○抜きでと注文する事は出来ると思うけど対応が難しい店もあるはず。そういう店を選んで行くにしても付き合いで入る事だってあるだろうしな。


 「理由が理由なら仕方ないんだろうけどね。けれどそれで入れる店が限定されるってなるとやっぱり遠出をするのは大変だろうな。

 後は親戚に食べ物アレルギーの人も居たしあれだってなかなかに大変だよな……そっち系のアレルギー持ちでもなくて良かったわ」

 親戚で海老がダメな人が居たのもあってかもし自分がそうだったらと思うと悲しくなってくる。先程見つけた海老も当然だが食べられないだろう。まぁ、その場合は最初から興味もなかった可能性が高いし探そうなんて事もしなかったか。

 

 「ともかくそういった食べられない理由もないし自分としては万々歳だな。食べたいものが食べられないなんて病気の治療時だけで十分だわ」


 ストレス太りの治療で暴飲暴食を控えるよう言われた時は大変だった……食べられないというのは美味しさを知っている分余計辛く感じるものだ。食事制限自体がストレスになりかねんからな。

 ストレスの発散にと運動を勧められた事を思い出す。残念な事にそれほど長続きしなかったが。休みもそれほど多くなかったし帰ってくる時間が深夜近くと不規則な生活だったのも原因だろう。運動する気力持てなかったわ……。


 「こっちだと今の体型ぐらいは維持したいもんだねぇ……。幸い探索者は結構ハードだし意外と鍛えられるからな。命がけをハードで済ましていいのかはわからんけど……」


 移動で足を動かすのは当然として、戦闘中に攻撃を避けたり攻撃位置に就いたりと走らさせる事もそれなりにあった。

 飛行班となってからはその機会が少し減ってしまったのもあるが、空中でも体をひねったりあちこちを飛び回ったりとどことなく空中を泳いでいるようなそんな疲労感を覚えた。まぁ、ただの気疲れと言ってしまえばそうなのかもしれないが……。


 「その辺りは探索回数を増やしていけば何とかなるかもしれないけどなぁ。通路戦より広場や地底湖での戦闘を増やした方が良いかね?」

 とはいえ、探索者として活動を続けていった先にこちらを誘惑する問題も実はあったりする。


 「森林エリアは洞窟エリアよりも食料が豊富だろうしあちこちに手を出してみたい誘惑が……少なくとも洞窟エリアよりかは食事事情も良くなるわな」

 果物や野菜等洞窟エリアだと見かけない食べ物も森林エリアでは多いと聞いている。先に進めば進むほど、食に関してはいろいろと刺激されていくのではないかとそう思った。

 

 「ついついいろんな物に手を伸ばしちゃいそうだもんなぁ……。

 当初の目的もそっちだし普通にあれやこれやを回収してしまいそうだわ」

 自分で手に入れられるとなったら食への欲もどんどん膨れ上がっていく事だろう。味見と言って色々食べ過ぎないよう何かと注意をする必要がありそうだ。


 「その分森林エリアでもっと体を動かせば帳消しにならんかね? エリア全部が飛行可能になるわけだし行動範囲は洞窟エリアの比ではないよな。だからと言ってずっと連戦連戦してるわけにはいかんけど」

 派手に動きすぎると今想像した通り、モンスターが後から後から続けてやって来ることになる。エリアが分けられてるわけでもないので戦闘をする際は結構気を遣う事になりそうだ。

 

 「まだまだ気になる事がいっぱいありすぎて少なくとも退屈だけはしないわなぁ。

 で……現在その気になる事の1つでもある飛行ゴーレムでの戦闘についてなんだけども……ボスはまだ湧いてこないんかねぇ? 

 食べ終わって食後のお茶も飲んでるんだけどこのままじゃ先にこっちの人達が来そうだな」 

 そう口にすると探知を使い周辺の状況を確認する。もう少し距離はあるがこのままだとセンサーを仕掛けた地点に数組のPTがやってきそうだった。


 「とりあえず目的が2層の突破ってのはわかってるから安心なんだけどな。問題はやってくるタイミングだわ……」

 遠見を使ってPTの目的については確認が出来ていた。同じ目的ではないとそこは安心と言える。


 「普通に堪能して食べてたからなぁ……。昼食中に湧かなかったのは助かったけどそれを終えた今でも湧かないってなるとやっぱり遅くね? って感じるわ。

 やっぱり通路や広場を優先して湧かせてんのかね? そのしわ寄せがボスの湧きに来てるとか?」


 おそらくはただ単に運が悪いだけなんだろうけどね。それでも待ってる身としてはそう感じてしまうのも仕方あるまい。

 昼食前に見た地点と比べてかなり近くなってきているPTの位置を確認する。またもや海外の人達だ。攻略済みである4層までは進んでおきたいとの事。やはり言語薬を飲んでおいてよかったな。


 昼食を食べた痕跡を片付けながらボスと新たに近づいてくるPTを待つ。

 時間もあるし地底湖で使ったボウガンのボルトでも補充しておくとしよう。ボスが湧いたらそのまますぐに飛んで行けるしな。

 

 「戦闘の方針は2戦目のままで良いか。地面にいるゴーレム達には適度に手を出してもらって多少気を惹いてもらおう。

 とりあえず3戦目は自分でも水と土を使ってゴーレムに戦わせるか。大地の杖でやらせていることを自分で肩代わりする感じかね? 防御に関してはこっちでやって飛行ゴーレムには攻撃を優先させようかな。

 ゴーレムの装備以外が加わると戦闘もグッと楽になりそうだわ」

 水と土で何をしようか作戦を考える。基本はこちらで補助をしつつゴーレムに仕留めさせるべきか……それともゴーレムに牽制をさせて止めは自分か。細かい狙いを付けられる分後者の方が良さそうではあるけども……。

 

 「対ゴーレム戦なんかは後者の方が良さそうだよな。細かい指示出しは飛びながらだとこっちも難しいし。

 その場合ゴーレムには大地の杖で防御に回ってもらえばいいか。相手次第で攻守交代だな」


 空になったマガジンにボルトを詰めつつ飛行ゴーレムにそう語る。自分がある程度満足するまでは付き合ってもらうとしよう。

 実戦テストの報告内容も増えるしまだまだ頑張ってもらわないとだな。





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