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520話 ダンジョン4層(PT) もめずに分け合いを




 「それじゃあ開けるとしますか。石田さん、頼みます」

 「任されました」


 鑑定のマジックアイテムを持っているのが自分だけと、皆を代表して宝箱を開ける役を仰せつかった。いやー、持っててラッキーだったな。

 まずは1つ目の宝箱の蓋に手をかける。やはりこの瞬間はたまらないな。


 「では開けますね」

 「おう!」


 皆が期待に満ちた表情をしながら頷く。いったい何が入ってるのだろうかと中身を目にするその時を今か今かと待ちわびていた。

 そして蓋を開いてのぞき込む。するとそこにあったのは……。


 「まさかこいつが入ってるとはなぁ……何ともタイムリーな」

 「これって……」

 「駒じゃないか」

 宝箱の中から無造作に持ち上げる。今更鑑定するまでもなく、皆の目には見知ったマジックアイテムがそこにはあった。


 「今話題の駒をゲットとはねぇ……皆が見たらさぞ喜んでただろうな。まぁ、勿論僕も嬉しいけど」

 「まさか新しくもう1セットが手に入るなんて思いもしませんでしたね?」


 門田さんと澄田さんがそう口にした。いや、自分もまさかここで駒を引くとは思ってなかったわ。

 一応鑑定の虫眼鏡で確認してみたが例の駒に間違いなかった。ここにゴーレムが来て置いていったのかはたまたダンジョン産のどちらか……。


 「やはりゴーレムを仕舞える駒で間違いないみたいです。1つ目からかなりの大物が出ましたね」

 「いくらあっても困らないからな、これは」

 「その分戦力が増えるわけだからな。まぁ、ゴーレムが居ればの話だけどさ」

 「ゴーレムが居ないと何にも仕舞えないからねぇ」


 駒を理人さん達へと手渡す。自分達も最近1セットを手に入れたとあってなんだか既視感を覚えているらしい。ちょっと前もこうして見つけて喜んでいたなぁと、手に入れたその時の事を思い返していた。

 そして皆が見終わったところで次の箱へと場所を移る。さて……それじゃあ2つ目の宝箱だな。


 「こっちはなにかなぁ~っと」

 そう呟きながら蓋を開ける。そしてこっちにあったマジックアイテムは……。


 「おおっ!? 大地の杖だっ!」

 「マジかよっ!?」


 自分が口を開く前に横から見ていた太一さんが大きな声でそう口にした。反応早いな。

 中に入っている物を持ち上げる。宝箱以上の長さをしているそれを引き抜く形で外へと取り出した。


 「ほんとに大地の杖じゃないかっ!? この色と形、間違いないって!」

 「一応見てみますね」


 門田さんの興奮した声を聞きながら鑑定の虫眼鏡をそいつに向けて覗き込む。 


 『大地の杖:土系の能力を使うことが出来る。土の魔石をはめ込む事で使用が可能。魔石を取り換える事で連続使用も可能。

 先端にあるハンマー状の部分は打撃武器としても使用が可能。杖そのものを硬質化する事が出来る』


 調べた結果はこうだ。間違いなく大地の杖だな。


 「太一さん達にしては今一番欲しいマジックアイテムですね」

 「全くなっ! こいつがあればゴーレムの作製も補強も出来るってもんだっ!」

 「欲しい欲しいとは思ってたけどまさかここで出てくるなんてね! オークションで数倍の値段で買うしかないと思ってたよ」

 太一さんと門田さんが嬉しそうにそう口にする。出発前にそんな話もしてたしね。


 「今はゴーレムも買ったから金欠だものねぇ……これ以上の借金はちょっとしたくないかな」

 「せめて今借りてる分を返してからがいいですよね」

 「PT用資金からにしても倉庫だって借りましたからね。使わなくていいのであればそれに越したことはありません。是が非でもこれは欲しい所です……」

 「まだ僕達の物って決まってないですもんね……」

 「大丈ー夫、大丈夫! そこは交渉次第で何とかなるわよっ!」


 大地の杖が見つかって喜んだはいいがこいつはまだ太一さん達の物と決まったわけではない。混合PTとして動いている以上、理人さんや自分もこのマジックアイテムに対して所有権を持っていた。

 川田さんは手に入れる為の交渉をどうやらこちらへ持ち掛けてくる気らしい。


 「太一……いや、ここは丈に任せる」

 「え? 僕?」

 誠さんにそう言われ少し戸惑う門田さん。リーダーは太一さんだからな。


 「こういうのは俺よりも向いてそうだしな。リーダー命令だ!」

 「まぁ、副リーダーですからね、丈先輩は」

 「頼むわよ、副リーダー!」

 「頑張ってくださーいっ!」

 「お願いしますね、丈先輩」

 皆の声援を受け前へと出される門田さん。後は任せた! って事らしいが……。


 「えーっと……そう言うわけで、大地の杖についての話し合いを理人さんと石田さんに希望するんだけど……」

 「まぁ……自分はそもそも自前の能力がありますから、問題らしい問題は無いんですが……」

 「俺達の所も由利がいるしね。別にいいっちゃいいかなぁ……って」

 門田さんの問いに対して自分と理人さんはそう答える。欲しいと欲しい言ってたのも知ってるからねぇ。


 「それなら駒の方を自分と理人さん達で半々にでもします? それが一番もめる事もないでしょうし?」

 「俺はそれでもいいけどね。皆はどう?」

 そう言って理人さんは明日香さん達PTメンバーへと問いかける。


 「8個って事でしょ? 私はそれでもいいかな。現状でも全部を使ってるわけじゃないし」

 明日香さんは問題ないらしい。やはりマジックアイテムとして見たら駒の方が有用という事だろう。


 「大地の杖云々を議論するよりは駒の方が良いわな。俺としちゃこいつもあるし」

 「蔵人と同じく。どっちかっていうなら駒の方が良いいだろう」

 蔵人さんと京谷さんは以前譲った2丁拳銃を見せながらそう口にした。そう言えばそれの扱いはどうなったんだろうな?


