659話 ダンジョン2層(ソロ) 昼食を準備しつつ振り返りを
「うん……スライムの掃除は終わってるな。これなら後はボスの湧き待ちか」
ボス部屋の中を覗き状態を確認する。この調子でボスも早い所湧いてほしいものだ。
地底湖での用事を終わらせると再びボス部屋の前へとやってきていた。スライムも吸収を終えたらしく今部屋の中には誰1人として存在していない。こうして見ると何とも殺風景なものだ。
ボスが湧くまで待機しておくかと部屋の前で昼食の準備を始める。エドワードさん達が来た時に点けていた焚火もいつの間にか吸収されていたようなので新しく用意をしながら待つ事にした。
「昼食をとったら3戦目かな。とりあえず1時間ほど見ておくか」
腹ごなしの時間も含め1時間程度昼休憩の時間とする。昼食の準備中に湧くのなら先に戦闘をしてから昼食だな。
ご飯の方は問題ないのでおかずに先ほど倒してきた鋸アロワナを使用する。捌く際は手を切らないよう注意しないと……。
台の上に洗った鋸アロワナを置くと危険な部位を切り落とし鱗をすき引きにする。鱗1枚1枚が大きいからなかなかにこれが大変だ。
それと地上にいるアロワナのように泥臭さを気にしなくていいのは有難い。地底湖の周りは岩なので泥臭さを感じる方がおかしいとも言えるが。
鱗を落とすと腹を切る。(頭はアイアンバレットを受けほとんど吹っ飛んでいた)内臓を掻き出し中骨部分に付いている血や腹側を洗う。タオルでしっかりと水気は拭いておく。
そこからは3枚卸しだ。腹から尾にかけて下側を切ると今度は背側だ。分厚い皮を切り中央にある骨に沿って背側にナイフを入れる。
「やっぱり脂が結構あるな。鋸状の危険な部位は最初に落としたけどナイフで手を切らないよう気を付けないと」
脂がのっているようで片身を卸すだけでもナイフをしっかり拭う必要があった。それだけ焼いた時は美味しそうだが。
背側の身を中骨から切り離すと中央までナイフを入れてくっ付いている骨を切り離す。頭部があったところまでの骨を切れば片身は終了だ。最後に尾側を切って半身を退けておく。
台の上を綺麗に整えるともう半身の解体だ。こちら側の方が卸しにくくて苦手だな。
もう片方の半身も先ほどと同じようにして切っていく。順番が今度は背側が最初とそこだけは違うけどな。滑り止めにと敷いたタオルの上でもう半身を中骨から切り離す。少し身が中骨に残ったけどこれぐらいなら許容範囲内だろう。
「骨は炙ってから食べるとするか今は置いといていいや」
ただでさえ1人で食べるには身が大量と持て余している。骨を炙るのは夕飯にでも回すととしようか。
3枚に卸し終わると腹骨をそぎ切りにし身の中央に残っている骨を処理する。骨抜きはそれなりに手間もあるし今回は真ん中を切り落とす事に。ここも後で炙って食べるかな。
「最後に皮をひいてっと……」
わかっていた事だが結構な脂がある。皮をひく際も脂で滑ってとなかなか難しい。ソテーでもして皮をパリっとさせるんであればわざわざ皮引きする必要はなさそうだ。泥臭くもないので手間だって省けるしな。
ただ今回は刺身にもしてみたいと全部を処理する事にした。タオルで押さえつつ身から皮を引き剥がす。皮が厚いので千切れる心配は逆にしなくても良さそうだ。
そして一通りの解体が終了した。これぐらいの魚ってなると結構捌き甲斐があるよな。
「おー、やっぱり皮側は脂も多いな。刺身より焼いた方が美味しそうか?」
脂ののった魚を見てどんな食べ方が一番よさそうかを想像する。刺身だとワサビ多めの方がいいかね?
焼き用と刺身用で分けると調理開始だ。焼く方は串で刺した後落ちないよう網で押さえておく。刺身用は厚さを考え切っていった。
「良し、刺身の方はこんなもんか。冷やしつつ仕舞っておいてっと。後は焼けるのを待つとするかな」
味付けはシンプルに塩胡椒をしておく。白身だしバターソテーとか美味しそうだけどそっちは地上に帰った時にでも落ち着いて食べるとしよう。身はまだまだあるしな。
「と言うか、以前地底湖で獲って解体した奴もまだ空間魔法に入ってたっけ? そっちを先に捌けばよかった……」
確か3枚までは卸し終わってたっけと、今になってその事を思い出した。鮮度で言えば先程倒したやつの方が少しは新鮮だろうけども。
時間が止まっているのだから鮮度は大して変わらない。ただあちらは初めての解体なので今のよりも切り方が雑ではあるが。
魚が焼けるのを待ちつつ軽く後悔する。消費するのなら古い方から使っていかないとな。
「しゃあない、また今度捌こう。とりあえず焼けるまでは地底湖の事でも振り返るか」
焼き加減を確認しつつ地底湖の事を思い返す。飛行ゴーレムの戦闘はボス部屋以外だとまだそこだけだしな。
「バットや空針水黽についてはまぁいいか。空芯水黽なんて体当たりで終わっちゃったしな」
脆いにも程があるだろうと。まぁ、確かにいくら軽かろうとあれだけの物があの速度でぶつかればそれなりの威力にはなるだろうけどさ。
「そっちはいいとして後で戦ったエアーマンタの方か。こっちも普通に戦えばそこまで苦戦はしなさそうだけど」
水と風、2つの属性攻撃持ちでそれなりに動くとはいえそこまで問題になるという程ではないだろう。風の攻撃は当たったがゴーレムの装甲をどうにか出来るわけでもなかったしな。
