533話 ダンジョン4層(PT) 4層ボス戦 決着
「残りはサンダーゴーレム4体よ! 皆、後もう少し!」
空から動いているゴーレムの数を知らせる竹田さん。ようやく終わりも見えてきたって所か。
ちなみに1体減っているのはまたもや頭部に攻撃を受けて機能停止したのがいるからだ。ひそかに鑑定をしたら頭部に核持ちが1体だけ居たんだよな……。
壁破壊を止めようとした風を装い頭部の核へ攻撃を仕掛けた。それで機能は停止した。
それを見ていた周りも事故なら仕方ないといった様子だ。ゴーレムとの戦闘だとよくある事らしいしね。
「それだけなら別に出口で待ち受ける必要もないな。空、 サンダーゴーレムの位置は?」
「左の一番端の通路、3つ目の通路、4つ目の通路、一番右端の通路に1体ずつよ」
「両端の奴から倒していくか。壁は大型ゴーレムにぶち破ってもらおう」
「ここまで来たら通路は要らないしな」
太一さんの質問に答える竹田さん。誠さんと理人さんが両端の通路にいる奴から倒そうと提案をする。
戦力を2つに分けたとしても相手が1体であれば十分だろう。
ササッと組み分けをしてお互いに反対側の壁まで移動を開始する。
自分達飛行班は相変わらず空中で囮兼報告役だ。戦闘にも参加はするが一番役立つのはやはりそれだ。一応重要な役も任されてはいるが……。
「よし、壁をぶっ壊せ! すぐに相手も出てくるぞっ! 攻撃用意ッ!」
『了解!』
太一さん側の方を空から見下ろす。サンダーゴーレムの方も声が近くから聞こえているのが分かっているのだろう。壁の外にいる皆の方を向き再び壁を殴り始めていた。
大型ゴーレムの蹴りが壁へと繰り出される。ケンカキックの要領で壁へとぶつかった足から大きな音が鳴り響く。
そしてそれが数回繰り出され、金属の壁がひしゃげると通路に隙間が出来た。壁の向こうにゴーレムが居たら今ので多大なダメージを負ってそうだな。
とはいえ、違う位置を壊していたのでサンダーゴーレムは無傷だ。サンダーゴーレムの方も壁が壊れたのを知るとそちらへと移動を開始する。サンダーゴーレムからすればようやく壁の外だ。
「来ます!」
「攻撃用意ッ!」
壁の外に出てくるタイミングを地上にいる太一さん達へと伝える。さてと、上手くいってくれよ……。
壊れた壁の隙間からサンダーゴーレムがその姿を現した。壁から出て来たところで出口でも見た遠距離攻撃の嵐がサンダーゴーレムを襲う。威力は調節してあるらしい。
危険というわけではないが無視し続けるのはまずい……そんな威力の攻撃がサンダーゴーレムを襲った。足止めとしては十分だろう。
「丈ッ!」
「了解!」
太一さんのその声に門田さんが応える。
動きを止めたサンダーゴーレムの足元から2本の柱が発生した。それは丁度サンダーゴーレムの腋の下を持ち上げる形で上へと延びていく。
腋を持ち上げられる形でサンダーゴーレムの身体が地面から離れた。そろそろか?
「石田さん!」
「了解!」
太一さんから合図も来た。サンダーゴーレムに近づき能力を発動させる。
腋を持ち上げている柱と腕を固定するよう金属で拘束を行う。腕を柱にとられ宙吊りにされたサンダーゴーレム。そこに大型ゴーレムが盾を構えながら突っ込んできた。
腕が動かなかろうと能力の使用が出来なくなったわけではない。サンダーゴーレムは突っ込んで来る大型ゴーレム目掛けて雷を放った。
しかし、その攻撃は先程まで受けていたのとなんら変わりはしない。盾の握りに仕掛けを施した大盾はその程度の攻撃で止まる事は無かった。
「そっちは左腕だぞっ!」
「任せろっ!」
大型ゴーレムの後ろから2つの影が飛び出す。太一さんと誠さんだ。
大型ゴーレムの役目はあくまでも壁でしかなかった。正確性も必要なので最後は人間の役目だ。パワーであれば勝ってるんだろうけどな。
大型ゴーレムの後ろから飛び出した2人は手に大剣を握っていた。それを振りかぶってサンダーゴーレムへと近づく。
切れ味は二の次で断ち切る事に要点を置いた武器。ゴーレムの腕を切るとなればやはりこれだろう。持ち手に木の皮も巻いてあるし一応電気対策はOKだ。
太一さんは自前の能力で、誠さんには自分の怪力の手袋を貸してある。重い大剣とてこれで扱えるわけだ。自分だと持てても使う気はあんまりなぁ……。
「はあぁぁぁっ!!」
「落ちろぉぉっ!!」
