565話 運搬に向けて最終準備を
≪全く……行くのは明日だって言うのに何とも急な話ですね。
駒を半分も持って行かれたのはかなり大きいなぁ……≫
「ですよねぇ……」
軍の建物から出たそのすぐ後、司さんに電話をすると先ほどまでのやり取りを話した。やはり半分になったってのはかなり影響しますよね。
≪それで急な話だからと補償についても書いておいたんですか?≫
「どうなるかはさっぱりですけどね。これでゴーレムをレンタルしたのであればそっちは補償されるだろうとは言われましたが」
≪レンタルと言ってもそっちは無償って事だからね。実質補償は現在の所全くの不明ってわけだ≫
「そうなりますねぇ……」
あちらにもはっきり聞こえる程大きく溜息を吐いた。
駒のレンタル料が入って来る等嬉しい事もあるにはあるがどうにもスッキリしない。これが前もって言われていたのならここまで気落ちする事もないのだろうけど……。
≪8体分運搬量が減るからねぇ……半分だとしてもかなり多くの素材を運べるだろうけどそっちと同じ量を置いてこないとってなるとかなり勿体ないなぁ……。
これはぜひとも軍のゴーレムには期待させてもらわないとね≫
「自分達が討伐班じゃないだけまだマシなんでしょうけどね。軍の人達にはそれだけの戦果を期待させてもらうしかなさそうです」
自分が使ってる以上の大型ゴーレムを8体追加するのだ。それに伴う戦果を期待したとしても悪くはないだろう。
軍は地底湖の攻略が主体だけど広場の方も積極的に攻略してほしいものだ。その討伐結果を持ち帰る為に自分達運搬班も同じく頑張らないといけないがな。
「攻略の効率が上がったとしてもそれを持ち帰る運搬班が居ないとかなりの素材が無駄になりそうですね」
≪なるべくなら広場攻略と同時に自分達ももうそこに居るようにしておきたいね。倒したはいいけどその素材をスライムにただ消化されるのは減らしたいかな≫
「1回目だと向かわなくちゃいけない広場もいっぱいありますからねぇ……」
ある程度向かう広場が絞り込めているのであれば合流が間に合う確率も高まる。討伐をした後で運搬班を待つ事も2回目の探索からは短くなる。
攻略1回目だと討伐班と運搬班、それに護衛班がそれぞれ別の広場で他の班を待つという事も多いそうだからな。運搬班や護衛班だと広場攻略を実行する討伐班待ちの待機時間が長い。どこの広場で戦闘が始まってるとかが分かれば待つ必要だってそう無いのだが……。
1回目の攻略は素材の無駄も多く出る。広場の空振りが少ない分一番多く攻略も出来るわけだからな。
≪討伐班待ちの時間を短くした方が良いかもしれないね。運搬班や護衛班の数を増やしたほうが討伐班の効率UPにも追いつくかな? まぁ、明日が攻略開始だって言うのに今更こんなこと悩んでいた所でもう手遅れなんだろうけど……≫
「一応私達みたいに駒持ちの運搬班もいるでしょうからこっちの効率も上がってはいると思うんですけどね。運搬班じゃなくて討伐班に参加をしてたらあれですが……」
≪まぁ、一番の優先はモンスターを倒してその階の安定化を図るって事だからね、素材回収はそのついでって事だし。
駒を討伐班に回すっていうのも根本的に間違っているわけじゃないってのがねぇ。それを考えたら8個の駒提供も致し方なしって感じだよ≫
「討伐班の優先を受け入れるしかないって事ですか……」
わからなくもないがどうにもモヤモヤとした気持ちを感じてしまう。やはり成果が落ちるってわかり切ってるからしょうがないよなぁ……。
「はぁ……軍にレンタルされるってなるとこんな感じなんですね。それに最悪は駒が返ってこなくなるかもって事ですし」
≪万が一の場合は補償がされるとはいえ駒の損失は痛いね。討伐班だけに一番その確率が大きい所だし≫
「やっと2セット目もフルで使えると思ってたんですけどねぇ。なんだか朝からテンション落ちちゃいましたよ……」
先ほどまでとは打って変わり目に見えて気分が下がっていた。溜息の重さもいつもより2割増しって感じだ。
≪いきなりじゃ仕方ないね。とりあえず明日までにはその気分も戻しておいてね≫
「了解です……」
今日1日で体調も含めやる気もしっかりしておいてくれとの事だ。まぁ、流石に今更どうこう言ってもあれなので気持ちを切り替えるしかないってのは理解してるけどさ。
半分を軍に渡したという事は理人さん達と分けあった数になったという事だ。
元から自分が手にしていたのは8個……そう思えばこちらに損失はなくなる。むしろレンタル代が貰えるとそう思えばいくらかは気分もマシになるだろうか?
