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476話 ダンジョン3層(PT) 中堅クラス参加の影響




 「うーん……ここもはずれかぁ……」

 皆して『何もない』広場を見つめる。これで2カ所連続だ。


 「解体をした残りや戦闘の跡もないな……結構前に終わったと見るべきか」

 「そこはスライムの湧き次第だから何ともねぇ。まぁ、近くに運搬班や護衛班がいないからそれなりの時間が経ってるってのはそうだと思うけどさ」

 「死骸からでも何が居たか把握出来るから消化される前に見たかったわね」

 「仕方ないかぁ……」

 「武田さん、次の目的地はどこにする?」

 「そうだなぁ……」


 何もないという事を理解すると武田さん達はすぐさま次の行き先を決め始めた。どうやら先の広場での祈りも効果をなさなかったみたいだ。

 地面に地図を置いて皆で行き先を検討する。3度目の正直といってほしいものだが、果たして……。


 「ここの攻略を終えて近場の未攻略広場に向かったと考えるとその後を追うのは愚策だろうな。手がかりがない以上それも仕方のない事かもしれないが」

 「書置きでもあればよかったんだがな。スライムが処理をしていったのなら探すだけ無駄だろう」

 「運搬班達が近くを移動しているんであれば討伐班の行き先も聞けるんだけどな。探知の範囲を広げても見当たんないのか?」

 「駄目ね、少なくとも500m内は反応なし。もっと広げれば見つかるかもだけど……やった方が良いかしら?」

 「広範囲の探知はその分力を使うからな。方角を限定すればまだマシだろうが……」

 「帰還陣に向かって調べたとしても直線の通路になってるわけでもないしねぇ……。見つけても遠すぎたら聞くに行くにも時間がかかるし」

 「念話にも応答なしです。範囲内に居たとしても念話持ちが居ないって事もあり得ますが」

 「向かうべき場所の情報は入手ならず……ね。さて、どうする?」


 どこへ行けば未攻略広場なのか、外部からは何の情報も得られなかった。

 地図を眺めながらこっちでもないあっちでもないと、時間ばかりが過ぎていく。こうなるから洞窟エリアって面倒なんだよね……。


 近場を放棄して離れた位置にある広場へ向かうのも1つの選択肢だ。皆が近場近場と、そうして巡っている間に始めからそこへ目指したほうが当たりを引く可能性もあり得る。

 勿論、そちらに転送されたPTが居る場合もあるので確実ではないが。


 「情報がないんであればどこへ行っても同じですかね。ここを攻略したPTを探して情報交換をするのも1つの手ではありますが」

 「近場の未攻略広場が2回連続でこれだからなぁ……。いくつかの集団がこの辺りで動いてるかもしれんと考えると当たりを引けるかどうかは微妙な所だ。いっそ遠くの広場に向かってみるか……」

 「そこはリーダーに任せるさ。そうするのであればさっさと移動するべきだけどね」

 「悩んでも結果は出ないし、動くっきゃないわね」

 「離れた所と言うがどこに行くつもりだ?」

 「いっそのこと一番端へ行くことにするか。そこからだんだんと帰還陣へ向かえばいい。

 どのみち端の未攻略広場がどうなったか確認が必要なんだ。ならばそこから見ていくことにするとしよう」


 そう言って武田さんが地図の端にある広場を指差した。確率的に考えれば端がやっぱり最後まで残るもんだからな。

 方針を定めると最短で向かうルートの選定を行う。果たしてこれが吉と出るか凶と出るか……攻略が終わった広場を凶というのもあれだけどな。


 ルートの確認を終えると早速出発する事にした。端まで行くとなればそれだけでもだいぶ時間がかかる。道中のモンスターを倒すことも考えるとさらに時間がかかるしね。

 攻略2回目からは移動がメインになるのだと思いつつ、前列に続いて攻略済みの広場を横断していった。

 しかし聞いてはいたけど……中堅クラスが主体ともなれば1層の時よりも攻略がだいぶスピーディになってる気がするなぁ……。





 「ふぅ……これでようやく未攻略広場2カ所目か。今回はあまり貢献度は期待できんかもしれんなぁ……」

 「1回目の攻略でそれなりに広場を回れたし悪くはないんじゃないか? 他のPTも似たようなもんだと思うがな」

 「そうそう。少なくとも2カ所目は確定したんだし喜ぼうじゃないの。明日は朝一番で攻略開始ってね」


 今から明日が楽しみだと、体をほぐし終えた和田さんが防具の点検をしながらそう言葉にした。

 

 あれから地図の端までやってくると目的地としていた広場前に到着した。探知で確認をした所モンスターの反応もしっかりとあった。未攻略広場なのは確定だ。

 道中モンスターを倒しながら来たこともあり、広場の前へ来た時にはすっかり夕飯の時間は過ぎていた。先に確認を済ませた方が安心出来るというのは間違いではないが。

 その結果、未攻略広場だという事がわかり皆もホッとなった。端まで来た意味が無駄にならなくて済んだという事なのだが、未攻略状態と知りホッとなるってのもなんだかおかしな話だ。

 これは自分もだんだんと探索者の思考になってきたという事だろうか?


