472話 ダンジョン3層(PT) 戦闘も終わったので自己紹介を
「いやー、それにしても援軍感謝だ! お前達がゴーレムを倒してくれたおかげで予定よりも早く片が付いた」
「こっちとしては最初から参加出来てないのが申し訳なく思うんですけどね。陣地の作製だったりモンスターの初動に対応できなかったりと……やっぱり戦闘の前が一番大変ですからねぇ」
「途中参加だとその辺りはどうしてもね……」
「最初からの方が貢献度も良く見られるからな。攻略に参加した以上どうせなら良い方が嬉しかろう」
「まぁ、こればかりはどうしようもないな」
広場での戦闘も終わり、もろもろの後始末を終えた皆は休憩へと入っていた。今は待機をしていた運搬班が集め終わったモンスターから運ぶ部分を選り分けている最中だ。
自分達討伐班はそんな作業を横目に見ながら遅れた昼食をとっていた。
「タイラントスネークの串焼き出来たわよぉー。各自好きに取ってってー!」
運びきれない部分は自分達の昼食に使わせてもらった。丁度昼食の時間だしな。やはりシンプルだけど串焼きは食欲をそそる。焼きたての肉の匂いが胃を刺激していた。
「ともかくあれ等を食いながら先ほどの事についていろいろと話し合うか。あっちは忙しいだろうから特に耳も立てちゃおらんだろ」
「まぁ、別に聞かれたからってどうって事はないがな……どうせ早いか遅いかでしかないだろうし」
「それもそうだな……」
「んん?」
福田さん達の返事に武田さんが首を傾げる。ゴーレム……駒の事は結構な秘密だろうといった表情だ。
「その事についても話すとしようか。まぁ、当事者は今の所私達ではないからあれだがね」
「ふむ……なにやらお前さん達だけが知っている情報がまだあるみたいだな。ならそれについても食いながら聞くとするか」
そう言うと武田さん達も肉を焼いている焼き場へと移動した。あの流れだと言うのは自分からの方が良いって事かねぇ?
「俺等も取りに行こうぜ、どうせ肉は食切れない程あるんだから好きなだけ食おうぜ」
「食べたら移動するのだから程々にしておけよ。まぁ、これだけいい匂いなのだから戦闘後の腹が減った所で我慢するのもあれか」
「ですねぇ。この匂いを嗅いだらお腹が余計にすいてきました」
一緒に休んでいた槍一さん達と共に自分も焼き場へと向かう。皆も既に思い思い串を手に取り肉を食べ始めていた。
焼き場の周囲には座る所が作ってあり、各々がそこへ腰掛ける。自分達で用意していたオニギリなんかも手にしながら戦闘後の休憩を満喫していた。
「お前等肉は持ってったか? どうせ余ってもスライムが吸収するだけなんだから食えるうちに食っておけよ」
『りょうか~い』
串焼きを掲げながら皆が返事を返す。槍一さん達は酒が無い事がほんと残念と小さく溜息を吐いていた。
「食いながらでいいから耳を傾けておけよ。
まずはこの広場の攻略お疲れさんだ。数は多かったがこれといった問題も無く倒せて何よりだ。しっかり食べて体の疲れを取っておいてくれ」
武田さんが広場攻略のねぎらいを口にする。皆にとってはこれが当たり前と、軽く頷いて次の言葉に耳を傾けていた。
「皆もとっくに目にしただろうが……それほど苦も無く攻略出来たのは大型のあいつのおかげだろう。タイラントスネークやミノタウロスといったモンスターを抑えておけるとかなり楽に感じだはずだ」
「だなぁ……。タイラントスネークの突進から抑制と1体であれだったわけだし」
武田さんのPTメンバーの1人がそう口にした。自分の結界の役割が取られたわ……と、続けて喋った事から女王蟻の足場を作った結界の能力者はこの人のようだ。他にも同じ能力を持ってる人がいるのかもしれないし防御担当の1人ってだけかな?
