647話 飛んだ感想を
≪よし、各自お疲れ。全員戻ってきてくれ≫
トランシーバーからそんな園造さんの声が聞こえて来た。テストはこれで一通り終わったようだ。
「もう終了か……なんだかあっという間だったな?」
≪合間合間で休憩もしてたしこんなもんじゃないか? ともかく石田さんもお疲れさん≫
こちらの呟きが聞こえたのか青田さんがそう返事を返してきた。ぶっ続けでやっていたらもっと早くに終わっただろうと。
流石に数時間も飛びっぱなしは厳しいし事故の元だ。青田さん達の声もどこか最初にあった時より疲れて聞こえて来た。
≪昼休憩が待ち遠しいね。その後は健康診断して通常業務だけどさ≫
≪ともかく降りましょう……お昼はなにか手軽な物にしようかな……?≫
「午後もお仕事頑張ってください。私はこれが終わったらゆっくりさせてもらいます」
≪次の攻略先は5層で管理部待ちなんだっけ? 探索者はその辺り自由に出来て羨ましいね≫
各自トランシーバーでそんなやり取りをしながら地上へとゴーレムを降下させる。着地時はゆっくり慎重にを心掛けないとな。
全員がゴーレムを無事に着地させると工場内部へ向けて歩かせる。なんだか終わるのが残念に思えてきたわ。
「4人共お疲れ様だ。とりあえずプロテクターも外してゆっくりしてくれ」
「わかりました」
工場内部へ戻って来た自分達にそう労いの言葉を掛ける園造さん。ゴーレムから降りると言われた通りプロテクターを外し作業員さんへ渡す。作業員さん達からも同時にお疲れ様と言葉を受けた。
戻ってきたゴーレムの状態や武器の様子を確認に動く作業員さん達。後は彼等の仕事だ。
「4人はこっちに来て簡単に感想なんかを教えてくれ。まぁ、青田君達には後でレポートの方も提出してもらう事になるだろうがな」
「早めに仕上げて提出します」
「修正少ないと良いな……」
「うん……」
用意されていた席に腰かけつつそう口にする園造さん。青田さんはともかく鎌田さんと真田さんは小声で小さく溜息を吐いた。レポートの提出か……2人はそっちの方苦手なのかね?
自分達4人にも椅子へ腰掛けるよう促されそれに従う。社長と同じ席ってのは社員からすると気まずいよな。
「それでどんなものだった、テスト飛行は?」
「はい、大きな失敗もなかったようなので安心しました。結果の方も良かったのではないかと思います。下からの不満もそう聞こえてはきませんでしたので」
「私も同じ気持ちです。操縦していた者として不満の声があまり無かったのは良かったです」
「改良されたボウガンの方もほとんど反動が無かったので扱いやすく思いました。ゴーレムに関しては今までと似たり寄ったりなのであまりこれといった感想はありませんが……。シートのクッションがもう少し柔らかいと座っている時多少楽かもしれません」
3人が園造さんにゴーレムを動かした感想を口にする。以前のバージョンからゴーレム自体はさほど変わってないらしいな。
「石田さんはどうかね? 今回初めて乗ってもらったわけだけども」
「はい、初めての事だったので新鮮味が強いですね。私からすればこれはこういうものなんだなぁと。自分自身で飛ぶのとは多少違いましたけどなかなかに良かった気がしました」
「気に入ってもらえたのなら良かった。どうですかな、1体程購入の検討など」
「そうですね、素材の用意なんかが出来たら発注をお願いするかもしれません」
「是非お待ちしております」
顧客の1人と思ってか購入を促してくる園造さん。社員の前で自分自身販促を掛けて来たようだ。
ある意味テストという名の依頼でそこから興味を持ってもらおうというのも有りと言えば有りかもしれない。依頼料はかかるがゴーレムを買ってもらえればそれも黒字に変えられるだろう。探索者でなければ素材分の差し引きも無いだろうし結構なプラスになりそうだ。
正直値段はそれなりにするだろうけど自家用ヘリみたいでちょっとしたステータスになりそうだ。
ヘリ程大きくもないしそう場所は取らないだろう。ちょっとした手入れとエネルギーは土魔石の補充で行ける。武器を外せば民間用としても十分に売り出せるであろう可能性はある気がする。
欠点としては風の能力が使えないと飛ばすのが難しいという点だ。後はやっぱり値段が高い。自家用ヘリを買うってなったら似たようなもんかもしれんけどな。
「それでちょっと聞きたいんですけど良いですか?」
「なんでしょう?」
興味を持ってもらったのは良い事だと聞きの姿勢を取る園造さん。青田さん達には悪いけどちょっとお昼は待ってもらおうか。
「操作に関してはほぼ風の能力を使用する操縦者にゆだねられると思うのでゴーレム云々は置いておくとして武器に関してですかね。
あの誘導式の爆弾ですか? あれってお店で買えるんでしょうか?」
