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610話 ダンジョン4層(PT) 牽引飛行




 「葵さん、大丈夫ですか?」

 「ええ、問題ないわ」

 「それじゃあ次からも今の感じで引っ張ります」


 そう言うと前方に注意を戻し前とのスピードを合わせる。後ろから停止の声も聞こえてこないし後方も問題はないらしい。

 葵さんを引っ張っている棒を握り直すと再び通路を飛び続ける。カーブを曲がる際はやっぱりちょっと緊張するな……。

 まだ広場を出て少ししか経ってないというのにこれでは先が思いやられる。一応広場内での練習では問題なかったけど通路みたいに幅が狭まるとやっぱり違うか。


 「出来るだけ曲がり角が少ないと楽なんだけどなぁ……」

 「誘導はお願いね、そうじゃないと私の身体飛んでっちゃうし。広場で練習した感じで飛べば大丈夫よ」

 「はい」


 いざとなれば風でクッションを作り壁へぶつかるのは回避出来る。浮遊している葵さんの身体を守る為にもなるべく風の能力者自身が担当した方が良いとの事。

 人を引っ張っての移動は結構気を使うんだなぁ……と、緊張をしつつ前の人について行く。やっぱりこれをするんであれば森林エリアとかそっち向きよな……。


 星矢さんに飛行サンダルを渡した後、移動の方にも目途が立ったところその移動方法について1つの案が出て来た。

 せっかく飛行の出来る面子がこれだけ揃っているのだからと、通路の移動も宙を飛んで移動した方がそれだけ早く帰還出来るというわけだ。

 

 荷物も駒へと預けることが出来、自分達にとって一番のメリットはその移動の自由さにあった。余計な荷が無いのであれば通れるルートもさることながらその足も今までに比べ格段に早く移動が出来ると。

 全員で空を行くというのは足場の悪い洞窟エリアを考えれば誰もが実行したい事の1つだ。現に田上さん達がその移動を優先させたPTだしな。PTの半分が飛行班というのであればやはり歩きよりはそちらを優先させたい。


 方法としては以前から試されていた事らしく、風の能力者が飛べない者に浮遊をかけそれを引っ張るというやり方だ。手をつなぐでもロープを握らせそれを引っ張ったりと手段はいろいろある。

 今回は飛行役が浮遊者の掴んでいる棒を引っ張るという方法が取られた。Zの真ん中の棒を真っ直ぐに伸ばしたような物を両者が掴みそれで引っ張るわけだ。ロープだと曲がり角で浮遊者の身体がそっちへと持ってかれるので狭い通路では厳しい……真っ直ぐであれば問題はないんだけどね。

 そんなわけで、飛行役が浮遊者を引っ張り空中を移動するという案が移動方法として提案された。空を行けるのなら歩くよりも断然早いしな。


 皆は森林エリアでもそれ等を経験したことが有るのか飛行班がそれだけ居るならと、特に拒否をするでもなくすんなりと受け入れた。

 ただ、今回は洞窟エリアでの牽引飛行となる。練習はしておいた方が良いだろうと飛行班の練習時間が設けられた。自分も広場での練習では特に問題は無かったんだけどねぇ……。

 星矢さん達先輩飛行班からもOKを貰ったので大丈夫は大丈夫なのだろうが実際飛ぶとなると結構大変という事が分かった。浮遊者の身の安全をこちらが預かっているというのが曲がり角を曲がる度に頭に過る。とてもではないけどもっと早くと言われた所で今はそれも難しいわな。

 

 ともかく、今のスピードであればそれほど問題も起こす事無く無事に飛べていた。

 そしてそれほどスピードは出していないのだがそれでも地面を歩くよりかは断然早い。自転車を軽く扱いでいるような速度でも洞窟エリアという事を考えれば十分すぎる速さだ。歩きでこんな速度を出していたら間違いなくこけるな。


 「石田さんの方は大丈夫そうだね。桃子さん、そっちは大丈夫ですか?」

 「このぐらいの速度なら全然問題ないぞ。

 とはいえ、飛ばされるのと自分で飛ぶのとではやっぱりなにか違うなぁ……。幸にあちこち引っ張ってもらって空中の移動自体には慣れてるんだが」


 田茂さんと桃子さんのそんな話し声が自分の後ろから聞こえて来た。そりゃ自由さがかなり違うだろうねぇ。

 自分が星矢さんに渡した飛行サンダルは桃子さんの元へといった。空中を飛ぶ(飛ばされる)のには慣れてるという事だったからね。


 同様の条件だと葵さんも智貴さんの飛行で慣れているらしく2人の内どちらが使うかで少しだけもめた。2人とも自分自身で飛んでみたいと前から思っていたようだ。

 自分達が練習をしている間に2人の飛行権を掛けた競い合いなんかも起こっていたらしい。自分の方の練習でそっちはあんまり見れてないんだよな。

 結果としては桃子さんが履いていた方が良いだろうとなった。万が一戦闘があった際には桃子さんが履いていた方が取れる手段も増えるだろうと。速度強化もあって飛行とは相性がいいしね。洞窟内でそこまで速度を出して飛ぶことがあるかはさておき……戦闘があるとして通路戦だしな。