司さんは皆にもこの事を伝えておくとそう言って通話を切った。近くに居るようなのでだいたいの話の流れ自体は皆も聞いていたらしい。時々司さんの声に交じって愛さん達の「え~……」といった声も聞こえてきたので皆も似たような思いという事だ。
携帯を仕舞うと駐車場に止めてある車の方へと向かう。駒も戻って来たのでお願いしていたゴーレムを受け取りに行かないとだ。
「半分になっちゃったからその分ゴーレムも減らさないとな。確か愛さんと美空さんで3体ずつ作ったんだっけ? だとしたら借りるのは2体か。
んー……半分以上また仕舞ってもらう事になっちゃったなぁ。そこまで手間ではないと思うけどなんか申し訳ない気分が……こればっかりはこっちの所為じゃないしねぇ……」
後2体でいいのなら全部自分達で揃える事も出来たように思った。ゴーレムを借りられるからと愛さん達は休み休み作っていたわけだし。
2日前にその事をを知っていれば8体全部戦闘が可能なゴーレムで揃っていたんだけどねぇ……何なら自分の方で2体ぐらい用意してたわ。
「ほんと、急に言ってくるのは困るよなぁ……2体だけでいいですってのもなんかねぇ。先に連絡しておくか……」
仕舞ったばかりの携帯を取り出すと森田さん宅に電話を掛ける。
まさか10体をお願いしてたのに2体になるなんて予想してないっての……。
「それではこの2体お借りしていきますね」
「はい。荷物運び用のゴーレムですけど探索のお役に立ってくれると良いんですが……」
そう言って清香さんは用意したゴーレムへと視線を向けた。
「まさしくその荷物運びをやってもらうわけですからね。ある程度の耐久があれば問題なく熟してくれると思います。戦闘では出さないので無傷でお返ししますよ」
用意してもらったゴーレムは地上でも一般的に使われているゴーレムらしい。土魔石の粉末は使われてない量産タイプとの事だ。
主に使われているのは工事現場や瓦礫撤去といった重機代わりに使用されているらしい。重機が入っていけない所なんかでも活躍出来るというのがセールスポイントなんだそうな。災害の際も救助隊員代わりに突っ込ませるのだとか。火事の所とかゴーレムなら火もへっちゃらだからね。
「それといきなりお願いしてた数を半減どころか2体にまで減らしてすみません……」
「急遽必要数が減ってしまったのでしょう? 仕方ありませんよ」
チラリと玄関横に並んでいる余ったゴーレムへ目を向ける。自分が帰ったら倉庫へと戻すのだそうな。
「園造さんにもご用意してもらったのに済みませんとお伝えください」
「ええ、承りました」
そして受け取る物も受け取ったので家を後にしようと車に乗り込む。園造さんにも電話したけど忙しいのか電話に出なかったのよな。
最後に清香さんに頭を下げると門へと車を進ませた。ともかくこれで駒分のゴーレムは確保っと。
「後はついでに家具屋だっけ? 適当なタンスでいいなら自作も出来そうだけど一応見栄えがある方が良いよな」
木の板を張り合わせたカラーボックスみたいな棚でもいいっちゃいいんだけどね。後々も使ってくなら良い物を買っておいて損はない。たまー……に人も訪れるような感じだからねぇ。
ここで結構寝泊まりしてます感が出ていれば街中の拠点として使える事間違いなしだ。アパートの方はあれはあれで活動拠点の中心だからね。住所登録はあれが無いと困ったことになるし。
「倉庫の方を住所登録するのもねぇ……出来るのか知らんけど。管理部管轄のアパートだからなにかと楽だしな」
車を家具屋へと向かわせながらそんな事を思う。最近あっちに帰ってないし今日はアパートの方にでも行っておいた方が良いかね?
探索前でもある事だし疲れを取っておくためにも今日はアパートに帰った方が良いような気がした。なかなか帰ってこないからって田村さんなんか変な事思ってやしないだろうか?
「あー……でもそうしたらゴーレムの回収で一度倉庫へ行かなくちゃならんのか。まぁ、早起きを心掛ける為にもそれもいいっちゃいいか」
移動は空を飛んで行けばいい。荷物はゴーレムに持たせることが出来るから身1つでいいしな。
明日の朝の事を考えながら車を街中へと進ませる。
それと雑貨屋にも寄って解体で使いそうな物資を見繕うとしよう。梱包用のシートなんかはいくつ予備があったとしてもいらないって事は無いだろうしな。




