588話 ダンジョン4層(PT) ロックスネークの解体
「おーい、ゴーレムの方は終わったぞー」
「おう、お疲れ。まだ終わってない所に行ってもらうからちょっと待っててくれ」
そう言うと源田さんは女王蟻の甲殻を割ると身体から引き剝がしていく。怪力の能力の見せ所だな。
ゴーレムにも手伝わせつつ甲殻を剥がし終わると内部の解体の始まりだ。いらない所を次々と切り落とし魔石を手に入れる。甲殻さえ剥がし終わったのであればそこまで時間がかかる事なく終わるはずだ。
「石田さんはロックスネークの方へと行ってくれるかー! ざっくりとでいいから岩の部分を落として来てくれ」
「了解でーす!」
女王蟻の解体を見物していると次の指示が飛んできた。水圧カッターを使って切り落として欲しいそうだ。
それが終われば皮を剥いだり肉を切ったりと水の能力者の出番もまたやって来る。血抜きまで終わらせれば後包むのは皆でって所か。
エアーマンティスは鎌と魔石、タイラントスネークの方は現在星矢さん達が担当中だ。ミノタウロスは斧だけでゴーレムの方は自分達が終わらせた。大物で残っていると言えばロックスネークぐらいのものだな。
ロックスネークの所へやってくるとそこには大型ゴーレムが群がっていた。
片手には鑿、もう片手にはハンマーを持っている。今まではあれで割らせていたらしい。
「司さん! 私もこちらに参加します!」
「よろしく頼みます! ゴーレムとは反対側からやってください!」
ゴーレムが岩をガンッ! ガンッ! と叩く中、自分もこちらに参加する事を司さんへ伝える。とりあえず大雑把に岩を落として身体へ近づいたら手が空いている皆で後は割っていくそうだ。
ある程度岩を落としたら綺麗になった部分から皮を切っていくとの事。タイラントスネークよりも一手間いるんだよね、一手間どころじゃない気がするが……。
「近くには誰もいないな……よしっ!」
落ちた岩を退かす係のゴーレムにも離れるよう指示を出すとロックスネークの岩へ水圧カッターを当てる。やりすぎて体部分まで切らないようにしないとな……。
どうせ後で溶かすので落とす岩の大きさは気にしなくてもいい。ゴーレムに詰め込めればそれでよかろう。
それに詰め込みにゴーレムを使えば1塊が大きくとも特に問題は無い。とはいえ帰還後に地上で運ぶことを考えたらなるべく小さくしておいた方が良いだろうか? 溶かす事も考えたらなるべく拳大程に砕いた方が業者の方も楽か。
「砕くのはゴーレムにやらせればいいよな? こっちが身体の岩を落としてる間にでもさせるのかね?」
ゴーレムに求めるのは大雑把な岩落としだ。身体近くの岩を自分達が慎重に退かしている間にゴーレム達には砕く役をさせておけば後々楽になるだろう。小さく砕くというのであればゴーレムも遠慮はいらないしな。
いらない部分を切り落とせというような単純作業であればゴーレムに任せられる。砕く所から籠への詰め込みまでをゴーレムにやらせておいたとして問題はないだろう。
「こっちはとにかく外側の岩を落としときゃ問題無し……っと。なるべく落としておけば後々楽にはなるけども……限界までカットするって怖ぇな」
水圧カッターを微調整しつつ岩を切り落とす。Lv1相当のロックスネークであれば自分でも処理をしたことはあるがこのサイズは初めてだ。あの時は肉が取れればそれでいいというのもあったしな……それと大きくない分岩を落とすのもそこまで苦労はしなかった(と思う……)。
岩の硬度もLv相応らしく以前よりも苦労する事だろう。水圧カッターで切ってる分にはそこまで感じないが後でハンマーを手にすればそれもわかるはず。
「ミスって身体の方まで鑿を打ち付けないよう気をつけないとだな……とりあえずここはこんなもんでいいか?」
ロックスネークを倒す際に壊した部位と削った部分を見比べる。もう少しすれば身体の方へ到達しそうだし削るとしてもこれぐらいが限界だろう。
「司さーん! 一度確認してもらっていいですかー!」
「今見に行きます!」
これで良ければ他の部分もこの程度で削ればいいだろう。
OKを貰えるかどうかを待ちつつゴーレムに片付けの指示を出しておく。今の内に退かせるだけ退かしてしまえ。
「それじゃあ各自気をつけて削ってくれ」
『りょうかーい』
そう言って集まった皆は鑿とハンマーを手にロックスネークへと向かい合った。少ししてカンッカンッ! という音が響き渡る。
「やっぱりゴーレムが居ると楽ねぇ、いろいろと」
「大雑把ですが岩落としもやってくれますしね。調整をする手間も減りますよ。その間に他の作業が出来るのは有難い事です」
「落した岩の片付けもねぇ。あれを運ぶのだって普通は重いしきついって言うのに……」
「そっちでも怪力の能力者なんかの手が取られますからね。念力で動かすにしてもこれだけの量となると休み休みする必要があるでしょうし」