 「私も自分自身で飛んでみたかったわぁ……。練習でちょっとは飛べたけどやっぱり空を飛べるっていうのは楽しいわね」

 「慣れてないと初めは怖いって感じる気がするんですけどね……。自分も楽しいのはそうでしたけど心のどこかでは今でも怖いですし」

 引っ張っている棒の所から葵さんのそんな声が耳に届いた。負けて残念でしたね。


 「こんな風に智貴さんに浮かばせてもらって移動とかやっぱり結構してたんですか?」

 「そうねぇ。森林エリアだと木の上にさえ出てしまえば壁っていう障害物もないし一気に移動したり出来るの。それと地上でも同じようにして何度も出かけたわ。大きい荷物さえなければ車よりも移動は自由だしね」


 やはり洞窟エリアのこんな通路を行くよりも使い所としては断然広い所の方が合っているらしい。森林エリアで他のPTと合流する時なんかもそうしてピストン移動をすれば早いとの事。木が多い森林エリアとはいえ木の上はだだっ広いだろうしそっちならスピードも出せるな。

 それに地上にはモンスターも居ないので尚の事注意をする必要がない。飛んでる鳥にぶつかったり虫が口に入らないようにとかそれぐらいだ。空中で人とぶつかるとかそこまで皆頻繁に飛んでるわけでもないしな。

 

 「石田さんも今の内に慣れておいた方が良いですよ。怪我人が出てその人を浮かばせながら引っ張るとかもなくはないでしょうし」

 「回復の能力者がいないと現場での治療は難しいですしね。一番負担が少ない運び方はやはり浮かばせるって事ですか」

 「帰還陣の位置は森林エリアであればすぐにわかりますし、超特急で怪我人だけを連れて帰るというのも出来なくはありませんしね。それを考えると桃子さんみたいに速度強化と飛行が出来る組み合わせは相性バッチリなんですけど……」


 そう言って後ろを見る葵さん。桃子さん達飛行サンダル組は万が一浮遊者の身体が流れた場合は抑制する役目として浮遊者の後ろに位置している。

 今の話が聞こえていたのか葵さんにどこか勝ち誇ったかのような表情を向ける桃子さん。


 「やはり能力に適切な効果を与える者に預けた方がマジックアイテムも活かせますしね。私なら怪力の能力もありますしちょっと体が流れてもすぐに修正できますよ。

 石田さん、後ろは私が見ておくから前の方は任せたぞ」

 「浮遊がかかってるんですから怪力の力なんていりませんよ……。修正するにしても普通にしてもらって結構です」

 「あはは……まぁ、そう言っていただけると自分としては頼もしいので当てにさせてもらいますね。けど葵さんが今言ったように、誘導に慣れておいた方が良いって事ですからなるべく自力で頑張りますよ」


 葵さんとその背の荷物に浮遊がかけられているので自分が注意するべきは葵さんと自分が握っている棒だけだ。これにしてもそう重いわけではないのでそこまで苦労はしないはず。

 むしろ力み過ぎて棒を激しく振ると一緒に葵さんも振ってしまうと力の入れ過ぎも厳禁だ。確かに怪力の能力を使って浮遊者を修正しても逆効果になりかねないな。


 「まぁ、怪力云々は冗談だ。石田さんは誘導役を頑張ればそれでいいさ。後ろは気にしなくてもいいぞ」

 「わかりました。万が一振りが激しい場合は後ろから注意お願いします」

 「その辺りは引っ張られてる葵さん本人から忠告が行くだろうけどな。まぁ、了解だ」

 「今の所問題はないですからその調子でお願いしますね」


 そう言って葵さん桃子さんと話をしつつ通路を飛んで行く。桃子さんも自分で飛ぶのは慣れていないはずだしあまり手間をかけないようにしないとな。

 葵さんが桃子さんと後で交代をしようなんて話しているのを耳にしつつこちらはこちらで集中する。そこまで力が要らないぶん慎重に棒を動かさないとだ。

 前後とスピードを合わせつつ上下の位置も調整する。以前移動はホバーでもいいかと思っていたがこうして皆と飛ぶのであればこちらも慣れておかなければならない。

 攻略も一段落したらこの辺りの練習もしようと頭の隅へ置いておく。ホバーよりもこっちの方が一般的ならそっちを練習しておかないとな。





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