477話 ダンジョン3層(PT) 定石と化した初動
「よくここまで来てくれたな。大変だろうが頑張ってくれよ」
「まぁ、大変って言っても討伐班ほど体を動かすわけでもないからな。確かに持ち帰るのはいろいろと面倒だけどよ」
「護衛も正直そこまでだからねぇ……ここに来るまでまだ1体もモンスター倒してないし」
「ふむ……道中のは俺達が倒しつくしてしまったか? いくらか残しておけばよかったかもしれんな」
そう言って武田さんが運搬班と護衛班の人と話している。つい今しがたこの休憩所へと到着したのよな。
「運搬班が2PTに護衛班が1PTって事らしいよ。護衛班がもう1PTいてくれたらよかったんだけど……まぁ、仕方ないね」
「だな、最低限の組み合わせは出来てるわけだし」
「通路のモンスターも結構少なくなってきてるようだからな。1PTとはいえ13人もいれば何とかなるだろう」
「戦力的にはあれで十分なんじゃないのか?」
「彼女達であれば問題はないでしょうね。運搬班の足に合わせて移動をすればどうとでもなるかと」
「モンスターも基本探知をかけていれば対処だって十分間に合うからねぇ」
「運搬班も探知が使える人はいるだろうし最悪はそっちに頼るのも有りかな。評価はちょっと下がっちゃうかもだけど」
「そこは互いに相談してだな」
男性用の寝所に集まっているメンバーで今到着した運搬班と護衛班について語り合っていた。中堅の皆がこう言うのであれば大丈夫なのかな?
「おう! しっかり浸からせてもらったぞ! 今来た連中も風呂があると聞いて早速向かって行ったようだ」
「風呂場に来た連中から伝言だ。追加のお湯はこっちでやるからそのまま休んでくれてていいとさ」
そう言いながら風呂上がりの塚田さんと黒田さんが寝所に入ってきた。あっちにも水の能力者がいるならお湯の追加ぐらいは自前でするか。
「ふむ……それではお言葉に甘えて追加はそちらでやってもらうか。と、言うわけで……我々の出番は無くなったようだね」
「それならそれで問題はないな」
「ですね。追加はあちらの班に任せましょう」
白田さんと田野倉さん、そして自分の3人は行かなくてよくなったと、シートを引いた砂場の上へ腰を落ち着ける。
運搬班と護衛班は今夜中に集まりゴーレムからの連絡もない。休むにしてもそう心配することも無くて何よりだ。今のところは……だが。
休んでくれてていいという事なので、各自は体を横にすると寝る準備を始めた。見張りも護衛班が来てくれたので自分達がするそうだ。討伐班は明日に備えてしっかり休んでくれという事だ。まぁ、ゴーレムの事もあるので最低1人は見張りをしてないとってのは変わらないんだけどな。
事前に決めておいた自分の見張り番が来るまで休ませてもらう事にする。寝所の外から聞こえてくるかすかな話声を頭から追いやり明日の事を考える。今度は陣地作製からの参加なので自分の出番もあるだろうと。
明日の広場攻略が無事に終わる事を祈りながら目を瞑って眠りに就く。出来るだけ楽だといんだけどねぇ……。
「よぉぉしっ! 朝から足湯もしてコンディションも万全だ! 全員、気合いを入れて攻略に臨めよっ!」
『了解!』
広場前の休憩所で休んだ次の日。ゴーレム達の居た付近には誰も近づく事は無かったのか、昨夜から1度もトランシーバーが鳴る事は無かった。問題無しなのはいいのだがこれ以上の増援も見込めないというわけだ。
朝食を皆して取り終わると広場の前に向かう。護衛班と運搬班を少し後方に待機させると再調査だ。一応昨日の段階でモンスターの確認なんかも終わっているが新たに湧いてる可能性だってあるしな。
モンスターの調査と並行して昨日から展開しているゴーレムの回収も行う。一度も使われる事がなかったトランシーバーを片手に、昨日見た姿勢のままずっとゴーレム達は待機していた。人がやるにはなかなかに大変だよな、こいつは……。
ゴーレムを回収して戻ってくると調査班を待った。果たして追加のモンスターは何かいるだろうか?