「流石に爆発物なので購入をするとなったら探索者の方でも別に許可証が必要ですけどね。それさえ購入する際に提示して頂ければ問題はないかと。ただ物が物ですので細心の注意をお願いします」
「ゴーレムを買っても武器に関しては許可証が必要なのも有ると……わかりました。ボウガンの方は大丈夫ですか?」
「そちらは大丈夫でしょう。最近はゴーレム用の武器として武器屋の方にもよく並ぶようになっているとか。
今までは軍の方に直接卸していてお店にはそう並びませんでしたからね……」
「注文があったら渡すぐらい……という事ですか。わかりました」
ゴーレムを注文する時にでも一緒に付けてもらおうと頭の隅に記憶しておく。
「弾のボルトの方は自前で用意できるのでそっちは大丈夫そうですかね」
「メンテナンスが必要とあれば気軽にお店の方へお声がけください」
「そうさせていただきます」
そちらの武器も他の武器同様人前で壊れなければどうとでもなるだろう。回避を心掛けないとだな。
「石田さん土系のマジックアイテムはお持ちではないんですか? 大地の杖とか腕輪とか」
黙り続けるのも気まずいと思ったのか青田さんがそう声を掛けて来た。
「無い事も無いんですけど……やっぱりマジックアイテムがあると攻撃の手段も広がりますね」
「先程のテストでも2本使ったけどあれは便利ですよね」
「後はアイアンゴーレム製の武器ですとか」
そこに鎌田さんや真田さんも話に加わって来た。テストの事にも関係しているとあってか黙っているよりかは喋った方が社長の印象もいいといった具合だろうか?
「マジックアイテムを持っていらっしゃるのであればその方が便利でしょうね。まぁ……その場合は武器の売れ行きが落ちるのかもしれませんが……」
「ボウガンと似た攻撃が可能ですからね……」
ボルト状の矢を作る事でボウガンの必要性は結果的に無くなるだろう。青田さんは言ってからしまった……といった顔になった。社員としては買わせる方向に持っていった方が社長の印象もいいだろうな。
「石田さんは自前で土の能力も持ってらっしゃいますからな。マジックアイテムがあっても無くてもそこは同じでしょう」
青田さんのフォローなのかそうではないのか園造さんが仕方ないといった感じで首を振る。ゴーレムに撃たせるとなれば結構変わりそうなもんだけども。
「……石田さんはゴーレムの操作もありますしやはりゴーレムそのものが攻撃出来るとなると大きいかと。
マジックアイテムはなかなか手に入らないと聞きますし1つぐらいは買っておいても損はないんじゃないですかね。モンスターの武器と合わせて用意をした方が良いと思いますよ」
「魔石を取り換える手間を惜しんでモンスター製武器の予備を複数持つ人もいるとか。ゴーレムの腕に直接取り付けてほしいといった相談なんかもされたことありますし。
直接攻撃は飛行ゴーレムですと機会も少ないでしょうけどそういった考えも有りだと思います」
同僚のフォローかはわからないがマジックアイテムを持たせるまではボウガンも有りだと口にする鎌田さん。
真田さんはモンスター製の武器押しをしてきた。重量を軽くする以上武器の方も出来るだけ軽量が求められる。手で持つにしろ腕に取り付けるにしろ直接攻撃の威力は低い。能力として使う分には問題もないので複数持ちも有りとの事だ。
ただこちらも軽量するとなると余計に風の魔石の粉末が必要なので更に値段が上がるわけだが。
「その辺りは一度使ってみてから検討してみます。とりあえず必要素材を集めましょうか」
「注文がお決まりになりましたらいつでもお声がけください。
さて……とりあえず話はこんな所かな。青田君達もテストご苦労だった。お昼休憩をして午後からも仕事を頼むぞ」
「はい、それではこれで失礼致します。レポートはなるべく早めに提出させていただきます」
そう言うと3人は立ち上がり園造さんに一礼する。自分も遅れて立ち上がるとこれで終わりかと思った。
「ああ、石田さんにはもう少し話が。依頼料の振り込みですとか」
「あ、はい。わかりました」
もう少し話があると言われ再び腰を下ろす。青田さん達が去っていくのを横目に園造さんから話をされるのを待った。
「それでですね石田さん。実はもう1つ私共から依頼がございまして……」
「もう1つですか?」
今回の飛行テストの依頼料振り込みについて聞き終わったところそんな言葉を掛けられた。引き続き依頼か?
秘書さんから別の書類を受け取りこちらの前へ出す園造さん。そこに書かれていた内容は……。
「実地試験ですか?」
「はい」
今回使った飛行ゴーレムをダンジョン内でも使ってみて欲しいとの事。依頼書を見て赤字になっている部分に注目する。
『駒持ち』……どうやら今日自分を呼んだ本当の理由はこちらにありそうだ。




