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498話 各国の話し合い




 時間は少し巻き戻って3層攻略2日目。将一達が起きて広場へ出発しようとしていた頃の事。

 場所は大きく変わってハワイ。世界に広くダンジョンが出現した中でも諸島群なんかにはダンジョンが0という場所が存在していた。ハワイもそんなダンジョンが0の場所だ。こういった場所はダンジョンが現れてからはかなり貴重だった。

 そして、今この場所は気温的にも状況的にもかなりの熱を持っていた。


 「本当にこんなマジックアイテムが発見されているというのですか!?」

 室内にいる1人がそう叫んでいた。他にもいる大勢の人間が同じ気持ちなのかウンウンと頷いている。


 「お手元の資料とスクリーンに映し出されている映像の通りです。間違いなくダンジョンから発見されたマジックアイテムとなります」

 クーラーがかかっているというのに額をハンカチで拭う男性。汗は特に出ていないはずだが室内の雰囲気故かついついそんなポーズを取ってしまった。


 「ゴーレムを仕舞っておけるチェス型の駒ですか……非常に興味深いですね。ここに現物はないのですか?」

 「現在は軍と研究所で調査中です。16個が見つかりましたが持ち出しはその調査を待ってからとなります。

 お配りしている資料には現在判明したことが書かれております。スクリーンの映像もその時録画したものを一切の加工無しで流させていただいています」

 「16個もあるのなら1個ぐらいは持ってきていただきたいですなぁ。実際にこの目で確認したいものです」

 「いやはや……全くですな」

 現物を見れないのは残念だと口にする者達。せめて1個ぐらいはいいのではないかと。


 「皆様も既にご存じ事かと思われますが……現在、我が国のダンジョンの1つで異常が確認されております。そちらの対処に有用な物ですので今は現地にありますね。

 もうしばらくすれば一段落着くとの事ですので実物は後1日、2日待っていただければと」

 「壊れて見ることが出来ないなんて事態にならなければよろしいのですがね……」

 「時間がかかるのであれば今から国の者を向かわせて実物を手に入れでもしましょうかね」

 「この話を聞いた時から既に向かわせているのでしょう。まぁ、うちの所も実はそうなんですけどな」

 今ここにはないと聞いてそんな事を近くの席の者と言葉を交わす人達。自国に到着した飛行機からは様々な国の人間が空港に現れたと連絡を貰っている。こうなるだろうとは予測の範囲内だ。


 「調査中ならそれはそれで構いませんがね。しかしこの効果は確かなものと思っていいのですかな? 間違いなく優秀なマジックアイテムですよ?」

 「お手元にある資料の通りです。そこに書かれている通りの効果が確認されております。それはスクリーンの映像も合わせて見ていただければお分かりかと」


 そう言ってスクリーンの映像に視線を向けて注目する。そこには軍の者がゴーレムの身体に駒を押し当て、次の瞬間にはどこにも姿形の無い空間が映し出されていた。丁度ゴーレムを仕舞っている場面だ。

 先ほどから流れているその映像を興味深そうに見つめる男性。一切の加工がされていないというのであればこれはありのままの現実という事だ。


 「資料によるとこれを16個の駒全てでやっているそうですが?」

 「そうなりますね。今は画面の外ですけども、同じようにゴーレムを仕舞っては出してを繰り返し行っている映像になります。一通り周囲にはカメラを向けておりますのでお分かりいただけるかと」

 「ゴーレムを仕舞えるのは良いでしょう。このサイズの駒でゴーレムを持ち運び出来るというのであればかなりの戦力増強になりますし。私が気になるのはこれを延々と繰り返している事ですな。資料にも書いてはありますが……」

 そう言うとその男性は机に資料をそっと置いて溜息を吐いた。効果については何の文句もないがこの説明は問題になるであろうと。


 「駒を使用して2日後に使用者が決定するですか……この説明も確かなのですよね?」

 1人の女性が資料に書かれている文を口に出した。その瞬間周りからは唸るような声がいくつも響いて来た。先程資料を机に置いた男性もその1人だ。


 「発見されたのが日本の現在時間から3日ほど前になります。当初発見した際の説明とは違う事も連絡を受けております。見つけた際に鑑定した効果とは違って確かに1文が追加されていたと」

 「使用して2日が登録期間ですか……。資料では佐官と将官に限定して登録をしているとありますが? 映像もその時の物との事ですが」

 「はい、資料に書いてある通りです。使うとなれば軍の人間にほぼ限定されますので、今回は指揮官クラスの人間を中心として登録を行ったとの事です。それでも完全にとはいきませんでしたがね……」