「ゴーレムは休み要らずですものねぇ」
「サイズも丁度いい感じですね。これが軍の所有する十何mのゴーレムであれば力的に肉体の方まで傷つけかねませんよ……」
「運搬量的にはそちらの方が良いのでしょうけどね。解体の手伝いをさせるには大きすぎます。大きければいいというわけでもないという事ですか」
愛さん達がロックスネークの身体に残っている岩を落としつつそんな会話を交わしあっていた。確かにそんなでかいゴーレムには解体の手伝いなんてさせられんわなぁ……。
「各班に駒を1つというのも応用が利きませんね。解体に使うのであれば今のサイズの奴も残しておかなければいけないってわけですし」
「戦力になるからって大型ばかりにするわけにもいかねぇな。そうしちまったら通路じゃ無力だぜ……」
ロックスネークを挟んだ向こう側で源田さんは自分達が駒を手に入れた際中に入れるゴーレムをどうするかで頭を悩ませる。やはり通路戦を主に2~3mのゴーレム中心で揃えておいた方が良いだろうかと。このサイズであれば小型モンスターの解体でもかなり使えるし。
大は小を兼ねるとはいえ目的に合ったサイズがやはり必要だろう。戦闘メインと解体をメインでは併用は難しいよな。
大きい手をしてる人が細かい作業を苦手とするようにゴーレムも同じだ。軍の使っているゴーレムで小型モンスターを切るのは至難の業だろう。
「通路用の2~3m、大型モンスターの相手も出来る5m~それ以上。後者の方は解体の手伝いもギリギリ可能なサイズを1,2体は用意しておくべきか?
運搬班的には小型モンスターの解体を手伝えるサイズと大型モンスターの解体を手伝えるサイズ、そこに大量運搬が可能な軍が使ってるようなゴーレムの3種類を用意しておきたいね」
「それが理想と言えば理想だねぇ……」
向こう側で直田さんと田茂さんが用意をするならこの構成が良いと声に出す。洞窟エリアであればそんな構成が理想か。
「しかしそれは私達が今運搬班だからだろう? 戦闘の方に重きを置くのであればその構成も少し変えた方が良くないか?」
「広場での戦闘を考えると大きいゴーレムをメインで用意したいよねぇ。最悪ぶつ切りで持って帰って地上で解体をすればいいわけだし? 十数mのゴーレムであればそんなトンデモな運搬も出来そうだよね?」
「貸し倉庫は解体倉庫としても借りる事を考えておいた方が良さそう? 管理部の方は自由に使えるわけでもないし……」
桃子さんと幸さん、それと田名さんの3人がそう口にする。
ゴーレムが大きければ解体前の状態で運べたりも出来ると言えば出来るわけだ。軍の使っているようなゴーレムが何体もいればこのロックスネークだってぶつ切りで運べなくもなさそうだしな。
そうであるならば解体を補助する通常サイズのゴーレムから今使っているような大型ゴーレムを減らす構成もおかしくはない。戦闘と運搬を特大ゴーレムで賄うという考えも十分に有りか……。
「しかしまぁ……軍が使ってるようなゴーレムを何体も確保するってのはかなり難しい気がすんだけどな? 俺に作れって言われてもそれこそいつになるかわかんねぇぞ?」
「だよなぁ……」
津田さんがそもそも特大ゴーレムなんてどうやって用意するんだと、まずはそこから疑問を投げかける。小さいのから作ったらどうだと言われているのにそんなゴーレムは作れんと。田間さんもそれに同意するかのように溜息を吐いた。
「工場で作るのであればそこまで難しい事もないんだろうけどね。あれの製作費いくらなんだろう?」
「買うって考えはやめておきましょう……買っても黒字に戻すまでかなりかかるもの……」
司さんの呟きに愛さんがストップと声を掛けた。確かに店で買うってのはねぇ……。
「欲しければ根気強く自作するしかありませんね……美空……」
「ちょっと遠慮したいわね……」
「同じくー」
星矢さんの問いかけに美空さんと愛さんがNOと口にする。最近3mのを作り始めたばかりなのよ? と。
自分としてはあんな感じの奴を欲しいので制作予定である。ゴーレムの大きさ事態を変えればいいだけなので正直言ってそこまで苦ではない。問題はやはり制作にかける期間をそれだけ見ておかなければいけないという事だが……。
カツカツと岩を剥がしつついつ用意をしておくかと考える。人のゴーレム作製は終わったので自分用に準備をしておきましたとでも見られた場合はそう言うか?
その場合だと倉庫にでもパーツを置いておく必要がありそうだ。作り掛けというのを知らせるにはそれが一番だろうし。
帰還してからでも倉庫に用意をしておこうとそう考えを纏める。とりあえず倍の10mからでも作るか? しかし……。
(倉庫にいる時間を長めに取らなくちゃだな。ますますアパートに帰る回数が減るなぁ……)
製作時間はほぼ無いというのに周りをごまかす必要性からそうせざるを得ないと内心溜息を吐く。ゴーレム作りはこれが大変だよなぁ……。




