61話 武器を見繕う
「いやー、この店いいですね。ハンバーガーの店でこういうスタイルの所は初めて入りましたよ」
「普通のバーガー屋もお手軽でいいっちゃいいんだが、ちょっと1手間加えるだけでこうも楽しめるからな。やっぱ食事は楽しくなくちゃいけねぇ」
「ですね。
しかし日本にこんなスタイルのバーガー屋あるんですねぇ。アメリカとかあっちなら本場ですしわかるんですが…」
「そこまで手間でねぇし、普通にもっとあっていいと思うんだがなぁ…あんまり見かけんわな」
そう言って槍一は上に載っていたバンズを外し、中にタレをたっぷりかける。それを見てソースバイキング形式のバーガー屋とかやっぱり見ないよなぁと思った。
「俺としてはハンバーガー食べた後に残るタレをポテトに付けて食べるのが好きなんだが普通の店じゃタレ少ねぇのよな。その点ここはそれが自由にできるからいいぜ」
「味も自分で変えられますからねぇ。
ケチャップ、マヨネーズ、マスタード、オーロラソース、照り焼きソース。まだまだ種類ありますし、それを組み合わせればオリジナルソースのハンバーガーができるので楽しいですよねぇ」
「元になるハンバーガーさえ注文しちまえば後はご自由にだからな。
最初に持ち帰りで頼めば包み紙渡してくれっから、ソースかけた後に包んでそのまま出れば外ででも食えるしよ。
ここで作ったのダンジョンに持ち込んで昼食用に偶にしてんぜ俺は」
「ああ、それもいいですねぇ! 私もそれしてみようかなぁ」
家でハンバーガーを作るとなるとそれなりに手間だが、この料金でハンバーガーの作り置きも出来るとなればずいぶん安い。
今度自分で来て、作り置き用のハンバーガーを作っておこうかと思った。
タレがしみ込んだバンズも美味しいし、複数作って家で冷蔵でもしておけば好きな時にレンジで温めなおして食べれる。なんでこの形式のバーガー屋は元居た世界にあんまりなかったんだか…。
2つ目のハンバーガーに、次はどのソースをかけて食べようかと考えながらそんなことを思う。槍一さんはすでに3つ目を作成中だ。結構食べるんだな…。
そんな風に楽しみながら昼食を終えると、2人は車に乗り込んで次に向かうところの確認を始める。
それと昨日までダンジョンに潜っていた所為か、結局槍一は計4つを食べて、満足満足と腹を擦っていた。
「ついつい食いすぎちまったぜ。カツ系のバーガーに照り焼きマヨって結構合いやがるなぁ…」
「結構食べましたよねぇ。1つぐらいは持ち帰りするのかと思いました」
「最初はそのつもりだったんだがな。いろんなバーガーにトッピングしてるの食べてるとついつい最後のまで手が伸びちまった」
もう食えねぇ…と限界ではありそうだが、満腹感もあってか幸せそうな顔で食後の余韻に浸っている。
「まぁ、満足できたのならいいと思いますけどね。
ところでこの後は武器防具屋巡りでいいんですよね? まだどこかお勧めの店あります?」
「後は似たような店ばっかりだ。気になるんなら後は歩いていろいろ見てまわりゃぁいい。将一自身の好みもあるだろうからお勧めしたところが気に入らなきゃ他開拓してみるのもいいんじゃねぇか?」
「そうですね、今日紹介されたところに一度行ってみてから決めますか」
将一はそう言うと、管理部から貰った武器防具屋の地図を取り出して広げて眺める。ここから一番近いところは何処だろうかと。
「武器防具屋も結構あるんですがこの中で槍一さんのお勧めの所ってどこですか?」
「ちょっと地図見せてみな。ふむふむ…管理部からの地図だな。最新版なら全部載ってるか。何カ所かあるからそれら回ってく感じでいいか? こっちは中まで入って色々見る必要があるからそれなりに時間かかんぞ?」
「私は構いませんけど…槍一さんの方はいいんですか? 丸1日拘束しちゃいますが?」
「別にいいぜ。どうせしばらくは休養日なんだ、時間はあんぜ」