2人の大剣がサンダーゴーレムの肩口、胴体と腕の付け根へと振り下ろされる。振り下ろされた大剣がサンダーゴーレムから両腕を断ち切ったのは同時に見えた。息はぴったしだ。
剣を振り切ると2人はすぐさまその場を離れた。防壁を張って追撃が来ないよう門田さんと2人フォローをする。
とはいえ、周りには他の大盾持ちのゴーレムもいるのであまり必要ないと言えばないのだろうが。
「追撃は……」
「……ないみたいだな」
腕を切った2人が防壁から顔を出すとサンダーゴーレムの様子をうかがう。両腕を切られて地面に落ちたのだが動く気配がない。
「……どっちかの腕に魔石か核でもあったのかしら?」
「おそらくそう言う事でしょうね。ゴーレムが痛みで動かないなんてありませんし」
同じく空中にいる竹田さんとそのような会話を交わす。
自分は鑑定で腕に魔石があったのを知ってるので別に不思議でも何でもないのだけどね。
「こっちはこれで片付きましたか」
「おそらくね。あっちはどうなったかしら……」
あちらには澄田さんと尊さんが援護に回っている。凜さんは残り2体の監視だ。壁はもう直す必要もないので好きにさせていた。
理人さん達が向かった側の大型ゴーレムも今はその動きを止めている。戦闘音も止んでるしあっちも終わったのかな?
そちらに近づくと澄田さんが自分達の接近に気が付いたらしい。竹田さんが状況報告を問いかける。
澄田さんは頭の上に腕を持ってきて大きく〇を作った。やはりこっちも片が付いていたらしいな。
こちらも同じく腕で〇を作ってあちらの状況を伝える。これで残り2体だ。
竹田さんと一緒に太一さん達の所へと戻る。向こうが終わっているのであればあちらから攻めた方が近い。この距離であれば浮遊で壁越えをすれば合流も早いしな。
ゴーレムも駒に仕舞えば簡単に移動をさせられるので時間はかからない。自分のゴーレムを仕舞うのに一番時間がかかるな。
本当なら壁に使った物を消せば一番手っ取り早いんだけどね。大型ゴーレムで壁をぶち破る必要もないし。
だがこのことはあまりしゃべらない方が良いという事で秘密となっている。地味に不便なんだよな……。
太一さん達の所へ向かいながらそんな事を考える。まぁ、それはともかく後2体だ。数の差は圧倒的に自分達が有利だ。
ここまで来ればもう大丈夫だと思うが後は怪我にだけ注意をしようと気合いを入れなおす。息を吐くのは全部を倒し終わってからだな……。
「動く様子はないな?」
「流石にもう大丈夫だろう。明日香、探知に反応は?」
太一さんと理人さんは四肢がバラバラになったサンダーゴーレムを見ながらそう口にした。そいつは確か右足だったか。
最後の1体が動かなくなったことで皆の中からゆっくりと緊張が解けていった。明日香さん達探知持ちがモンスターの反応を調べる。
「……皆お疲れ様。反応は無しよ」
「長く閉じ込め過ぎましたかね? 残っていた塊蟻からも反応は感じられません」
「って事は……」
「4層突破……はぁぁぁ……終わったぁ~」
「よっしゃぁっ!!」
部屋の中にモンスターの反応が無しと告げられて皆の緊張も一気にどこかへと行ったらしい。安堵して溜息を吐いたり歓声を上げたりと、それぞれがボス部屋攻略中の緊張を解き放った。
自分はもちろん前者だ。ふぃ~……終わった終わった……。
「各自休憩ー、回収はゴーレムに任せっからぁ」
『りょうか~い』
ゴーレムがモンスターの死体を運び終えるまではとりあえず休憩らしい。運搬用に鉄板を出すとそれを使うよう指示を出す。大型ゴーレムが頑張ってくれるだろう。
「石田さん、疲れてる所悪いけど皆に好きな飲み物を聞いて出してやって」
「了解です」
「それじゃあアイスティよろしく」
理人さんから早速注文を受け取るとコップに入れてそれを渡す。ゴーレムには部屋の入り口に置いた荷物も持ってきてもらわないとな。
続けて太一さんからも注文を受ける。やはり喫茶店でも飲んでたけどコーラ好きなんだな。
そうして皆からも注文を聞きつつ飲み物を配っていく。戦闘後の一杯だからか皆美味しそうに飲んでいる。おかわりの声も早速聞こえてきた。
そんな戦闘後の余韻に浸りながら自分も休憩を取る。この後で解体があるけどそれまではしっかり休んでおくとするか……。
んー……大型ゴーレムに全部背負わせちゃったりとかダメかねぇ?




