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573話 ダンジョン4層(PT) ミノタウロス撃破!




 映像の向こうでミノタウロスと土田さんが互いに剣を振る。斬馬刀モードとなった巨大な剣は両者の間で激しくぶつかり合った。

 同じ大きさの武器とはいえ両者の体格には違いがある。真上から振り下ろされたミノタウロスのティタンブレードを防ぐとなると身長の低い人間側はどうしても武器を振り上げるしかない。体の大きさの違いはそれだけ優劣が出てしまう重要な要素だ。

 普通は武器を振り上げるとなるとそれだけ力を必要とするので不利になる事が多い。しかしそれがティタンブレードであれば話は別である。


 「弾き返しましたね!」

 「あの武器は重さを持ち主に感じさせないっていう話だからね。普通の武器とは違って振り上げるにしてもそれだけ楽に動かせるって事さ」

 「あの大きさでその効果だと見てて不思議な感じがするわね」


 司さんと愛さんはそう言ってホッと溜め息を吐いた。なんだかんだで上手く初撃は防げたと心配していたらしい。

 確かにあのティタンブレードにはそんな効果もある。とはいえ、真上から武器本来の重さも加わった一撃を弾くとなればそれ相応の力が要求されることになる。それがミノタウロスなんかのパワー系モンスターであれば尚の事だ。

 土田さんもああして対峙をしてる以上同じ力を持っていることは明白だ。怪力の能力が無ければいくらティタンブレードを持っていたとしても打ち合おうなんて考えには至らないはず。司さん達にも聞きそこは大丈夫と教えてもらった。

 

 しかし怪力の能力を持っているからと言ってそれだけで安心は出来ない。怪力の能力を持っているというのは対峙をする上で必要最低限というだけなのだから。

 いくら武器そのものの重さが持ち主の負担にならず怪力の能力を持っていたとしてもそれは相手との差を縮めたにすぎない。相変わらず優勢は未だミノタウロスの側にあった。それが分かっているからか司さん達もホッと息を吐いたのだろう。


 「勢いの乗った振り下ろしを弾くにはそれだけの力が必要です。下側からではどうしてもその分余計に力を入れなくてはなりません。それは怪力の能力を普段以上に活用する事になります。その分土田さんの消耗も激しいものになるでしょう」

 「普段は燃費の良い能力なのだけどね。必要とする力をどんどん上げて行けばその分消耗するのは他の能力なんかと同じ事。

 ミノタウロスと打ち合うとなれば普段の倍以上の速さで消耗していくかな?」

 「相手も同じ武器を使っている以上条件は同じでしょうしね。体格差なんかもあるので人の方が不利になってしまうのは仕方のない事かと。短期決戦で片づける必要がありますね」

 星矢さん達は遠見越しに土田さんの様子を見てそう判断した。現状ではミノタウロスとの差が縮まっただけという事だ。スタミナなんかもミノタウロスの方が持ってそうだしな……。


 「これで武器が違えばまだマシなんでしょうけど……」

 「同じ武器となるとミノタウロスにしても楽なんでしょうね」

 「武器の重量が負担にならないというのはやはり大きいですよ。あちらは怪力の能力を使うことなくそれでいてあのパワーですので。人とモンスターのスペックの違いです」

 「2刀流ですもんね……。ティタンブレードとあの大斧の同時持ちで更に厄介さが増してますよ」


 美空さん達婦人メンバーは映像に映るミノタウロスを見て眉根を寄せる。愛さんは次に繰り出された大斧の一撃を見て、いつもより更に面倒になっていると顎に指を当て考え込んでいた。

 映像ではティタンブレードを弾いた土田さんが弾かれた勢いのまま回転し、その勢いを乗せて大斧を弾き返している所だった。追撃で大斧も来ると予想していたのだろう。


 どちらの武器も弾いた土田さんが一度距離を空ける。肩が上下している様から相応に力を使ったことが窺えた。やはり力を更に使うとなるとそれだけ消耗をするという事か。

 少しして収まった事から1度や2度でどうにかなる程ではないのだろうがそれが続けば徐々に疲れも蓄積されていく。やはり礼二さん達が言うように短期決戦が望ましいというわけだ。


 「またぶつかる!」


 映像ではミノタウロスと土田さんが2度目の打ち合いを行い始めた。

 結果としては先程と同じだ。ミノタウロスの振り下ろしをまたもやはじき返した土田さん。今度は2度目とあってか、力の感覚もわかったようで先程よりもミノタウロスの武器をより大きくはじき返していた。1回目よりも大きく態勢を崩すことに成功した。

