524話 ダンジョン4層(PT) 障害物による時間稼ぎ
「そろそろですね……まずは最初の足止めですけどどうなるでしょうか……?」
いつでも動けるよう準備を整えながらモンスターがやってくるのを待つ。澄田さんの言葉からすると今は足止め用に作った障害物前との事だ。
「動きに何か影響はありますかね?」
「それでどんなモンスターかはある程度予想が出来ますしね」
尊さんとどうなるかといった話を口にする。結果次第ではこちらも移動を始めなければならないが……。
「あ……モンスターの反応が動きを止めました。どうやら足止めにあってるようです!」
「よしっ! これで多少時間は稼げるわね!」
「それと大体のモンスターの形も判明しましたね!」
澄田さんの言葉を聞いて竹田さんと凜さんはハイタッチを交わし合った。そして上手くいった嬉しさを表しているのかフライパンをカンカンカンと叩く。ここまで来たらもうそれ要らない気がするけどね。
「どうやら最初の反応の中に飛行型といったモンスターは居ないみたいですね。もし抜けてきたとしてもそれなら逃げやすいですよ」
「地面に足を付けているモンスターのみであれば僕達の方が早く動けそうですし。進行速度はどんな感じですか?」
尊さんが澄田さんの言葉に同意をするとモンスターの動きについて問いかける。障害物の突破速度でモンスターの攻撃力についてもそれがいかほどなのかわかるってものだ。
「攻撃力はそれなりですかね……止まっては少ししてまた動くって感じです」
「5㎝厚の金属で出来た柵を壊すぐらいの力はありますか。少なくともラット系とかではないみたいですね」
「壊してる音がこっちまで響いてきてますしね。ラット系であれば壊すよりも乗り越えてくるでしょうし」
「鎧蟻とかでもなさそうね」
「塊蟻ぐらいなら体当たりで壊そうとはしてくるかな?」
障害物を設置した方の通路から自分達の所へと破壊音が聞こえてくる。今来ているモンスターは乗り越えるよりも破壊を選ぶことが出来るモンスターという事だ。
「次は10㎝でしたっけ。壊せないとなれば別の通路からこっちにやってきそうですけど……」
「それはそれで時間が稼げますからね。近くの通路には注意をしておきますよ」
「今の感じであればもう少し時間はかかりそうですけどそのまま向かってきそうな気がしますね。
移動速度的にゴーレム系じゃなさそうだな……ハンマースコーピオンなら通路の広さ的に入って来れなさそうだし……」
「大きさなんかでもある程度絞り込めるわよね。少なくともそこまで大型のモンスター出ない事は確かかしら」
「私は塊蟻系じゃないかって予想しようかな?」
モンスターの動きを探りながら何のモンスターが近寄ってきてるかを想像する。そこまでレベルの高くないロックスネークという線もあるな。
凜さんは塊蟻系と予想しているらしい。そうであれば逃げるのも比較的容易とそんな願望も混じっているのかもしれない。
「モンスターが何かって言うのは正直何とも言えませんね。今判明しているのは通路を通って来れる大きさで力もそれなりにある事。そして飛行型ではない事です。
天井が3割程開いているのにそこを通ってこないと、体格はそれ以上にあるって事ですね」
澄田さんは障害物で足止めを食らっているモンスターの動きを探りながら現在わかっている情報を口にした。そろそろ次の障害物エリアに来るらしい。果たして10㎝は破壊出来るだろうか?
