635話 特大ゴーレム運用案
「まずは特大ゴーレムそのものを用意するか」
倉庫の中央を空けそこに3mのゴーレムを置く。そして大きさをどんどん増やしていくと10mに達したところで止めた。3倍はでかくなったわけだ。
今使っている大型ゴーレムの更に倍と、そのでかさを間近で見上げつつ何とも呆れてしまった。運用するにしてもやっぱり1度広場で使っておいた方が良いな……。
「流石にでかい……これが動いて戦うって言うんだから何とも非常識だわ」
ゴーレムにもそれなりに見慣れはしたけどこのサイズだとまた感じる物が違った。ほんと……世界が違うって思わされるね。
そしてこれよりもでかいのが軍のゴーレムだというのだから呆れ果てる。間違いなく広場で複数運用するサイズじゃないだろうよ。
「大型のロボットが動く世界に行ったとしても同じ事思いそうだな。こいつなんてそんな中でも小型の部類だろうし」
30mや40mなんてサイズのロボットが複数運用される世界だ。物によっては100mを越えてたりともはや規格外とさえ言える。作るのだって並大抵ではないだろう。
「そんなのと戦うのが巨大化エリアだってのか? そりゃ21層以降の攻略が捗らんわけだわ」
そんな規格外サイズのモンスターが相手だとするとはっきり言って戦闘をしようなんて気は起こらないだろう。幸い相手が大きい程自分達人間なんて見つけにくいから助かっているのではなかろうか。
それに仮に倒したとしても持ち帰るのが大変過ぎる。倒したところで得る物を比較するとまず相手にはしたくないと思う。倒すメリットが無さすぎるだろう……。
「一応それを解決出来るのが駒のマジックアイテムだわな。攻略よりもそのエリアに行ってる上位探索者の人達に駒を貸した方が良いんじゃないの?」
勿論、その場合は倒したモンスターを担げるサイズのゴーレムもセットで貸し出さなくてはならない。軍のゴーレムだと最大でどれくらいの積載が可能なんだろうか?
その内もしかすると巨大化エリアのモンスターを丸々持ち帰ってくる場面なんかも見れたりして。倉庫に入りきらないようなモンスターとかいるとかなり見ものだろうね。
「まぁ、それよりも先にもっと小さいサイズのモンスターを丸々地上で見られるかもしれないけどさ。こいつに担がせればハンマースコーピオンを1体そのままとかも可能だろうし。
軍の人達も討伐だけじゃなくゴーレムでそう言った運搬をしてくれたらよかったのに……。バラしてない大型のモンスターを地上で見る機会とか早々あるもんじゃないだろうし」
帰還陣以上の大きさがあるモンスターは解体でもしないと地上へ持ち出せない。転送陣がある建物の出入り口を壊す事も出来ないと、どうしても運び出すとなれば制限があるのだ。その逆も然りだが。
先程も思ったように、巨大化エリアでモンスターを倒したとしてもそれを運び出すとなれば解体は必要不可欠だ。転送陣や帰還陣がいくら大きくなろうと地上の転送陣はサイズが決まっている。
巨大化エリアから帰還する際、地上の転送陣よりも多く物が乗っているとそもそも陣が機能しないらしい。それもあってか解体しないでモンスターを地上へ運ぶのはかなり困難なのだそうだ。小型モンスター程度であれば特に支障はないが。
「塊蟻やゴーレム程の大きさでも丸々ってのはかなり難しいらしいしな。まぁ、こいつ等はそもそもの重量が重いからだろうけど。
ともかく、これからはモンスター丸々の運搬ってのも出来ない事はない感じになるんだろうな。その為に大きい運搬用のゴーレムを用意してる人達だっているだろうし」
貸し倉庫を借りた人達の中にはそういったゴーレムを作ってるPTもいるだろう。16個も駒があるのだから1,2体はそんな大きいゴーレムが居たとしてもおかしくはあるまい。
「解体の手間を省けるってなるとその価値はあるだろうし。運搬班で解体を経験したけどやっぱり手間なんだよなぁ……」
余分な部分もあるだろうし積載量には無駄も出るだろうけどやはり楽であることは重要だ。
特に森林エリアや巨大化エリア等、周りからいつ次が襲ってくるかわからない状態の所では解体時間も惜しいとの事。積載量に無駄が出ようとまずは運ぶ事が優先される。
「解体をするにしても帰還陣近くなら安心出来るって話だしな。ともかく素早く運べる事が何より重要と。洞窟エリアだとその辺はマシだけど」
洞窟エリアの数少ないメリットの部分だ。やっぱりそう考えると駒を歓迎してる割合としては中堅から上位の人達の方が多そうか?