「調査班から連絡です。特別増えたと思われるモンスターは見当たらないとの事。バットなんかだとわからないそうですが」
念話を受け取った琴田さんが皆へと伝える。調査班はこれで引き上げてくるそうだ。
「確かにバット達であれば増えたかどうかなんてわからんわな。気をつけて戻ってこいと連絡してくれ」
「了解です」
琴田さんのその知らせを聞いてホッと溜息を吐く。どうやらモンスター側の方も追加はないみたいだな。
モンスターの状況が昨日のままなのは大変ありがたかった。増えて面倒になるのはごめんだ。
「だとしたらタイラントスネークが2体にハンマースコーピオンが1体、ロックスネークのLV4が1体にヘビトカゲが2体、そしてミノタウロスが3体か。空中戦力がバットだけなのは助かるな」
「そいつ等さえ倒しちまえば地上に集中出来るからな。飛行班は早めに加勢頼むぜ?」
「それと相変らずラット達ですね。前の広場みたいに軍隊蟻は居ませんけど、その代わりと言っては何ですが鉄鎧蟻の群れですか。こっちの方が防御力高くて嫌なんですよね……」
「それとゴーレムも相変らずだな。アイアンにスチール、属性付きはアイスと。全部普通の奴だからまだ倒しやすいか」
「数は把握出来た分だとアイアンが10、スチールが7、アイスが5か。まぁ、こっちはどうにでもなるだろう」
皆してモンスターの戦力確認を行っている。
見た事がないのはロックスネークのLV4だけだ。LV3なら理人さん達と潜った際に見たこともあるんだが……この大きさだとタイラントスネークとほぼ変わらないって事らしいが。
体周りが石とあって防御力はタイラントスネークを越える。こいつには大型ゴーレムを最低2体は充てないとまずそうだ。
武器は大盾のままでいいのだろうかと、他の武器も視野に入れて対ロックスネーク戦を想像した。簡単な鈍器であれば作るのはそう難しくない。
その辺りは武田さん達から指示があれば用意するかと、武装については現状のままとしておく。
そうしてしばらく待っていると調査班が戻ってきた。各自に飲み物を渡して出迎える。
「特にモンスターが増えていないのであれば作戦に変更はない。昨日語った通りだ。
各自は自分達の力を最大限発揮して対処をしてもらいたい」
『了解』
作戦自体は昨日のうちから決めてあった。時間は十分あったしね。
武田さんが言うように、追加のモンスターが居ないのであれば変更をする必要はない。これには自分も結構関わるので意外と緊張していた。やる事はそう難しくはないのだが。
大型モンスターの相手は大型ゴーレムで対処する。タイラントスネークに1体、ヘビトカゲ2体に1体ずつ、そしてロックスネークLV4に2体だ。
ハンマースコーピオンにはリキッドや3mサイズのゴーレムを充てる。残りのゴーレムは小型モンスターやミノタウロスの牽制役だ。倉田さん達が居たのならもう1体大型ゴーレムがいたんだけどね……まぁ、仕方ない。
ミノタウロスはまたもや障害物エリアを作りそこで対処をする。今度は3体なので前の時ほど忙しくはないだろう。やはり面倒なのは小型モンスターも来る事だな。
飛行班は早急にバット達を片付ける事を指示されていた。飛行班がどれだけ早く手が空くかでその後の対応も変わってくるとの話だ。
自分も陣地や障害物エリアを作った後はこちらに割り当てられていた。とにかく動き続けて散弾で始末をすればいいとの事だ。
上手く事が運べばゴーレムが他のモンスターと合流する前に小型も倒せる算段となっている。そうなれば、後は遅れてやってきたゴーレムに全員で対応するだけだ。判明していないゴーレムが居ようとこちらの全戦力で当たればどうという事は無いはず。
出来れば希少価値の高いゴーレムが居てくれることを皆は願っているようだが果たしてまだ何かいるだろうか?
大型ゴーレムで大型モンスターを足止め(出来れば倒す)している間にバットをどうにか出来れば余裕が出てくる。
数的には圧倒的に負けているが、それでもバットさえいなくなれば対空権は自分達の物となるわけだ。やはり上空を抑えられるというのはかなりの強みだろう。
「よし、それではこれから陣地作製に入る。土の能力を如何なく発揮してくれ。例の作りを頼んだぞ。それが終われば障害物エリアだ」
『了解』
とうとう作戦開始だ。自分を含めた5人が昨日教えられた通りの建物を作り始める。
昨日聞いた作戦を思い出し、結構派手にやるもんだなぁ……と、改めてそんな感想を思いながら指示された陣地を造り上げる。
さて……この作戦、上手くいってくれればいいんだけどねぇ……。