「ならその予定で大丈夫です。案内お願いしますね」
「おう。地図は見とくから運転頼まぁ」
了解と一言返すと車を発進させる。
いろいろ武器防具屋がある中で何カ所か見繕ってもらえるなら時間も短縮できてありがたい。全部回るとなると流石に大変そうだったから絞ってくれるのならば楽だ。
しばらく車を走らせていると、槍一さんから案内の声が飛んできた。その言葉に従って車を進ませると、1つの武器防具屋が見えてきたのでそこの駐車場に止める。
「ここは俺が良く使ってる所でな。後ろの奴を調整してもらってんだ。品質も確かだしいろいろ商品を見てみるといいぞ」
「ここが…わかりました。戦闘用のナイフや剥ぎ取り用のナイフを見せてもらいます」
「おっちゃんに言って少しは口添えしてやるが、まずは自分でいいの探せよ? 武器は自分に合ったやつが一番だからな。おっちゃんが今日いるかどうかわからねぇから何とも言えんか…」
「はい。道具は自分の手にあったやつがいいのはわかってます」
下手したら怪我の元でもあるし、武器選びは慎重にしないとなぁと思った。
まぁ、護身刀になるだろうし普段使いではないので、どちらかといえば剥ぎ取り用の方がメインかと考える。切れ味重視1本とゴツイの1本だったなと再確認する。
「じゃあ行くぜ」
「はい」
後ろのドアから武器を下ろし、それを持って店の扉をくぐる槍一と将一。
将一にしてみれば初の武器屋であり、入った瞬間に目を奪われた。
中央には鉈のようなゴツイ物から投げナイフのような小さいものまで、様々な種類の刃物が棚に飾られている。
別のコーナーにはクロスボウのボルトだったり洋弓の矢だったり和弓の矢が、ドンッっと用意されている。
その他にも、小道具として小さめのピッケルだったり杭が並べられていた。
「おーい、呆けてないで先行くぞー?」
「あっ、今行きますっ」
入り口でぼーっと中を見ていた将一に、奥のカウンターに向かっていた槍一が声をかけて現実に戻す。
「すいません、何しろ武器屋に入ったのも初めてなもので…なんか圧倒されましたね、こうも並んでると」
「まぁ、普通に生活してたやつに武器屋はちょっと特殊か。だいたいこんなもんだぜ。中には武器はカウンターの奥だけに飾って客からの注文で初めて触らすってところもあるがな」
「売り方はいろいろあるんですね。私としてはこんな感じの方がインパクト大きかったですが」
そう言って周りを見渡す。
新しいナイフに買い替える人や、矢の状態を確認して受付に持ってこうとしている人など様々だ。投げ槍を持って構えを確認している人までいる。
「大物を見たらもっと驚くぜ? そっちは店の奥にあんだ。もし必要ならそっちも見るといいぞ」
「とりあえずはナイフで様子見をしてからですね。それにいざとなれば、土魔法で槍状の物をとか剣状の物を作って飛ばすので武器そのものはないかもしれません」
「器用な奴だな。まぁ、そういう戦い方ができるなら確かに要らねぇか。練習も必要だしな。その辺は追々だろうよ」
土魔法でどういうことができるのかはあまり知らないようだが、将一の言い分に納得はしたようだった。
それに武器は練習もいるし、今ナイフから始めようとしてる将一には厳しかろうと。
「とりあえず俺の用事済ませたら将一の武器見繕うや。俺の方は預けたらすぐ済むからよ」
「わかりました」
2人は受付けに来ると槍一が武器の槍を預ける。メンテナンスを頼むと、タグを見せつつ一言言ってそれで終わってしまった。何ともスピーディーな…。
「あとはこれを直してくれるおっちゃんから連絡待ちだからな。こっちで出来るのはそれからなんだよ。
さて、ナイフ見に行くぞ。もしいいのがなければ別の店で試しゃいい」
「まぁ、良しあしがまずわかりませんからね。最初は使いやすそうなものを選びますよ」
それでいいと槍一は頷く。道具は使いこめば手に馴染むものだが、最初は馴染ませる前に使いやすさ優先でいいと。