 しかし、それは更に力を使ったという証でもある。それだけ体勢を崩すには力が必要という事だ。


 「でもそのおかげか周りに被害が出てますね」

 「ミノタウロス側に不用意に近づいたら危険ってわけだ」

 映像でははじき返した武器がミノタウロスの近くに居た軍隊蟻にぶつかっているのが映っていた。それだけの威力で弾き返されたのか当たった軍隊蟻は真っ二つだ。大斧の方なんて押し潰されている状態だった。


 「下手に近寄ったらそっちも余波を受けかねませんね、これじゃあ」

 「それだけ激しくぶつかり合ってるわけだからな。あんな武器を振り回してる所なんて頼まれても近づかねぇよ」


 源田さんが肩を竦めながらそう口にする。同じく近接を担当している津田さんや桃子さんも同意見のようだ。完全にあの一帯は死地って事か。

 武器のリーチもあって結構な距離に空間が出来ていた。他の地上班が土田さんにモンスターを近づけまいと奮闘しているのも影響しているようだ。ミノタウロス側も若干距離を空けたようにも見える。


 「さてと……それじゃあそろそろかな?」

 「? そろそろ?」


 何の事かと思いそう口にした司さんに顔を向ける。なにがそろそろなんだ?

 見て居ればわかるという事なので続けて映像の方に視線を向ける。ここから事態を動かすという事か?

 そんな疑問を持ちながら映像を見ていると、ミノタウロスと対峙をしている土田さんではなくその周りの地上班の方に動きがあった。


 周りにいる地上班は、近づけまいとしていた軍隊蟻を攻撃すると弱っている奴の足を掴み一気に土田さん達の方へと放り投げた。風の能力で一気に吹き飛ばされる軍隊蟻なんかもいる始末だ。

 放り投げられた軍隊蟻が土田さん、というより……ミノタウロスの前へと次々に落ちていく。勢い余ってミノタウロスにぶつかるものも居た。これはいったい?


 「あれって何をしてるんです?」

 「勿論、あのミノタウロスを倒すための準備だね」

 「葵、拡大を頼む」

 「わかりました」

 司さんにそう言われてどういうことかと再び視線を映像の方へと戻す。智貴さんに言われて葵さんが放り投げられた軍隊蟻の姿を拡大させる。どうやらただ投げられただけだからかまだ息はあるようだ。

 

 「モンスターの習性は石田さんも知っているよね? 同士討ちはしないっていうあれです」

 「ええまぁ……あ、だからですか?」

 「そういう事」


 そう言われてこの行動の意味を理解した。確かに有用か……。

 再び映像が引き戻されミノタウロス全体の姿が映された。その足元には未だ息のある大量の軍隊蟻の姿が転がっていた。それは大型モンスター故の弱点でもあった。


 モンスター同士は同士討ちをまずやらない。射線上に他のバットが居たら攻撃を躊躇ったりするそれと一緒だ。

 大型モンスターは移動そのものが一種の攻撃とも言えた。その大きな図体は自身より小さい相手を押し潰すとあれば十分な脅威となる。ミノタウロスもまた同じだ。


 「これでミノタウロスは不用意に足を動かす事が出来なくなったわけだ」

 「まだ息のある軍隊蟻をその足で踏みつぶすわけにはいかないからな。どかすにしても軍隊蟻そのものは虫の息だ。雑に足で押しのけるってわけにもいかねぇってこったな」

 そう司さんと源田さんが口にした。弱っている軍隊蟻はミノタウロスにとって邪魔でしかないわけだ。


 「当然武器を振るうとなれば足を踏み込ませる必要がある。武器自体にリーチがあろうとも力を入れるとなれば必要不可欠な動作だ」

 「そんでもって逆にこっちから踏み込みをするにしても遠慮はいらねぇ。思う存分武器を叩きつけられるってわけだ」


 草田さんと八十田さんが映像に目を向けながらそう口にする。映像でも土田さんがミノタウロスに向かって距離を詰めている所だ。準備は出来たという事か。


 土田さんがミノタウロスの頭に向かって武器を振り下ろした。6mまで伸びるティタンブレードはミノタウロスの身長でも十分攻撃範囲内だ。足元に気をやっているミノタウロスが今度は受けに回る事となった。