 駒のある現地にいきなり来いという指示は流石に無理があった。近場の者は何とか時間を捻出して来ることが出来たが、場所そのものが離れているとあってはなかなか来ること出来なかった者も存在していた。

 中でもダンジョンに赴いている者などは絶望的だった。地上に帰って来てからやっとその話を耳に入れたのだから。そして未だにダンジョンに潜りっぱなしで駒の存在さえ聞いてない者もいる始末である。


 「鑑定の後、地上へ持ち帰って即座にテストをしたので時間がありませんでした。緊急招集のような形になってしまいましたよ……」

 「それについては大変でしたな……としか言いようがありませんが。それで現在はこの16個の駒をダンジョンに持って行って現地で実地試験中だと?」

 「そうなりますね。

 現在異常な湧きを見せて攻略の対象となっている階層に半分。もう半分は既に攻略も終えて通常の湧きとなっている階層に向かわせてテストをしております。少なくとも後半の半分は無事に戻って来る可能性が非常に高いです」

 半分はほぼ確実に帰ってくると口にする男性。その事を聞き、集まっている人達からも安心したといった溜息が聞こえて来た。


 「全部帰ってこないという状況でないのは安心ですね。ですが問題は登録制の事もありますけど効果の2つ目ですよ。

 ゴーレムに背負わせた状態、または鞄などを肩掛け状態で持たせた場合でも駒に仕舞えるという点です」

 「そうだっ! この効果の影響はかなり大きいだろう!」

 「素材を今以上に安心安全に持ち帰って来られるのはかなり魅力的ですね」

 「戦力としてもそうですが……ゴーレムを運搬用に使用するのは当然の用途ですからね。これを使わない手はないでしょう」

 「しかも資料によれば人間サイズから巨大ゴーレムまで仕舞うことが出来たとある! 人が持ち帰って来れる量の比ではないぞっ!」

 「エネルギー食らいのあの大物も荷物を背負わせる程度であれば十分に動かせそうですしな」

 映像の中では十数階建てのビルと同程度の大きさのゴーレムが一瞬にして消えている所が映っていた。資料のその説明の部分をかなり重大だと1人の男性が捲し立てている。


 「落ち着いてください。だからこそこうして私達は集まっているのでしょう? 今回ここへ来られていない方もいらっしゃいますが」

 急な集まりだった為に駒の登録と同じく予定が付けられず来られなかった者も当然いた。音声のみで参加をしている者は通話の向こうで受け取った資料を見ながら唸るしかない。自分達もスクリーンに映ったその映像を見たかったと……。


 「今回見つかったマジックアイテムは間違いなくダンジョンから素材を効率よく持ち帰って来る事が容易になる物です。それは資料やこの映像からも皆さんよくお分かりになるかと。急遽集まってもらった理由として納得が行くでしょう」


 ヒートアップしている男性にそう語りかける1人の女性。彼女がこの建物の責任者でもある。

 能力者観察機関……この組織の本拠地がここハワイにあった。

 

 どこの国にも表れている能力者。人口的な差は仕方ないとしても基本的に国とは関係がない。そして能力者観察機関も表面上はどこの国にも属さないものとして扱われていた。内部に至っては人のみぞ知るだが……。

 ハワイはダンジョンの数が0と、基本的な生活は今まで通り。むしろダンジョンが無い事で世界でもかなり安全な場所として多くの者に人気がある。29年前に全世界で起きたスタンピードの影響がないというのはかなり貴重だった。

 そんな多くの者に人気が有り、ダンジョンの生活とは結構かけ離れた場所に能力者観察機関の本部は建てられていた。


 「今回見つかったゴーレムを仕舞う事の出来るマジックアイテムですが……現在は日本にある1カ所のダンジョンでのみ発見が確認されています。能力的には皆様も既に疑う事は無いかと思います」