「あれのおかげでタイラントスネークに人員を割かなくてよくなったわけだしな。倉田さん達には感謝だよ」
「そう言ってもらえるのであれば使った甲斐があるという物だ。俺達にしても他に手が回せるのであれば言う事は無いからな」
「地上班はミノタウロスとかそっちの対応で結構いっぱいいっぱいだったからな。数が多いというのはそれだけで厄介なもんだ……」
「タイラントスネークをどうにかするのであれば牽制役と仕留め役で複数の人手がいりますからね。あの人数から更に引かれると流石に困るところでしたし」
「あいつをどうにか抑えておくための陣地も更に作んなきゃならなかっただろうしな。それをあいつ1体で賄えるんであれば使うっきゃねぇぜ」
「私達も1体ぐらいは大型を持ってたいわね……」
皆が倉田さん達の出した大型ゴーレムに感謝を感じでいた。実際に対応するとなれば自分達地上班の役目になるのだからと、倉田さん達も使用するのに文句はないと口にした。今まではそうやって対応してきたんだろうし、代わりが居るのならそちらに任せたいと思うのは自然な事だろうな。
「倉田達のあれもそうだが、後から追加で来た5体も大変助かった。地上班を別の所に回せたんだからな」
武田さんがこちらを見ながらウンウン! と頷いた。その発言に皆の視線が一斉に自分の方へと向く。皆ずっとそこを気にしていたようだ。
「石田さん、軽く自己紹介を頼む。うちのPTメンバーも知らんだろうから一緒に挨拶させよう」
「あ、はい」
そう言われたので手に持っていた串焼きとオニギリを即席の石皿の上に置く。膝の上に乗せると軽く自己紹介を始めた。
「石田と言います。現在は臨時で福田さん達のPTに参加させてもらっています。最近探索者になったばかりの初心者探索者です。能力は土と水が使えます。よろしくお願いします」
そう言って自己紹介を終える。簡単にって事だし言っておくとしたらこんな所でいいだろうか?
「最近登録した初心者探索者なぁ……。ゴーレムを連れてたから気にはなってたんだけどその秘密はあの駒だったわけだ」
「あんなに戦力を持っている初心者探索者ってのもどうなんですかね?」
「実際登録したてって事なら何らおかしくはないわねぇ……まぁ、違和感はあるけど」
「一緒に鎖を作っていたがそう悪いものではなかったぞ? 作成スピードに差が出たのは仕方のない部分だがな」
「そこは慣れでしかないからねぇ。経験に関してはやっぱり相応って感じ? あの鎖を見たぶんだと能力に問題はなさそうだけどね」
「能力的に足りてないとあの作戦途中で鎖が壊れて失敗もあったんじゃないか? リーダーもずいぶんと賭けに出たものだな……」
「リーダーは一応前から知ってたんでしょ、石田さんの事? ゴーレムの事を聞いてたとなればこれは行けると思って立てたんじゃない?」
「あれ? でも倉田さんにあのゴーレムを作ったか? って聞いたって事は製作者が石田さんだって知らなかったんじゃないの? まぁ、あの連れてたゴーレムから力量を感じ取ったのかもしれないけどさ」
「そんな所じゃないか? リーダーもその辺は考えてただろうし」
「いやー、よく相手のこと見てるねぇ、リーダーは!」
初心者探索者の自分を作戦に加えたことで作戦に不安要素があったのではないかと不審がられたがどうやらそれは消え去ったようだ。
一応以前、倉田さんから討伐班に加えても問題ないとの話を聞いていたのもあってあの投げ槍作戦に自分を加えたのだと思う。思うのだが……無言で串焼きを頬張っているのを見ると果たしてそうなのかどうかよくわからんね?
自分としても勢いよく引っ張った時に自分の作った鎖が壊れなくて今になってホッとなった。頑丈に作ったつもりなので大丈夫だとは思ってたけどさ。
「土の能力があるからゴーレムを作ったのか? それとも駒を手に入れたからゴーレムを作ったのか?」
同じ土の能力持ちの織田さんがその辺はどうなんだとこちらに聞いてきた。
「前者ですね。駒を手に入れたのでその後も使い続けたという感じです」
「そうじゃないとゴーレムを使い続けたりはしないか……。倉田さんからアレの効果を聞いたがとんでもない物を探索当初に見つけたものだな」
運が良いと、そう言って頷く武田さんの女性PTメンバー。あれを見つけられたのは本当良かったね。
「石田さんの自己紹介も終わったし次はこちらの番か? ならまずは私からさせてもらおうかな。
田子と言う。能力は火と風、それに遠見の能力持ちだ」
「よし……皆も適当に自己紹介していってくれ。……本来は俺が最初にするべきだったような気もするがな」
そう言って武田さんが皆にも自己紹介するように口にした。
「まぁ、知ってるから名前はどうでもいいな。以前食堂で会った時にやっておけっていう話だが。
俺の能力は雷に怪力、脚力の強化に士気上昇だ」
武田さんが新しい串を手にしながらそう説明した。士気上昇って意味は分かるけどどうなるんだろうか?