 さっきとは逆の立場となったミノタウロスは振り下ろされたティタンブレードを迎撃する為下から掬い上げるようにして同じくティタンブレードを振り上げた。

 しかし、態勢も整っていない状態から振り上げた攻撃では土田さんを仰け反らせるまでにはいかなかった。追加で大斧も振り上げて攻撃を食い止める事に成功する。

 

 攻撃を食い止める事には成功した。だが、それは自身も足を踏ん張る事によってようやくといった有様だ。

 そしてその際にミノタウロスは数歩後ずさる事になった。ミノタウロスの足の下でいくつかの軍隊蟻が潰され絶命の鳴き声をあげる。それで魔石も壊れただろうが仕方がない……今はミノタウロスを倒す事の方が優先だ。


 土田さんは一旦後方に距離を取るとすぐさま前へ向かって矢のように突進する。畳みかけるといった勢いだ。

 踏み込み勢いのある攻撃を受け止めるにはミノタウロスの足元は邪魔が多すぎた。先の一撃を受けている間も傷つき弱った軍隊蟻が投げ込まれている。こちらも踏み込んで攻撃を受け止めるといったスペースはほとんど残されていなかった。


 振り下ろされる一撃をまたもやその場に立ちそのまま受け止めるしかないミノタウロス。しかし、土田さんの次の一撃は先程よりも重いものとなっていた。更に怪力の能力を高めたのだろう。

 ミノタウロスは斧とティタンブレードの2つで受け止めようと両腕に力を籠める。いくら向こう方が力が乗っていようと結局は自身の身長よりも低いのだ。振り下ろしているとはいえそう簡単に抜ける程背の高い相手を仕留めるのはたやすい事ではない。両腕を掲げた状態を押し切るのは並大抵の力では難しいはず。


 「あ……」

 「葵、角度を変えてくれ」

 「ええ」


 そんな事を思いながら映像を見ていると突然ミノタウロスの膝が崩れ落ちた。そこまで力押しが効いたのかと思ったがそうではなかった。

 角度的には見えなかったが、それが変わった今ならば何が起きたのか分かった。


 「土田さんって土の能力も持ってたんですね」

 「だね」

 

 ミノタウロスの膝に1本の槍状の物が深々と刺さっていた。両膝の皿の部分を貫き反対側まで突き出ている。あれでは膝を折るのも無理らしからぬ事だ。見ているこっちですら痛々しく思うな……。

 両膝を折り膝立ちになるミノタウロス。そこに土田さんの力が更に加えられた。

 膝を破壊されたミノタウロスに踏ん張るという事は難しかった。両腕のみで支えてはいたがそれも次第に押され始める。受け止めるというのは軸がしっかりしていて初めてその力を発揮するものだ。


 音が聞こえていたならば土田さんとミノタウロスのの叫び声がこちらにも伝わって来たであろう。そんな表情で腕へと力を込めているのが映像越しに伝わって来た。

 そしてしばらくすると土田さんの武器がとうとうミノタウロスの首へと入り込んだ。首と肩の間から激しく血が吹き出ているのが見える。

 土田さんは最後の一押しとばかりに自身の足元を上げでミノタウロスの上に出る。土田さんはミノタウロスの胸目掛けて武器を深々と押し込んでいった。


 少ししてミノタウロスの腕から一気に力が抜けたのか腕が垂れ下がっていった。同時に体の方も前のめりに倒れていく。死んだか?


 「おそらく魔石の方にダメージがいったんじゃないかな。胸の方まで剣を押し込んでいったし」

 「肉体が絶命する前に魔石がダメになりましたか」

 「モンスターのとっては第2の心臓のようなものですからね。これなくして生きる事は不可能でしょうし」

 「剣の力を受けて割れたか?」

 司さん達がミノタウロスの急な機能停止についてそう語りだした。魔石が壊れたか……。


 「だとしたらこれで倒しましたか。いやー、緊張しましたね」

 「まさかモンスターもマジックアイテムを持ってるとは思わなかったからね」

 

 これで一段落かとホッと溜息を吐いた。何とかなったな……。

 映像からは他のミノタウロスが立っているのは確認出来ない。今の間に他の奴も倒したという事だろう。

 残りで厄介なのはタイラントスネークと皆はそちらに視線を移した。どうやら地上班の方も目途が見えてきたといった感じだな。


 

 


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