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551話 森田家で駒を使用




 ≪ようこそいらっしゃいました。どうぞそのままお進みください、今門を開けますので≫

 「わかりました」


 そう返事を返し門が開くのを待つ。しかし相変わらずの邸宅だなぁ……。

 予定していた時間となったので約束通りに森田さんの家へとやって来た。話しはどれぐらいで終わるだろうかね?

 この後にも用事が一応あると言えばあるわけで……あまり長引かない内に帰れたらいいなと考える。園造さんはかなり興味津々だろうし切り上げ時は難しいかもしれない……。


 そんな事を思っていると門が開いたので車を中へと進ませる。前と同じ家の前に適当に止めて置いていいそうだ。

 少し進んで家の前へと到着する。既に玄関前に人影が居るんだけど……。


 「いらっしゃいませ、今日はいきなりお呼びしてしまい申し訳ありません」

 「いえ、私の方も時間がなかったわけではありませんので」

 車から降りるとそういった挨拶を交わす。家の中に入ってくるまで待ちきれなかったって事か?


 「早速であれなのですけど、駒の方を見せていただいてもよろしいですかな?」

 「ええ、それは構いませんが……」

 やはり待ちきれなかったのかと思いつつ、駒が入っているケースを園造さんに見せる。

 

 「こいつがそうですかっ! テレビで見はしましたが本当にチェスの駒そっくりですな。直接拝見しても?」

 「どうぞ」

 そう許可を出すとすぐさま駒をケースから取り出す園造さん。ある意味探索者以上に興味を持ってるかもしれないな。

 

 「重さは見た目通りのものですな……。16個をケース付きで持っていたとしてもさほど苦労はしなさそうです。この中に石田さんが使っておられるゴーレムが入っているのですよね?」

 「そうなります」

 「そちらも実際に出すところと仕舞う所を見せていただいてよろしいでしょうか?」

 「わかりました」


 表情から待ちきれないというそんな園造さんの姿に苦笑いを浮かべつつ駒の入ったケースを受け取る。とりあえず2mの奴でいいか。

 一言出しますと断りを入れてから地面へ駒の底を付ける。出しただけで地面が割れるような事は無いと思うけど一応断わっておいた方が無難だ。

 頷く園造さんを横目にゴーレムへ出ろと念じる。するとすぐさま1体のゴーレムが自分達の目の前に現れた。


 「……本当に出てくるのですな。いやはや……聞いていたとはいえこれは何とも……」

 「初めて見るにしては落ち着いてますね?」

 「ははは……十分驚いてはいるのですがね。言葉にならないと言いますか……うん、なんと言えばいいのでしょうなぁ……」

 園造さんは両手を顔に持って行くと頬をグニグニと揉み解す。ひきつっている顔を何とかしようといった感じだ。特におかしな風にはなっていないと思うけどね。


 「まさかあんな駒1つにこれ程のゴーレムが入っているのですか……実際に見せていただきましたがなんとも信じられませんなぁ……」

 「まぁ、最初はそうですよね。私もこれを手に入れてゴーレムを仕舞えた時そんな気持ちでした」

 同時にこれでゴーレムも使いやすくなると喜んでいたけどな。そこは使い手と作り手の感じ方の違いだろうか?


 「これで駒をお持ちの方であればダンジョン内でもゴーレムを使われるようになるのでしょうな。まぁ……既に使われているが正しいですか?」

 「そうですね。私以外にもいくつか持っている人達も知っていますが皆さん喜んで使われてましたよ」

 「やはりダンジョンで使用出来るゴーレムの調整をもっと頑張らなければなりませんね……。

 どこの会社もダンジョン向けのゴーレム製造は規模を縮小していましたからなぁ……これからいろいろと忙しいかもしれません」

 「ほとんどが地上向けって事でしたしねぇ……」


 自分としては頑張ってくれとしか言いようがなかった。自分への依頼は正直少ない方が有難いしな。

 そんな事を園造さんと話していると玄関の扉が音を立てて開いた。


 「お父さん? お母さんがいつまで外で話してるのって呆れてるよ?」

 「ああ……それもそうだな……」

 「こんにちは、唯さん。今日は家にいたんですか?」

 玄関の扉を開けて姿を見せたのは唯さんだった。どうやら遅いからと呼びに来たって事らしい。


 「こんにちは、石田さん。いつまで経っても中に入ってこないので呼びに来ました」

 「早速今日来た用件を済ませていた所でして。家の中ではゴーレムも出せませんしね」

 「うむ……やはり実際にゴーレムを出し入れ出来る所も見せてもらいたいからな。とはいえ、玄関前での立ち話もそろそろ終わりにしないとだな……後でもう少し見せていただいても?」

 「ええ、はい」

 「それでは中へ入りましょうか。遅くなって申し訳ない……」

 「いえいえ、大丈夫ですよ」

 「それじゃあ石田さん、ゆっくりしていってくださいね」

 そう言うと唯さんは踵を返し家の中へと戻っていった。お母さん……清香さんの所にでも行ったのかな?