 「半分かぁ……どうせなら1セット丸々欲しかったけどそう分けた方がもめもしないよねぇ」

 「土の能力を自分で使う事に憧れはあったけど駒の方が良いわね。そっちは由利に余計頑張ってもらうとしましょう」

 「誰か土の能力を手伝ってくれてもいいのよ? まぁ、駒8個と大地の杖じゃこっちの方が魅力的なのは間違いないだろうから何も言わないけどね……」

 凜さん、奏さん、由利さんも駒で問題ないようだ。1セット全部欲しいってなると皆そうだろうしな。


 「由利以外に土の能力が使えるのは魅力的だけど駒と比べたらな。大地の杖自体が近接で使えない事もないけど俺としてはこいつの方が性に合ってるしねぇ。

 丈、杖術ってどうなん?」

 「杖による接近戦か……まぁ、近接としての動きはいくらか流用出来るだろうが大地の杖は長めのメイスだからな。どちらかといえば打撃寄りだ。私は触った事ないな。

 日向の槍の先端を打撃武器に変えた物に近いと言えば近いだろうが……試してみるか? ああ、私も駒半分で異論はない」


 日向さんが扱い辛そう……といった顔をしつつ首を振った。大地の杖を所持した場合近接だと動きもかなり変わりそうだ。

 自分で使う事はないだろうと、それならまだ駒8個(ゴーレム8体)のが良いと口にする日向さん。近接組としても増えるのなら大歓迎という事だ。

    

 「皆いいみたいです」

 「それなら分け方はそうしておきましょうか」

 「交渉とか無かったな……太一で良かったよねこれ?」


 理人さん達の話を聞いて溜息を吐く門田さん。交渉を頼まれたのに何1つとして言うことが無かった。まぁ、丸く収まった事でそれ以上にホッと溜息を吐いているようだが。

 

 そして話し合い? の末、大地の杖は太一さん達のPTに。駒の半々は自分と理人さん達で分けた。

 半分とはいえ大地の杖以上の価値が駒にはある。全員がもめずに分け合えるのであればそれが一番だ。


 「けど駒8個が追加か……後のゴーレムはどういうものにしよう? いずれは大型ゴーレムの注文もしたいんだけど……」

 「広場か地底湖でも行かなきゃまず使わないからねぇ……。通路で使うにしても場所が限られすぎだし」

 「やっぱり今回のと同じサイズでいいんじゃないか?」

 「しかし大型ゴーレムが居れば素材の持ち帰りもより多くが運べるぞ? 運搬用で1体は早めに用意しておいてもいいんじゃないか?」

 「だけどその大型ゴーレムに素材を背負わせる為には天井が高い所へ行く必要があるよね? 結局広場なんかへ行くんなら大型ゴーレムは複数あった方が良いんじゃないの?」

 「お金の問題を忘れないで頂戴……。

 倉庫を借りられたのなら大型ゴーレムを由利に作ってもらうっていう手はあるけど……ロックゴーレムで何日かかるの?」

 「あたしに大型を複数作れっていうわけ? 普通のサイズでさえ結構神経使うっていうのに……」

 「完成までは時間がかかりそうだなぁ……まぁ、金がかかるよりはマシか?」

 「納得のいくものに仕上げてもらいたいからな。時間がかかるのは仕方あるまい。

 重要なのは堅実性だ……それが我々のPTのモットーだろう?」

 『確かに……』


 駒が新しく手に入った事でゴーレムをどうするか悩み始める理人さん達。やっぱり大型ゴーレムは欲しいみたいだな。

 太一さん達は誰がゴーレムを作るかで悩んでいるらしい。倉庫を貸す必要性が無くなったのは嬉しいがゴーレム作りなんて誰も経験がない。

 こんなに早くマジックアイテムが手に入るとは思っていなかったこともあってか、これについては話し合いすらまだだったようだ。


 皆のそんな様子を眺めながら咳払いを1回行う。全員の視線が自分に向いた。


 「それ等の話し合いは後にして先に進みませんか? ダンジョン内で考えるよりも帰ってからにした方が良いと思いますし」

 「……それもそうだな。とりあえず大地の杖は丈に任せた。それで援護を頼む」

 「任された。誠や美香と一緒に防衛についても考えておくよ」

 「丈が防衛に回ってくれるなら俺は攻めに回れるな」

 「防壁の耐久性はその大地の杖の方が上でしょうから重量級モンスターの相手はお任せしますね」

 そう言って門田さんに大地の杖が渡された。基本後衛のが使いやすいだろうしね。


 「とにかく由利のゴーレムの出来次第って事にしておくか。

 由利、ロックゴーレムでいいから大型ゴーレムを1体頼んだ」

 「了解よ。ちょっと時間はかかるけど仕上げて見せるわ」


 理人さん達の方もひとまず方針は決まったらしい。他の駒については追々といった所だ。

 

 全員が移動出来る準備を整える。駒も落とすことが無い様リュックの奥へとしっかり仕舞いこんだ。まずは軍に知らせなきゃいけないんだよなぁ……駒についてはそこが少し面倒だ。

 新しく手に入れた駒に喜びながらも内心で小さく溜息を吐く。即行レンタルとかされないといいんだけどね? 


 そんな小さな不安を感じながら宝箱のあった通路を後にする。先程まで自分達がいた場所に宝箱はもう存在していなかった。

 ゴーレムにここにもしっかり設置しておけよと思いつつ通路を歩く。早い所5層にもこのゴーレムを置いとかないとな。





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