「水球も生身だと結構痛そうだけどその程度だな。比較対象が金属の塊であるゴーレムとなれば危険度はそんなにないか。どちらかと言うと突進の方がされると怖いな」
大きさ的に言うと自分が手を広げた程はある。あれが突進してきたとなるとそっちの方が威力もあるだろう。
「耐久性で考えるとそれでゴーレムが壊れるとかは無いだろうけどな。ただ重量はそれなりにありそうだし、飛行ゴーレムに突進は結構な弱点だからな」
最後に仕留めた時みたく意表がつけない場合は離れて戦うのが基本だろう。残りも少なかったからって結構無茶な事したもんだ……。
「一応あれはあれで近接戦闘の動きも見れたって事にしておくか。剣の鋭さもエアーマンタ程度なら問題はなし……っと」
飛行ゴーレムの格闘性能も確認出来たと1人納得する。これも実戦テストの評価の1つと言う事で……。
「後は射撃の精度だけど……バット程早くもないし的も大きいしで問題らしい問題は無いよな。ゴーレムの命中率で考えればこれもOKか」
静止中の射撃も移動中の射撃も問題は無い。左腕のアイアンバレットは威力が高すぎるので今回は使わなかったがまともそれなりにでかいし外すことは無いはずだ。
エアーマンタについては攻撃、回避共にそこまで問題は無い。今回みたいに視界の邪魔が無ければもっと早くにケリがついていただろう。
「キリウミウシに対してはもっと大胆に攻めても良かったよな。せっかくゴーレムっていう耐久性抜群な盾があるんだし突っ込んで即行倒せばよかった。あれは選択ミスったね……」
今回の失敗はそこだろう。視界が遮られそこから避けたい気持ちはどうしてもあるだろうけど前に出られる防御性能があるわけだ。ゴーレムという盾を活かしてあそこは突っ込むべき場面だった。
「視界不良は気持ち的に不安も大きいけど最善の行動はしっかり考えないとだな。今回1番の反省点だわ」
正直問題があったとすればここぐらいだろう。後は鋸アロワナの攻撃を回避するにせよこちらから撃つにせよ問題はなかった。エアーマンタを倒した後の戦闘についても余裕をもって倒すことが出来たし。
キリウミウシについては過剰に攻撃をしすぎた気がする。落ち着いて前に出ていればそこまで素早くも防御力も無いのだからアイアンバレット数発で片が付く相手だ。
戦闘についての反省はそこが大きいと振り返る。次があれば落ち着いて真っ先に対処するとしよう。
「戦闘についてはそんなもんか。後はやっぱりあの姿が合体した海老に関してだなぁ……」
新たに地底湖で発見した生物について考える。少なくとも地底湖にあんな生物がいたなんて情報は資料でも見た覚えがない。
「やっぱり湧きに変化があったからって事でいいんかね? 調査班の人達もモンスターが居ないことを確認してるってそれだけだろうしな」
地底湖の水中に他の生物が居たという情報が無ければ詳しく調べる事なんてしないだろう。ただでさえ濡れるのを嫌い近寄りがたい場所だしな。
反応を調べてきたがあの海老は水深が深めの位置に居るというのが分かった。浅い所ならともかく深い所なんてほぼいかないだろう。それもあって見つからなかった可能性が高い。
「とりあえずこれって増田支部長に知らせる案件で良いのかね? 忙しい時にまた悩みの種を持ってきたって顔されそうだな……」
新種ともなれば報告は必須だろう。モンスターではなくダンジョンに生息してる生物という点もどうなるのか気になる所だ。
モンスターでもないので危険はほぼ無いと言っていい。扱いを誤れば怪我はするかもしれないが1層に潜りたての初心者探索者だろうと獲って来る事は出来るだろう。
「地底湖の深めの場所ってのが厄介か。それとこいつを獲るってなると少なくとも周囲のモンスターは排除しておかないとだからなぁ……意外と難しい気がする」
獲って来る事は初心者探索者でも出来るだろうけどその前条件が厳しい。戦闘があった場所からは逃げてるだろうしな。
手に入れるには戦闘を覚悟する必要があるだろう。運良くモンスターの居ない位置に居てくれればいいんだけどね。
「それと回収するにしても水の能力か土の能力は欲しいしな。逃がさないよう囲い込むのにもゴーレムが役立つしこれも駒持ちが良さそうか。持ち帰りを考えるとあまり時間もかけてられないし」
獲った後は冷蔵か冷凍をしておくべきだろう。リキッドに運ばせれば生きたままの状態でも運べるかね?
その場合はなるべく帰還陣の近くにある地底湖で獲る必要がありそうだ。とりあえず今回は冷凍で持ち帰るが。
夕飯にはこいつの試食もあったりと結構楽しみだったりする。味や食感はどっち似なんだろうな?
「って言っても伊勢海老なんて1,2回しか食べた事ないけどな。っと……そろそろ焼けたか?」
串を回して両面の焼き具合を確認する。いろいろ考えてる間に火は通ったようだ。
結局ボスはまだ湧かないかと昼食をとってしまう事にした。これで食べ始めたら湧きましたとかそんなタイミングやめてくれよな?
完成した刺身と焼きアロワナを台に乗せオニギリやカップスープなんかを用意し昼食の準備を整える。
さて、腹も満たしたら午後も頑張っていきますか。