 能力者観察機関代表の言葉に頷く室内の者達。忙しい中、わざわざこれは偽物だといちゃもんを付けに来たわけではない。

 皆進行役の言葉と次の発言を待った。


 「マジックアイテムとしては破格の効果であり、また、現在発見されているのが1つのダンジョンからのみという事なので取り扱いを決めたいと思います。

 この性能故国が管理すべきか、あるいはそうでないのか」

 「当然国が管理するしかないでしょう。現在日本のその1カ所のダンジョンからしか見つかっていないのですよ? 国が管理し他国にも出してもらわなければ!」

 「日本にはこの駒の探索を優先的にやってもらう必要があるかと……」

 「希少なマジックアイテムが手に入った際は国が管理をして他の国にも行き渡るようにする。マジックアイテムの取り扱いについてはそう決めてあるでしょう」

 「そもそも現在国が見つけたのも含めてどれ程の数が見つかっているのですか? 探索者が見つけた数の詳細、調査はどうなっているのです?」

 駒を自国でも使いたいと思うのは当然の話だ。集まっている者達もその通りだと頷く者が大勢いた。


 「駒自体の大きさは皆様も映像や写真で見た通りです。ポケットにでも簡単に仕舞えるものなので誰が持っているか、また、いくつぐらい見つかっているのかは非常に調査が困難です。

 現在、数については調査中となります」

 そう言って日本の総理が発言した。付き添いの者と一言二言話しているが現在調査中……それが日本の返事だった。


 「総理。我が国からそのマジックアイテムを求めて探索者が出向いているのだがそちらで援助は何かしてもらえますかな?」

 「こちらの情報は現地にいる管理部と軍が合同で教えております。マジックアイテムが発見された場所、階層の地図に関しては管理部か軍の建物までお越しいただければお教えできるでしょう。

 皆様におかれましても既に探索者へ依頼を出して現地に向かわせているとの情報が入っております。探索者の受け入れ自体は何の問題もございません。

 現在どのぐらい発見されているかはまだまだ調査中です。ご自分方で探されるにしても基本的な協力はさせていただきたく思います」

 「うちの軍の者達も探索に向かわせたいのですが……」

 「大規模でなければ宿泊施設などは手配出来ると思います。ですが、人が多くなることが予想されますので確実とはお約束出来かねます」

 来るにしても大人数でなければ出来るだけ便宜は図ると口にした。流石に世界中から来られてもその全てに対応できるわけではないと釘は刺しておく。


 「国が管理してこちらにも流してほしいのは私共も同じなのですが……これを強制買取の対象とした場合その問題はどうされますか? 登録済みのマジックアイテムですよ? 現在探索者が持っていたとしてそれが登録済みの駒であったのなら? 

 この資料や映像を見る限りだと既に手に入れている探索者から駒を借りているのですよね? そしてやはり使えていないようですが。

 これ……買い取ってどうされるんです? いくらで買い取るのですか?」


 資料と映像を見ながらそう口にする1人の男性。名前は伏せられているが、ここに載っているのは将一が渡した駒の実験結果だった。

 買い取っても使えるのは登録をした者のみ。だからこそ、先ほどまでの映像では指揮官クラスの人間が使えるよう集められていたわけだ。


 「……現在はまだなにも決められておりませんので詳しい事を口にするのは控えさせていただきます。その辺りは決が取れてからにしたいと」

 現状では買い取り金額、駒の扱いのなにもかもが不明だった。総理としてはここでそれが決まらない事には答えようがない質問だ。


 「探索者から強制買取をした場合反発が大きいように思うのですが? そもそも素材を持ち帰ってくるのが探索者の役目なのでは? どこの国でもそうだと思いますが。勿論、我が国でもそうです。

 素材を今まで以上に持ち帰ることが出来るようになるというのにこのマジックアイテムを強制買取としてよろしいのでしょうか? 利用法としては戦力の拡大も大事でしょうが、運搬に重きを置くと探索者に持たせておく方が良いのではないですか?」

 「ダンジョンの攻略を目指すというのであれば戦力が増えてくれるのは頼もしいが……探索で利用する事の方が多いだろうしな」

 「探索者の仕事を軍が肩代わりするのは本末転倒では? 登録制の物故、駒を探索者に貸し与えるというわけにもいかんだろうし……」

 強制買取とした場合の問題を幾人かが口にする。確かに素材の事を考えるのであれば所持させるべきは探索者の方があっていると周りの者も頷いていた。

 

 「メリットもあればデメリットもあるわけですね。

 効果の事を考えると希少だからと言って国預かりにするのは問題ですか……」


 進行役でもある能力者観察機関の代表もそう言って頭を悩ませた。素材を多く持ち帰るという効果が期待出来る以上、マジックアイテムの扱いは慎重に決める必要があった。


 強制買取をやめさせたいと思い登録制なんてことにしたわけだが、使用目的そのもの自体が探索者側へと大きく影響している。

 いったいぜんたいどうしたものかと、各国の間でしばらく頭を悩ます問題になっていた。結果が出るまではもうしばらくかかりそうだ。

 




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