2人はナイフコーナーに来ると店員を捕まえ実際にナイフを握らせてもらうよう注文をする。店員さんもそれらの注文には慣れているのか直ぐに分かりましたと頷く。
「剥ぎ取り用のナイフとして鋭いのとゴツイの1本づつなんだが…将一、まずはお前が自分でどれがいいか選んでみな」
「わかりました。ん~…」
ナイフコーナーにある剥ぎ取り用というところをまずはじっくりと見て回る。持ち手の大きさから刃渡りの長さまで自分で使いやすそうなものを探す。
そしてちょうどよさそうなものを2種ずつ選ぶと店員さんに開封をしてもらった。
「こちらの方は皮剥ぎから肉削ぎと1本で十分こなせる万能なものです。初心者さんも使いやすいシンプルなデザインで人気の商品となっております。
持ち手も滑りにくいようゴムで表面をコーティングしてありますし、血や汚れがついても落としやすく臭いも付きにくい素材ですよ」
「確かに余計な飾りもなんもなしでシンプルですね。どっかに引っかかるとかもなさそうですし。うん…握りも確かにいいです。後は実際に血や脂が付いた時ですけどこればかりはやってみないとわからないですかね?
まぁ、使いやすさではこれが1番よさげなので選びましたからね。もう1つの方はどうです?」
実際に出してもらった物を手で握り確かめる。自分でもシンプルで良さそうと思っていた通りのものだった。
「こちらはナイフの背が皮切りとして使えますね。形がその分変わって最初の物より耐久性が低いですが、毛皮を持ってるモンスターの処理を迅速にできると思われます。持ち手は先ほどのナイフと同じように加工されております」
「毛皮を持つモンスター用ですか…最初は洞窟ですしあんまり使う機会なさそうですね。これは最初の方がいいですか?」
「そうだな。一応毛皮を持つモンスターがいないわけじゃねぇが最初の方で問題ねぇだろうよ」
「なら2番目のはいいですかね。すいませんけど後で戻しておいてもらえますか?」
店員さんはかしこまりましたと言って3番目のナイフの紹介に移った。
「お客様が選ばれましたこちらは甲殻を剥がしたり骨を断つのに使われる物ですね。
皮剥ぎや肉の剥ぎ取りに使えないこともありませんがそれならば先ほどのナイフの方が小回りも利きますね。こちらより厚さも薄いですし。これは先ほどのナイフを大きくした感じでしょうか。こちらも初心者の方には人気な商品となっております」
「結構大きいですよね出刃包丁みたいですし。先ほどのは小出刃かな?」
「まぁ、そんな感じだな。最初ならさっきのと合わせてこの2本でいいかもな」
「こちらの2つを買われますか?」
「一応最後の奴を見せてください」
でかいナイフを握りながら持つのに支障がないかを確認した後、そう言って4つ目を見せてもらう。最後のは少し変わってるようで気になったのだ。
「こちらも骨を断ったり甲殻を剥がす用の少しゴツイナイフになりますね。ただ先ほどの物よりも大きくこれ自体で近接戦をされる方もいると聞きます。頑丈に作られていますので併用ができますよ。
ただやはり戦闘に使用する分消耗は早くなってしまいますね。刃が欠けたりする頻度ももちろん上がりますし最悪折れます。
剥ぎ取りに使用する分には問題ありませんが少々大きいでしょうかね? もちろんその分長く使えますし大型の獲物にも使えますよ」
「なるほど…接近戦用にも使える大きさの剥ぎ取りナイフですか」
店員さんから持たせてもらうが、確かに先ほどまでのナイフより少し重い。指2~3本分は長いか……これぐらいなら格闘戦用のナイフとしても行けるんだな。
「少し重く感じますけどこれぐらいなら問題なさそうです。戦闘用のナイフはこれでも大丈夫ですかね?」
「持ってみて将一が問題ないって思えるんなら大丈夫だろう。戦闘用の奴は本当ならもう少し軽いやつだな。剥ぎ取りに使用するから重くなってんだろ。長さはどうよ? 主な使用目的は剥ぎ取りに使いそうだしそん時に使いやすいもんがいいぞ」