 探知や念話で確認してみたが、自分達以外の探索者の反応は見当たらない。どうやらこの広場には自分達が一番乗りという事だ。

 運搬班や護衛班、追加の討伐班を待つ意味も兼ねて、広場前にあった休憩所で待機する事になった。広場からはこの休憩所が一番近い。時間を考えると他のPTもここで休むと推測された。

 夕飯をこの休憩所で取って明日の朝すぐに攻略を始める。

 運搬班と護衛班、最低1PTづつでもいいからと、今日中に来てくれる事を願いながら夕食の準備に入った。


 「広場の入り口にトランシーバーを持たせたゴーレムも配置と、これで他のPTから連絡があればこちらにも伝わりますね」

 「トランシーバーのスイッチを押して音を鳴らすという単純作業で何とかなるからな。これで念話持ちでなくとも接近して来ればある程度は察知出来るというものだ」

 「ずっと待機させてOKなゴーレム様様だな。人を使えばより確実だがその分危険もあるわけだ」

 「ゴーレムによるトランシーバーを用いた長距離通信だね。多少タイムラグはあるけど……長時間ずっと待機してるのは人間じゃ厳しいし。ゴーレムが複数いるとこういう点々とした連絡方法が取れて助かるよ」

 「まぁ、その分ゴーレムについてはリスクがあるけどな。

 モンスターが近づいてきた場合とか、音の回数で分けてるから連絡があればすぐにわかるんだけどよ。何とか耐えてる間に回収出来ればいいんだが……」


 夕飯を食べながら、先ほど準備してきた事について語り合っていた。疲れもしないゴーレムを広場の入り口付近に置くことで中継所として利用する事になったのだ。

 早い間隔で音を鳴らすのがモンスター襲撃、一定の間隔で音を鳴らすのがトランシーバーに連絡ありの2パターンだ。これでこの休憩所に居ながら広場付近で起きたことを知ることが出来る。

 

 「最悪は破棄も考えないとだけどね。回収に行ってモンスターとこの時間から本格的に戦闘なんてしたくないし」

 「後はゴーレムの居る通路に直で他のPTが来た際はゴーレムの事がバレる点ね。モンスターと間違って攻撃されないようにはしてきたけど……」

 「俺達がゴーレムを使ってることがそのやってきたPT全員に知れ渡るわけだ。まぁ……既に軍に駒の事がバレているのであればそこまで大事ではないようだがな。どうせ俺達もその内ゴーレムを連れて普通に探索へ出ようと思っていたというのもある」

 「使ってたら隠し通せねぇだろうしな。ゴーレムを使って素材を多く運べることの方が重要だぜ」

 どうせ遅かれ早かれ駒の事について国から知らせが出ると知ったからか、(織田/小田)さん達はバレてもいいやとの思いでこの連絡手段を実行した。強制買取で持ってかれるのならどのみち自分達にも影響するだろうとの事だ。


 「今は攻略が優先だからな。使えるもんは使っちまうのが良かろうよ。

 それと他の駒持ちPTもこれが強制買取と決まれば抗議せずにはいられんだろうしな。撤回を求めて管理部へ押しかける未来が見えるわ。少なくとも使用後の駒についても同じ取り決めであれば抗議の嵐だろうな」


 塚田さんも使用者登録済みの駒であればおそらく大丈夫と言いながら使えるもんは使えと口にする。

 本当、強制買取の意味が無いからねぇ……これ。


 「ゴーレムについてはどちらかと言うとモンスターに襲われた方が厄介まであるな。まぁ、探知で通路のモンスターも見張ってるからその場に湧くのでもなければ何とかなるだろう。湧くなら広場に湧きそうなもんだしな。

 探知を使えるメンバーはゴーレム周りの事も注意しといてくれよ」

 武田さんの言葉に索敵班が頷き返す。寝るにしても交代交代でしっかりと見張ってもらえるのは助かるね。


 「夕飯を食べたら自由行動だ。各自明日までにしっかり体を休めておくようにな」

 「後でお風呂を作りますので休む前にでも使ってください。移動で足も疲れてるでしょうし」


 明日の戦闘前に取れる疲れは取っておいた方が良いだろうと、水魔法を使える人達でそう決めていた。皆お風呂と聞いて笑顔だ。朝は足湯にするとも伝えておく。

 

 そうして、ゴーレムから連絡が来てほしいやら来てほしくないといった時間を過ごす。

 出来れば良い報告のみ来てほしいと期待をしつつ、各々は明日の戦闘に備えて体を休め始めた。





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