澄田さんの次の報告を待ちながらモンスターが壊す障害物の音へと耳を傾ける。壊すのを諦めて別の道へ行くのであればそれはそれでOKだ。
そして再び障害物を叩く音がこちらに聞こえてきた。
「壊すのに手間取っているみたいですね。10㎝の柵はそれなりに保つと……」
澄田さんは聞こえ続ける打撃音と先へ進まない探知結果からそう判断した。こっちも壊して突き進もうって魂胆かな。
「こっちの障害物は時間稼ぎも十分出来そうですね。石田さん、追いかけられた場合はこっちでお願いします」
「了解です。まぁ、他にも板状の防壁とかありますしね。足止めに関しては任せてください」
防壁も面を向けるのではなく縦に設置したり、ぶっとい柱を通路の真ん中にドンッと置いたりといくらでもやり様はある。
通路であれば移動出来るところが限られる。時間稼ぎをするだけであれば正直言って何ら問題はないのだ。
「っと、1カ所目が壊れてちょっと先へ進んだみたいです。これならさっき以上に時間も稼げますね」
澄田さんが探知を使ってモンスターが少し先に進んだ事を伝えてきた。もう少しすれば2つ目の障害物を叩く音が……。
「聞こえてきましたね」
「まぁ、障害物に関してはまだありますからね。飛行系でないのならもうしばらくは安心ですか」
「いっそのこと天井まで塞いだ障害物を用意してもらった方が良かったかしら?」
「そこは数で対処するってなったからね。全部が全部天井までびっしりだと飛行系以外にはもったいない使い方じゃない?」
「障害物をものともしないようなモンスターが真っ先に来た場合は即座に移動でしたからね。全面防御はこれからでも間に合うと言えば間に合いますし」
飛行系が来た場合はお願いしますと口にする尊さん。お任せを。
「どうせなら丈先輩から大地の杖を借りてくればよかったかしら? 土魔石のストックはないけれど石田さんの力だって温存出来るわけだし」
「もし戦闘となればあちらの方は激戦になりますからね。それを考えると借りるというのはちょっと……。
っと! あちらの方も動きありですっ! モンスターの2群れ目の反応が通り過ぎようとしています!」
「次が来たか……上手く通り過ぎてくれよ」
そんな話をしていると理人さん達の方で次のモンスターの反応が皆の隠れている通路を通り過ぎようとしているらしかった。
2度目も上手くいってくれることを祈るばかりだが果たしてどうなるか……。
「……大丈夫です、止まることなく通過して行ってます」
「よしよし! 2度目も無事成功っと」
澄田さんの探知結果を聞きながら皆してホッと息を吐いた。あちらも今の所は順調らしいな。
「少しずつですけど皆さんも無事に進めているようですね。この調子でボス部屋前の通路まで行ってくれればいいんですが……」
「もう上手くいくことを祈るしかないね。こっちでしっかりと引き付けられればそれだけ成功率も上がるわけだしさ」
「僕達に出来るのはそれぐらいですか」
「あっちは太一達を信じて上手くいくことを祈りましょう。私達には出来る事はここからだとそれぐらいしかないわ」
「見られなければ大丈夫なはずですしね。今となっては信じるほかないかぁ……」
こちらと違って前と後ろにモンスターが居るあちらを今となっては信じるほかなかった。
澄田さんは万が一を考えて応援に向かえそうなルートを調べ始める。モンスターが移動をしている今であれば一応行けない事もないそうだが……。
「タイミングがシビアですけどね。こちらがモンスターと鉢合わせしないように動くとして応援が間に合うかどうか……」
「絶対にモンスターと鉢合わせしないようにしないといけないですね。先導は光一さんにお任せする以外手はないのでお願いします」
「ええ。しかしそんな事態にならない事を祈りますよ」
「そうね……」
「そうならないのが一番だもんね……」
澄田さん達が緊張した表情で理人さん達の安否を気にし始める。そんな事になれば最悪全滅だってあり得るのだから。
「そうならないように自分達でしっかりとモンスターを引き付けませんとねっ!」
顔がこわばっている澄田さん達に対してなるべく明るい雰囲気を醸し出しながらそう口にした。あちらの安全は自分達にかかっているのだと。
「それもそうですね……。万が一を気にするのは必要ですけどそれでこちらが暗くなっては仕方ありません。
こちらが精いっぱい頑張ればそれだけあちらも動きやすくなるわけですし」
「他に出来る事無いですもんね」
「こっちはこっちでしっかりやるしかないわね」
「ボス部屋前で合流しようって言ったんだからそれに向けて頑張らないと!」
皆も今の一言で元の雰囲気へと戻ったようだ。不安なのはわかるが暗い事を考えると気が滅入ってしまう。洞窟エリアって場所はそれが顕著なんだよな。
頬を叩いて気合いを入れなおす4人。こっちはこっちの役をしっかりと熟しさえすればあちらもそれだけ安全なのだと。
「すみません石田さん、リーダーは僕なのに」
そう言って謝罪を口にする澄田さん。
「PTメンバーがそんな場所に居るんじゃ心配しない方がおかしいですからね。それはが普通ですよ。
自分も理人さん達は心配ですけど今はこれが自分の役割って思い込んでるだけですし。出来る事をやるだけだなぁ……と」
一応手が無い事もないしな……。流石にそれはいざって場合のみだけどさ。
「こっちもやってくるモンスターしだいでは忙しくなりそうですしね。他に気をやれないってだけですよ」
「ですね……。とりあえず僕は探知を頑張ります」
「光一さん、よろしくお願いします」
そう言って軽く頭を下げる尊さん達。
現状やれる事が自分と澄田さんしかいないのも関係してたりするのかな? 澄田さんも同じだからそれはあまり関係ないか。
澄田さんから追加でやってきそうなモンスターの情報を聞いたりしていつでも動けるよう準備を整える尊さん達。
障害物の所にもうしばらくすると他からもモンスターの反応がやって来るらしい。そっちにはどんなモンスターが居るのだろうかと想像しあっている。今度のモンスターは障害物ってどのぐらい効果あるかな?