 

 「ささ、どうぞお上がりください。っと……その前にゴーレムを仕舞う所もしっかりと見させていただきましょうかな」

 「ではお待たせするのもあれなので仕舞っちゃいますね」


 そう言うと園造さんの前でゴーレムに駒を押し当て駒の中へと仕舞う。一瞬にして消えてしまったゴーレムを見て園造さんが唸り声をあげる。これで出す所も仕舞う所も確認出来たわけだ。

 園造さんは深く溜息を吐いた後でこちらの案内の事を思い出したのか慌ててどうぞと口にする。それじゃあお邪魔しまーす。


 園造さんに案内されつつ、以前も来たことがあるリビングへと到着する。そこには待ってましたと言わんばかりの笑顔で清香さんが立っていた。


 「いらっしゃいませ、石田さん。主人が長々と申し訳ありません」

 「お邪魔します。いえ、元からそういった用事で伺うとは聞いておりましたので」

 「ほら……ここでゴーレムを出すわけにもいかんだろう?」

 園造さんが取り繕うようにしてそんな感じに言葉を返す。早く家の中へ案内しなかった言い訳もあるにはあった。


 「そこの窓から庭へ出てもらえばいいでしょうに……。自分で案内をしてくるからって、全く……」

 「うむ……まぁ……それもそうだな……」

 清香さんの視線の先には庭へと通じる大きな掃き出し窓があった。庭へ自由に出られるようにサンダルなんかも用意してある。最初はそのつもりだったのか?


 「私も気になっていたんですからね? それなのに自分だけ先にあれこれ聞いて……」

 「はは……まぁ、また出してもらうつもりだからそうむくれんでくれ。っと、石田さん、まずは席に着いてお茶にでもしましょうか。ささっ、こちらへどうぞ」

 「わかりました」


 軽く文句を言う清香さんに苦笑を返しながらそう口にする園造さん。椅子の背を引いて座ってくれというその言葉に従っておく。夫婦相の愚痴は自分が帰った後にでも再開されるだろう。

 お茶の用意をしていたらしく、自分が席へ着くと清香さんがポットへとお湯を注ぎ入れる。本格的な暑さも過ぎた事だしだんだんと温かいものを好む季節になってくるか。まぁ、まだ残暑って気がしなくもないが。


 「んんっ……まぁ、それはそれとしてだ。もう1回駒を見せてもらっても構わないか?」

 「ええ、どうぞ」

 テーブルの上に駒が入ったケースを置いて園造さんの方へ押し出す。今度は清香さんもしげしげとそれに目をやった。


 「16個1セットか……これだけの中にさっきも見たようなゴーレムが16体はいるわけだ」

 「これに16体もゴーレムが入ってるんですか? ちょっと信じられないぐらいですね……」

 「それではまた1体出してきましょうか? 庭先を少しお借りしてもいいですかね?」

 「ああ、妻にも見せてやってくれ」

 「よろしくお願いしますね」

 「では少し失礼して……」


 そう言うと清香さんは窓を開けてサンダルを出してくれた。一礼して庭へと足を進める。こっちもコンクリの地面の所があるしそこでいいだろう。

 そして先ほどと同じようにゴーレムを出す。すると後ろで清香さんの息をのむ音と共に驚く声が聞こえた。初めて見るとなるとそういった反応だよな。

 窓の所まで戻ってくると家の中へ入る。窓はとりあえず開けておく事にした。


 「御覧になった通りですね」

 「はぁ~……先ほどまで何もなかったのにいきなりゴーレムが出てくるなんてすごいですねぇ……。さっきの駒全部に入っているんですよね?」

 「後で全部出したところも見てみたいものだな。

 ゴーレム自体はいくつも見てきたがそれはそれでまた新鮮だろうし」

 「全部ですか……わかりました」


 席へと着きつつ後で見せると口にする。ゴーレム製造会社の園造さんにすれば十数体のゴーレムなんてどうという事は無いだろう。今までさんざん見てきたわけだ。

 しかし家でそれだけ並ばせるという事はそうそうやるものでもないらしい。それにこいつ等は全員武装をしている。ダンジョンで使う戦闘用のゴーレムを見るというのもここしばらくなかったわけだ。そういった意味では確かに新鮮かもしれないな。


 「お母さん、お茶請けはこれでいいの?」

 「ああ、ありがとうね」

 「唯さん、さっきぶりです」

 「そうですね。あ、これお茶と一緒にどうぞ」

 そう言って唯さんは自分の前にケーキを差し出してきた。結構お高そうなケーキだな……。


 「とりあえず食べながらでも。唯も座りなさい」

 「ええ」


 皆の前にケーキを置くと自分も席へと着く唯さん。さっきまでお茶請けの用意をしてたんだな。  

 どうぞと促されつつお茶を渡される。駒やゴーレムの話はひとまずこちらを味わってからという事になりそうだ。 





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