「剥ぎ取り自体がまだやったことないのでこれでいいかどうかがよくわかりませんね…。ですが柳葉包丁ぐらいですし使えないことはなさそうです。最初のナイフとこの最後のナイフの2本が良いと思うんですがどうでしょう?」
「最初にも言ったが自分で使いやすいと思ったらまずはそれがいいぜ。後々になれば獲物で剥ぎ取り用のナイフを別に用意することにもなるだろうしな。もちろん1本のナイフで全て済ますって奴もいるが自分の合ったやり方でいい。
とりあえず最初は使いやすさ優先で選ぶのが重要だな。変えるんならいつでも変えられっからよ」
「そうですか、わかりました。ではとりあえずこのナイフを買います。鞘とかってどうなりますか?」
「買われたナイフの大きさに合った物をお付けしております。それとお知り合いを紹介された方には砥石をおまけしておりますが」
「おう、俺からの紹介だ。そのおまけも一緒に頼むわ」
そう言うとこの店のカードだろうそれを店員さんに見せる槍一さん。そんなおまけもあったのね。
買うと決まれば店員さんは迅速に動いた。最初のナイフと最後のナイフに合う鞘を店の奥から持ってきて会計の所で一緒に並べる。おまけの砥石も箱で並べられた。
「以上でよろしいでしょうか?」
「はい、それで大丈夫です」
「タグをお持ちならばそちらを見せていただくと2割引きになりますがございますか?」
「あ、ちょっと待ってください」
タグでの割引を言われ、咄嗟にズボンのポケットから取り出すよう見せかけて転送をする。
手の中にタグの感触が現れるとズボンから引き出し店員さんへと見せた。
「はい、ご確認いたしました。少々お待ちくださいませ」
店員さんはタグの確認をすると会計を始める。ついでにここのカードも作るかと聞かれたのでお願いしておいた。
「なんだ、ポケットに入れてんのか? 落としたりするとあれだし首からかけといたほうがいいぜ?」
「実は首からかけるというのがどうもしっくりきませんで…何というかうっとおしい感じがしまして。鎖とこすれてチャラチャラ言うのも気になりますし」
「あー…たまにいるなそういうやつ。肌に金属が合わねぇとかあったりすんのか?」
「そういったことはないんですが…なんとなく気になるといった感じですかねぇ」
「ふーん。なら対処法があるから後でそうしてみりゃいい」
「対処法ですか?」
店員さんから値段を聞かされ、銀行で新しく作ってもらったカードで決済をする。やはりナイフとはいえ武器はいい値段行くなぁ…。
「この後防具屋にもいくだろ。そん時に用意してもらえると思うぜ」
「わかりました」
「石田様、カードの方お返しいたします。それとこちらが当店のカードになります。商品の方はこちらの袋に入っております。街の中でお持ちの際は中に入っているケースにしっかりお納めください」
カード2種を渡された後で商品が入った袋を渡される。
街の中ではこれに入ってる箱に入れとくと…忘れちゃいかんな。
「ありがとうございます。初めての武器なので大事に扱いますね」
「ダンジョンで活躍されることを祈っております。それともし未使用であれば返品も出来ますので何かありましたらお越しくださいませ」
最初の店でなんか流れで買ってしまったがそういうアフターサービスがあるのは助かった。特に問題は感じてないがもっといいのが見つかったりしたら返品するのも有りか。
「よし、買い物も終わったな。次は防具屋だ。盾だっけか? そっちもまずは自分に合ったの選べよ」
「わかりました」
「本日はありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
店員さんに見送られながら2人は車へ戻り、今度は槍一の案内の元防具屋へと向かう。
果たして盾はいいのが見つかるかと期待と不安を感じつつ次の店に向けて車を走らせた。