「俺も名前は今更だな。能力も1つは知っているだろうが土と火、それに念力だ。同じ土の能力持ち同士だ。よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
「じゃあ次は同じく名前を言った事のある僕だ。能力は風に土、それと探知に沸騰ね。飛行班をしてたように空に地上とどっちもが立ち位置だ。また土の能力で一緒する時はよろしく頼むよ」
「はい、よろしくお願いします」
既に名前を聞いていた織田さんと和田さんがそう言って自己紹介を終えた。
「じゃあここからは知らないメンバーって事で。
俺は玄田だ。能力は風と物理的な結界、それと脚力強化を持ってる。基本は空中を担当してるな。移動は空と地上どっちもいけるから遊撃担当って感じね」
「先に男性紹介って事で。
自分は田草川。能力は怪力に姿を消せる透明化、紀田さんも持ってる奴ね。かっこよくハイドって呼んでるけど。
透明な状態から重い一撃を与えるのが自分の戦闘スタイルだね。もし位置がバレた際は防壁をお願いするよ」
「最後は自分だ。
田野倉という。水と怪力、それと回復の能力持ちだ。怪我をした際は死んでなければ直してやる。怪力の能力もあって前線にいる事も多いから戻って来るまで耐えるようにな」
「じゃあ次は女性メンバーで。
私は松田ね。能力は水に風、念話に鑑定を持ってるわ。和田と一緒に先行偵察行くことが多いかしら。索敵が和田で連絡が私って感じ」
「田子さんは言ったから次は私ね。
田岡よ。能力は氷に怪力に暗視があるわ。石田さんのその腕に付けてるの氷の腕輪よね。エネルギー補充が必要なら声を掛けて頂戴。知り合いからは格安で請け負ってることにしてるから。ダンジョン内では持ちつ持たれつだから無料よ」
「伊豆田って言います。能力は探知に念力、結界に発火の4つ。ほとんど後方の担当だから立ち位置的には石田さんの近くですね。
火の能力に似てるけど発火って燃え上がらせる事しか出来ないからちょっと攻撃力不足なの。防壁をお願いする事が多いかもしれないわ」
「それじゃあ自己紹介最後はあたしだね。
田山って言うんだ! 能力は怪力に物理的な結界、それに念話と2段ジャンプ。琴田さんに念話をしてたのがあたしだよ。今回は後方で念話の役割をしてたけどバリッバリのアタッカーだから!
後方からの援護期待してるから今後ともよろしくねっ!」
そうして武田さんのPTメンバー全員の自己紹介が終わった。計11人が武田さんのPTだ。
「皆さん、よろしくお願いします。自分の出来る範囲で頑張らせていただきますので」
「なに、あれだけの事が出来れば十分だ。それに石田さんの力はあのゴーレムだってあるわけだしな」
「そうそう、あのゴーレムの事を聞きたかったんだけどさ。あれって……」
自己紹介も終え、同じ戦場を共にした仲間として互いの距離も近くなった。土の能力を持っている織田さんと和田さんは特にゴーレムの事について自分と話をしたいようだ。
今後、自分達も大型のゴーレムを作るつもりだから参考に聞かせてくれと口にする。ゴーレムについては一応自分の方が先輩だからって事だけど相手にしたモンスターも少ないし話す事ってそう無いんだよな……。
新しく焼けた串焼きを皿に貰いながら皆の質問に答えていく。
倉田さん達もこっちで質問に答えてくれないものか。間違いなく戦闘経験は大型ゴーレムのも含めて倉田さん達の方が上ですよねぇ?