とはいえ、洞窟エリアは洞窟エリアで通路の広さにも制限があると、大きさを無視出来るゴーレムの存在は運搬においてかなり助かる。
森林エリアなんかは運搬する道中の安全性を確保、洞窟エリアは通路の広さを無視出来る利便性の向上といった所か。
「まぁ、なんにしても便利なこったと。って……考え込んでてゴーレムを大きくしたところで止まっちまってるわ。さて、ここからどうするか……」
少し離れた所から特大ゴーレムを見上げる。正直後はこのまま武装を持たせて使うでも良いのだが……。
「こいつを使うってなるとやっぱりつっこませるべきなんかな? 他のゴーレムと同じラインで戦わせるってなるとどうにもバランスが……。軍の人等はこのサイズを複数運用するから別にいいんだろうけど」
全部似たような大きさであればそこまで気にすることはないだろう。しかし通常サイズのゴーレムの近くにこいつが居るとなんだか攻撃に巻き込まれそうで不安だ。逆だとそこまで被害はないだろうが。
逆に後方へ置くという案も考える。10mというその高さもある事から基本は下に向かって攻撃をする事になるはず。
軍の人達のゴーレムであれば遠距離攻撃に不安はないだろう。このサイズの重火器を持っているという話だし後方からの射撃はまず間違いなく自分達の上を通過する事になる。誤射の恐怖が無い事は無いだろうけど。
自分が使うとなるとこいつ用のアイアンゴーレム製の武器を用意してそれで射撃をしてもらう事になるだろうか。正直武器がそれだとこいつの大きさを活かせてない気がする。こいつに見合った遠距離用の武器を用意とかどうすりゃいいんだろうな?
「上位のアイアンゴーレムの砲弾にしても別に3mとかそのサイズのゴーレムで十分だからな。撃ち下ろしの形になるのは助かるけどそれだけだし……。
ゴーレムが大きくなるのは良いけど武器が貧弱だよなぁ……」
自分が特大ゴーレムに付けばこいつに見合った手槍等を作製したりと火力の向上を図る事は可能だ。特大ゴーレムがぶん投げる砲丸とか人間サイズとかそんな大きさだろうし。
そう考えると基本後方にいる自分との相性は良い様に思う。まぁ、そうなるとこっちの攻撃の手が止まるかもなので結果的に良いか悪いか何とも言えないが……。
「こいつサイズのマジックアイテムとかなんかないかな? ティタンブレードみたいに大きくなるような奴があると助かるんだけど」
マジックアイテムであれば火力不足の問題も何とか補えそうに思う。問題はそのサイズだ。
「大地の杖に持ち手を嵩増ししてそれを持たせるか? 持てるように調整すれば一応使えない事は無いような気が……」
持ち手の調整さえ済めば可能ではありそうだ。そうすれば自分が投げ物を用意してやる必要も無くなるし有りだろう。他の属性の杖なんかもあるようなので同じように調整してやれば同様に使えそうだ。
武器さえしっかりと用意出来るのであれば撃ち下ろしのメリットも十分活かせるはず。その内特大ゴーレム用にマジックアイテムも調達してこないとな。
そして今度は最初思っていたように前へ出す用法だ。ゴーレムの耐久を活かすのであれば前線こそ最も適している位置だ。
「こっちは大型ゴーレムの使い方と似たようなもんだな。こいつが前線を抑えてくれるならかなり頼もしいだろうし」
特大ゴーレム用に大盾でも持たせてやればまさに壁が迫ってくるようなものだ。こいつを抜くのはなかなかに至難の業だと思う。
しかしそうなるとやはり気になるのは数だ。1体でも十分活躍はしてくれると思うがそれでもどこか不安はある。
「せめて2体は用意して組ませたいな……やっぱり運用するとなると複数が無難だし。スピードがないんだから単体運用はどうにも不安だわ」
体も大きくなっているのでその分装甲は厚い。ゴーレムの弱点である魔石と核を破壊するにしてもその体積の増加は非常に頼もしく感じる。
「そういやその分消耗も激しいんだっけか? 後で土魔石の追加を組み込まなきゃだな」
現在特大ゴーレムの中には土魔石が1つしか入っていない。1個でどの程度動けるものか興味もあるがだからと言って倉庫の周りを歩かせるわけにもいかないしな。
後で山の自宅の裏庭でも歩かせようかと頭の隅に記憶しておく。魔石を追加するのはそれからでいいだろう。
「大盾で壁にするのもいいけどやっぱりこれだけでかいんだから攻撃にも使いたいわな。
流石にこいつの武器を作ってくれってなるといろいろ大変だろうしまずは自作でいいか。大剣1本でも持たせておけばタイラントスネークだってぶった切ってくれるだろう」
むしろこのでかさであれば圧し掛かっただけで身体を押し潰すのではなかろうか? まさに体のその大きさそのものが武器だ。
数m程度のモンスターであれば普通に蹴っ飛ばして倒す事も可能だろう。地底湖で大型ゴーレムが感知蟹を蹴っ飛ばしたように。大きさはそれ自体がとんでもない破壊力を秘めている。突進だけでも十分な威力を発揮してくれるだろうね。
軍のゴーレムはそちらもしっかり考えているのか更に装甲を用意している。近接戦闘になった際集中攻撃を浴びる前提で作られているのだろう。
複数での運用と互いのカバーもするだろうしあの装甲はつっこませても安心感がある。
「しかしあの形のモチーフはやっぱりあれだよなぁ……どことなく見たことあるんだよね」
軍のゴーレムを画像で見た瞬間そう思ってしまった。まさに『鉄人』……と。




